次こそは平和な世でのんびり気楽に生きていくつもりだったのに何でか悪役令嬢として生きていくことになってしまった!

asamurasaki

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六話 国王、領地生活を楽しむ

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身体を動かして気分はスッキリして気持ちいいけど、リリアナになって初めての農作業で身体はかなり疲れてるようなので試しに光属性の初期回復を使ってみた。
本の通りちゃんと詠唱したんだけど、チョロっと手の平から白い光が出てきて回復したのかしてないのかわからないくらいだった。
魔力はたくさんあるみたいなのにな?
本を読んでるだけじゃ駄目だな、魔法は誰かに教えてもらうべきだな。
痩せて体力がついてからグェンに家庭教師頼むか。



あれから毎日畑に行って耕す作業やキャベツやキュウリ、トマトの収穫作業を手伝うようになった。
ミランに言って服装も作業しやすいようにお兄様のお古のズボンを履き本格的に手伝うようになっていった。
ミランは「お嬢様…」と納得してないようだけど、そのうちもう周りは何も言わなくなった。
言っても無駄だとわかったからだろう。
日傘も農作業中にずっとさしかけるのも無理だから諦めてくれたようだ。

グェンも最初困惑して微妙な顔をされたが、もう何も言わなくなった。
諦めたのだろう。

最初はリリアナだけだったのだが、毎日2時間が2週間位経つと、3~5時間くらい畑にいるようになり農家のおじちゃんたちとすっかり仲良くなったりしているうちにいつの間にかミランやケングレット、アルフも自ら手伝うようになった。
ミランたちも楽しくなってきたようだった。

領地に来て3週間位になるが、ミラン、ケングレット、アルフの態度はどんどん変わっていった。
笑顔であれこれと話せるようになってきた。

そして畑仕事を手伝い始めて3週間が経った。
リリアナはみるみる痩せて足腰も強くなってきていた。
帽子は必須とミランに言われて常に被っているが、少し日に焼けて健康的に見えるくらいだ。
もう肥満じゃなく良いくらいに普通体型に痩せたんじゃないかというくらい予定よりかなり早く結果が出てそのことにホッとした。


そんなある日、今日も畑に向かっているところへ自分たちと同じ位の年代の少年たちが木の枝でチャンバラごっこをしていた。
この辺の農家の子供たちだろう。

懐かしい。俺も前の前の時の子供時代は女ながらにチャンバラごっこしてたなと思いながら見ていると1人の少年がガツンッと自分と相手の枝が当たった瞬間に

「イデッ」

と言って枝から手を離してしまった。
見ると手の平から血を流してた。
引っかかって切ってしまったようだ。

「ありゃ、削らないから怪我するんだよ」

と歩いて近寄っていく。

「な、何だよ!」

近寄ってくるリリアナにビックリして手の平から血を流してる少年が少し顔を赤らめながら声をかけてきた。

「いいから、手の平見せて」

「えっ?」

「ほらいいから」

少年がおっかなびっくりながら手の平を見せてくる。
血が流れてる傷口に両手で翳して詠唱してみる。
ピカッと白い光がリリアナから出て一瞬で少年の傷が塞がった。
前はチョロッとしか出なかった光が少し強く大きく出るようになった。
ちょっとした傷だったから治せたみたいだな。

「えっ?」

少年たちだけでなくミランたちも驚いている。
だよね、リリアナが光属性魔法使えるとは思ってないものね?
ウルヴァランのお陰で全属性使えるようにしてもらってたから夜いつも部屋に帰って魔法の本を読んで練習しているんだねよね。
でもやってしまったか?
でももう使ってしまったのは仕方ない。

「スゲェ~治療魔法初めて見た!」

少年たちがリリアナの側に集まってきた。

「治って良かった。大丈夫だと思うけど、あと水でちゃんと土とか汚れを流してね。で、枝で遊ぶ時は石で出っ張ってるとこ削るといいんだよ。そしたらツルツルになるから、貸してみて」

リリアナが差し出した手に一人の少年がおずおずと枝を渡す。ヤスリになりそうな石を適当に探して枝の出っ張ったところにヤスリをかけるように削っていく。
石で削った後、サラサラの砂を探してまぶすと、石で削った粗が砂で埋まって結構ツルツルになるのだ。

