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第10章
10-02覚醒
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YACの創設には宗主が深く関わっている。
その宗主がアルフの存在に気付かないはずはないだろう。
大介がずっと感じていた違和感が、少しずつ形をなしてきた。
しかし、宗主を疑うことは水無月家を疑うこと。
だから、大介はいつもこの問題から目を背けていたのかもしれない。
でも。だからこそ流の自信に満ちた行動が、大介を不安にさせた。
如月湧に寄り添い、流との対話を不安そうな表情で聞いているいずみは気付いているのだろうか?
それともいずみは最初から何もかも知っていて演技を?
頭を左右に振りながら自分の考えを否定する。
いずみにそんな芸当ができるはずがないことは、17年間ずっといずみを見てきた大介が一番よく知っている。
如月湧は自身の問題ではありながら、状況に関しては全く無関係だったろう。
でなければ、もっと早い段階で如月湧単独で流に接近していただろうから、最悪の状況を招いていたかもしれない。
如月湧にとっては叔父の右腕、しかも憧れだったアクターの流一星。
そして生まれてから5年もの間、自由を奪われていた挙句に命まで奪っていった憎んでも憎みきれないアルフ。
その2人(?)との再会は、如月湧に最後となるかもしれない試練を与える。
「まさか、おじい…、宗主はあなたのことを…、アルフのことを知っていたの?」
いきなり核心を突く発言をいずみは躊躇なく投げた。
「もちろん…」
その一言でいずみを始め、フラッパーズ全員の呼吸が止まった。
「俺は社長も宗主も尊敬している。隠し事は一切ない」
これほどまでに堂々と宣言されるといっそ清々しい。
しかし、それはあくまで一般常識の通用する範囲でのことだ。
こんな混沌とした、しかも現実世界を大きく逸脱した状況では開き直り以外の何物でもないだろう。
「ふ、ふざけないでよっ! そのために何人、何十人もの人が死んでるのよっ!」
ついにいずみがキレた。
「おじいちゃんもグルだったなんて…、そ、そんなの絶対に許せるはずないでしょっ!」
「流さん。いくらアルフの願いを叶えるためだとはいえ、こんな暴挙は許せません。宗主がなんでこんなことに加担したのかも理解できません。俺は…」
「待て如月君。感情的になったら話が進まない。ここは俺に任せてくれ」
大介は立ち上がって、二人を宥める。その目を見た二人は驚きとともに目を見開いた。
大介の両目が青く輝いていたから。
「大ちゃん…その眼…」
驚いたのはいずみや湧だけではなかった。
坂戸や初美も硬直したまま動けなかった。
しかし、ルイーナだけは落ち着き眼を伏せている。
一体大介に何が?
そう問おうとしたいずみの肩に、大介は優しく手を置いて流を振り向く。
「ほう。曳舟もそこまで覚醒したのか」
流は驚きもせず、むしろ嬉しさを顔に表していた。
「これがどういうものなのか、流さんはやはりご存知だったのですね」
大介はもう何も隠す必要がないと判断し、ジャケットを脱いだ。
「フンっ!」
気合を入れるように深呼吸を1回。
すると大介の上半身の筋肉が盛り上がり、着ていたTシャツがちぎれ飛ぶ。
3倍ほどの胸囲に膨らんだ上半身は長い体毛で被われていた。
「ぎゃっ! 大ちゃんがウェンディゴになった!」
突如目の前に現れた人外に驚いたいずみは、湧に背中から体当たりしてソファの外に二人で転げおちる。
「いたた、そういうことですか大介さん」
湧は納得した表情で毛むくじゃらの巨体を見上げた。
大介は何も返答はしなかったが、床の二人に優しい眼差しを返す。
以前、築地川高校で起こった猟奇殺人事件の犯人であり、いずみを惨殺した小菅豊が変形したモンスターにも似ていたが醜さは全くない。
むしろ力強さを感じさせる美しさを伴っていた。
「だ、大ちゃんその身体は?」
いずみが大介に詰め寄ろうとしたら、横からルイーナに腕を掴まれた。
「後で説明するから、今は…ね」
ルイーナも当然絡んでいたらしい。
「……… なるほど?」
いずみは三白眼でルイーナを睨んだ。
ソファに座りなおし、湧に告げた。
「私、もう何を信じていいのか…わかんなくなってきた…」
