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百六話 旦那様に王宮でのお話を聞きますわよ ②
しおりを挟む私はフィンレルの話に目を瞠る。
何ですとー?エレナ様がギルバード様やフィンレル、元側近候補のみなさんに会えたらすべて話すと言っている?
エレナ様と実際に会って彼女は自分がこのゲームという世界のヒロインだと思い込んでいることを知ったけど、エレナ様は私に馬乗りになり首を絞めていたところを、現行犯でフィンレルにもギルバード様にも見られているのよ?
今更ヒロイン気取ってギルバード様とかみなさんに会ってもどうにもならないでしょうに。
でもエレナ様はまたギルバード様たちに会えば何とかなると思っているのかな?
もしそうなのだとしたらその思考本当に怖いわ。
「…えっとそれで…王太子殿下とフィンレル様はどうされるおつもりですか?」
「…フィンレル」
???ここでフィンレルが自分の名を言った。
私は何?と首を傾げる。
「…また様がついている」
えっ?今そこ?私は意識していなくて様呼びになっただけよ。
「……フィンレル?」
私は顔に少し熱を持ちながらも様なしで呼ぶと、フィンレルは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「で、私は例えみんなで会っても妃殿下は正直に話すとは思えないと言ったんだが、ギルバードが妃殿下のことは自分にも責任があるし、自分だけでも一度は会うつもりだと言ったんだ…。
私はそんなギルバードを見ていて自分でも甘いと思うが、ギルバード一人で会わせたくないと思ったんだ。
だからナイゲルエンディナーも会ってもいいと言ったら私も構わないと言ったんだ…」
なるほど、フィンレルはギルバード様が一人で責任を感じて背負ってしまっていることを可哀想に思ったのね。
確かにギルバード様には責任があるし、ギルバード様が最後に一度は会うと言う事もわかるわ。
ギルバード様にとっては一度は愛して結婚した相手だものね…。
それにフィンレルがそんなギルバード様を一人では会わせたくないというのもわかるわ。
私は…私はフィンレルをもう疑うとかそんな気持ちはないわ。
フィンレルを信じている。
「わたくしはフィンレルが決めたことならそれで良いと思いますわ」
「ベレッタ本当か?」
フィンレルは私の顔を真剣に見つめてくる。
「ええ、わたくしはフィンレルを信じていますから、フィンレルが王太子殿下たちと一緒に王太子妃殿下に会おうと思っていらっしゃるなら、わたくしはこの邸で貴方様のお帰りをお待ちしていますわ」
「ベレッタありがとう…。
正直私はもう妃殿下には会いたくないよ…ベレッタにあんなことをした女だ。
目の前にしたら私は自分の怒りを制御出来るかどうかわからない。
でもギルバード以外ナイゲルもエンディナーも一度だけなら会ってもいいと言うなら、会ってみようと思っているんだ」
フィンレルの水色の瞳が怒りを灯したようにギラッと光った。
フィンレルは私の為に怒ってくれているんだね。
「わたくしはもう大丈夫ですわ。
確かにあの時のことは恐怖でしかなかったですわ。
今も思い出すと怖いと思ってしまいます。
でもわたくしにはフィンレルもみなさんも心配して力になってくれる方がおりますわ。
わたくしは決して一人ではないそう思うだけで、自分の力になっておりますの。
だからフィンレル最後に一度だけ王太子妃殿下にお会いしてけじめをつけてきて下さいませ」
私がキッパリと言うとフィンレルは私を熱の籠もった目で見つめてくる。
「ベレッタは本当に強いカッコの良い女性だ」
「そんなことありませんわ。
わたくしは決して強い人間などてはないですのよ。
今までもこれからも一人だけではちゃんと頑張れない人間です。
フィンレル、ラファエルがいるから頑張ろうと思えているのですわ」
私がフッと微笑むとフィンレルが眩しいくらいの美しい微笑みを浮かべた。
私はそんなフィンレルを見てまた顔が熱くなってくる。
「いや、ベレッタ君は本当に強くて眩しい太陽のような女性だよ。
私はどんどん君を好きになっているんだ」
フィンレルが熱く蕩ける瞳で私を一心に見つめてくる。
私はフィンレルの好きという言葉にブワッと顔から耳に熱が広がっていく。
「…あ、あの、…あ、ありがとうございます…」
「フフッ、その初々しい反応も堪らないな…」
フィンレルが口角をゆっくりと上げたまま私をジッと見つめてくる。
何だか私フィンレルの視線で溶けてしまいそうなんですけど?
「…そ、それではお話はこれくらいですか?
わたくしはそろそろラファエルの様子が気になりますので、では!…」
私はラファエルを理由に部屋をそそくさと出て行った。
だぁーっ駄目だわ!まだフィンレルの顔をまともには見れないわ!
私は自分がフィンレルのことを好きだと自覚して、朦朧としながらも告白してからフィンレルを意識してしまって、ちょっと距離を取ったりしてしまったりしている。
もちろん一緒に寝たりなんかしてないわよ。
そういうのは以前と何の変わりもないわ。
だって私がどうしたらいいのかわからないんだもの…それにフィンレルからも誘ってきたりないしね。
あーっドキドキする!顔が熱いわ!
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