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第2話

「羽田Extreme_03」

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 羽田空港に着いたはいいが、飛行機に乗る訳じゃないし、空港見学する気にもなれない。
 かといって、来たばかりでそのままトンボ返りも芸が無い。
 取り敢えず遅い朝食代わりに何か食べようと思った。
 国内線の第二ターミナル南ピア3階にフードコート形式のレストランがあるらしいので、行ってみたら…いやぁ~人の多い事多い事。早々にギブです。
 「仕方ない…編集部に戻るかぁ~…? あれ?」
 その時、電光が閃いた!
 『羽田Extreme』は6種類あった。そうだ! 何も来た時の『東急羽田Extreme』に乗らなければならない決まりはない。
 なら編集部に一番近くまで行ける『羽田Extreme』に乗れば良い。
 そう考えて券売機横の『羽田Extremeネットワーク』という案内パネルを見る。
 「一番便利なのは…え? 四ツ谷に停まる『羽田Extreme』があるじゃん」
 思わず声が出ちゃったよ。
 何しろ来日外国人旅行者が迷わない様に、各『羽田Extreme』は色分けされていた。それで行くと四ツ谷を通るのはグリーンExtremeで『さいたま羽田Extreme』のことらしい。
 つまり埼玉高速鉄道の浦和美園行きだ。だから都区内は東京メトロ南北線となる。
 なるほどね。
 『さいたま羽田Extreme』ってなってたから気付けなかったんだけど、来日外国人は先入観がないからこの方が判り易いのかも知れない。
 まあどっちにしろ、この羽田空港から編集部のある四ツ谷まで、乗換なしで行かれることが一番驚いたね。しかも『羽田Extreme』は特急以上の種別でありながら、全列車運賃のみで乗れるので当然交通系のICカードがあれば、特に意識することなく乗れるのがうれしい。
 こりゃぁ不慣れな来日外国人ばかりか、都内を巡る観光客も大助かりだろう。
 「使えるじゃん!『羽田Extreme』!!」
 …と、思わず叫んでしまった。あ~恥ずかしい~(ハズいとは絶対に言わないよ、俺は(汗))
 あ、でも一つ欠点というか…やむを得ないことなんだけど…各『羽田Extreme』はそれぞれ1時間に1本しか走れませんでした。ただ、それだけに同じ方向に走る『羽田Extreme』は間隔をおいて運行されるダイヤになっている。
 つまり、くだんの『さいたま羽田Extreme』が毎時0分発車、『東上羽田Extreme』は毎時10分、『東急羽田Extreme』毎時20分、『東京メトロ羽田Extreme』毎時30分、『都営三田羽田Extreme』毎時40分、『西武羽田Extreme』毎時50分となっている。
 『さいたま羽田Extreme』に乗り遅れた場合は、20分後に発車する『東急羽田Extreme』に乗って東急目黒線の大岡山までは行かれる。そこで日吉始発の南北線方面列車や都営三田線直通列車に乗り換えれば、次の『さいたま羽田Extreme』まで待つより早く目的地に行かれる。
 それ以外でも、どの『羽田Extreme』も東急目黒/東横線の田園調布までは同じルートなので、次の『羽田Extreme』で田園調布まで行けば、一回の乗換で同じ目的には行かれることになっている。
 しかし俺の場合は『東急羽田Extreme』以外で長津田へ行こうと思えば、大岡山か自由が丘のどちらかで乗り換えればいいはずだが、大井町線は基本的に溝の口行きなので2回乗換が必要になる。…自社線なのに一番融通が利かないところも興味深い。…小田急に直通しないかな(笑)。
 なんて、原稿の素案を考えていたら、あっという間に四ツ谷に着いちゃったよ。
 これは最初に乗った『リムジンバス』の快適さにかなり近いと思う。まあ乗客の移動やら、頻繁にドアが開く騒々しさを除けばのことだけど…。

 『リムジンバス、どうだった?』
 編集部に戻ると、ほぼ専用のデスクと化している編集長の隣のミーティングテーブルで、奈美さんが自前のMac Book Proで画像の整理をしている所だった。
 開口一番に結果を強要しないでください~(涙)。せめて『おかえり』くらい言ってください…。普通の友達くらいの感情を込めて…(ぐすっ)。
 「いやぁ~快適でしたよぉ~(くっそう、それでも素直に応えてる俺…)」
 全てを見透かしているくせに、俺の応えに何故か不安顔になってます。
 なるほど~、このひとの性格、少しは判ってきましたよ~。
 『しかし』とここで、リムジンバスを否定するような発言をすると、『いったい、何を感じてきたのよ!』とか怒り出すはず。だから…
 「今までは単なる移動手段の一つだと思ってました。“バス”だから乗って移動するだけ…だと…」
 判りにくい評価をしておいて、肯定する感想を言ってみました(笑)
 「お? おぉ~、で? で?」
 奈美さんが喰い付いてきた!(ははは…思った通り…)
 「あれは空港で搭乗を待っている時に使う“ラウンジ”のようなものかな? って思いました。もっとも俺はラウンジって使ったことないですけど(笑)」
 「だよね。だよね。移動はあくまでおまけで、くつろぐことがメインって感じだよね」
 うっわ~奈美さん、満面の笑顔で目が輝いてるよぉ~。…別の意味で怖いけど(笑)
 「確かに重くて大きいスーツケースを持たなくても良いとか、そんな事は二の次ですよね」
 「うんうん。絶対確実に時間までに行かれるという保証はないけど、それ言ったら鉄道だって、マイカーだって同じことだよね」
 「でも乗ったら既に空港にいるような安心感がありました」
 ぱぁ~っと笑顔を一段と明るくして、
 「やっと判ってくれたのね~」と諸手を挙げて喜ぶ奈美さん。
 こういうところが歳に関係なく“可愛い”んです。このひとは!
 あ~これで、鉄オタ一直線でなければ相当もてるだろうね。
 今このひとの愛情は、鉄道全般…だけじゃなく乗り物全部に注がれているんですね。

