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第5章
5-05同調
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<フッ!>
湧たちの攻撃をあざ笑うかのように、肉壁は何の変化も見せずに全てをエネルギーとして吸収した。
「ダメだ、ビクともしない」
エネルギーのブラックホールとでもいうようなドレインウォールだ。
「せめて、あの肉壁自体を攻撃できれば何とかなりそうなんだが…」
「亜空間ゲートたるバリアに覆われていて、攻撃が届かないからな…」
湧に続いて大介も悔しそうに呟いた。
「ルイーナ、さっきの思念の目で肉壁の向こう側から攻撃できないか? 俺たちを狙撃した時みたいに…」
「狙撃ぃ? 私がしたんじゃありませんよぉ!」
ルイーナは頬を膨らませて抗議した。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃないんだ。ただ、さっきと同じように遠隔攻撃に役立てられないかと思って…」
「遠隔攻撃… …そうか、いけるかもしれないな」
大介が何か思いついたらしい。
「ルイーナの思念に俺たちの指弾を載せられないかな?」
『え?』
ルイーナばかりか、一同が同時に驚いた。
「大ちゃん、それって私たちの指弾を高次元経由で、あの向こう側から撃ち込むってこと?」
いずみが即座に聞き返した。
こういうアクティブなことには理解が早い。
「まあ、それに近いんだが、わざわざ俺たちの指弾を高次元経由で飛ばす必要はないだろう」
「あ、大介さんの言いたいことって…」
湧も気づいたようだ。
「ああ、そういうことですか?」
ルイーナも理解した。
「なになに? なんなのよぉ~」
とうとう、いずみはキレてしまった。
「3人だけで仲良く理解しあえてよかったですねぇ~」
プンプン怒るいずみを宥めながら、湧が説明する。
「つまり、ルイーナの思念の目で見た、肉壁の向こう側からのイメージを俺たちが共有して、狙いを定めようってことだよ」
「そんなことできるの?」
「いずみは俺たちが放つ指弾のエネルギーがどこから来てるか分かるよね?」
湧は辛抱強く解説する。
「え? え~もちろん!」
咄嗟に返答したものの、その目は泳いでいた。
どうやら、完全に理解はしていないらしい。
「指弾のエネルギーは指先から出てくるわけじゃない。だけど、指を差して標的に狙いを定めるわけだ」
「うんうん…そうだよね」
少しは理解できていると思い、先を続けた。
「“指差し確認”って言葉を聞いたことないかな?」
「知ってるわよ、そんなこと。指を差して一つずつ確認するってことでしょ?」
「そうそう。で、指はあくまで目標を注視するために挿すだけで、いちいち触れてまで確認する必要はないよね?」
「そんなの当たり前じゃない。だいたい触れるくらいなら、即座に凹った方が早いじゃない」
とんでもないことを言い出すいずみ。
湧は冷や汗を流しながらも、さらに辛抱強く解説する。
「念じて、指の先の空間にエネルギーを具現化する。そして目標に向けて加速させる。いずみも同じだと思うんだけど…」
「深く考えたことなかったけど、そんな感じかな?」
やっぱり考え無しだったようだ。
「え~、そこでだ。自分の目じゃなくて、ルイーナの思念の目で捕らえたイメージを共有して、指弾を撃ち込もうってわけだ」
キョトンとした顔で、湧を見つめるいずみ。
しばらくして、
「…わけだ…じゃなぁ~~い!」
いずみは肩でハアハア息をしながら叫んだ。
「そんな簡単にいくわけないでしょ!」
「「え? なんで?」」
湧と大介が同時に尋ねた。
「だ、だって…思念を同調させるんでしょ? …ルイーナ…と」
いずみが真っ赤になって呟いた。
「あ!」
「いずみっ!」
湧と大介は同時にいずみとルイーナの百合イメージを妄想した。
『こんな時にこんな場所で何を言い出すんだこの娘はっ!』