湧も眉を上げて答えた。
「俺もだよ」
ウェンディゴ化した大介は顔の骨格の変形から言葉を発しにくくなったために、ルイーナが流との対話を変わった。
「そもそも水無月家とは何なのですか? 私は部外者なので創設意図や存続の手段が全く分かりません。大介さんの話でも人外から人民を守るとしか教えてくれません」
「そりゃそうだ。曳舟は知らないからな…水無月家の真相を…」
「な、真相? どういうこと?」
いずみは自分すら知らない水無月家の秘密を流が知っていることにショックを受けた。
「水無月家の真相よりも、君たちが今一番知りたいことはアルフじゃないのか?」
ソファに座ったまま、流は静かに語り出した。
そもそもアルフがこの世界のモノではないことは全員が既に承知している。
しかし、流の話はそれでも全員を驚愕させるに充分な内容だった。
・ ー ・ ー ・ ー ・ ー ・
アルフが自分を認識したのは本当にささいなきっかけだった。
そもそもアルフは統合された思念のみが存在する世界で、物質などはなく、いわば思念のエネルギーが満ちていた。
その世界は下位次元にも多大な影響を及ぼしている。
次元の維持を始め、内包する宇宙の生成や調整、破壊や消滅などがそれだ。
3次元世界でも最近発見されたダークエネルギーという形で影響を与えている。
混沌とした思念のスープの一部だったアルフは、3次元のとある空間にふと意識を向けた瞬間、切り離されてその世界に取り込まれた。
アルフにとっては時間や空間は意味をなさない。いわゆる思念体として3次元の地球にいきなり放り出された。そして見た…正確には認識した。溢れかえった人類を。
今まで知らなかった。いや知っていたはずだが意識を向ける価値も無かった。
なぜか?
それはアルフたちにとってみれば、人類の栄枯盛衰は一瞬の出来事だったからだろう。
時間のない空間で一瞬とは矛盾しているが、例えるなら砂漠で小さな砂つぶが転がるみたいなもの。
大海原でたった1滴の水が蒸発するような、大勢に全く影響を与えない程度のものだった。
アルフが意識を向けるまでは…。
やがて人類と呼ばれる生命体は、個々が独立した意識を有してることを知る。
アルフは“個”が分からなかった。
なぜならすべての意識はたった一つであり、違う個体という存在を知らない。
そこまで考えて、自分に思念があることに気付く。
今まで居たところでは“個”としての思念はなく、絶えず他の何かと情報のやり取りが行われていた。ところが今は何かを思考しても何もリアクションが起こらない。
アルフは考えた。これが“個”なのだと。なら興味を持った人類と呼ばれるものと自分は同じ状態になったのではないかと。
本体から切り離されたことで、一部がぼやけるように思考がまとまらない。
何故なのか? それを考えることもできない。
意識はただ人類と呼ばれる“個”が溢れるイメージだけ。
アルフは人類に興味を持った。
最初は見ているだけで充分楽しめた。
しかし、同時に疑問も膨らむ。
~この“個”は他の“個”と干渉しあっている~
アルフにはそれがどういう意味を持つのか見当がつかない。
今までは何か問題が起っても、すぐに納得できる状態に落ち着くのだ。
しかし人類は対立するもの、融和するもの、集団を作るものなど様々な動きをする。
まるで意味をなさない行動。何かを作り出しているらしき集団も、ただ動き回っている“個”も、なぜか決まった行動を繰り返す。
しかもその“個”は何か意思らしきものを持っているらしいと気付く。
アルフは人類とコンタクトしようと試みた。
が、アルフの存在はもちろん認識すらされない。
けれど思念を感じる。
アルフは思念で様々な情報を送り込んでみた。
そこで初めてアルフの思念に反応する“個”が現れた。アルフはその個体に次々と情報を送り、そして個体は自滅した。
送り込む情報量が多すぎたと気付くまで何百もの“個”を破壊した。
アルフはこの“個”は弱すぎると感じた。
ならば強くすればいいと考えたが、まずはこの“個”との交感が必要だと思った。
「それがアルファブラッド…ですか?」
流の話を聞いていて、とうとう我慢できずにルイーナは聞き返した。
「いや、アルフの話だと身体の構造を変更したらしい。いわゆるキメラだ」
「な! なんてこと!! キメラ伝説は本当だったの? 酷い!」
