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第8章

8-07尾行対策

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 アルフとの交感方法について、如月博士の見解は“イマジネーション”によるものだという。
 その“イマジネーション”というのはどういうものなのか、当局スタッフには全く理解も想像もできなかった。
 観測と分析については、世界最高峰の人材が揃っている当局スタッフとって、“不明”もしくは“解析不能”というのはプライドが許さなかった。
 それだけに決して表向きにはできないルイーナや湧、いずみが協力してくれるというのは不本意ながらも渡りに船だった。とても身勝手なことではあるが…。
 「ま、そんなところだと思ったわ」
 いずみが三白眼でルイーナを睨む。
 「ごめんなさい。でもこういうチャンスでもないと、アルフと接触することはできないし、如月博士の安全を考えると国外に移送されるのは困るのです」
 「まあ…、そうだよね」
 「アルフは“人”ではありません。などでは多分アルフの目的などは解明できないでしょう。だからアルフのイメージを受け止めたいずみの力が必要なんです」
 ルイーナはそう力説するが、いずみにだって全く自信はない。
 「私の能力って言っても…、何をどうしたらいいのよ?」
 「…そうですね…事情聴取に同席して、如月博士の話を注意深く聴いていてください」
 「へ? それだけ? それにさっきは“尋問”とか言ってなかった?」
 「あ~一応、如月博士は参考人なので、あくまで“事情聴取”です」
 ルイーナは一瞬いずみから視線を逸らした。
 今までアルフが融合した人たちの扱いを一瞬で察して、いずみは背中に悪寒を感じた。
 「ところで、湧はどうするの? お父さんに会える?」
 いきなり話を振られて、湧は一瞬言葉に詰まる。
 「…お、俺は…、まだ顔を合わせたくない…」
 「ですよねぇ~」
 湧の返答にホッとしつつも、少し寂しさを感じる。
 「じゃあ、まずは私といずみ、そして大介さんが立ち会いますので、YOUは隣室でマジックミラー越しに様子を見ますか?」
 ルイーナは、それでも湧が父親の姿を見たいのだろうと思って提案する。
 が。
 「いや、できれば待合室などで待機させてくれないか?」
 「湧…」
 「YOUはそれでいいのですか?」
 ルイーナは悲しそうに続けた。
 「今、父親の顔を見たら自分を抑える自信がないんだ。本当に撲殺しかねないから、離れたところで待機してるよ」
 「私からもお願い。ここまで来ただけでも湧は相当無理してるから…、だから…」
 いずみは湧の心の叫び声を聞いた。
 悲しくて辛くて、いずみは涙を溢れさせた。
 「いずみ…、YOU…」
 その後、湧は一言も喋らないうちに、リムジンは横田基地の正門ゲートをくぐり抜けた。
 横田基地の周辺から既に日本っぽくない風景になっていたが、ゲートの中はまさにアメリカそのものだった。
 ゲートを入ってすぐに左折する。かまぼこ型の建物を過ぎて、今度は右折。
 すると正面の建物の先に輸送機の大きな尾翼が動いているのが見えた。
 リムジンはその正面の建物の前で再び左折した。
 右側は建物を挟んで滑走路や誘導路が見えるので、ここが飛行場だと実感する。
 しかし、左側はアメリカっぽい建物ばかりが連なっているので、ここが法規上だけでなく、紛れもないアメリカ領土なのだとわかる。
 が、車は左側通行。妙なアンバランスがおかしかった。
 リムジンはそのまま道なりに北に向かい、真新しいかまぼこ屋根の格納庫らしい建物に入っていった。
 「あれ? 特別施設ってここ? 単なる格納庫じゃん」
 「そりゃそうです」
 と言いつつ、ルイーナは人差し指を口に当て、ウインクする。
 「ん? あ、…ああそういうことね」
