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百九話 あれから決まったこと
しおりを挟む私はフィンレルがエレナ様と対面して戻ってきてから報告を聞いたけど、私からは何も言わなかった。
フィンレルが遣る瀬無い表情をして落ち込んでいたからね。
私はもう次にいきましょうって元気良く言ったの。
その後フィンレルに抱きしめていいか?って聞かれて心臓が飛び出そうになったけど、どうぞと言うとフィンレルが大事な宝物のように優しく抱きしめてくれたからしばらく私たちは抱き合ったわ。
私は身体が熱くなってずっと心臓がドンドコと凄いお祭り騒ぎになっていたけど、私はフィンレルの慰めになればいいなぁ~と腕をフィンレルの背中に回してトントンしながら目を閉じた。
その日から翌週に王太子ギルバード様の側妃となる方が発表された。
その方はキャロライナ・セーゼントリー公爵令嬢十九歳。
王族と血縁関係にあるセーゼントリー公爵家の第一女。
アカデミーを今年卒業されたご令嬢で、こんな高貴な継承権もある令嬢がどうして今まで一度も婚約者がいなかったんだろう?と思ったのだけど。
キャロライナ様は幼い頃からアンジェリカ様に何度もお会いしていて、アンジェリカ様を尊敬していて心酔していると言ってもいい方らしいの。
それに幼い頃から男勝りなとても活発な方らしく、どこかの高位貴族に嫁ぐより文官になってバリバリ働きたいとずっと公言していて、ずっと婚約することを拒否していたんだって。
キャロライナ様は幼い頃からずっと間近でアンジェリカ様を見てきていたからかもしれないわね。
キャロライナ様のご両親もとてもキャロライナ様を可愛がっていらっしゃるらしく、それにキャロライナ様がとても優秀なことを知っていたから、彼女を心配はしていたらしいけど、両親も彼女を政略の道具にしたくないと思っていたらしく、彼女が望まない婚約をさせなかったそうなの。
そんな彼女が何故完全に政略と言えるそれも側妃という立場を受け入れたかと言うと、自分が側妃になれば国政に深くかかわれるからなんだそう。
キャロライナ様はエレナ様のこともちゃんとご存知で、自分が側妃になったら王太子妃が本来すべき執務や公務、国外などの外交を自分がすることになるとわかっていたからなんだって。
キャロライナ様はブロンドの髪に碧眼の大きな目の大変可愛らしい見目をしているらしく、アンジェリカ様曰くギルバード様のタイプド真ん中だろうと言っていたわ。
ギルバード様はアンジェリカ様のようなスッキリした綺麗系正統派美女よりも可愛い系が好きなのね。
エレナも可愛い系美少女だったものね。
でもキャロライナ様は見た目の可愛らしさとは違って、男勝りでハッキリとした性格でギルバード様に懸想しているとか一切ない人で、男女のことに関しては結構ドライな方らしいの。
だけどアンジェリカ様は彼女ならしっかりと王太子妃として公務を熟しながら、ギルバード様にも歩み寄れる人だと思うと言っていたわ。
アンジェリカ様はギルバード様といろいろあったけど、もう何とも思っていないと言っていたわ。
自分が不幸になっていたりしたら恨んだかもしれけどね!ってウィンクしながら闊達に笑っていた。
そうね、ギルバード様は過ちを冒してしまった人だけども、自分の過ちに気付いて変られたんだもの。
やり直してキャロライナ様と上手くいって欲しいと思うわ。
アンジェリカ様もずっとギルバード様の様子を見ていたらしく、今は自分もそう望んでるって言っていたわ。
過去は変えられないけど、これからは変えられるものね。
もしギルバード様がちゃんとしていなかったからアンジェリカ様がキャロライナ様を側妃にすることを絶対賛成しなかったと思うもの。
それから側妃殿下が発表されてから二週間後に、エレナ様が病による離宮による療養が発表された。
あのフィンレルたちがエレナ様と会ってから以降にエレナ様がすべて自供したのだそう。
拷問とかされたのかもしれないけど、そういうことは私は一切聞かされていない。
私もそういうこと聞きたくもないしね。
ただエレナ様はすべてを自供したらしいのだけど、王家の秘薬についての協力者は王妃殿下だということも証言した。
でもそれについてはエレナ様と侍女たちの証言だけで、確かな証拠はなくて王妃殿下は幽閉とかにもならず裁かれることはなかったの。
エレナ様が王妃殿下から王家の秘薬があるという話を聞いて、秘薬を王妃殿下付きの侍女からもらったと証言したらしいのだけど、もうその侍女はいなくなっていたらしいのよ。
また王妃殿下が秘薬をどうやって手に入れたかなど結局わからず仕舞いなのよね。
王妃殿下はとても慎重で狡猾な方なんだろうね。
王妃殿下のことに関しては陛下が決断されたらしいの。
陛下は賢王として有名で歴代でも五本の指に入るくらい優秀な方だと言われているの。
でも今回の王妃殿下のことに関してはいくら証言以外の証拠がないとはいえ、私は納得できるものではなかったわ。
確かにギルバード様やキャロライナ様のことがあるにしてもね。
その賢王である陛下は何を考えておられるのだろう?それほど王妃殿下を愛しておられるということ?
