19 / 31
四通目③
ユリさん
お返事、ありがとうございました。
ユリさんって、こんな字を書くんだなぁと思ったら嬉しくって、何度も読み返してしまいました。
もっともっと、ユリさんのことが知りたいです。
実は、どうしてもお会いしたい気持ちが抑えられなくって、先日ユリさんのマンションのそばまで行ったんです。
でも、やっぱりチャイムを押す勇気がなくて…少し待っていたら、ユリさんが出てきてくれたから、運命を感じちゃいました。
素敵なワンピースですね。私も似たようなのを探したんですが、なかなか見つからないんです。どこで買ったんですか?
あの日は、どこへ行ったんですか?本当は付いていきたかったんですが、残念ながら見失っちゃったんです。
ずっと笑顔でしたね。あなたはいつも、本当に幸せそうですね。
ユリさん、教えてください。
どうしたら、私はあなたになれるんでしょう?
見えない手で首筋を撫でられたような、底の知れない恐怖が沸き上がってきた。今この時も、玄関のドアの前に『佐藤 綾乃』が居るような気がして、窓から見える街路樹の陰からこちらをじっと見つめられているような気がして、震えが止まらない。寝室に駆け込み、秀夫を揺り起こした。
「何、どした…」
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がる秀夫の目の前に、写真をぶちまけた。秀夫の表情が固まる。一気に目が覚めたようだ。
「なんだよ、これ」
「わかんない、わかんないよ!秀夫さん、変だよ!この人、おかしいよ!」
ユリはパニックを起こしていた。秀夫が着ている寝巻代わりのTシャツを握りしめて、胸に顔をうずめながら叫ぶ。涙が止まらない。
「どうしょう、どうしたらいい、秀夫さん!」
「落ち着け、まず、落ち着こう」
秀夫がユリの背中を優しく撫でる。大きな手の感触が心地よくて、震えが少しずつ収まってきた。
ざっと手紙に目を通し、写真を見ながら秀夫が聞いた。
「これ、この間出かけた時の格好だよね?」
「うん。間違いない。あの日、『佐藤 綾乃』は、ここに居たんだよ」
震える声でユリは答える。言葉にすると、改めて恐怖が足元からせり上がってくる。
「そうだ、警察…私、警察に行ってくる!」
立ち上がったユリを、秀夫が引き留めた。
「警察なんか行ったって、どうにもならないよ。何かされたわけじゃないんだから」
「何かされたわけじゃないって…されたよ!されたでしょう?」
「何もされてないよ。ユリ、落ち着けって」
秀夫の声が冷たく聞こえる。自分がおかしなことを言っているのだろうか?頭が混乱する。
「とにかくさ…この程度じゃ、警察は何もしてくれないよ。実際、写真撮られたくらいで、別に被害はないわけだし…」
被害がない?ユリがこんなにおびえているのに?
「秀夫さん、わかってる?頭のおかしい人が、私を付け回してるんだよ?」
「付け回してるって…大げさだな。先週の日曜日だけだろ?」
この人は、何を言っているんだろう。秀夫の言葉が信じられない。こんなにも、ユリの気持ちに寄り添ってくれない人だっただろうか?こんなにも、頼りにならない人だっただろうか…
「ユリ、どした?大丈夫か?」
ひどい顔色をしていたのだろう、心配した秀夫が黙り込んだユリの頬に手を伸ばす。
「触らないで!」
ユリは思わず秀夫の手を振り払った。
お返事、ありがとうございました。
ユリさんって、こんな字を書くんだなぁと思ったら嬉しくって、何度も読み返してしまいました。
もっともっと、ユリさんのことが知りたいです。
実は、どうしてもお会いしたい気持ちが抑えられなくって、先日ユリさんのマンションのそばまで行ったんです。
でも、やっぱりチャイムを押す勇気がなくて…少し待っていたら、ユリさんが出てきてくれたから、運命を感じちゃいました。
素敵なワンピースですね。私も似たようなのを探したんですが、なかなか見つからないんです。どこで買ったんですか?
あの日は、どこへ行ったんですか?本当は付いていきたかったんですが、残念ながら見失っちゃったんです。
ずっと笑顔でしたね。あなたはいつも、本当に幸せそうですね。
ユリさん、教えてください。
どうしたら、私はあなたになれるんでしょう?
見えない手で首筋を撫でられたような、底の知れない恐怖が沸き上がってきた。今この時も、玄関のドアの前に『佐藤 綾乃』が居るような気がして、窓から見える街路樹の陰からこちらをじっと見つめられているような気がして、震えが止まらない。寝室に駆け込み、秀夫を揺り起こした。
「何、どした…」
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がる秀夫の目の前に、写真をぶちまけた。秀夫の表情が固まる。一気に目が覚めたようだ。
「なんだよ、これ」
「わかんない、わかんないよ!秀夫さん、変だよ!この人、おかしいよ!」
ユリはパニックを起こしていた。秀夫が着ている寝巻代わりのTシャツを握りしめて、胸に顔をうずめながら叫ぶ。涙が止まらない。
「どうしょう、どうしたらいい、秀夫さん!」
「落ち着け、まず、落ち着こう」
秀夫がユリの背中を優しく撫でる。大きな手の感触が心地よくて、震えが少しずつ収まってきた。
ざっと手紙に目を通し、写真を見ながら秀夫が聞いた。
「これ、この間出かけた時の格好だよね?」
「うん。間違いない。あの日、『佐藤 綾乃』は、ここに居たんだよ」
震える声でユリは答える。言葉にすると、改めて恐怖が足元からせり上がってくる。
「そうだ、警察…私、警察に行ってくる!」
立ち上がったユリを、秀夫が引き留めた。
「警察なんか行ったって、どうにもならないよ。何かされたわけじゃないんだから」
「何かされたわけじゃないって…されたよ!されたでしょう?」
「何もされてないよ。ユリ、落ち着けって」
秀夫の声が冷たく聞こえる。自分がおかしなことを言っているのだろうか?頭が混乱する。
「とにかくさ…この程度じゃ、警察は何もしてくれないよ。実際、写真撮られたくらいで、別に被害はないわけだし…」
被害がない?ユリがこんなにおびえているのに?
「秀夫さん、わかってる?頭のおかしい人が、私を付け回してるんだよ?」
「付け回してるって…大げさだな。先週の日曜日だけだろ?」
この人は、何を言っているんだろう。秀夫の言葉が信じられない。こんなにも、ユリの気持ちに寄り添ってくれない人だっただろうか?こんなにも、頼りにならない人だっただろうか…
「ユリ、どした?大丈夫か?」
ひどい顔色をしていたのだろう、心配した秀夫が黙り込んだユリの頬に手を伸ばす。
「触らないで!」
ユリは思わず秀夫の手を振り払った。
あなたにおすすめの小説
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。