とうとう湧まで呆れ返って、叫んでしまった。
「とにかく! やってみるしかなさそうだ。行くぞ!」
半分誤魔化すように、大介が号令をかけた。
それまで黙って成り行きを見ていたルイーナが苦笑いしながら引き継ぐ。
「はい。私が思念でみんなに語りかけますから、それまで目を瞑って私に意識を集中してください」
『了解!』
5人は小気味良い返答の後、目を瞑って意識を集中させた。
しばらくすると、頭の中に鮮明なイメージが浮かび上がってきた。
いずみはそのイメージに強く集中する。
急速に画像が鮮明になり、あの肉壁がはっきりと“見えた”。
「(これが思念の目で見た向こう側の景色?)」
「(そうです。そして…)」
ルイーナが画像をアップにして、肉壁の一部に黒いシミのようなものを示した。
「(ここにエネルギーの停滞があります。多分一番弱い部分ではないでしょうか?)」
「(ああそうか! 物質化するエネルギーが弱いところか?)」
「(げ! 大ちゃん?)」
「(そうだが…どうかしたか? いずみ)」
「(ルイーナに意識を合わせてたから、いきなり大ちゃんの声っていうか意識が飛び込んできて、びっくりしたのよっ!)」
いわゆるグループチャットのようなものかな? と、いずみが考えた直後、
「(それはちょっと違いますよ)」
誰なのか名乗らなくても、誰なのかは判る。
「(どういうこと? ルイーナ)」
「(今、いずみが私だと分かったように、意識を同調しているもの同士は、心一体となり、本音でしか語り合えないのです)」
「(嘘がつけないってこと?)」
「(それもありますが、チャットのように自分の本心を隠して発言することはできないってことです)」
「(できないの? 本音だけで話したらケンカにならない?)」
「(それ以前に本心から集中しなければ、同調自体できません)」
「(あ、そか)」
その時、いずみの頭の中に何かのイメージが飛び込んできた。
「(今送ったのは、同調の仕組みです。そして思念の目を使った攻撃方法の説明です)」
「(あ。そういうことなの… )」
思念の目で見たイメージを、自分の目で見たものと同じように完全につかまなくてはならない。
そのためには強靭な精神力が必要となる。
今までルイーナが渋っていたのは、この5人が果たしてそこまで深く意識の共有をできるかどうかが不安だったためだ。
「(さて、ここからが重要なんです)」
ルイーナのイメージがキャッチできても、指弾を撃つ時のようにその視点にエネルギーを具現化できなくてはならない。
「(まず俺がやってみる)」
湧が名乗りを上げた。
皆の意識がイメージに集中する。
視点らしき場所の直前にエネルギーが収束してゆくのが感じられる。
「(破っ!)」
声に出す必要はないが、湧には一番意識を集中しやすい方法なのだろう。
次の瞬間、氷の礫が肉壁の一部に突き刺さった。
『(おおっー!)』
一同は歓声をあげる(思念で)。
「(よし! いけそうだ!)」
大介が続いて指弾を撃ち込んでみる。
大介の指弾は鋭い石の鏃のような形だった。
すぐさま肉壁めがけて加速する。
<ブシュッ!>
君の悪い破裂音が聞こえてきそうだった。
破れたところから、君の悪い“何か”が吹き出した。
「(うげっ! きしょい)」
堪らずいずみが呟いた(思念で)。
「(次は初美がやってみろ)」
坂戸の思念が飛んだ。
「(え?)」
その時いずみの思念がブレた。
「(ええっ! 初美って、初美? うちのクラスの委員長の初美?)」
「(いずみっ! 何やってるですかっ! あ、同調が…崩れ…)」
ルイーナの悲鳴に似た思念を最後に同調が破られた。
<ぐあああっ~>
一同の意識は強制的に自分の身体に押し戻されたために、頭痛が走る。
数秒間、皆、頭を抱えてうずくまった。
「い、いずみっ! 意識を乱すと何が起こるか、さっき伝えたはずでしょ! 何であなたは人の話を聞いてないんですかぁ!」
ルイーナはマジ切れ状態だ。
いずみの胸ぐらを掴み、今にも殴り倒しそうだった。