それを見ていた少年たちもミランたちも呆気取られながらリリアナを見ている。
そしてツルツルになった枝を少年に返した。

「はい。どう?」

「わあ~ほんとうだ~ツルツルだ~」

「俺もやる!」

他の少年たちも次々に適当に石を探してやり始める。

「ん、じゃあねえ~」

それを見てリリアナは手を振って畑に向かおうとすると

「おい!何で貴族のお嬢さんがそんなこと知ってんだよ?」

1人の少年が話しかけてきた。
言われて気付いた。
そうだった!貴族令嬢が知ってることじゃないよな。

「剣術を知ってるからよ。まずは木刀で修行するでしょ?木刀も滑らかにする為に木を削るからよ」

本当は前の前の時にチャンバラごっこしてた時の知恵だ。

「なるほどな~最近畑手伝ってるってあんただったのか」

「そうよ。今からまた行くとこなのよ」

「へぇ~何でお嬢さんが畑なんか手伝ってるんだよ?」

「身体の為よ」

「へぇ~貴族のお嬢さんの気紛れか」

「ちょっと!」

ミランが怒ってその少年とリリアナの前に立つ。

「ハハッいいの、いいの。楽しいからやってるのよ。それに身体鍛えたいからね」

「へぇ~身体鍛えるねぇ、剣はやらねえの?」

1人の少年がニヤッとしながら聞いてきた。

「剣もやりたいけど、今は畑で修行するわ。その方が足腰も鍛えられるからね。
いつか貴方たちに対戦をお願いしようかしら?」

リリアナが微笑みを見せると少年たちが一斉に顔を赤くする。王都で2週間ちょっとと、そしてここに来て1ヶ月程ですっかり痩せたリリアナは誰が見ても美少女だ。
それに気付かないリリアナがん?と首を傾げる。

「そ、そうかよ。いつでも相手になってやるぞ」

1人の少年に言われて

「ええ、またお願いするわね。それじゃ約束してるから行くわ」

そう言ってリリアナは歩いていく。
その姿をジッと見ているケングレットにリリアナは気付かなかった。

その日も畑の仕事を手伝ってお土産にキャベツやキュウリ、トマトをもらってリリアナたちは邸に帰る。

「お嬢様、おかえりなさい。今日もたくさんお土産もらってきたんですね」

執事長グェンはにこやかに声をかけてくる。
農家のおじちゃんたちとすっかり仲良くなり取れた野菜をたまに分けてもらえるようになったのだ。

「そうなのよ。取れたての野菜は美味しいから夕食楽しみだわ」

「左様にございますね。お嬢様それまでに湯浴みをお済ませ下さい」

「グェンありがとう。そうするわ」

グェンや他使用人たちはリリアナが農業の手伝いをしていることはもう周知の事実で何なら貴族令嬢なのに気取りなく親しみやすくて喜んでくれるようになった。

リリアナも誰に対しても態度を変えることなく話しかけたりお礼を言うので、領地の使用人たちの間で鰻登りに人気が高くなっていっている。
気付いていないのはリリアナだけだ。

リリアナはもらった野菜などをメイドに渡してからミランと共に湯浴みする為に部屋に向かった。

その日の夕食後、ケングレットに話があると言われて部屋で二人でお茶することになった。


「ズバリ聞きます。貴方は何者ですか?」

ケングレットからいきなり言われた。
そうだよな。今までのリリアナとは明らかに違うもんな。
いつかは聞かれるだろうとは思っていた。

「ケングレットは前の記憶があるのか?」

俺もストレートに聞くとケングレットはハッとして目を見開いた。

「リリアナを庇った記憶あるのか?」

「…はい」

ケングレットが俯きながらもボソッと答えた。
やっぱりそうか。
藍色の長い睫毛がフルッと震えている。
前の世でも整った男がいたが、短く切り揃えた藍色の髪と同じ色の瞳のケングレットも整った顔をしている。

「元のリリアナでも前回のリリアナでもないよ。だって元は国王だったからな」

「はい?!」

ケングレットは見開いた目をまん丸にして俺を見てきた。



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