怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

文字の大きさ
115 / 143

百十二話 事件が起こってしまいましたわ ②

しおりを挟む



 キャスバルくんが攫われた?どこに?アンジェリカがキャスバルくんとラファエルを庇おうとして怪我をした?ラファエルはキャスバルくんと一緒に攫われたけど、キャスバルくんのお陰で逃げたけど、怪我をしている?

 私は一度に抱えきれない程の情報と攫われてしまったキャスバルくんのことが心配で、そしてアンジェリカはどれほど悲しんでパニックになっているかと思うと…背中も額も冷や汗が流れてきて、心臓の音がドクドクして息苦しくなってクラクラしてくる。

「奥様!部屋に戻り少し休みましょう!」

 ケイトが私を支えながら私の体調気遣って言ってくる。

「駄目よ!そんなことをしている場合じゃないわ!」

 私はオロオロして意味もなく門の辺りでウロウロしようとしてしまう。

 それをケイトが必死で止める。

「ベレッタ様落ち着いて下さい!

 奥様もラファエル坊ちゃまも無事です。

 それにすでに捜索しています。

 キャスバル坊ちゃまもすぐに見つかるはずです。

 私たちはレノバングリー公爵家ですよ!優秀な者たちの集まりなのです。

 大丈夫でございます!奥様とラファエル坊ちゃまがもうすぐお戻りになります。

 どうかベレッタ様は無理をなさらないで下さい。

 ベレッタ様は奥様とラファエル坊ちゃまがお戻りになられましたら慰めて元気付けてあげて差し上げて下さい!お願い致します」

 執事長が私に頭を下げる。

「っ!…あっ、そ、そうよね。

 アンジェはキャスが居なくなって、もっと悲しんで辛くて混乱しているわよね、そうね!」

 私は自分もパニックに陥って訳がわからなくなりそうになっていたのを、執事長の冷静な言葉にハッと目が覚めた気持ちだ。

 そうよ!アンジェリカとラファエルの方が怖い目に遭って、キャスバルくんが居なくなってしまって、パニックになって悲しんでいるわ。

 私がしっかりしないと!私がパニックになっている場合ではないわ!切り替えて執事長に聞く。

「執事長ジーク様とフィンはもうすぐ戻ってくるのですよね?

 こちらの騎士たちは今どれくらい残っておりますの?」

「はい、すぐにこちらから早馬で旦那様とフィンレル様にはお伝えしましたので、もう戻ってこられるかと。

 それからうちの騎士はまだある程度の数の騎士は待機しております。

 またあちらにいる騎士からと奥様とラファエル坊ちゃまがお戻りになってからの情報でちゃんと動けるようにしております」

 執事長が冷静に答えてくれた。

「そうね、今も騎士たちがキャスを捜索してくれているけれど、情報が必要ね。

 わかったわ、アンジェとラファのことはみなさんで支えましょう」

「「「はい!」」」

 執事長、ケイト他ピアナ、アンそしてこちらの使用人たちが元気に返事した。

 その時複数の馬の足音が聞こえてきた。

 ジークハルト様とフィンレルが帰ってきたのよ。

「ジーク様!フィン!」

 私は思わず門から出て走って行く。

「ベレッタ!走るな!」

 フィンレルに叫ばれて私はハッと急ブレーキをかけるように止まる。

 そうだった、私妊娠中でこのお腹の中にフィンレルと私の子がいるんだわ。

 私は慌てて立ち止まって自分のお腹を撫でる。

『お腹の中のフィンと私の愛しい子お母様がパニックになって、走ってごめんね。

 大丈夫かな?どうか元気なままでいてね。

 それと私と一緒にみんなの無事を祈ってね』

 私は自分のお腹の中を撫でながら心の中で話しかける。

 その時、お腹の中の私たちの子がお腹を蹴ったような気がした。

 そうね!大丈夫よね!きっと大丈夫よ!

 私はお腹の子に勇気をもらった。

 ジークハルト様とフィンレルが馬から下りてこちらに走ってくる。

 ジークハルト様は厳しい顔をしながら執事長の報告を聞いている。

 フィンレルはすぐに私に走って近寄ってきて、私を抱きしめる。

「ベレッタ!わかるが無理をしては駄目だ!

 君は一人の身体じゃないんだぞ」

「フィンごめんなさい。

 もう大丈夫!無理しないわ」

「良かった…さあとりあえず中へ入らせてもらおう」
 
「っ!」

 フィンレルが私を抱き上げて中へと入って行く。

 私は急に抱き上げられてドキッとしたけど、大人しくしていた。

「ケイトベレッタを少し休ませてくれ!」

「フィン待って!わたくしは大丈夫ですわ。

 もうすぐアンジェとラファ戻ってくるんですの。

 ちゃんお迎えしてわたくしが元気付けますの」

 私はフィンレルに抱き上げられながら間近にあるフィンレルの顔を真剣に見つめながら言った。

「本当に大丈夫なのか?」

 フィンレルは鋭い視線を私に向ける。

「ええ、大丈夫ですわ。

 お腹の子も先程わたくしのお腹を蹴って大丈夫って言ってくれたのだと思います。

 フィンお願い」

 私がお願い!と真剣にフィンレルを見つめ返すと。

「ふぅ~わかった。

 でもくれぐれも無理をしないでくれ。

 アンジェ、キャス、ラファが大事で心配なのは当然だが、君とお腹の子も大事なんだ」

「ええフィンありがとう」

 私はフィンレルの首に腕を回してキュッと抱きついた。

「戻ってこられました!」

 その声にフィンレルと私は外を見た。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...