「キメラ? あの数種の動物を混ぜ合わせたっていう怪物のこと?」
いずみが確認の意味で聞いた。
「ただ合成したんじゃないの。意識を持ったまま怪物化されるのよ。正気を保っていられるモノはいなかった。動物も昆虫もそしてもちろん人間も…」
「アルフには人間も動物も昆虫も変わりがない。そもそも物質の身体を持った生物という存在を理解できなかった。最初のうちは…」
さすがに流も言葉を濁した。
アルフに生物の概念を理解させたのは何を隠そう、流だったらしい。
言葉はわからずとも、流の柔軟なイメージ力が大いに役立った。
そして、アルフは流を通じて“個”や“時間”、“空間”そして“物質”を知る。
その中で意外にもアルフは“物質”に強い好奇心を持ったと言う。
「たぶんこの宇宙のみならず、すべての空間において“物質”というのはとても珍しいモノらしい」
「物質が珍しい? どういう…、あ!」
ルイーナが質問の途中で気付く。
「そう、物質として成立するのはこの3次元から余剰次元を含めた9次元までで、0次元・1次元・2次元、そして高次元と言われる10次元以上の空間には“物質”は存在できない」
「私たち6次元世界は思念エネルギーと“物質”はほぼ半分半分。だけど3次元世界はほぼ物質が占めていて、思念エネルギーは微量だわ」
ルイーナが納得する様子を見て、いずみが眉間にしわを寄せた。
「ルイーナっ! 何分けわかんないことで納得してんのよっ!」
「いずみ。流さんはアルフはもしかすると、とんでもないことを実現しようとしてるのかもしれないわ」
「既にとんでもないことをしでかして来てると思うけど?」
いずみがルイーナに掴みかかろうとするのを察知して、湧が慌てて羽交い締めにした。
殺るか殺られるかの覚悟で乗り込んできた手前、和やかな展開に成り掛けていずみも当惑していた。
<続く>
その宗主がアルフの存在に気付かないはずはないだろう。
大介がずっと感じていた違和感が、少しずつ形をなしてきた。
しかし、宗主を疑うことは水無月家を疑うこと。
だから、大介はいつもこの問題から目を背けていたのかもしれない。
でも。だからこそ流の自信に満ちた行動が、大介を不安にさせた。
如月湧に寄り添い、流との対話を不安そうな表情で聞いているいずみは気付いているのだろうか?
それともいずみは最初から何もかも知っていて演技を?
頭を左右に振りながら自分の考えを否定する。
いずみにそんな芸当ができるはずがないことは、17年間ずっといずみを見てきた大介が一番よく知っている。
如月湧は自身の問題ではありながら、状況に関しては全く無関係だったろう。
でなければ、もっと早い段階で如月湧単独で流に接近していただろうから、最悪の状況を招いていたかもしれない。
如月湧にとっては叔父の右腕、しかも憧れだったアクターの流一星。
そして生まれてから5年もの間、自由を奪われていた挙句に命まで奪っていった憎んでも憎みきれないアルフ。
その2人(?)との再会は、如月湧に最後となるかもしれない試練を与える。
「まさか、おじい…、宗主はあなたのことを…、アルフのことを知っていたの?」
いきなり核心を突く発言をいずみは躊躇なく投げた。
「もちろん…」
その一言でいずみを始め、フラッパーズ全員の呼吸が止まった。
「俺は社長も宗主も尊敬している。隠し事は一切ない」
これほどまでに堂々と宣言されるといっそ清々しい。
しかし、それはあくまで一般常識の通用する範囲でのことだ。
こんな混沌とした、しかも現実世界を大きく逸脱した状況では開き直り以外の何物でもないだろう。
「ふ、ふざけないでよっ! そのために何人、何十人もの人が死んでるのよっ!」
ついにいずみがキレた。
「おじいちゃんもグルだったなんて…、そ、そんなの絶対に許せるはずないでしょっ!」
「流さん。いくらアルフの願いを叶えるためだとはいえ、こんな暴挙は許せません。宗主がなんでこんなことに加担したのかも理解できません。俺は…」
「待て如月君。感情的になったら話が進まない。ここは俺に任せてくれ」
大介は立ち上がって、二人を宥める。その目を見た二人は驚きとともに目を見開いた。
大介の両目が青く輝いていたから。
「大ちゃん…その眼…」
驚いたのはいずみや湧だけではなかった。
坂戸や初美も硬直したまま動けなかった。
しかし、ルイーナだけは落ち着き眼を伏せている。
一体大介に何が?
