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第11章

11-01始動

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 『時空戦隊っ、ハイスクゥ~ル、フラッッパァ~~~ズ!』
 「わぁっ! びっくりしたっ!」
 ミッションベースに戻った途端にいずみが叫んだ。
 不意を突かれて、湧は咄嗟にファイティングポーズをとった。
 が、他の4人はフリーズしたまま、生暖かい目で二人を見つめていた。
 ここは新設したフラッパーズのミッションベース、いわゆる作戦司令本部だ。
 以前の水無月道場地下のお社のさらに地下深く作られた、旧作戦本部は出入りなどで不都合があるために、都内某所の地下施設から亜空間ゲートで移動することとなった。
 ここは宮内庁特務案件対策本部と銘打った、新設部署管理の建物の地下300メートルに建設されている。
 出入りできるのは亜空間ゲートのみで、もちろんフラッパーズと宗主、及び流一星のみだ。
 管理運用は全てAIによる完全自律制御となっている。
 『レッドは異常な興奮状態にあります』
 管理AIインターフェースのマスコット(戦隊モノには大概設定されているアレである)の合成音声が部屋に響いた。
 「クリアティス、どういうことだ?」
 大介がAIに問いかける。
 クリアティスというのは管理AIの愛称で、いずみが勝手に命名したのだが、AI自身が気に入って本採用となった。
 「何か悪いものでも食べられましたか?」
 「「「「「……、え?」」」」」
 5人は絶句した。
 いくら何でもいきなり“悪いもの食べた?”と質問するAIはどうなのか?
 『あ、皆さん私がおかしなこと言ってると思ってますね? “いずみん”以外なら、もっとまともなこと言いますよぉ!」
 何とも流暢な言葉遣いで、いずみをディスるクリアティス。
 しかし、それも初顔合わせのときのことを思い出すとやむを得ないのかも…と思ってしまう5人だった。

 それは……、

 「何なの? この声はっ!」
 初めてミッションベースに到着して、しばらくはその設備に興奮したいずみと湧は、突然室内に響いた声に度肝を抜かれた。
 「あ、もしかするとアシストAI?」
 湧が即座に聞き返すと、いずみは怪訝な顔で…
 「あしすと? なにそれ?」と呟いてしまった。
 AIは耳聡く(部屋のあらゆるところにセンサーやマイクが付いているので囁き声でも聞き取れる)、不快感を込めた音声で即答する。
 『まぁ、あなたのことだからそういう反応は予測できました』
 「へ?」
 いずみはAIの反応に頭の中が真っ白になり、言葉が出てこない。
 『戦隊ものの架空の必殺技はすぐに覚えられるのに、情けないです』
 AIはさらに追い討ちをかける。
 「フェ? フェ? ふええエエェェ?」
 返答すべき言葉を探す間も無く次々と追い込まれる。
 『ほら。ちょっと指摘されただけで、もうパニックになる。それは何も考えていない証拠です』
 「う、わわわわわっ」
 『今後は会話に不自由のない程度には通用語は覚えてください』
 AIはそういうと、もはや興味がなくなったとばかりに大介に事務的な報告を始める。
 湧の襟首を掴み悔しがるものの、何も言葉が発せずに涙ぐむいずみ。
 初戦はアシストAIのクリアティスの圧勝だった。
 それ以来、いずみは幾度となくクリアティスに挑戦するものの完敗している。
 当たり前のことだがAIのボキャブラリーに敵うはずもなかった。

 ー ・ ー ・ ー ・ ー ・ ー

 歴史とは確固たる事象の連続だと思われている。
 が、それは複数の監視者の記録を統合したもので、決して“確固たる”事実ではない。
 つまり“複数の人(監視者)”の経験した事象を最大公約数的に“史実”としているに過ぎない。
 逆にごく少数が経験した事象は切り捨てられていることが多い。
 しかし実際には、その一個人一個人が異なる体験をしているはずだ。
 つまり視点が変われば、その“歴史”自体の意味合いも変わっているはずである。
 導尊が殺害したとされる事案は皆、何らかの病や事故が絡んでいる。
 つまり導尊はその対象の恐怖心や事故後の霊体や幽体を搾取し、力を得てきたことが宗主の調査によって解明されていた。
 怨霊や生霊に取り憑かれ死んだとされる天皇や将の事案を検証し、本当の死因を解明して“導尊”が関わっている場合は、ハイスクールフラッパーズをその時代に送り込んで導尊を討伐するのだ。
 噂は訂正せず、病や事故ではなく怨霊や生霊に取り殺されたことにし、思念体エネルギーは導尊に搾取させない。
 それがハイスクールフラッパーズの使命である。
 そんな器用なことが果たしてできるのか?
 いずみのみならず、湧や大介たちも懐疑的だ。
 しかし、ルイーナだけが目を輝かせて宗主たちの話に聞き入っていた。
 