でもまあいち臣下である私が陛下の処分が気に入らないなどと言えないもんね。
エレナ様の件で王妃殿下が関わっていることは確かなんだろうけど、王妃殿下はまったく裁かれずそのまま王妃のままだから、また何かあるんじゃないかって怖いんだけど、どうにも出来ないものね。
フィンレルは絶対どんなことをしてでも私を守ると言ってくれてるし、私もこれからも注意して気を付けることにするわ。
あの舞踏会ではかなり騒ぎになっていたから参加者の貴族たちは何かあったことはわかっていて、かなり噂になっているけどギルバード様が処分されないから表向きにはエレナ様は病の療養ということになった。
それは表向きで実際は幽閉されて時期を見て毒杯を賜ることになっている。
毒杯を賜った後に病で儚くなられたと発表されるみたい。
その後、側妃となるキャロライナ様が王太子妃になられるそうよ。
前世日本人の私はあんな目に遭ったけど、エレナ様が幽閉されていずれは毒杯を賜ると聞いた時は、やっぱり少し気にしたわ。
でもエレナ様がしたことは許されることじゃないものね、仕方のないことよね。
それとエレナ付きの近衛騎士四人は今回のことだけじゃなく、エレナ様の愛人だったみたいで本当なら死罪となるところだけど、私がまあ説得したということになるのかな?
私の説得で最後の最後でエレナ様の命令に逆らって私を襲うことはしなかったことを私が話したのよ。
それと事件のことを隠すことなく正直に全部話したということで司法取引みたいなもかな?それで減刑された。
鉱山での強制労働となったらしいのだけど、それも本人次第では何年先になるかわからないけど、出ることも出来るかもしれないんだって。
フィンレルは「甘過ぎる!」って怒っていたけど、貴族で近衛騎士だった人が鉱山で犯罪者たちと一緒に労働って、もしかしたら死ぬより辛いことかもしれないと私は思うわ。
それにしてもえええ、近衛騎士四人ともエレナ様の愛人だったの?って思ったけど、エレナ様は自分がこの世界のヒロインだと思っていて、この世界の人間はみんな当然自分のことを好きになるんだと思い込んでいたから、有り得ることよね。
メイド二人は本当に私を攫って云々の計画は聞かされておらず、ただエレナ様の命令に従っただけだったので、彼女たちも貴族で籍を抜かれて平民となり修道院に入れられたとのこと。
それからフローリアも修道院に行くことになり、フローリアの方は一生出てこれないそう。
フローリアは捕まった後しばらくずっと泣いていたそうで、最初はエレナ様のせいにして自分は悪くないとエレナ様と同じことを言っていたそうだけど、自分がやらかしたことで両親や夫のジョシュア様、ジョシュア様の実家に多大な迷惑をかけて被害を及ぼしてしまったことに、今は後悔して大人しくなっているそう。
それに私のお母様がお父様とお義母様の間に無理矢理割り込んで、結婚したんではなくお父様が自分がずっと子爵でいたいから、ラバートリー商会からの援助が必要だから私のお母様と結婚したのだと。
その時にフローリアのお父様とお義母様は別れて一切関わりを断つことが条件だったのに、それを両親が破っておまけに自分が生まれたという真実を聞かされて、嘆き悲しんだそうでベレッタのことについても少しは反省しているそう。
少しというところがミソだけど…。
それとフローリアの夫のジョシュア様はフローリアと離縁した。
そして実家のラットビア伯爵家もコローラル子爵家への援助を止めて、事業提携もコローラル子爵領の開拓もその一切から撤退したそうだ。
それからコローラル子爵家へそれらの慰謝料や違約金、賠償金を請求したそうよ。
もちろん叔父様も今後一切援助しないと言ったらしいわ。
今回はフローリアの実家コローラル子爵家もジョシュア様の実家のラットビア伯爵家も表向きはお咎めなしにはなった。
あのことを表沙汰には出来ないから表立って罰を与えられることはないみたいなの。
でもかなり噂になっているから両家はかなりの打撃を受けると思うとのこと。
ジョシュア様の実家のラットビア伯爵家は元から力があり、当主の伯爵閣下も次期当主様、ジョシュア様も真面目で堅実な方で評判も良いらしいから、こちらは同情的な目も多いらしいので何年かかるかわからないけど、そのうち持ち直すんじゃないかと言われているわ。
でもコローラル子爵家はね、フローリアが原因で一気に評判を落としたし、ラットビア伯爵家から凄い金額を請求されているみたいだし、元々お父様は領地経営や事業経営に何度も失敗していて、向いていないみたいだから没落していくんじゃないかって言われているわ。
それにうちのサウスカールトン侯爵家と叔父様のラバートリー商会に睨まれたら持ち直すのは無理だろうと言われているの。
フィンレルと叔父様は許す気さらさらないみたいだしね。
これからお父様たちはどうなるかはわからないけど、領地に引っ込んでもう社交界にも出てこないだろうと言われているから、もう私とも会うことはないだろうね。
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