そう問おうとしたいずみの肩に、大介は優しく手を置いて流を振り向く。
「ほう。曳舟もそこまで覚醒したのか」
流は驚きもせず、むしろ嬉しさを顔に表していた。
「これがどういうものなのか、流さんはやはりご存知だったのですね」
大介はもう何も隠す必要がないと判断し、ジャケットを脱いだ。
「フンっ!」
気合を入れるように深呼吸を1回。
すると大介の上半身の筋肉が盛り上がり、着ていたTシャツがちぎれ飛ぶ。
3倍ほどの胸囲に膨らんだ上半身は長い体毛で被われていた。
「ぎゃっ! 大ちゃんがウェンディゴになった!」
突如目の前に現れた人外に驚いたいずみは、湧に背中から体当たりしてソファの外に二人で転げおちる。
「いたた、そういうことですか大介さん」
湧は納得した表情で毛むくじゃらの巨体を見上げた。
大介は何も返答はしなかったが、床の二人に優しい眼差しを返す。
以前、築地川高校で起こった猟奇殺人事件の犯人であり、いずみを惨殺した小菅豊が変形したモンスターにも似ていたが醜さは全くない。
むしろ力強さを感じさせる美しさを伴っていた。
「だ、大ちゃんその身体は?」
いずみが大介に詰め寄ろうとしたら、横からルイーナに腕を掴まれた。
「後で説明するから、今は…ね」
ルイーナも当然絡んでいたらしい。
「……… なるほど?」
いずみは三白眼でルイーナを睨んだ。
ソファに座りなおし、湧に告げた。
「私、もう何を信じていいのか…わかんなくなってきた…」
湧も眉を上げて答えた。
「俺もだよ」
ウェンディゴ化した大介は顔の骨格の変形から言葉を発しにくくなったために、ルイーナが流との対話を変わった。
「そもそも水無月家とは何なのですか? 私は部外者なので創設意図や存続の手段が全く分かりません。大介さんの話でも人外から人民を守るとしか教えてくれません」
「そりゃそうだ。曳舟は知らないからな…水無月家の真相を…」
「な、真相? どういうこと?」
いずみは自分すら知らない水無月家の秘密を流が知っていることにショックを受けた。
「水無月家の真相よりも、君たちが今一番知りたいことはアルフじゃないのか?」
ソファに座ったまま、流は静かに語り出した。
そもそもアルフがこの世界のモノではないことは全員が既に承知している。
しかし、流の話はそれでも全員を驚愕させるに充分な内容だった。
・ ー ・ ー ・ ー ・ ー ・
アルフが自分を認識したのは本当にささいなきっかけだった。
そもそもアルフは統合された思念のみが存在する世界で、物質などはなく、いわば思念のエネルギーが満ちていた。
その世界は下位次元にも多大な影響を及ぼしている。
次元の維持を始め、内包する宇宙の生成や調整、破壊や消滅などがそれだ。
3次元世界でも最近発見されたダークエネルギーという形で影響を与えている。
混沌とした思念のスープの一部だったアルフは、3次元のとある空間にふと意識を向けた瞬間、切り離されてその世界に取り込まれた。
アルフにとっては時間や空間は意味をなさない。いわゆる思念体として3次元の地球にいきなり放り出された。そして見た…正確には認識した。溢れかえった人類を。
今まで知らなかった。いや知っていたはずだが意識を向ける価値も無かった。
なぜか?
