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百五話 旦那様に王宮でのお話を聞きますわよ ①
しおりを挟むフィンレルが王宮へ行き、王太子ギルバード様に会ってから戻ってきた。
私が出迎えると、フィンレルが夕食後話があると言ってきたので、夕食後に応接室で話をすることになった。
フィンレルと夕食を食べてから応接室のソファに向かい合って座る。
フィンレルは私がまだ恐怖を感じているのではないか?と心配してくれたけど、私がどうしても聞きたいと言ったから決心して話してくれたの。
話は主に王家の秘薬をエレナ様がどうやって手に入れたかという話だった。
それは王太子妃教育担当の先生からではなくやはり協力者がいたようで、恐らくその人物は王妃殿下だろうということだった。
専属侍女の証言でエレナ様が王家の秘薬について初めて言葉にしたのが夜会の後一週間程経った日のことだということで、国王陛下は夜会の翌朝に外遊で隣国に出発しておられて、帰ってこられたのは二週間後だった。
それにエレナ様がフローリアとの二人だけのお茶会で、その王家の秘薬を王妃殿下が初夜の時に使用したという話をしていたらしい。
そして王家の秘薬のことを知っているのは王族以外、ごく一部の人間とは影の数人であるらしい。
その影は国王陛下の命令のみで動く存在で表に出てくることはないらしい。
そしてその影の存在をエレナ様に明かされるのは王妃教育に入ってかららしく、王太子妃教育もほとんど進んでいないエレナ様がその影の存在を知っているということはないだろうということだった。
これだけを聞いても協力者は王妃殿下でほぼ間違いないよね?
でも今のところ協力者が王妃殿下だという確固とした証拠は掴めていないらしいの。
また国王陛下の指示でフィンレルたちのアカデミー在学時代に影が主にギルバード様、アンジェリカ様、エレナ様を監視していたそうで、エレナ様はその時に複数の男性と関係を持っていて、その時に使用した避妊薬が原因で妊娠しにくくなったのではないかという話だった。
どうやらエレナ様が使用していた避妊薬は粗悪品だったらしく、使い続けると妊娠が難しくなるものだったらしいの。
それでも一度や二度なら大丈夫だろうが…ってフィンレルが言っていたからそれだけじゃなかったってことよね?
それでギルバード様は結婚まではエレナ様と関係を持っていなくて、初夜の時にエレナ様がアカデミー時代にある貴族令息に一度だけ無理矢理関係を強要されたと泣いて何度も謝ってきたらしく、その時はギルバード様はそれを信じて許したのだそう。
でも本当はそうじゃなかった…ギルバード様はそのことを陛下から結婚して四年経って聞かされたらしいのだけど、とれほどの衝撃と心痛を与えられたのだろう?
フィンレルの話を聞いていると、ギルバード様は初めの頃は陛下に反感を持っていたけど、自分にもう後がないことがわかっていたから嫌々でも執務をしていたのだそう。
だけど、そんな日々を過ごしている内にギルバード様は周りが見えてくるようになり、自分がいかに馬鹿で愚かだったかを思い知ったみたいなの。
それからギルバード様は心を入れ替えたということみたいね。
でもエレナ様は変わらなかった。
「そうなのですね…王太子殿下の心痛はいかほどかと…殿下は大丈夫なのでしょうか?」
ギルバード様の心痛は以下ほどのものかと私は気を遣いながら聞いてみた。
「ああ、ギルバードは周りが見えてきていろいろと気付いてくると、アカデミーでのことは王太子妃殿下が嘘をついていたんではないか?と気付いたそうだ。
ギルバードは確かに以前は王太子妃殿下のことを愛していた。
でも月日が経つにつれて王太子妃殿下のことを以前のようには思えなくなったそうだが、それでも自分が馬鹿で愚かだったから自分に責任があると思って、執務に邁進しながらも王太子妃殿下にはもう自分たちには後がないと説得していたそうだが、王太子妃殿下は変わらなかったらしい。
そして四年経ってから妃殿下のことを聞かされた時に陛下に自分を廃嫡してくれと進言したそうだ。
今回のことの後にもな…でも陛下はそれをお許るしにならなかった。
ギルバードはそれが自分への罰だと思い以前よりかなり痩せてやつれてはいるが、側妃を娶ることがもう決まっているからね…。
側妃となる令嬢に今更話はなくなったとは言えない。
かなり精神的に追い込まれているようだが、粛々と受け入れている感じだよ」
「そうなのですか…」
ギルバード様も昔は確かに愚かだったと思うし、アンジェリカ様を最初から受け入れず疎んじて蔑ろにしたりしたことは許せないけど、今のことを聞くと心配になってしまうわ。
エレナ様のこともだけど王妃殿下のこともね。
フィンレルは王太子殿下のことはギルバードと言っているけど、エレナ様のことはあくまでも王太子妃殿下と言っているわね。
私に気遣ってくれているのか?本人が名を呼びたくないのか?わからないけど、確かにフィンレルの口からエレナ様の名前が出てくること、私は気分が良くないと思うから有り難いわ。
私ってば結構嫉妬深いのかも。
「…それでなんだが…王太子妃殿下は訳わからないことを言ったり、自分は悪くないと言い続けていて、まだ事件のことを一切話そうとはしてないないらしいんだが…ギルバード、ナイゲル、エンディナーと私に会うことが出来たらすべて話してもいいと言っているらしいんだ」
「えっ?」
私はフィンレルの話に目を瞠る。
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