HighSchoolFlappers

ラゲッジスペース

文字の大きさ
101 / 158
第8章

8-01脱出

しおりを挟む
 「ぶへっ!」
 最悪だった。
 どの位意識を失っていたのか?
 目を開けると…真っ暗だった。
 スクリーンのおかげで、顔面には空間があるから息苦しくない。
 けれど真っ暗なので何も見えない。
 腕を動かそうとするが、何かにガッチリ抑えられて身動きひとつできない。
 「あれ?」
 いずみは動けない理由に思い当たった。
 「ゆ、湧?」
 「う…、…ぁ…、いずみ?」
 いずみは湧に抱きしめられていたのだった。
 「ここどこ? 何も見えないんだけど…」
 「俺たちは吹き飛ばされて、ビルに叩きつけられたんだ」
 「叩きつけられた? 誰に?」
 「あのガマガエルだよ。いきなり爆発しただろ?」
 「あ! そうかっ!」
 いずみもやっと思い出した。そうあの巨大なガマガエルと戦闘中だったのだ。
 そして、ルイーナが何かを叫んだような気がしたが、その時にはガマガエルの爆風に飛ばされていた。
 記憶の最後に残ってるのは、湧が飛んできて抱きしめられたような感触だった。
 「ビルに叩きつけられると覚悟したけど、ちょうど窓だったのでそのままガラスを突き破って室内に…。でもそのあとビルごと倒れてしまい、窓からは大量の土砂が入ってきて埋められたんだよ」
 「…ずっと、湧が守ってくれたんだね。ありがとう」
 そう言っていずみは微笑んだが、見えるはずはなかった。
 「でもこれじゃあなぁ、どうやって外に出られるかな」
 「それより、このままじゃ二人とも死んじゃうわよ。早く出ないと…」
 いずみは生き埋め状態を思い出して、急に焦りだした。
 「お、落ち着けいずみ。今だってちゃんと呼吸できてるだろ?」
 「あ、ほんとだ。苦しくない…」
 「このウェアは酸素供給までしてくれるらしい。ま、仕組みは俺にも解んないけどね」
 湧の言う通り、吐いた息はどういう風に処理されるのか分からないが、二酸化炭素などは分解されているようだ。
 (これもNASAの技術? 本当にそうならNASAって一体…)
 口には出さないが、ルイーナの正体についての疑問がますます蓄積されていく。
 「よし、上に掘り進んで行こう。この土砂の柔らかさなら、掻いた土を固めながら行けば掘れると思う」
 「わかった…あ、ていうことは私が背中側の土を左右に掻けばいいのね」
 湧は、いずみを守るために背中側からビルに飛び込んだため、現在はいずみの真下に位置していた。
 「それはいくら何でも無理だろう。たとえ腕が背中に回っても、掻いた先から土が落ちでくるぞ」
 「あ、そか」
 「俺がいずみの背中の土を左右に掻くから、いずみは腕の力を使って自分の身体を押し上げてくれ」
 「? いいけど…そうしたらそれ以上掘れなくない?」
 「身体を立てられれば、もっと掘りやすくなるだろ?」
 「あ、そういうことか。じゃあ少しずつ身体を起こすようにすればいいのね」
 「そういうこと」
 そう言って、湧は早速いずみの背中側の土を掘って、両サイドに押し固め始めた。
 上から何かしらの力が加わっていないようなので、意外と簡単に掘り進めて行けた。
 そうして身体を起こしつつ、上へ掘り進んでゆく。
 ウェアで顔面や手が保護されていなければ、絶対に不可能な行為だ。
 それから10分ほどで唐突に土の外に出た。
 「ありゃ、開けた空間に出たけどやっぱり真っ暗なのね」
 「ビルの中だからね。窓がふさがっていたら外の光は入ってこないだろう?」
 湧はスクリーン両サイドのLEDライトを点灯させた。
 「おお。明るい! こんな機能もついてたのかぁ」
 「感心してないで、いずみも点灯させろよ」
 「あはは」
 空間は高さが1.5m、幅は3mほどだが、窓から流れ込んできた土砂のため斜面ができていて、とても窓からは出られそうにない。
 「でもこのくらいの空間があれば、亜空間ゲートが使えるな。すぐに基地に戻ろう」
 「うん」
 湧がゲートを開き、二人は順番に潜り込んだ。
 亜空間ゲートは基本的にどこでも開くことができる。
 ただし、さっきのような土砂の中では次々と亜空間ゲートに土砂が流れ込み、出口から吐き出される。
 つまり、出口を設定しているフラッパーズ基地が大量の土砂に埋もれてしまうことになる。
 そしてそれはいずみたちが処理しなければならないのだ。
 誰だって、無用な大掃除は避けたい。

 フラッパーズ基地の修練場に転移した二人は、とりあえずバトルウェアの損傷を確認した。
 多少の泥が付着していたものの、軽く払っただけで泥だけでなく水分も綺麗に落ちた。
 「すごい。防水だけじゃなくて、撥水性もすごいわ」
 「スクリーンも泥汚れ一つないな…」
 損傷どころか、まるで新品のようなウェアをお互いに眺め、呆然とした。
 「あのさ湧、今回のこともそうだけど…、今までにルイーナが用意してくれたアイテムって…」
 「明らかに現代科学のレベルじゃないよね」
 いずみの言葉を、湧は確信に満ちた目つきで引き継いだ。
 「信じてないわけじゃないの。ルイーナは私たちの命を何度も救ってくれたから…」
 「わかってる。でもこうも毎回都合よく…だとね」
 「まだまだ何か隠してるよね。そして大ちゃんも…」
 「もちろん知ってる。というより協力関係にあるんだと思う」
 「何で私たちに話してくれないのかな? 私たちが信用できないから?」
 「いや、そんな単純な理由じゃないと思う。とにかくもう少し様子を見て、ルイーナを問い詰めた方がいいのかもね」
 いずみの疑念は湧も感じていたと分かり、少しホッとした。
 が、

 「そこまで気づいているのなら、そろそろお話ができそうですね」
 不意に修練場の入り口に現れた影が二人に話しかけた。
 「ぎゃっ!」
 いずみは背後からかけられた声に小さな悲鳴を上げて、湧に抱きついた。
 そこに立っていたのはもちろんルイーナなのだが、今まで二人が行動を共にしてきたルイーナとは雰囲気が異なっていた。
    <続く>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...