HighSchoolFlappers

ラゲッジスペース

文字の大きさ
129 / 158
第10章

10-10怒り

しおりを挟む
 「つまり、あれだよね? 道鏡が死んで怨霊となり、その怨霊が成長? と言うか強大な力をつけるまでに消霊っていうのかな? ともかく退治しろってことだよね?」
 自信なさげにいずみが聞き返してきた。
 「うん。そういうことなんだと思う」
 答える湧も今ひとつ理解できていない様子。
 「たぶん悪鬼となった導尊は、アルフのように複数の人間に憑依して力を得て行くんだと俺は思うんだ」
 大介が珍しく予想を込めた感想を述べた。
 「大ちゃん。なんだかあまり自信なさそうね?」
 「当たり前だろ。俺だって何もかも知ってるわけじゃないんだ。道鏡の略歴や怨念の相手をこれから細かく詳しく調べてみなければならない」
 「調べるってどうやって? 歴史を左右するような事案は変更できないんでしょ?」
 「そこだよ、問題は。道鏡が恨みを抱いた人間がどのように呪われ、死んだかを調べる」
 「ええっ? どうやって?」
 いずみが目を丸くしながら叫ぶ。
 ともかく道鏡が僧侶の立場を利用して、まつりごとに影響を与えるようになるまでは手が出せない。
 けれど逆にそれまでの動向は調べられる可能性が高い。
 大介はそこに勝機を見出そうとしているようだ。
 「しかし、呪い殺したと言ってもそれは噂の域を出ていないのでは? だいたい一般人から見たら導尊の存在自体が不確かなものです」
 湧が即座に疑問を投げる。
 湧自身、怪異が見えることは当然、秘密にしてきた。それは現代社会において怪異の存在を証明する術がないため、精神異常者として扱われる危険性があるからだ。
 そこで実際に怪異を消霊する際は、特撮ヒーローのアトラクションの練習をしているていを装ってきたのだ。
 しかし特撮ヒーローの知識を得るためにテレビや雑誌、DVDなどを見てるうちに自らもコアなファンになってしまった。
 ミイラ取りがミイラ…とまでは行かないものの、どちらが本来の目的だったのか曖昧になってしまったことも確かだ。
 もっとも、それがきっかけでいずみと仲良くなれたのだから、もはや必然、いや運命的だったのだろう。
 そのいずみは湧の隣で複雑な…というより、すでに思考が停止していた。
 「? いずみ、どうかした?」
 「え? ああ、なんか導尊の話してると…、何かを忘れてる気がして話に集中できないのよね?」
 「いずみも? 俺も同じだよ。何だろうな? こうモヤモヤする感じは?」
 「ところで導尊の話で聴き漏らしていたけど…、アルフって結局何だったの?」
 「「「「「えっ!」」」」」
 いずみのつぶやきに5人が声を揃えて絶叫した。

 「ふむ。今までの経験でアルフの真の姿に気づかなんだったか?」
 宗主が呆れが混じった表情でいずみを睨んだ。
 「え? それじゃぁ…、みんなはアルフの正体が何なのか知ってるの?」
 「いや、知ってるというより、流さんや宗主の話で見当がついたんだけどね」
 湧が苦笑いしながら説明した。
 「というより、いずみ…、気付いて…なかった?」
 「え? 何を?」
 いずみに似つかわしくない“マジな真顔”を見て、5人は溜息をついた。
 「まさかとは思っていたけど、本当に気づいてなかったようだな」
 大介は諦めの表情だ。
 「な、何よぉ!」
 膨れっ面でそっぽを向く。
 が、湧の生やさしい顔が視界に入って、急に恥ずかしくなってしまう。
 「俺の父親が捕まって、横田基地に向かったよね。あの時、俺は違和感を感じた。」
 「え?」
 湧が真顔で話し出したので、いずみは湧の話に興味を持つ。
 「もし父親がアルフなら、強敵なら厳重に隔離されて面会どころか生死も定かにされないんじゃないか? ってね」
 「あ、そうか」
 「なのに会ってみれば拘束どころかVIP的な扱いだった。しかもルイーナの上官の態度は父親と初対面とは思えなかった」
 ルイーナに視線を向けると、ルイーナも不思議そうな表情をしている。
 多分ルイーナも事情を理解していなかったのだろう。
 「そして作戦本部に戻ってみれば、流さんに会いに行くことになった。宗主の言動も気になっていたけどYACで流さんが話していたことで、もしかすると流さんもアルフなのでは? と思ったんだ」
 「へぇ、全然気付かなかった」
 「ま、まあ…それはいいとして、宗主が水無月家初代宗主って言われて、今までモヤモヤしてたものがハッキリ分かった。水無月家のみんなはアルフに敵対感情持ってないことを…」
 「え? 私はラスボスだと思ってたのに…」
 いずみが気軽にぶっちゃけた。
 「ははは、いずみ、最初にアルフのことを話してくれたのは…」
 湧が右掌を宗主に向け、
 「こちらの宗主自身じゃなかったっけ?」
 「あ! そうだ」
 「やっと気づいた? それまでは単に怪異の消霊だったのに、俺たちのターゲットが“アルフ”という具体的なものに変わっただろ?」
 「なるほど。湧の説明ってわかりやすいね。大ちゃんだとすぐに怒り出すんだもん」
 「いずみがいつも説明の途中でふざけるからだろっ!」
 急に振られて、大介も素で返してしまう。
 「そして、なぜ俺の父親は俺を叔父さんに預けたのか?」
 「? なんで?」
 いずみは瞬きしながら当然のように聞き返した。
 「orz い、いずみ…」
 湧は深く動揺した。いずみが鈍いのは重々承知していたつもりだ。
 しかし、ここまでとは…。
 いずみの様子は一見普段と変わらない。
 大介やルイーナとの会話からも特段の違和感は感じない。
 が。
 「まさか! いずみ…君は…」
 「ん?」
 湧を見つめるいずみの目。
 その目を見て、湧は愕然とした。
 いずみは激怒しているのだ。
 その怒りの原因がアルフであることは明白だ。
 ただ…
 「わかんないの」
 いずみは囁くような声で呟いた。
 「何…が?」
 と言いつつ、湧もいずみが何を言いたいのか解るような気がした。
 「私は何のために今まで怪異と闘ってきたのか…」
 「うん。」
 「おじいちゃんは最初から導尊と闘うための戦力として、私にお務めさせてたのか? なら、私の…私たちの力はそのための武器でしかなかったのかってことよ!」
 いずみは水無月家のお務めに誇りを持っていた。
 多少、破天荒(ばかり?)だった怪異との闘いも、人の営みを影から守るという、まさに特撮ヒーロー戦隊のような役割がいずみの心の拠り所でもあった。
 しかし、姉妹のようにいつも一緒だった“さくら”が殺され、フレンズになったとはいえ、最近は全く音信不通だ。
 それが宗主の計画の一部だったとは思えないが、無関係ではないだろう。
 そういう諸々がいずみの心に影を落としていたことは確かだ。
 だから、湧の説明を聞き、大介の、流一星の、そして宗主の態度でふつふつと怒りがこみ上げてきたのだ。
 「導尊と闘わなければならないのは理解したわ。でもなぜ最初から話してくれなかったのか… それが…、頭にきてるのよっ!」
 いずみはとうとう爆発した。
    <続く>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...