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四話 国王、悪役令嬢としての人生がスタートする
しおりを挟む俺がリリアナになることを承諾した後、すぐその場に倒れ込んでどんどんと気が遠くなって気絶したようだ。
意識が遠退く中でウルヴァランの『サラディアナ次こそは幸せになって下さい』という声を聞いたような気がした。
目が覚めたら天蓋付の大きいベッドに寝ていた。寝転んだまま長い薄紫色の髪を手で掬って見てみて俺は本当にリリアナになったんだなと思った。
俺はベッドの中でウルヴァランに動く画像付きで聞いた話とは別にその乙女ゲーム『聖なる夜のロイヤルファンタジー』とやらについてリリアから聞いた補足的なもんを整理する。
この世界は魔法があり魔物が現れたり精霊がいたりする世界らしい。
魔法は光、闇、火、水、風、土と基本の属性があり、光と闇の属性を持っている者は少ないらしいが、その中でも光属性の中にあるという聖魔法は光属性を持っていても顕現する者がほとんどいないさらに貴重な魔法らしい。
聖魔法とはこの世界にある瘴気というものを消すことが出来るらしい。
他にもあるかもしれないが、そんなに詳しくは聞けてないのでわからない。
そのヒロインとやらはサイアン男爵と男爵家で侍女をしていた母親との間に生まれて母親と平民として生活していたが、聖魔法を顕現させたことによりサイアン男爵家の養女となり、フローラ・サイアンとして貴族たちが通う学院にリリアナたちが入学した1年後、途中編入して攻略者たちと出会い学院生活を送りながら各地の魔物を攻略者たちと共に討伐していくうちに、心を通わせ攻略者の一人と恋愛に発展して婚約、結婚する身分差婚のストーリーらしい。
その攻略者ってのが
・この国クロットガス王国の王太子ベンヘルト・クロットガス
・メッケンナー侯爵の第一男で宰相子息のルドルフ・メッケンナー
・テンペスト伯爵の第一男で王国魔術師団団長子息のジョシュア・テンペスト
・カスティーニャ公爵家第一男で王国騎士団団長子息のレアンドロ・カスティーニャ
そして元々は王国騎士団に入団したかったのをリリアナが気に入り強引に護衛にした
ファンディ伯爵家第二男のケングレット・ファンディ
リリアナが五度、10歳から処刑まで繰り返しケングレット以外だが、ゲーム通り攻略したからその邪魔してる存在とヒロインとの契約により恐らく強制力はなくなっただろうということだ。
その邪魔してる存在が気になるところだが、ウルヴァランが邪魔してる存在とヒロインとの契約は切れたとはっきり言ってたし、何とかすると言ってた。
あの場にやっとリリアナとリリアを連れてくることが出来たと言っていたから油断は出来ないが、強制力とか理はなくなったと思っていいかもしれない。
俺は実際自分が見て経験してみないと信じない達なので、様子見というところだな。
それからその他に恐らくヒロインは転生者というものでリリアと同じゲームの知識がありこれまでの五度の人生の記憶をすべて持っているのではないか?とリリアは推測していた。
自分が幸せになる為にリリアナが処刑されても何とも思わないって何て奴だ!
本当かよ?と聞いたのだが、ヒロインはこの世界の主人公だとこの世界はゲームの世界だと思っているので現実の世界だという認識が薄く罪悪感がないのではないかということだった。
実際五度巻き戻り、ケングレット以外の攻略者を攻略してストーリーと全然違う展開で、これまでも自分の思い通りになっているから、本気でゲームの世界だと思っているんじゃないかとリリアが言っていた。
いくら決まったゲームの世界だと言っても冤罪で処刑するように持っていくとか考えられないんだが、リリアナが処刑されないとゲームが成立しないと思っているのだろうか?
俺にはまったく考えられない理解出来ないことだ。
そしてこのゲームの中では逆ハーというものはないらしい。逆ハーとはすべての攻略者がヒロインのことを好きになり、位が一番上位の王太子と婚約することになったとしても他の攻略者たちがヒロインをずっと思い続け、ヒロインの為に一緒に生きていきヒロインもみんなを愛し続けることを言うらしい。
ヒロインは自分がこの世界の主人公で自由に出来ると思い込んでいるようでリリア曰く次はその逆ハーというものを狙ってくるかも?ということだ。
本当にそんなことあるのか?
一妻多夫制ってこと?
俺は有り得ないと思うけど、この世界では有り得るってことか?
しかしその邪魔してる存在との契約があるならその契約が終わったことがヒロインも分かってるんじゃないのか?
また同じようにやってくるのか?
それに契約が終わったとしたら何でまた巻き戻ったのか気になるとこだ。
まあ、そこは俺が今考えてもわからないことだから今はいいか。
しかし五度目にケングレットが自分に靡かなかった為にケングレットにも何かしてくるかもとリリアが言ってたな。
ケングレットが五度目に違う行動をしたことも引っかかるな。
どうしてだったんだろう?