それはアルフたちにとってみれば、人類の栄枯盛衰は一瞬の出来事だったからだろう。
時間のない空間で一瞬とは矛盾しているが、例えるなら砂漠で小さな砂つぶが転がるみたいなもの。
大海原でたった1滴の水が蒸発するような、大勢に全く影響を与えない程度のものだった。
アルフが意識を向けるまでは…。
やがて人類と呼ばれる生命体は、個々が独立した意識を有してることを知る。
アルフは“個”が分からなかった。
なぜならすべての意識はたった一つであり、違う個体という存在を知らない。
そこまで考えて、自分に思念があることに気付く。
今まで居たところでは“個”としての思念はなく、絶えず他の何かと情報のやり取りが行われていた。ところが今は何かを思考しても何もリアクションが起こらない。
アルフは考えた。これが“個”なのだと。なら興味を持った人類と呼ばれるものと自分は同じ状態になったのではないかと。
本体から切り離されたことで、一部がぼやけるように思考がまとまらない。
何故なのか? それを考えることもできない。
意識はただ人類と呼ばれる“個”が溢れるイメージだけ。
アルフは人類に興味を持った。
最初は見ているだけで充分楽しめた。
しかし、同時に疑問も膨らむ。
~この“個”は他の“個”と干渉しあっている~
アルフにはそれがどういう意味を持つのか見当がつかない。
今までは何か問題が起っても、すぐに納得できる状態に落ち着くのだ。
しかし人類は対立するもの、融和するもの、集団を作るものなど様々な動きをする。
まるで意味をなさない行動。何かを作り出しているらしき集団も、ただ動き回っている“個”も、なぜか決まった行動を繰り返す。
しかもその“個”は何か意思らしきものを持っているらしいと気付く。
アルフは人類とコンタクトしようと試みた。
が、アルフの存在はもちろん認識すらされない。
けれど思念を感じる。
アルフは思念で様々な情報を送り込んでみた。
そこで初めてアルフの思念に反応する“個”が現れた。アルフはその個体に次々と情報を送り、そして個体は自滅した。
送り込む情報量が多すぎたと気付くまで何百もの“個”を破壊した。
アルフはこの“個”は弱すぎると感じた。
ならば強くすればいいと考えたが、まずはこの“個”との交感が必要だと思った。
「それがアルファブラッド…ですか?」
流の話を聞いていて、とうとう我慢できずにルイーナは聞き返した。
「いや、アルフの話だと身体の構造を変更したらしい。いわゆるキメラだ」
「な! なんてこと!! キメラ伝説は本当だったの? 酷い!」
「キメラ? あの数種の動物を混ぜ合わせたっていう怪物のこと?」
いずみが確認の意味で聞いた。
「ただ合成したんじゃないの。意識を持ったまま怪物化されるのよ。正気を保っていられるモノはいなかった。動物も昆虫もそしてもちろん人間も…」
「アルフには人間も動物も昆虫も変わりがない。そもそも物質の身体を持った生物という存在を理解できなかった。最初のうちは…」
さすがに流も言葉を濁した。
アルフに生物の概念を理解させたのは何を隠そう、流だったらしい。
言葉はわからずとも、流の柔軟なイメージ力が大いに役立った。
そして、アルフは流を通じて“個”や“時間”、“空間”そして“物質”を知る。
その中で意外にもアルフは“物質”に強い好奇心を持ったと言う。
「たぶんこの宇宙のみならず、すべての空間において“物質”というのはとても珍しいモノらしい」
「物質が珍しい? どういう…、あ!」
ルイーナが質問の途中で気付く。
「そう、物質として成立するのはこの3次元から余剰次元を含めた9次元までで、0次元・1次元・2次元、そして高次元と言われる10次元以上の空間には“物質”は存在できない」
「私たち6次元世界は思念エネルギーと“物質”はほぼ半分半分。だけど3次元世界はほぼ物質が占めていて、思念エネルギーは微量だわ」
ルイーナが納得する様子を見て、いずみが眉間にしわを寄せた。
「ルイーナっ! 何分けわかんないことで納得してんのよっ!」
「いずみ。流さんはアルフはもしかすると、とんでもないことを実現しようとしてるのかもしれないわ」
「既にとんでもないことをしでかして来てると思うけど?」
いずみがルイーナに掴みかかろうとするのを察知して、湧が慌てて羽交い締めにした。
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