怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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百十話 穏やかで平和な日々が続いていましたのに…

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 もうあれから三年が経ったのよ。

 ラファエルは四歳になったわ。

 もうやんちゃでね、あちこち走り回っては乳母のジェシカのお子様二人と毎日元気に遊んでいるの。

 何とまだ早いんじゃない?と思ったけど、フィンレルがなるべく早い方が詰め込みにならなくていいからと、三歳からマナーと礼儀など貴族として必要な教育が始まったのだけど、それもまだ徐々にって感じだから今は遊ぶことがラファエルのメインの教育って感じね。

 私たちは一年のうちほとんどを王都のタウンハウスで過ごすようになったの。

 領地が王都から近いからいつでも戻れるということもあるけど、フィンレルが王宮に出仕するようになったからなの。  

 あのノアレス様との競馬事業をこの国でも立ち上げると正式決まって動き出したからというのが大きいのよ。

 フィンレルは今王宮で外交とはまた別で新たに設立された国外との事業提携や経営を取り纏める部署で働いているのよ。

 そこにはアンジェリカ様の旦那様のジークハルト様もいて、一緒に働いているの。

 それからアンジェリカ様やメリアンナ様、シャルロット様、マナベル様とのお子様ともラファエルは会うようになって仲良くなってね、特にアンジェリカ様の息子の七歳のキャスバルくんに凄く可愛がってもらっていて、ラファエルも凄く懐いていて、いつもキャスバルくんの後をついて回っているわ。

 そして昨年アンジェリカ様のところに女の子が生まれて、マナベル様のところは二年前に男の子が生まれたの。

 で、私は二人目を今妊娠中なのよ。

 あの事件以降フィンレルと私は気持ちを確かめ合ったけど、なかなか夫婦としてはジレジレで進まなかったんだよね~。

 私は恥ずかしくてちゃんと言えないし、フィンレルも見かけによらずうぶだからなかなか言ってくれなくて、なんと五ヶ月後くらいかな?その時にやっとフィンレルから「また子供が欲しい、絶対欲しい!でもそれだけじゃないベレッタと愛し合いたい!」って熱く懇願されてね…。

 それで夫婦の寝室でおやすみするようになって、今年に入って二人目を妊娠していることがわかったのよ。

 今六ヶ月目でもう安定期に入っているわよ。

 まあ~フィンレルは私に対して超過保護よ。

 私は前世三人子供を産んでるし、ベレッタとしてもラファエルを産んでるから余裕あるんだけど、フィンレルはラファエルの時の妊娠中はベレッタと全然会っていなかったじゃない?

 だから二人目の妊娠がわかってから外に出るのは危ないだの、庭にも危険がいっぱいだと言って、自分に時間がある時は私の側を絶対離れないし、護衛や侍女をさらに増やそうとするはで大変だったのよ。

「そんなにしなくても大丈夫ですってば!」

 って私は言うんだけど、ここでひとつのことに集中すると他が見えなくなるっていう性格を発揮して、なかなか話を聞いてくれなくてね。

 説得するのに結構大変だったわ。

 私ももうフィンレルを好きにっていうか愛しているからあんまし強く言えなくなったのよね。

 でもジッと部屋にいるばかりじゃ良くないからラファエルと庭をお散歩したり、一緒に遊んだりしているわよ。

 あと料理長のランディスと侍女長のリリアンナのことだけど、ランディスがモタモタしてて女性に対してはからっきし駄目で全然進展してないの。

 リリアンナはランディスの気持ちに気付いているみたいだけど、リリアンナの方がかなり年上だからね。

 リリアンナは引いているって感じなの、でもリリアンナはランディスの人の良さを知っているからまったく脈なしって感じではないと思うのよ。

 ここはランディスが頑張らないと!って思っているけどなかなか進んでいないわね。


 それからもう一組!そうもう一組なの。

 それはね、私の専属侍女のケイトとフィンレルの側近のアランよ。

 いつの間にか凄く距離が近づいていい感じなんだけど、でもまだ恋人って感じではないわね。

 友達以上恋人未満って感じかな。

 両思いなのは間違いないと思うし、お互い気持ちに気付いているけど告白したりとかはまだみたい。

 でもフィンレル曰く今までアランは女性にまったく興味がなかったのに全然違うって言っているから、そろそろ恋の花が咲く頃かしら~この二人に関しては私たちが口を出すと二人とも引きそうだからフィンレルも私も何も言ってないわよ。


