どうしてあなただけ幸せなんですか?

ゆん2022

文字の大きさ
19 / 31

四通目③

しおりを挟む
ユリさん

お返事、ありがとうございました。
ユリさんって、こんな字を書くんだなぁと思ったら嬉しくって、何度も読み返してしまいました。
もっともっと、ユリさんのことが知りたいです。

実は、どうしてもお会いしたい気持ちが抑えられなくって、先日ユリさんのマンションのそばまで行ったんです。
でも、やっぱりチャイムを押す勇気がなくて…少し待っていたら、ユリさんが出てきてくれたから、運命を感じちゃいました。
素敵なワンピースですね。私も似たようなのを探したんですが、なかなか見つからないんです。どこで買ったんですか?
あの日は、どこへ行ったんですか?本当は付いていきたかったんですが、残念ながら見失っちゃったんです。
ずっと笑顔でしたね。あなたはいつも、本当に幸せそうですね。
ユリさん、教えてください。
どうしたら、私はあなたになれるんでしょう?


見えない手で首筋を撫でられたような、底の知れない恐怖が沸き上がってきた。今この時も、玄関のドアの前に『佐藤 綾乃』が居るような気がして、窓から見える街路樹の陰からこちらをじっと見つめられているような気がして、震えが止まらない。寝室に駆け込み、秀夫を揺り起こした。
「何、どした…」
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がる秀夫の目の前に、写真をぶちまけた。秀夫の表情が固まる。一気に目が覚めたようだ。
「なんだよ、これ」
「わかんない、わかんないよ!秀夫さん、変だよ!この人、おかしいよ!」
ユリはパニックを起こしていた。秀夫が着ている寝巻代わりのTシャツを握りしめて、胸に顔をうずめながら叫ぶ。涙が止まらない。
「どうしょう、どうしたらいい、秀夫さん!」
「落ち着け、まず、落ち着こう」
秀夫がユリの背中を優しく撫でる。大きな手の感触が心地よくて、震えが少しずつ収まってきた。

ざっと手紙に目を通し、写真を見ながら秀夫が聞いた。
「これ、この間出かけた時の格好だよね?」
「うん。間違いない。あの日、『佐藤 綾乃』は、ここに居たんだよ」
震える声でユリは答える。言葉にすると、改めて恐怖が足元からせり上がってくる。
「そうだ、警察…私、警察に行ってくる!」
立ち上がったユリを、秀夫が引き留めた。
「警察なんか行ったって、どうにもならないよ。何かされたわけじゃないんだから」
「何かされたわけじゃないって…されたよ!されたでしょう?」
「何もされてないよ。ユリ、落ち着けって」
秀夫の声が冷たく聞こえる。自分がおかしなことを言っているのだろうか?頭が混乱する。
「とにかくさ…この程度じゃ、警察は何もしてくれないよ。実際、写真撮られたくらいで、別に被害はないわけだし…」
被害がない?ユリがこんなにおびえているのに?
「秀夫さん、わかってる?頭のおかしい人が、私を付け回してるんだよ?」
「付け回してるって…大げさだな。先週の日曜日だけだろ?」
この人は、何を言っているんだろう。秀夫の言葉が信じられない。こんなにも、ユリの気持ちに寄り添ってくれない人だっただろうか?こんなにも、頼りにならない人だっただろうか…
「ユリ、どした?大丈夫か?」
ひどい顔色をしていたのだろう、心配した秀夫が黙り込んだユリの頬に手を伸ばす。
「触らないで!」
ユリは思わず秀夫の手を振り払った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...