はあ~考えることはいっぱいあるが、それにしても身体は俺も女だったから違和感はない。
けどとにかく身体が重い。寝てても重いし息苦しく感じる。
今までの人生飢餓に苦しんだり、王子の時も国王になってからも質素な食事したりして鍛えていたし、国王になってからはずっと戦に明け暮れたりして肥満とは無縁だったから太るとこんなに身体が重いものなのかと実感した。
これからあらゆることを想定して魔法はウルヴァランが全部使えるようにしたと言っていたけど、俺は魔法が使える世界にいたことがないから試してみないといけない。
それからこれからのことを考えると自分で身を守る為に身体を鍛えて強くなることも必要だから、リリアナたちがしていたように領地に籠ってまずは体重減らすことだな。
そのゲームの強制力とやらでリリアナたちはいくら頑張っても痩せることが出来なかったらしいが、それが出来たらその強制力ってやつがなくなったと一つ自分で経験して実感することが出来る。
すぐにでも領地に行きたいが、まず護衛のケングレットを解放してやらないと。
とりあえず今、明け方でベッドの中だから起きてからまずケングレットと話しようと思って、俺はもう一度目を閉じた。
二度寝していたようでこんな状況で寝れる俺はやっぱり図太いのかもな。
コンコン
「お嬢様おはようございます」
侍女が入ってきて目が覚めた。
俺も前は王子や国王だったから世話してくれる従者がいた。男として生きてたから男の従者だったけど。
男と偽って生きてたのもあって周りに女性を置かないようにしていた為にある程度の年齢になってからは着換えや湯浴み等は自分でしてたけどな。
リリアナに聞いてたけど、専属侍女はミランとユーラだったな。
茶色の髪がミランだと聞いた。
「ミラン、おはよう」
ん?ピタッと動きが止まった。
ユーラの方だったっけか?
「どうした?」
俺が侍女の方を見るとこれでもかと目を見開いていた。
あっ、そうか。リリアナは超我儘で侍女に対しても傲慢で酷い態度だったんだったな。
挨拶もろくにしてなかったのか?
それに話し方が前のままだったな。
気を付けないと…
それと俺はまずいな、口に出してしまわないようにわたくしわたくしと自分に言い聞かせる。
「…いえ、申し訳ございません!お顔を洗い歯磨きされますか?」
「そうね、ミランお願いするわ」
また驚愕といわんばかりの顔になって固まってるな。やりにくいなぁ~でも王都の侍女たちにも協力してもらえるようにした方がいいからな。
態度をあらためたってわかってもらえるようにしていかないとな。
ボウルに入ったお湯で顔と歯を磨いてからミランが麦わら帽子みたいな色の髪をしたユーラと共に朝食を部屋に運んできた。
「ミランとユーラに少しお話があるのだけど」
リリアナの声にミランとユーラの身体がビクッとなる。
二人とも直立不動でリリアナを怯えた目で見てくる。
「わたくしね…これからは自分を改めようと思うの。貴方たちは本当によくしてくれてるのに今まで本当にごめんなさい」
「「えっ……」」
二人とも固まってるな。リリアナが謝るなんてなかったんだろうな。
「反省しているのよ。本当にごめんなさい」
「お嬢様!私たちに謝るなどしてはなりません!」
慌ててミランが言う。
「立場とか関係ないわ。自分が悪かったら謝るものよ。でもこれからは謝るより、いつもお世話をしてくれてる貴方たちに感謝をたくさん言葉にするようにするわ。
ミラン、ユーラいつもありがとう」
「…い、いえ…とんでもございません」
ミランとユーラが幽霊か化け物でも見るように顔を引きつらせて震えている。
仕方ない。とりあえず今はこれくらいで
「それじゃ朝食頂こうかしら」
「…はい…」
ユーラが間近まで朝食を持ってきたけど、こりゃ凄いな。朝からステーキ2枚に鶏肉の焼いたもの、スープにも肉入ってるし、どんだけ食うんだってくらい篭にパンが山盛りだ。
朝からこんな食事じゃそりゃ太る。
「後で料理長呼んでくれる?」
「申し訳ございません!何かお気に召しませんでしたか?」
ミランが顔を引きつらせて震えている。
リリアナ、どれだけ横暴だったんだよ!
「違うのよ。これからは身体の為に食事も改善していこうと思っているの。今日は有り難く頂くわ。今後の食事についてお話したいだけ」
「…かしこまりした。お嬢様かお食事を終えられましたら料理長をお呼びします」
「よろしくね」
まあ食える。食えるけど、朝からこれは駄目だな。
今日はとりあえず出されたものを残すのは俺の性に合わないから全部食べたけど、味濃いし朝からさすがにムカムカするわ。
おまけに食後にお茶とデザートまで出てきた。
ケーキ何個あるのってくらい。
さすがにもう食えねえ。
「このケーキは貴方たちで食べてくれないかしら?」
「…えっ?そ、それは出来ません!」
ユーラが答える。
「お父様かお母様が駄目と言うのかしら?
それとも執事長のウィルか侍女長のマイヤーかしら?わたくしがお願いしたと言ってくれればいいわ」
「ですが…」
食べた後にリリアナに怒られるとでも思ってそうな顔だな。
「無理にとは言わないわ。残すのが作ってくれた人に申し訳ないと思っただけよ」
その言葉にもビックリされている。
そして食後に料理長トムがやってきたんだけど、軽蔑したような歪んだ顔をしながらも緊張の面持ちでこっちを見てくる。
こりゃ相当嫌われてるな。
もうすぐ領地に引っ込むつもりだけど、いつこっちに帰ってくることになるかもしれなから料理長とも上手くやっていきたい。
毎日の食事のお礼と体調のことを考えて今後食事改善をしたいことを伝える。
「体調が良くないんですか?」と聞かれたから丁度良い。体調が良くないことにした。
「相談に乗ってね。よろしく」と言うと
ポカンとした顔をしばらくした後、コクコクと頷き一礼して出て行った。
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