 「ところで! 『羽田Extreme』の方はどうだった?」
 ほら来た! ここでもまた否定的な発言は御法度! でも闇雲に褒めちぎっても見透かされます。本当に感じたことを言わないと、奈美さんは大魔神となるのですよ。あ~こわい。というか、ものすごい緊張感です。
 「すごく大変な思いをしましたよ~」
 まずは否定っぽく。ここがミソだと最近知りました。
 「え~」
 はいっ! 不満顔です。
 「でもこのシステムは凄く有用ですよ」
 「え?」
 今までと違った切り返しで、奈美さんは戸惑ってます(笑)。
 (俺も相当根性が曲がってきたね。こりゃ…)
 「既存の車輛を最大限活かして直通させる。しかも東横線系統は全て『池袋』『新宿三丁目』『渋谷』『自由が丘』を通るので、都内西部からのアクセスは良好です。目黒線系統は都区内北部方面、と今まで最低でも2回以上の乗換が必要だったエリアです」
 「…そうなんだよね…」
 「でも、各1時間に1本としておきながらも、ルートの設定に無理が無いので、補完する列車が多くて不便はないです」
 「ほう…」奈美さんは俺が何を言い出すのか、真剣に推測してる。
 「各都市からのアクセスはリムジンバスほどではないですが、以前よりは確実に便利になっています。それだけで充分だと感じました」
 「あれ? システムやインフラ重視のあなたにしてはあっさりしてるわね」
 怒る要因が見つけられず、思わず本心からそう言ったのだと思っておきます。
 「それどころか…、このシステムが一番威力を発揮するのが…」
 「?」
 何? この展開って思ってるんだろう。奈美さんが呆けた顔で俺を見つめている。
 「来日外国人旅行者に対してなのです。何故なら羽田空港に着いて右も左も判らない時に、ガイドブックで見つけた観光地に向かうのに『羽田Extreme』ならほとんどの場所に乗換なしで行かれます」
 「お~、面白いところに気付いたわね」奈美さんはうれしそうに笑った。
 「宿泊先にも買い物も色分けされた『羽田Extreme』で、判り易く都内を移動。しかも既存の路線そのままなので、慣れてきたらさらに応用もできる。今までこういう案内を実践した都市がありましたか?」
 「まあ、似た様なことは世界各国でやってるけど、今ひとつまとまりが無いのよね」
 「で、結論なんですが…俺としては『羽田Extreme』は、リムジンバスのシェアを奪う事はなく、これからも増える来日外国人旅行者や空港利用者に対しての受け皿となるんだと思います。適材適所です。京急やJR空港線も含めて鉄道アクセスを充実することで増々利用しやすくなると思います」
 「凄い凄い! それが感じる取材なのよ!」
 奈美さんは涙を浮かべて喜んでいる。出来の悪い弟がやっと社会に羽ばたいたという気分…なのかなぁ。
 「どうですか? 完璧でしょぉ~」
 あ、しまった。最後に調子こいた(汗)
 「うんうん。よかったよぉ~。80点ってとこだね」
 ………
 「え~~、それってすっごく辛口採点ですよぉ~~(涙)」
 「だって、私の事からかいながら応えてたんだもん」
 ………
 「あ~、全てお見通し…でした?」
 「でした(笑)」
 そう言って、今までで一番屈託の無い良い笑顔をいただきました。

 …だから…良し!………と、思いたい。

    <第2話 終わり>

【追記】2022年6月19日

 2022年6月6日 大田区は新空港線(蒲蒲線)の事業計画を発表しました。
 概要は既報の通りですが、変更点がありました。

 まず矢口渡駅と蒲田駅の間から蒲田地下ホームへの線路は単線から複線に、現蒲田駅多摩川線ホームへは連絡線という形で単線での運用になります。
 蒲田地下駅は2面2線。その後単線になり京急蒲田(地下駅)《南蒲田駅という名称は不採用の模様》から大鳥居駅まではそのまま単線運用となります。
 事業費は約1,360億円。便益費は2.0。
 しかし、工事費は都が3割、区が7割という住民にとってはとんでもないもの。
 ※ちなみに著者は大田区民です(2022年6月現在)。
 開業後の運用方法は事業者の東急電鉄でも未だ未定。
 つまり相変わらず“蒲蒲線”建設が大前提の行政主体の見切り発車となります。

 既存の多摩川線の現状は朝ラッシュ時超満員状態。このまま旅行者が大きなスーツケースを持ち込める余裕は全くありません。しかも区は運行計画に関しては営業主体なので未定としています。
 運行列車は現状では明らかに不足していますので、増発・増結は必須。
 となれば現在の18m3両編成では不可能となるため20m車化が必要でしょう。

 こうなれば筆者はいっそ、目蒲線に名称を復活して目黒~蒲田~大鳥居とし、田園調布~新横浜間を新横浜線とすればすっきり整備されるのではないでしょうか?
 多摩川線は既存の全駅を20m8両編成対応とし、駅前後の踏切は廃止して人道地下道の設置。車は駅周辺から締め出せば、開かずの踏切も解消できるでしょう。
 それでも沿線住民は不便を強いられることは必須です。
 高額の建設費を投入して誰も(行政以外)幸せになれない鉄道建設はいかがなものでしょうか?
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