 それとセンブュート帝国のカサンドレル公爵のノアレス様とネーシア様とはその後も交流が続いていて、隣国だからあの夜会以降私は一度もネーシア様にお会い出来ていなくて、ネーシア様はあれから二人お子様をお産みになられて四人のお子様のお母様になったからお身体のこともあるしね、それにとてと忙しくされているようだからなかなかお会い出来ていないのよ。

 定期的な手紙や贈り物などのやりとりはずっと続けているわよ。


 それから我が領の馬や馬具をセンブュート帝国に輸出などが始まったのよ。

 それで馬具に刺繍して美しく飾りつけたものがセンブュート帝国でもとても好評で順調なのよ。

 もちろん馬も評価が高くて大人気なのよ。

 やっぱりうちの領地は優秀ね。


 馬具に関してはうちの領地だけじゃなくてお義母様の実家やフランクリン侯爵家も関わってくれて、それに私の専属侍女のアンの母親も刺繍の図案を考えたり、美しい刺繍を馬具に施してくれて、みんなに指導みたいなこともしてくれて大活躍してくれてとても嬉しくて有り難いと思っているわ。


 そして我が国での競馬事業なども順調に進んでいて、王都の王宮近くの土地を競馬場にするべく開拓も進んでいるし、その他にいくつかの領地が競馬場を誘致したいという申請もあったりで、今のところ順調に事が運んでいるわ。

 我が国で実際に競馬を開催するのはまだ先になりそうだけどね。

 ノアレス様はお忙しいけど、度々我が国にもいらっしゃって打ち合わせや競馬場となる土地などの視察をしてまた自国に戻られるということを繰り返している。

 ノアレス様とフィンレルとの関係はとっても上手くいっているみたい。

 そうそう、お勉強中だったピアナとアンも今では私の専属侍女として頑張ってくれてるわよ。


 あとフローリアの実家のコローラル子爵家はやっぱり没落していって、一年も経たずにどうにもならなくなったみたいで爵位を返上して父と義母は平民になったそうなの。

 あれから一度も会っていないからどうなったかは私はまったく知らないわ。

 それからフローリアの夫だったジョシュア様の実家ラットビア伯爵家は、フローリアのことでかなり影響を受けて大変だったみたいだけど、それでも徐々に持ち直してきていて、ジョシュア様も真面目で優秀なことが認められて、異例なことだけど、昨年から王宮の文官になって今年に同じ王宮の文官をしている女性と再婚したんだって。

 それとエレナ様はあの事件の二年後に病で儚くなったと発表があったわ。

 その後キャロライナ様が王太子妃になられたの。

 そして側妃としてキャロライナ様が嫁がれてから一年半後に第一王子が誕生して、今私と同じ二人目を妊娠中なのよ。

 ギルバード様とキャロライナ様は相思相愛って感じではないけど、距離があるというんではなくてお互いが歩み寄って良い関係を築いているように見えるわ。

 アンジェリカ様と一緒にキャロライナ様と何度かお茶会をしたことがあるけど。

「わたくしは殿下のこと愛しているか?と聞かれれば答えは否ですわね。

 でもパートナーとしてお互い歩み寄りはしておりますわよ。

 殿下はわたくしのことを大切にして下さっていますしね」

 とキャロライナ様は微笑んでそう仰っていたわ。

 キャロライナ様を見てると本当にギルバード様を愛してるという感じはしないけど、決してギルバード様を嫌ってらっしゃるというのではなくて、仕事の為にそして子供の為に歩み寄って協力するところは協力するっていう感じかな。

 一方ギルバード様はフィンレルの話を聞くと、それはそれはキャロライナ様のことを大切にしていて公務以外では何をおいてもキャロライナ様を最優先させているようだけど、自分の過去のことがあるから、自分からはいけないって感じって言ってたわ。

 ギルバード様からすればあんなことがあっても自分に側妃として嫁いできてくれたキャロライナ様を大事にすることは当たり前よね。

 でもいくらギルバード様がキャロライナ様をいいなと思っても自分から愛してるって距離を詰めていくことなんで出来ないものね。

 でもお二人はそれなりに上手くいっているって感じなのかしら。

 それならいいとしなきゃいけないわよね。
  

 そんなみなさんもうちも順調で穏やかなで平和な日々が続いていたのに、事件が起こってしまったのだ。



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