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アイシャー原点ー
しおりを挟むゴトゴトと街道を走る馬車の壁にもたれかかりながら、アイシャは無気力に外を眺める。手にはくしゃくしゃになった紙を折りたたんで持っている。
昼過ぎで多くの人が行き交う光景をみながら思い浮かべるのは大人びた笑顔を浮かべる愛しい妹の顔だった。
クロアは死んでしまった。
そんな知らせが孤児院に届いたのはクロアが孤児院をでた翌日。つまりアイシャが孤児院を出る予定の日だった。
クロアを乗せた馬車は王国の外の森で魔物に襲われた。
一緒に乗っていたエルノールという貴族と御者の死体は見つかったがクロアの死体は見つからなかったそうだ。
そんな話を聞きながらアイシャは視界がぐらついていくのを感じ、しまいには気を失ってしまった。
寝室で目を覚ましたアイシャはクロアの姿を求めて隣のベッドに目を向ける。
そして空っぽのベッドに現実を痛感する。
クロアはもう居ないんだ。
認めるととたんに涙が溢れだしてきて枕に顔を填めた。
泣いているとクロアと過ごした今までの日々が思い出されてさらに泣いてしまう。
どれほどの時間そうしていたのか、鈍い頭痛を感じながら起き上がると、机の上に1枚の紙が置いてあるのを見つけた。
泣いている間に誰かが入ってきて置いたのだろうか。
陰鬱な面持ちでその紙をみると、それはクロアからの手紙だった。
手紙には可愛く不格好な文字でこう書いてあった。
おねえちゃんへ
ひどいこといってごめんなさい。いつもおねえちゃんはぼくのことをまもってくれて、ぼくはそれがとてもうれしかったしあこがれてたよ。
でもいつまでもおねえちゃんにまもられてるばかりじゃだめだとおもうから、ぼくもおねえちゃんみたいにつよくなることにしたんだ。
だからおねえちゃんにはすこしだけまっていてほしい。きっとぼくもおねえちゃんみたいにつよくなるから。
そしたらまたいっしょにふたりでくらしたい。
だからそれまでちょっとだけおわかれしたいんだ。
かってにきめてごめんね。でもこれだけはほんとうだよ。
ぼくはおねえちゃんのことずっとだいすきだよ。ずっとずっと、いつまでもだいすきだよ。
いままでありがとう。
クロア
それを読んだアイシャの目からはまた涙が溢れだしてくる。
クロアはアイシャが思ってたよりずっと大人だった。これはきっとクロアが出ていく前に書いたものだろう。クロアがそんなことを考えているなんてアイシャは思いもしなかった。
アイシャは子どもみたいなただを捏ねて、クロアに酷いことを言った。
それがクロアとの最後の会話になるなんて、悔しさと悲しさから涙が止まらない。
アイシャは全然強くなんてなかった。
「クロア…」
外に楽しそうに遊ぶ小さな姉妹が見えた。
歳はアイシャとクロアと同じくらいだろうか。自分たちにもそんな未来があったかもしれない。
「クロア…お姉ちゃんは強くなるよ。クロアに憧れて貰えるように。」
いまのどうしようもない自分ではなく、クロアが憧れるに足るような立派な姉に。
「クロアを私から奪った魔物を、魔族を全部倒せるくらい強く。」
クロアを乗せた馬車がなぜ王国から出て森に向かっていたのか。
それには魔族が関与していたらしい。
それが無ければ今頃クロアは貴族の家で普通に暮らせていただろうと。
アイシャの涙でくしゃくしゃになってしまったクロアの手紙を大事に懐にしまい、アイシャは強く誓う。
魔物と魔族を全て殺す。そのために強くなる。
クロアが誇れるように。
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