 そう、あのアルフの一件でいずみがブチ切れた夜、宗主はその理由を全て話し決意をした。
 その中でなぜ6人が最終戦力として選ばれたのか?
 現時点で導尊を撃退できるこの戦法を実現できる唯一のメンバーだったからである。
 「アクシオンと呼ばれている素粒子がある。しかし実在するかどうかは、まだ解明されていないのだ」
 「アクシオン? 何ですかそれは? しかも実在してるかどうか解らないって?」
 大介が困惑した表情で問いかける。
 「私も聞いたことがありません。どういう性質のものですか?」
 ルイーナまでが疑問を抱く。
 「現在ダークマターの一つとして有力視されているものだ。ただ、検出が極めて困難であるものの、重力と光子に影響を与える可能性があると言われている」
 流が簡潔すぎる解説で返答した。
 「この現代社会で呼ばれているものなので、ルイーナ君はピンとこないじゃろう。いわゆる思念体のことじゃ」
 いともあっさり宗主は言い切った。
 「え? 思念…たい? え? ということはまさかっ!」
 「わかったようじゃな。つまりアルフを含めた多次元人のことじゃ」
 宗主は瞑目しながら告げる。宗主自身も思念体として時空を渡り歩いた記憶を蘇らせていた。
 「そして、そのアクシオンはクォークの1億分の1の大きさとされているが、それ自体はダークマターでも何でもなく亜空間ゲートの穴でしかない。そこから残留思念が漏れて、またはこちら側に残った残留思念の欠片でしかない」
 流の説明では亜空間ゲートはどこにでも設置、いわゆるオープン・クローズが可能な窓のようなものであり、微細な穴は残されたままだという。
 そのゲートを通過する者の残留思念の一部はその場に残ってしまう。
 「君たちが移動に使用する亜空間ゲートも、本来は計測不能な程小さな“穴”なんだ」
 「でも私たちは身体を小さくしたり大きくしたりはしてませんよ?」
 ルイーナが反論するが、流は微笑みながら答える。
 「それはあくまで相対的な大きさであって、ゲートをくぐった時点でクォークの1億分の1、というよりこの3次元の理から解放されるんだよ」
 「え? まさか! 時空を超えるには!」
 大介が叫んだ。
 「曳舟は気付いたようだな。極めて無に近い状態になる。そして思念体はこの世界での大きさには一切捉われない」
 「そ、そんなことが…、あ! だから亜空間ゲートに慣れていないうちは強い車酔いみたいな症状が?」
 「そういうことだ」
 「そして、君たち6人は度重なる怪異との戦闘で亜空間ゲートを使用し、今では普通のドアを通るのとなんら変わらず使いこなせるようになりおった」
 宗主は満足そうに微笑んだ。
 「しかし、問題はここからじゃ。導尊は人の怨念が生み出した負の思念体。アクシオンとは対極の性質を持っておる」
 「それじゃあ正の思念体である6次元人は…」
 ルイーナが何かに気付いて呟いた。
 「導尊の格好のエサということだ」
 流がえげつないことをサラリと言った。
 「ひどい。?、ということはソウルコンバーターを使って正の思念体を集めていたというのは…」
 「導尊の力を増強させるのが目的だったんだろう」
 「それを警察庁長官が?」
 大介が眉根に深い皺を刻みながら嫌悪感丸出しで呟いた。
 「だから俺たちはフラッパーズの結成を急いだんだよ」
 流が結論づけた。
 「そのために今まで怪異との闘いを?」
 「それは違う。怪異から民衆の生活を守るのは1200年前からの水無月家のお役目。ただその陰に陰陽師を逆恨みする安倍家傍流から警護せねばならなんだ」
 宗主が本意ではないとばかりに口を尖らせた。
 「おじいちゃん本気で嫌なんだね。で、…それを私たちに丸投げした。…と?」
 いずみが不満度200%の声音でぶっちゃけた。
    <続く>
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