「まあ、待てルイーナ! 君も落ち着くんだ!」
大介に羽交い締めにされて、いずみから引き剥がされた。
トラブルの元凶であるいずみは、呆れたまま棒立ち状態だ。
「いずみ? 大丈夫か?」
湧がいずみの肩を掴んで、様子を伺おうとすると、
「え、初美ぃ~ これは、この人たちは、うちの神社の禰宜さんと…、あれ? 湧はたまたまうちに用事があって… …」
意味不明のことを叫び出した。
「? はい?」
初美は口をパカッと開いて、呆然と立ち尽くしていた。
「いずみ、何を言ってるんだ? 大山さんは一昨日の会合からずっと一緒だったろう」
湧の言葉が理解できないとばかりに、白い眼差しで見つめる。
「(何言ってるのよ、私たちの秘密がバレたら大変なことになるのよっ!)」
声を顰めて湧に耳打ちする。
「だから、大山さんは水無月スタッフなんだってば。俺も一昨日知ったんだけどね」
「相変わらずどこでも仲良いわねぇ。お二人さん」
初美は敢えて茶かすように、明るくいう。
「… …本当? 初美って、うちの家族なの?」
水無月スタッフは皆、互いを家族として団結している。
その中で、家系ごとに役割が与えられているのだ。
「普通に挨拶してたから、もう知ってるのかと思ってたけど…、一昨日は全然気づいてなかったのか?」
「ごめんなさい。あまりに自然に居たから、疑問にすら思わなかったの」
「ははは、それは初美の特技だからね。術をかけなくても自然と人の輪に入り込めるんだよ」
坂戸が補足した。
いわゆる。諜報や護衛活動に必須な特技なのだ。
「じゃあ、今までずぅ~と同じクラスだったのは…」
「師匠いいんですか?」
初美が坂戸に確認を取る。坂戸は静かに頷いて許可した。
「私はいずみ姫とさくら姫の護衛が任務です」
初美は畏まった口調で、いずみの前に膝をついて頭を垂れた。
「え? 初美…、それより立ってよ。私に気を使う必要はないから…」
「そういうわけにはいきません。それに私はさくら姫の護衛に失敗しましたし…」
初美は俯いたまま、涙ぐんでいた。
いずみはしゃがんで初美を抱き寄せた。
「それは違うわ。さくらを…」
そこまで言って、湧を見上げる。
湧にはいずみが何を問いたいのか、すぐに判った。
そしてゆっくりと頷く。
「さくらをフレンズにしてしまったのは私のせいなの。私を助けようとしてさくらは…
、さくらは私の眼の前で…」
「それも私が間に合わなかったからです。身を挺して私がお二人を守らなくてはならないのに…、私が手間取っていたために…」
とうとう初美は声を上げて泣き出してしまった。
いずみが知るところ、初美が泣いたのを見たのは初めてだった。
今日まで、さくらを失ったことに負い目を感じてきたが、初美はもっと辛い思いをしてきたのだろう。その気持ちは痛いほど解る。
「初美、あなたが負い目に感じることはないのよ。そんなことじゃ、逆にさくらも怒るわよ?」
「え? でも…」
「あなたが犠牲になってても同じことよ。その時はさくらが負い目に感じるでしょ」
今回の作戦はルイーナの忠告により、フレンズやガーディアンの類は参加させていない。
それは彼らもエネルギー体の一種だからであり、ソウルコンバーターの餌食になってしまう可能性が高いためだ。
意識を作戦に向けただけで、さくら達は瞬間的に移動できてしまうために、宗主は二人に全く別の任務を与えた。
初美もガーディアンではなく、作戦遂行部隊に配置されたのだ。
「姫、それでは…あまりにも…」
「あ~、初美ぃ。その“姫”ってのはやめて。タメ口でいいから」
「しかし、お役目を知られてしまった以上、それはできま…」
俯きながら拒絶する初美の口を押さえ、いずみは少し強い口調で命じる。
「なら、敬語禁止! これは命令よ!」
「ひ、…い、いずみさ…ん」
「初美ぃ~」
「い、ずみ…。…判ったわ…」
困ったような笑顔で、目尻に涙を溜めたまま顔を上げた初美は、どうにか吹っ切れた様子だった。
「いずみ。それじゃあ、もう時間がないから状況を開始するよ」
