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八十三話 帰りの馬車の中ですわ ①
しおりを挟むはぁ~疲れたわ。
王太子妃エレナ様とは挨拶だけで後接することなく済んで良かったけど、カサドレル公爵夫婦のことは緊張でドキドキだったわ。
でも私たちが相手が相手で初対面なのに、へり下ったり媚びる訳ではなく相手を調べ上げた上であわよくば商談に持ち込もうとするふてぶてしい態度だったのに、私の根性なのか何なのかを閣下が気に入って下さったみたいなのよね?違うのかな?
閣下が懐の大きな方で本当に良かったわ。
フィンレルと私が話し合った対策は相手に怯むことなく媚びることもなく、堂々と渡り合うことだった。
彼らを調べてみれば閣下の趣味と取り組みが運の良いことにこちらの得意分野(馬関連)と合致したの、それが本当に良かったわ。
そしてフィンレルからではなく私から商談を持ちかけることにした。今回の相手はフィンレルより私の方が絶対いいからということで。
フィンレルが堂々としていてくれたから私も勇気が湧いたのよ。
結果的に上手くいって本当に良かったけど、ある意味賭けだったわ。
もちろん奥様のネーシア様の口添えがあってこそだったわ。
ネーシア様が過去に拘ず私たちに接して下さったから、本当に感謝だわ。
男性陣女性陣と別れて歓談していた時も、ネーシア様の旦那様のノアレス様はちゃんとフィンレルと商談のお話をちゃんとして下さり、他のこともジークハルト様、キーファーランド様と共ににこやかに話をして下さったらしい。
それにフィンレルがちゃんとノアレス様の家と商談するきっかけを掴んでくれた。
フィンレルやるね!本当に仕事は優秀だわ。
領地、領民がどこに出しても恥ずかしくない品質を誇れるものを作り続けてくれていたからなのも大きいわよね。
領民たちにも感謝だわ。
私は今のところ偉そうに言っているだけでまだ何も成し遂げてないけど、これから領地の為に一生懸命頑張るわよ!
それとノアレス様の心の内はまだわからないけれど、とにかくネーシア様次第なのだなということはわかったわ。
ネーシア様が私のことを気に入ってくれたから何とかなったと思うし、これからもネーシア様がノアレス様の鍵なんだよね。
心しておくつもりだけど、それがなくても私はネーシア様と仲良くしたいと思っているの。
だってとても心根が美して良い人なんだもの。
カサドレル公爵夫婦のことはこれからって感じね。
それから実家のコローラル子爵家だけど、夜会が終わりかけでもう何もないかな~と思っていたら向こうから来たわ。
フローリアは相変わらずだったけど、表では誠実で良い人を装っていた父が、フィンレルの前で私に対して怒りをぶつけるようなことをしてきたわ。
でもまだ少しだけど本性を表してくれて良かったわ。
あの場では私たちだけではなく他の貴族もいたんだから。
義母だけは少しだけ父を庇ったけど、私のことは悪く言わなかったし静観していた。
フィンレルに言われたことに顔色を悪くしていたし、私を睨んではいたけど…自分たちが不利と見るやすぐに父に合図して退散したし、義母は本当に馬鹿じゃないのよね。
そういえば、フローリアの旦那の元伯爵令息がフローリアの横にいたはずだけどどまったく空気で存在感がなかったわ。
まあ身分が上である侯爵に下手なことは言えないとちゃんと弁えている人だったみたいね。
調べてみたけど、フローリアの夫の実家のラットビア伯爵家は昔から堅実で優秀で裕福な家なのよね。
現当主も嫡男の次期当主も真面目でとてもやり手だと言われている。
フローリアの夫もまともな人そうなのよね~フローリアの美貌な見た目とあの甘え上手なところにコロッといっちゃったのかな?
そういえばフィンレルは他のことって言ってたけど、私が虐げられていたこと以外に、私話したことないけど、父と義母のことも知っているの?
今王宮から邸へとフィンレルと馬車に乗っているから聞いてみた。
「フィンレル様、先程家族が見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」
「いや、ベレッタは何も悪くないから謝る必要はないよ。
もうあの者たちはベレッタの家族ではないからな」
フィンレルが微笑んでそんなことを言ってくれる。
私は胸がキュンッとなる。
最近のフィンレルがやること言うことが凄くカッコ良くて困ってしまうわ。
「フィンレル様、ありがとうございます。
ところであの時他のことと仰っておられましたが、わたくしお話したことごさいませんよね?」
私がフィンレルの顔を見ながら尋ねると。
「ああ、ラバートリー卿にすべて聞いたんだよ」
「えっ?叔父様が?」
私はえっ?と首を傾げる。
「そうだ、ラバートリー卿はうちのことを調べると同時に手を回してコローラル子爵家にも人を送り込んでいたんだ。
過去にアランが人を送り込もうとした時は失敗したけど、子爵も相手がラバートリー卿だから油断したのか、それとも今の家の状況に浮かれているのか、簡単に入り込めたんだ。
それであらゆる証拠を掴んでもう退散しているんだよ」
フィンレルの話を聞いて私はビックリして目を見開いた。
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