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七話 国王、護衛と対話する
しおりを挟む中身はリリアナではなく前は国王だったと告げると
「はい?!」
と目をまん丸にしたケングレットに今までのリリアナとリリアの話をまずした。
荒唐無稽な話であるが、ケングレットは静かに聞いていた。
「リリアナ様が五度も無実の罪で…そんなこと有り得ない!」
ケングレットが俺に向かい信じられないというように顔を強ばらせる。
「ああ、でもその有り得ないことが本当に起こったんだ。ケングレット、お前は五度目の時に途中でおかしいと気付いたんじゃないのか?
お前の身に起こったことも有り得ない荒唐無稽な話だろ?前のことを覚えてるんだから」
俺が覗き込むように下からケングレットの顔を見ると
「…確かに…私も最初は正直リリアナ様を軽蔑して嫌っておりました。強引に護衛にされましたし、傲慢で我儘で苛烈な性格でありましたし…でもある時から突然リリアナ様は変わられました」
「五度10歳まで巻き戻ってリリアナともう一人リリアが人生変えようと必死に生きてたからな。お前が変わったのは五度目の時だ」
俺が言うとケングレットは何とも言えない顔をしながら
「そうなんですか……王太子殿下と婚約が決まってからリリアナ様はまるで別人のようになられましたし、前回、今回と同じように王国騎士団に推薦状を書いてくれると言ってくれました」
「お前にも近寄らないようにしようとしたんだ」
俺の言葉を聞いてケングレットは酷くショックを受けたように顔を歪ませた。
「そりゃそうだろ?無実の罪で自分を断罪するような人間を側に置きたくないだろ?」
「…私…私も…リリアナ様を四度も断罪したのですか?」
ケングレットはもう泣き出すのではないかという悲壮な顔になっている。
「あぁ、そうだ」
ケングレットはガクッと項垂れて俯いてしまった。
「だが、さっきも話したがリリアナは一度目お前の言う通り傲慢で我儘、苛烈な娘で確かにフローラを虐めた。毒殺はしようとはしていないはずだが…だからある程度責められても仕方なかったかもしれない。それでも処刑はやり過ぎだが、それもゲームというやつの強制力でお前の意思ではなかったんじゃないかって話だ。現にお前は五度目は違う行動をしたそうじゃないか」
「はい…確かに王国騎士団に公爵様が推薦状を書いて頂けるなんて願ってもない話でした。しかしリリアナ様が何から何までまったく別人のようになられ、どういうことなのか最初は裏があるんじゃないかと探ろうとしていました」
ケングレットは俯いたまま答えた。
「それで?」
俺が問いかけるとケングレットは肩をビクッさせ、ハッと顔を上げて眉を下げて悲し気な表情になる。
「別に今はお前を責めてる訳じゃない。
これからの為にもお前がどうやってその強制力というやつから抜け出せたのか知りたいんだよ」
「…どうしてかわかりませんが、私はどうしてリリアナ様がそんなことを言い出したんだろう?それがどういうことなのかを知りたくて私も領地に同行すると言いました。そして領地でのリリアナ様の生活ぶりを見ているうちにリリアナ様はまったくの別人のようにとても一生懸命で、周りを気遣い人の為に行動されるようになりました。以前は平民等と馬鹿にして見下していたのに、身分関係なしに領民のことを考え、修道院や孤児院を支援して子供と一緒に遊んだり字を教えたりすようなことまでされていました。
痩せようと努力されて食事制限したり運動したりも一生懸命されてました。何故か痩せませんでしたけど…それでも贅沢はされなくなりました」
「そうだな…リリアナもリリアも必死に人生変えようと一生懸命頑張ったんだ。
お前はそんなリリアナたちをちゃんと見てくれたから強制力から抜け出せたのかな?
でも、五度目も結果を変えることが出来なかった…」
「えっ?…いやっ…私は…」
「お前は卒業パーティーで斬られそうになったリリアナを庇ったんだってな…それでもその後、リリアナは処刑されてしまったんだ」
「…」
ケングレットは言葉が出てこないようだ。
悲しみと信じられないという顔をしながら目に涙をためている。
「けど、リリアナとリリアは俺に今度はケングレットを助けて欲しいって必死に頼んできたよ」
「そんな…」
ケングレットが目を見開き、そして一筋涙を流した。
「誰も助けてくれない状態で追い詰められて、五度目も巻き戻ってまたみんなから責められて何もしてないのに悪者にされて孤立しているところをお前だけが庇って助けようとしてくれた。
話し相手になってくれた。どれだけ支えになったかって感謝してたよ」
「そうですか…」
「四度目までは領地に引き籠ったまま貴族学院に行かなかったり、王太子との関係を改善しようともしたようだし、入学前に国外に逃亡したり、修道院に入ったりしたが結果は同じだったらしいから五度目は諦めとケングレットの変化でもしかしたらという思いで貴族学院に入学したらしい。
お前以外の周りは変わらなかったけど、お前はヒロインのフローラだっけ?その女に誑かされることなくちゃんとわたくし自身を見てくれたと言っていた。
だからお前を救って欲しいと思ったんだろうな」
「でも結局五度目も同じ結果だった…リリアナもリリアももう精神状態がギリギリだった。
この世界の神というウルヴァランが言うにはもしリリアナの精神が壊れてしまったらリリアナは次の輪廻に行くことが出来ず魂が消滅するし、リリアは俺たちがいたとこからじゃないと元の世界に戻れなくなるから戻った。
だからさっき話したと思うが、俺が変わってリリアナ・バートンとして生きることになった」
それを聞いてケングレットが目を泳がせて
「前は国王ということは…」
「ああ!それな…事情があって王女として生まれたが、第二王子として育ったのだ」
「はっ?!」
ケングレットは何度目かの驚きの表情だ。
彼に俺の人生の話をした。
「王女殿下として生まれたのに王子殿下として生き、国王陛下にまでなった?…」
ケングレットは先程流した涙が乾き驚愕と困惑の表情に変わった。
まだ一緒に行動するようになって2ヶ月程だが、こんなに表情がコロコロ変わるのは初めてだな。
まあ話してる内容が内容だからな。
「まあ、父上と母上が俺を生き延びさせていく為の苦肉の策として第二王子が誕生したと国内外に発表したんだ。
俺が生まれる前からずっと戦が続いていて、俺が生まれたウォーマン王国は周りに力を持つ大国に囲まれた力もない小国だったから、三人の姉上の王女たちは人質として他国に嫁がされ、うち第一王女と第二王女は嫁いだ国が滅ぼされ、その国の王族として処分され処刑されたんだ。娘を自分たちから遠く離れた地で会うことも連れ戻すことも許されず、戦に負けたからと王族として責任負わされ殺されたんだ。父上と母上の悲しみや辛さ自分たちが不甲斐ないと嘆いたことは想像に難くない。俺が生まれた時第一王女、第二王女は他国に嫁いではいたがまだ生きてた。
けどそういうこともあると思ったんだろう。
だからもう娘を人質として取られたくないと思ったのだろう?それに王子は兄上一人しかいなかった。その時の国の為には国王と王太子にもしものことがあったら国がなくなり民がもっと酷い目に遭うかもしれない。だから俺をお飾りでも王子として生きていくようにさせた。あまりに突発的に思いついたような早計で先を考えない稚拙なものであったのは否定出来ないが、それたけ国と俺のことを思ってのことだと思う」
俺の言葉にケングレットは目付きが鋭くなっていく
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