湧が優しくいずみの肩に触れ、作戦の再開を告げた。
<続く>
湧たちの攻撃をあざ笑うかのように、肉壁は何の変化も見せずに全てをエネルギーとして吸収した。
「ダメだ、ビクともしない」
エネルギーのブラックホールとでもいうようなドレインウォールだ。
「せめて、あの肉壁自体を攻撃できれば何とかなりそうなんだが…」
「亜空間ゲートたるバリアに覆われていて、攻撃が届かないからな…」
湧に続いて大介も悔しそうに呟いた。
「ルイーナ、さっきの思念の目で肉壁の向こう側から攻撃できないか? 俺たちを狙撃した時みたいに…」
「狙撃ぃ? 私がしたんじゃありませんよぉ!」
ルイーナは頬を膨らませて抗議した。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃないんだ。ただ、さっきと同じように遠隔攻撃に役立てられないかと思って…」
「遠隔攻撃… …そうか、いけるかもしれないな」
大介が何か思いついたらしい。
「ルイーナの思念に俺たちの指弾を載せられないかな?」
『え?』
ルイーナばかりか、一同が同時に驚いた。
「大ちゃん、それって私たちの指弾を高次元経由で、あの向こう側から撃ち込むってこと?」
いずみが即座に聞き返した。
こういうアクティブなことには理解が早い。
「まあ、それに近いんだが、わざわざ俺たちの指弾を高次元経由で飛ばす必要はないだろう」
「あ、大介さんの言いたいことって…」
湧も気づいたようだ。
「ああ、そういうことですか?」
ルイーナも理解した。
「なになに? なんなのよぉ~」
とうとう、いずみはキレてしまった。
「3人だけで仲良く理解しあえてよかったですねぇ~」
プンプン怒るいずみを宥めながら、湧が説明する。
「つまり、ルイーナの思念の目で見た、肉壁の向こう側からのイメージを俺たちが共有して、狙いを定めようってことだよ」
「そんなことできるの?」
「いずみは俺たちが放つ指弾のエネルギーがどこから来てるか分かるよね?」
湧は辛抱強く解説する。
「え? え~もちろん!」
咄嗟に返答したものの、その目は泳いでいた。
どうやら、完全に理解はしていないらしい。
「指弾のエネルギーは指先から出てくるわけじゃない。だけど、指を差して標的に狙いを定めるわけだ」
「うんうん…そうだよね」
少しは理解できていると思い、先を続けた。
「“指差し確認”って言葉を聞いたことないかな?」
「知ってるわよ、そんなこと。指を差して一つずつ確認するってことでしょ?」
「そうそう。で、指はあくまで目標を注視するために挿すだけで、いちいち触れてまで確認する必要はないよね?」
「そんなの当たり前じゃない。だいたい触れるくらいなら、即座に凹った方が早いじゃない」
とんでもないことを言い出すいずみ。
湧は冷や汗を流しながらも、さらに辛抱強く解説する。
「念じて、指の先の空間にエネルギーを具現化する。そして目標に向けて加速させる。いずみも同じだと思うんだけど…」
「深く考えたことなかったけど、そんな感じかな?」
やっぱり考え無しだったようだ。
「え~、そこでだ。自分の目じゃなくて、ルイーナの思念の目で捕らえたイメージを共有して、指弾を撃ち込もうってわけだ」
キョトンとした顔で、湧を見つめるいずみ。
しばらくして、
「…わけだ…じゃなぁ~~い!」
いずみは肩でハアハア息をしながら叫んだ。
「そんな簡単にいくわけないでしょ!」
「「え? なんで?」」
湧と大介が同時に尋ねた。
「だ、だって…思念を同調させるんでしょ? …ルイーナ…と」
いずみが真っ赤になって呟いた。
「あ!」
「いずみっ!」
湧と大介は同時にいずみとルイーナの百合イメージを妄想した。
『こんな時にこんな場所で何を言い出すんだこの娘はっ!』
とうとう湧まで呆れ返って、叫んでしまった。
「とにかく! やってみるしかなさそうだ。行くぞ!」
半分誤魔化すように、大介が号令をかけた。
それまで黙って成り行きを見ていたルイーナが苦笑いしながら引き継ぐ。