 何がそうなのかわからないが、ルイーナの言いたいことは察した。
 要するに声を出すな! ということだ。
 特別施設と聞いて、いずみは警戒厳重な大きな建物を想像していたが、あまりのギャップに呆然とした。
 幾つかの格納庫の中は、大型の輸送機も整備ができる広さがあるのだが、今いずみたちがいる格納庫はそのさらに倍近い大きさだ。
 実際にリムジンが停車した隣には“C130J”という最新の輸送機が待機していた。
 リムジンが停車している床の周囲にも大きな円が描かれていて、ここが駐機スペースだとわかる。
 が、突然その円が沈み込み、リムジンごと地下に降りてゆく。
 「んんっ!(ぎゃっ!)」
 と、いずみが声を出す直前にルイーナはいずみの口を塞いでいた。
 10メートルほど降りると、正面に巨大な空間が現れた。
 極秘の地下格納庫らしい。無数の柱で支えられているこの空間には、戦闘機が数機格納されていた。
 リムジンはその真ん中を進み、正面にある鉄扉の前で一旦停車した。
 重そうな扉が音もなく開いたが、中は真っ暗だ。
 ライトにはその先の壁が照らし出されているが、特徴のないのっぺりとした壁なので距離すらわからない。
 後ろで扉が閉まり部屋の中に光が満たされると、やっとルイーナが手を放した。
 「いずみごめんなさい。もう喋っても大丈夫ですよ」
 「な、なんなのよっ! 一体ぃ!」
 そう叫ぶが理由は既に気づいていた。
 「盗聴? …なのね?」
 「そうです。お恥ずかしいことですが、同じ大使館員でも信用はできません」
 「ま、私達も宮内庁職員だからといって、みだりに情報を流すことはないもんね」
 「そういうことだ」
 それまで黙っていた大介が一言だけ肯定した。
 「大ちゃんは知ってたの? 盗聴されていること」
 「盗聴だけじゃないぞ。いずみの着ている軍服のボタンは全て電波発信機だ。それぞれ周波数が異なっている」
 「げっ!」
 そう言うなりいずみは慌ててジャケットを脱ぎ捨てた。
 「着替えは用意してありますから、そちらに着替えて、大使館で借りた服は車内に置いてください」
 ルイーナはドアを開けて、外にいた兵士からつなぎになっている作業服と下着を受け取り戻ってきた。
 入れ違いに湧と大介は車外に出て行く。
 「大ちゃん達の服はいいの?」
 「二人は外で着替えてもらいます」
 「あ、そう言うことか」
 結局、大使館から借りたものは全て車内に置いて、4人は部屋を出た。
 「あの服はどうするの? 電波が途切れたら怪しまれない?」
 「大丈夫です。すぐに車ごと輸送機で厚木に飛び立ちますから」
 「へ? どういうこと?」
 「大事をとって、表向きはアルフを厚木に移送することになっていますから」
 「…ははっ…、用意周到ね」
 「ありがとうございます。それほどアルフに関する情報は重要なんです」
 ルイーナはそう言って、大使館から同行していた大尉(?)らしい人に挨拶した後、3人を先導して奥に進み始めた。
 「あれ? あの人は一緒に行かないの?」
 「あ、彼はこの後、運転手とともに厚木に向かいます」
 「…、あの人もカムフラージュの一部だったのかぁ。どうりで何も話さないわけだ…」
 ルイーナたちの徹底した尾行・追跡対策に少し呆れるいずみだった。

 リムジンを降りた部屋から、SF映画に出てくる宇宙船の通路ような廊下を通って、やっとエントランスに出た。
 「ここからはこのICカードを胸につけてください。これが監視カメラで確認できないと警報がなります」
 ルイーナがピン付きのICカードを配りながら注意した。
 全員が胸に付けたのを確認して、先の扉の前に移動する。
 ピピッ! とかすかな電子音が聞こえると扉が開き、ついにアルフがいるエリアに入った。
    <続く>
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