怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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百十五話 事件の真実 ①

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 その日、キャスバルくんが無事に見つかって、主治医の診察を受けて肩や腕、腰や足などの軽い擦り傷や打ち身だけで他は何事もなく無事で、本当にみんな安心したわ。

 そして私たちはその日はレノバングリー公爵家で泊まって休ませてもらうことになったの。

 ラファエルは起きてから治療を受けたキャスバルくんの姿を見て大泣きしていたわ。

「ぼく、にげて、ちまった…」

 って落ち込んでいたけど。

「ラファ違うよ!僕がラファにみんなに伝えてって走ってって言ったんだ。

 ラファが勇気を出して走ってみんなに伝えてくれたから僕はこんなに早く見つかったんだよ、ラファありがとう」

 ってキャスバルくんが言ってくれてまたラファエルが大泣きした。

 ラファエルは自分だけ逃げたんじゃないかって気にしていたのね。

 私も「ラファがあのボタンをちゃんと握って持っていてくれたから、キャスは早く見つかったのよ。偉かったわね」って伝えてラファエルの頭を撫でたのよ。

 ラファエルはまたそれに大泣きしていたけど、キャスバルくんとラファエルが勇気を持って行動してくれたからよ!それとアンジェリカもね。

 事情とかはまた後日でフィンレルはまだやることがあるとかで、私とラファエルが食事や湯浴みを済ませて、同じ部屋で同じベッドで休ませてもらったわ。


 それからフィンレルは毎日忙しそうにあちこちに出かけているの。

 たぶん事件のことでよね。

 私とラファエルはあの翌日に邸に戻ってしばらく邸の中でラファエルとのんびりと過ごしたわ。

 ラファエルはやっぱり怖かったんだろうね、しばらくは夜泣きとかするようになったから、フィンレルと私の寝室でラファエルも一緒に眠るようにしたの。

 家族で川の字になって眠るっていうやつね。

 フィンレルは夜遅くまで忙しそうだけど、私はどんなに夜遅くなっても同じ部屋で寝ましょうって言ったから、例え深夜になっても寝室にやってきて三人で一緒に寝ていたわ。


 あれから三週間が経った頃、フィンレルが事件のことでジークハルト様と一緒にアンジェリカと私に報告したいからと、フィンレルとラファエルと私でレノバングリー公爵家に行ったの。

 アンジェリカはあの時頭を強く打ったようなのだけど、軽い外傷だけで済んだようで、主治医がしばらく様子を見ていたけど、一週間程でもう大丈夫だろうと言われたらしいの、本当に安心したわ。

 今はすっかり元気になっているのよ。

 ラファエルはキャスバルくんと邸の中で遊んでいてもらうことにして、私たちは応接室に集まった。

 まずはジークハルト様が話をし始めた。

「実は私とフィンレルは陛下と王太子殿下ギルバード様と協力して事件の調査をしていたんだ」

 やっぱりフィンレルが忙しく動き回っていたのは事件のことだったのね。

「陛下は三年前のあの元王太子妃殿下の事件を含めて今までの王妃殿下が関わっていたであろう余罪についても、ずっと調べておられたらしいんだ。

 でもなかなか証拠を見つけることが出来なかったそうだ。

 それだけ王妃殿下が慎重で狡猾だったということだろう。

 そんな時に今回の事件が起こった。

 陛下は元王太子妃殿下の事件の時に元王太子妃殿下と侍女たちの証言しかなくとも、自分なら王妃殿下を幽閉するなり何なりの処分することが出来たのに、何故そうしなかったのか?と後悔しておられて、私とフィンレルに謝罪された」

 陛下はずっと王妃殿下の犯罪について調べておられたの?エレナ様の事件だけじゃなく余罪もあるってこと?だけど証拠を掴めずにいた?

 陛下が王妃殿下を処分されないのは王妃殿下を愛しておられるからなのか?と思ったけど、違っていたってこと?

 それで今回の事件が起きてしまい後悔しておられるんだ。

 ということは?今回の事件も王妃殿下絡みということ?

「ジークそれはどういうことかしら?」

 アンジェリカも私と同じことを思ったみたいで、首を傾げジークハルト様に尋ねる。

「まず事件のことなんだが王都の街中でアンジェの馬車を襲ったのは王妃殿下の手の者だった」

「「えっ?」」

 アンジェリカと私は同時に声を上げた。

「まあ日の順を追って話していくよ。

 別のことからになるが、まずは王太子殿下ギルバード様が王太子妃殿下、キャロライナ様とご結婚されてからだが、キャロライナ様がギルバード様と結婚されて五ヶ月程で懐妊されていることがわかったんだが、懐妊後に毒を盛られたことがあったらしいんだ」

 えっ?キャロライナ様が毒を?何で?どういうこと?

「ちょっと待って!ジークどうしてキャロが毒なんて盛られたのですの?!

 それと王妃殿下とどういう関係がありますの?」

 アンジェリカは目を瞠ってジークハルト様に聞く。

「キャロライナ様が食事に盛られた毒は堕胎薬だった。

 でもキャロライナ様がそれを口にすることはなかったから第一王子殿下が誕生されたんだよ。

 ギルバード様も王妃殿下を警戒して周囲に注意を払っていたし、ギルバード様は国王陛下からも警戒して注意するように言われていたらしいんだ」

 えっ?王妃殿下がキャロライナ様に堕胎薬を?ギルバード様も陛下も王妃殿下を警戒して注意するように言っていた?

 どういうこと?

「えっと…どういうことかしら?話が見えてこないわ。

 王妃殿下はキャロをお気に召していたようにわたくしには見えましたわ」

 アンジェリカは困惑しているけど私もよ!訳がわからないわ。

「まあそうだね…キャロライナ様というよりアンジェとキャロライナ様両方に対してかな。

 王妃殿下はアンジェのこともキャロライナ様のことも気に入らなかったようだ。

 でもアンジェとキャロライナ様だけじゃない、王妃殿下は元王太子妃殿下エレナもみんなのことがが気に入らなかったんだと思う」

「えっ?」

 私はどういうことなの?と声を発してしまった。

 フィンレルが私を気遣わしげに見つめてくる。

「実は陛下にお聞きしたが王妃殿下はギルバード様とアンジェが婚約した時からアンジェが気に入らなかったらしいんだ…」

「そんな…わたくし王妃殿下にはよくして頂いてましたし、わたくしを嫌っている素振りなどまったくありませんでしたわ…」

 アンジェリカは信じられないという困惑した表情だわ。

「そうだな…王妃殿下は表ではアンジェを可愛がっていた。

 だがギルバード様に聞いたんだが、ギルバード様はアンジェが婚約者に決まった当時はアンジェの評判を聞いて自分がそれを信じ込んでいたことは確かだし、陛下がアンジェを婚約者に決めたことに不満を持っていらした。

 だけどその後王妃殿下からアンジェのことをいろいろと聞かされていたらしいんだ。

 それでより一層アンジェを疎んじるようになったらしい。

 ギルバード様はアンジェが優秀だからそれに劣等感も感じていたと言っていたけど…」

「……」

 アンジェリカは目を見開いて次の言葉が出てこないようだ。

 王妃殿下は表ではアンジェリカ様を気に入って可愛がっているように見せて、裏では息子のギルバード様にアンジェリカ様のことをあることないこと悪く言っていたというの?

 ギルバード様とアンジェリカに歩み寄ることなく婚約がなくなってしまったのは、ギルバード様のせいではあるけど、王妃殿下もそう仕向けていたってことよね?



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