「はい。私が思念でみんなに語りかけますから、それまで目を瞑って私に意識を集中してください」
『了解!』
5人は小気味良い返答の後、目を瞑って意識を集中させた。
しばらくすると、頭の中に鮮明なイメージが浮かび上がってきた。
いずみはそのイメージに強く集中する。
急速に画像が鮮明になり、あの肉壁がはっきりと“見えた”。
「(これが思念の目で見た向こう側の景色?)」
「(そうです。そして…)」
ルイーナが画像をアップにして、肉壁の一部に黒いシミのようなものを示した。
「(ここにエネルギーの停滞があります。多分一番弱い部分ではないでしょうか?)」
「(ああそうか! 物質化するエネルギーが弱いところか?)」
「(げ! 大ちゃん?)」
「(そうだが…どうかしたか? いずみ)」
「(ルイーナに意識を合わせてたから、いきなり大ちゃんの声っていうか意識が飛び込んできて、びっくりしたのよっ!)」
いわゆるグループチャットのようなものかな? と、いずみが考えた直後、
「(それはちょっと違いますよ)」
誰なのか名乗らなくても、誰なのかは判る。
「(どういうこと? ルイーナ)」
「(今、いずみが私だと分かったように、意識を同調しているもの同士は、心一体となり、本音でしか語り合えないのです)」
「(嘘がつけないってこと?)」
「(それもありますが、チャットのように自分の本心を隠して発言することはできないってことです)」
「(できないの? 本音だけで話したらケンカにならない?)」
「(それ以前に本心から集中しなければ、同調自体できません)」
「(あ、そか)」
その時、いずみの頭の中に何かのイメージが飛び込んできた。
「(今送ったのは、同調の仕組みです。そして思念の目を使った攻撃方法の説明です)」
「(あ。そういうことなの… )」
思念の目で見たイメージを、自分の目で見たものと同じように完全につかまなくてはならない。
そのためには強靭な精神力が必要となる。
今までルイーナが渋っていたのは、この5人が果たしてそこまで深く意識の共有をできるかどうかが不安だったためだ。
「(さて、ここからが重要なんです)」
ルイーナのイメージがキャッチできても、指弾を撃つ時のようにその視点にエネルギーを具現化できなくてはならない。
「(まず俺がやってみる)」
湧が名乗りを上げた。
皆の意識がイメージに集中する。
視点らしき場所の直前にエネルギーが収束してゆくのが感じられる。
「(破っ!)」
声に出す必要はないが、湧には一番意識を集中しやすい方法なのだろう。
次の瞬間、氷の礫が肉壁の一部に突き刺さった。
『(おおっー!)』
一同は歓声をあげる(思念で)。
「(よし! いけそうだ!)」
大介が続いて指弾を撃ち込んでみる。
大介の指弾は鋭い石の鏃のような形だった。
すぐさま肉壁めがけて加速する。
<ブシュッ!>
君の悪い破裂音が聞こえてきそうだった。
破れたところから、君の悪い“何か”が吹き出した。
「(うげっ! きしょい)」
堪らずいずみが呟いた(思念で)。
「(次は初美がやってみろ)」
坂戸の思念が飛んだ。
「(え?)」
その時いずみの思念がブレた。
「(ええっ! 初美って、初美? うちのクラスの委員長の初美?)」
「(いずみっ! 何やってるですかっ! あ、同調が…崩れ…)」
ルイーナの悲鳴に似た思念を最後に同調が破られた。
<ぐあああっ~>
一同の意識は強制的に自分の身体に押し戻されたために、頭痛が走る。
数秒間、皆、頭を抱えてうずくまった。
「い、いずみっ! 意識を乱すと何が起こるか、さっき伝えたはずでしょ! 何であなたは人の話を聞いてないんですかぁ!」
ルイーナはマジ切れ状態だ。
いずみの胸ぐらを掴み、今にも殴り倒しそうだった。
「まあ、待てルイーナ! 君も落ち着くんだ!」
大介に羽交い締めにされて、いずみから引き剥がされた。
トラブルの元凶であるいずみは、呆れたまま棒立ち状態だ。
「いずみ? 大丈夫か?」
