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第6章

6-02カラードレンジャー(仮)

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 「便宜上、アルファ・ビジターと呼称する。良いかね?」
 男はオドオドしながらも頭を縦に振った。
 薄暗く狭い部屋。壁はコンクリートの打ちっ放しで、無駄に高い天井は高さが3メートルほどもある。
 部屋の中の調度品は粗末な机が一つと、それを挟んで先ほどの男と黒スーツに濃いサングラスをかけた男が腰掛ける事務用の椅子が2脚だけだった。
 その後ろにもほとんど同じ格好の男が二人立っている。
 オドオドした男は縛られてはいないものの、明らかに拘束されていた。
 男は明らかにアジア系人種、おそらく日本人だと思われる。
 対して黒スーツたちは長身で体格が良く、そのスジの人間だと一目で判る。
 「我々に協力してもらえるならば、危害は加えない。なぜなら、我々はこの世界の平和を守るために存在しているのだからな」
 言ってることと、やってることが一致していないのだが、男は反抗する気も起こせなかった。
 そもそも、何故自分がここにいるのかさえ、理解できていない。
 「外出は認められないが、この建物の中は自由に使ってくれて構わない。必要なものがあれば全て用意しよう。だが、君の行動は24時間監視させてもらう」
 男は再び頷き、了承の意を示す。
 そして、男は二度と陽の光を浴びることはなかった。

 ・ ー ー ー ・ ー ー ー ・

 「それで作戦に参加したメンバーは割れたのかね?」
 初老の男は報告に来た男を執務机から睨み上げた。
 「全員ではありませんが、爆発中心部にいたのは6人だと推定されます」
 「推定? はっきりしないということか?」
 「いかんせん、半径3km以内は米軍兵士すら立ち入りが禁止されていたため、我々には成す術がありませんでした」
 米軍兵士の中には協力者がいたものの、内部の調査は一切できなかった。
 「3km以内に入れなかった? おかしいじゃないか、処理班はどうしたんだ? ン? まさかっ!」
 思わず椅子から立ち上がり、執務机に両手をついて叫んだ。
 「最初から爆発させる気だったのかっ?」
 「それは判りませんが、処理班を含む封鎖要員など約5,000人の米兵が不明と言われています。敢えて見殺しにするわけありませんから、それもブラフだと?」
 黒スーツは驚いて、つい口走ってしまった。
 「ブラフ…、そこまでして何を隠していたんだ?」
 「長官? いかがしました?」
 長官と呼ばれた男は気づかずに、何かを黙考していた。
 いくら二人しかいないとはいえ、公的なこの部屋では滅多なことは発言できない。
 「君も知ってると思うが、私の家は代々陰陽寮を率いてきた。近代化のために明治政府によって解体されたが、人でない“モノ”は確かに存在する」
 「は? それが今回の事件と関係があると言われるのですか?」
 長官の名は“安倍”。以前の総理大臣と同じ名字だが、全く別の家系だ。
 ただし、本当に陰陽寮を率いてきたのは“安倍晴明”直系に当たる“土御門家”であり、長官の家系は傍系になる。
 “安倍晴明”の子孫が分裂して、安倍家とは異なる勢力を築いたことから、双方の関係が複雑になってしまった。
 長官の家系はその日以来、“打倒土御門家”が暗黙の目標となっていた。
 「我が家系は、勢力だけが肥大化し、実力が伴わない土御門家とは異なり、陰陽師としての研鑽に努めてきたのだ」
 「それがいわゆる人外なのですか?」
 「そうだ。そしてこれがいわゆる…」
 そう言って黒スーツ男の後ろを指差した。
 「ヒッ! お、鬼っ?」
 黒スーツが振り向くと、すぐ後ろに真っ赤な肌に額の真ん中に鋭い角が生えたモノが立っていた。
 「式神だよ。私の…」
 それは神というより、間違いなく“魔”だろう。しかし黒スーツ男は心の中ですらツッコム余裕がなかった。
 <ゴリッ!>
 次の瞬間、黒スーツ男は鬼に丸呑みにされた。
 「やはり水無月が絡んでいると踏んで良さそうだな」
 長官は一人呟いた。

 ・ ー ー ー ・ ー ー ー ・

 『新たなパフォーマンスか?
      ただのオタクか?』

 とても一般の新聞紙の見出しには思えない「タイトル」で、号外された。

 相模原事件後、都内各所に頻繁に現れるクリーチャー。
 全てのクリーチャーを退治することはできないが、幾つかは例のカップルによって退治されていた。
 新聞社の調査により、黒と赤のカップルと黄色とピンクのカップルが存在することが判明した。
 一向に情報がない相模原事件より、都民の不安を少しでも取り除くヒーローの登場に世間が沸いた。
 誰が名付けたか、謎の戦士はカラードレンジャーと呼ばれ始めた。

 『リアルヒーロー登場! カラードレンジャー(仮)』

 もはやお祭り状態だった。

 ・ ー ー ー ・ ー ー ー ・

 「あ~、毎日毎日真面目に授業って、カッタルゥ~~イ!」
 と、机に突っ伏しながらいずみは吠えた。
 「いずみぃ~ いくら自習だからってそんなにだらけないでヨォ~」
 初美が、机と同化しかけていたいずみの横に立って、叱咤した。
 今日は相模原事件から5日目。
 事件当日からいずみも初美もごく普通に登校していた。
 「あ~、これなら特訓してた時の方がマシだわ~…」
 「コラっ! いずみっ!! それは口外無用でしょ。気をつけてよっ!」
 再び、今度は耳打ちするように小声で叱咤する。
 あの事件で死を覚悟した二人だったが、今こうして築地川高校の自分たちの教室にいることが、正に奇跡そのものだった。

 いずみ曰く、
 「まあ、二度とゴメンだけどね」
 「さっきと言ってることが真逆じゃない(笑)」
 初美がすかさず突っ込む。
 「あ、違う違う。特訓自体はいいの特訓自体は…、それ以外のことよ…」
 「ああ、それは私も…嫌かも(汗)」
 初美も冷や汗をかきながらそれには同意した。
    <続く>
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