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百十二話 事件が起こってしまいましたわ ②
しおりを挟むキャスバルくんが攫われた?どこに?アンジェリカがキャスバルくんとラファエルを庇おうとして怪我をした?ラファエルはキャスバルくんと一緒に攫われたけど、キャスバルくんのお陰で逃げたけど、怪我をしている?
私は一度に抱えきれない程の情報と攫われてしまったキャスバルくんのことが心配で、そしてアンジェリカはどれほど悲しんでパニックになっているかと思うと…背中も額も冷や汗が流れてきて、心臓の音がドクドクして息苦しくなってクラクラしてくる。
「奥様!部屋に戻り少し休みましょう!」
ケイトが私を支えながら私の体調気遣って言ってくる。
「駄目よ!そんなことをしている場合じゃないわ!」
私はオロオロして意味もなく門の辺りでウロウロしようとしてしまう。
それをケイトが必死で止める。
「ベレッタ様落ち着いて下さい!
奥様もラファエル坊ちゃまも無事です。
それにすでに捜索しています。
キャスバル坊ちゃまもすぐに見つかるはずです。
私たちはレノバングリー公爵家ですよ!優秀な者たちの集まりなのです。
大丈夫でございます!奥様とラファエル坊ちゃまがもうすぐお戻りになります。
どうかベレッタ様は無理をなさらないで下さい。
ベレッタ様は奥様とラファエル坊ちゃまがお戻りになられましたら慰めて元気付けてあげて差し上げて下さい!お願い致します」
執事長が私に頭を下げる。
「っ!…あっ、そ、そうよね。
アンジェはキャスが居なくなって、もっと悲しんで辛くて混乱しているわよね、そうね!」
私は自分もパニックに陥って訳がわからなくなりそうになっていたのを、執事長の冷静な言葉にハッと目が覚めた気持ちだ。
そうよ!アンジェリカとラファエルの方が怖い目に遭って、キャスバルくんが居なくなってしまって、パニックになって悲しんでいるわ。
私がしっかりしないと!私がパニックになっている場合ではないわ!切り替えて執事長に聞く。
「執事長ジーク様とフィンはもうすぐ戻ってくるのですよね?
こちらの騎士たちは今どれくらい残っておりますの?」
「はい、すぐにこちらから早馬で旦那様とフィンレル様にはお伝えしましたので、もう戻ってこられるかと。
それからうちの騎士はまだある程度の数の騎士は待機しております。
またあちらにいる騎士からと奥様とラファエル坊ちゃまがお戻りになってからの情報でちゃんと動けるようにしております」
執事長が冷静に答えてくれた。
「そうね、今も騎士たちがキャスを捜索してくれているけれど、情報が必要ね。
わかったわ、アンジェとラファのことはみなさんで支えましょう」
「「「はい!」」」
執事長、ケイト他ピアナ、アンそしてこちらの使用人たちが元気に返事した。
その時複数の馬の足音が聞こえてきた。
ジークハルト様とフィンレルが帰ってきたのよ。
「ジーク様!フィン!」
私は思わず門から出て走って行く。
「ベレッタ!走るな!」
フィンレルに叫ばれて私はハッと急ブレーキをかけるように止まる。
そうだった、私妊娠中でこのお腹の中にフィンレルと私の子がいるんだわ。
私は慌てて立ち止まって自分のお腹を撫でる。
『お腹の中のフィンと私の愛しい子お母様がパニックになって、走ってごめんね。
大丈夫かな?どうか元気なままでいてね。
それと私と一緒にみんなの無事を祈ってね』
私は自分のお腹の中を撫でながら心の中で話しかける。
その時、お腹の中の私たちの子がお腹を蹴ったような気がした。
そうね!大丈夫よね!きっと大丈夫よ!
私はお腹の子に勇気をもらった。
ジークハルト様とフィンレルが馬から下りてこちらに走ってくる。
ジークハルト様は厳しい顔をしながら執事長の報告を聞いている。
フィンレルはすぐに私に走って近寄ってきて、私を抱きしめる。
「ベレッタ!わかるが無理をしては駄目だ!
君は一人の身体じゃないんだぞ」
「フィンごめんなさい。
もう大丈夫!無理しないわ」
「良かった…さあとりあえず中へ入らせてもらおう」
「っ!」
フィンレルが私を抱き上げて中へと入って行く。
私は急に抱き上げられてドキッとしたけど、大人しくしていた。
「ケイトベレッタを少し休ませてくれ!」
「フィン待って!わたくしは大丈夫ですわ。
もうすぐアンジェとラファ戻ってくるんですの。
ちゃんお迎えしてわたくしが元気付けますの」
私はフィンレルに抱き上げられながら間近にあるフィンレルの顔を真剣に見つめながら言った。
「本当に大丈夫なのか?」
フィンレルは鋭い視線を私に向ける。
「ええ、大丈夫ですわ。
お腹の子も先程わたくしのお腹を蹴って大丈夫って言ってくれたのだと思います。
フィンお願い」
私がお願い!と真剣にフィンレルを見つめ返すと。
「ふぅ~わかった。
でもくれぐれも無理をしないでくれ。
アンジェ、キャス、ラファが大事で心配なのは当然だが、君とお腹の子も大事なんだ」
「ええフィンありがとう」
私はフィンレルの首に腕を回してキュッと抱きついた。
「戻ってこられました!」
その声にフィンレルと私は外を見た。
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