湧がいずみの肩を掴んで、様子を伺おうとすると、
「え、初美ぃ~ これは、この人たちは、うちの神社の禰宜さんと…、あれ? 湧はたまたまうちに用事があって… …」
意味不明のことを叫び出した。
「? はい?」
初美は口をパカッと開いて、呆然と立ち尽くしていた。
「いずみ、何を言ってるんだ? 大山さんは一昨日の会合からずっと一緒だったろう」
湧の言葉が理解できないとばかりに、白い眼差しで見つめる。
「(何言ってるのよ、私たちの秘密がバレたら大変なことになるのよっ!)」
声を顰めて湧に耳打ちする。
「だから、大山さんは水無月スタッフなんだってば。俺も一昨日知ったんだけどね」
「相変わらずどこでも仲良いわねぇ。お二人さん」
初美は敢えて茶かすように、明るくいう。
「… …本当? 初美って、うちの家族なの?」
水無月スタッフは皆、互いを家族として団結している。
その中で、家系ごとに役割が与えられているのだ。
「普通に挨拶してたから、もう知ってるのかと思ってたけど…、一昨日は全然気づいてなかったのか?」
「ごめんなさい。あまりに自然に居たから、疑問にすら思わなかったの」
「ははは、それは初美の特技だからね。術をかけなくても自然と人の輪に入り込めるんだよ」
坂戸が補足した。
いわゆる。諜報や護衛活動に必須な特技なのだ。
「じゃあ、今までずぅ~と同じクラスだったのは…」
「師匠いいんですか?」
初美が坂戸に確認を取る。坂戸は静かに頷いて許可した。
「私はいずみ姫とさくら姫の護衛が任務です」
初美は畏まった口調で、いずみの前に膝をついて頭を垂れた。
「え? 初美…、それより立ってよ。私に気を使う必要はないから…」
「そういうわけにはいきません。それに私はさくら姫の護衛に失敗しましたし…」
初美は俯いたまま、涙ぐんでいた。
いずみはしゃがんで初美を抱き寄せた。
「それは違うわ。さくらを…」
そこまで言って、湧を見上げる。
湧にはいずみが何を問いたいのか、すぐに判った。
そしてゆっくりと頷く。
「さくらをフレンズにしてしまったのは私のせいなの。私を助けようとしてさくらは…
、さくらは私の眼の前で…」
「それも私が間に合わなかったからです。身を挺して私がお二人を守らなくてはならないのに…、私が手間取っていたために…」
とうとう初美は声を上げて泣き出してしまった。
いずみが知るところ、初美が泣いたのを見たのは初めてだった。
今日まで、さくらを失ったことに負い目を感じてきたが、初美はもっと辛い思いをしてきたのだろう。その気持ちは痛いほど解る。
「初美、あなたが負い目に感じることはないのよ。そんなことじゃ、逆にさくらも怒るわよ?」
「え? でも…」
「あなたが犠牲になってても同じことよ。その時はさくらが負い目に感じるでしょ」
今回の作戦はルイーナの忠告により、フレンズやガーディアンの類は参加させていない。
それは彼らもエネルギー体の一種だからであり、ソウルコンバーターの餌食になってしまう可能性が高いためだ。
意識を作戦に向けただけで、さくら達は瞬間的に移動できてしまうために、宗主は二人に全く別の任務を与えた。
初美もガーディアンではなく、作戦遂行部隊に配置されたのだ。
「姫、それでは…あまりにも…」
「あ~、初美ぃ。その“姫”ってのはやめて。タメ口でいいから」
「しかし、お役目を知られてしまった以上、それはできま…」
俯きながら拒絶する初美の口を押さえ、いずみは少し強い口調で命じる。
「なら、敬語禁止! これは命令よ!」
「ひ、…い、いずみさ…ん」
「初美ぃ~」
「い、ずみ…。…判ったわ…」
困ったような笑顔で、目尻に涙を溜めたまま顔を上げた初美は、どうにか吹っ切れた様子だった。
「いずみ。それじゃあ、もう時間がないから状況を開始するよ」
湧が優しくいずみの肩に触れ、作戦の再開を告げた。
<続く>
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