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十六話 ラルフ(ウェンドリックス)side ①
しおりを挟む前の世で俺はウェンドリックス・ジャンチェスト。ウォーマン王国のジャンチェスト公爵家の第一男で父親は宰相をしていた。
生まれた国は周りを大国に囲まれた弱小国で生まれた時から戦時下だった。
父上は国王に対する忠誠心の厚い男で国が右に左に翻弄される中、国王を支える日々でほとんど家にいなかった。
でも母上から父上がどれだけ国の為に働いているかずっと聞かされた。
母上は忙しくてほとんど帰ってこない父上を心から愛して、そして影に日向に支えてるような人だった。
俺はそんな両親を見てきたし国が戦中で嫡男だけど、下に弟が2人いるので最悪俺が死んでも後継者はいるからと剣術の修行の為に8歳の時に自ら志願して騎士団に入った。
両親は何も言わなかった。
ひたすら剣の腕を磨いて15歳の時には自分で志願して、戦の場に立つようになった。
しかし国の第一王女、第二王女、第三王女が続けて人質として他国に嫁いでいき、第一王女と第二王女の嫁いだ国が滅ぼされて王女たちも処分されてしまった。
それから数年後、俺が19の時に王妃も病死し、残る王族は国王、王太子、第二王子、他国に嫁いでる人質の第三王女だけになった。
実は父上も俺も王族の血が一応入っていて他の貴族にもいるけど直系はそれだけになった。
国はどう考えても破滅の道に向かっているようにしか思えなかったが、いち貴族で騎士の俺にはどうにも出来ない無力感に歯がゆく苛立っていた。
目の前で上官や部下たちが何人も散っていくのを何度も見てきた。
そして俺が24の時に王太子まで戦死してそんなに間を置かず頼りの国王も病で亡くなった。残るは病弱で馬鹿で表に出てきたことのない第ニ王子だけになった。
優秀で国思いな国王を失くしてこの国は終わったと思った。
それからしばらくして父上に、「第二王子が国王になられる。お前もこい」と言われて王宮に向かった。
病弱で馬鹿な表に出てこれない第二王子が国王になってどうすんだよ!父上もあんなに忠誠を誓った国王が亡くなって頭がおかしくなったのかと思った。
父上に連れられて第二王子が住んでる離宮に連れて行かれた。
部屋に入った瞬間
「宰相殿よく来てくれた」
少し高いが落ち着いた綺麗な声だと思った。
この時が第二王子との初対面だった。
短く刈った金髪にこの国の直系王族の色の金色の瞳をした男にしては中性的で美形な顔の身体は手足は長いが身長は高くなく病弱だというのに割りと引き締まっているが男にしては線が細く頼りなげだと思った。
やっぱり病弱なのかと思ったが、顔色は良さそうだ。
部屋に案内されて前に座った俺たちに
「マンデランやメテオたちに国の現状を聞いた。俺は戦が嫌いで嫌でずっと目を逸らして生きてきた。父上にも絶対表に出るなと言われてたのもあるからな。
でもこのままではいいようにされて苦しむのは罪もない民たちだ。
俺はそろそろ仮面を脱ぐよ」
「そうですか。決心されましたか、サンディオス殿下」
父上は第二王子の言葉にどこまでも冷静だ。
俺は仮面を脱ぐって?と思いながらも黙って話を聞いていた。
父上は知っていたからだとこの後すぐわかった。
「宰相殿も考えがあって子息を呼んだのであろう?」
俺は話がわからない。
でも馬鹿だと聞いていたが、話し方や大きい金色の瞳には知性を感じる。
どういうことだ?
「サンディオス殿下はどうなさるおつもりで?」
「俺は国王になって早く戦を終わらせる」
第二王子の言葉に何を言ってるんだ。やっぱり現実の見えない馬鹿なんだと思った。
「まずは国を変える。今いる貴族たちがどの立ち位置なのか見極めたい」
「なるほど。サンディオス殿下のままで国王になられるおつもりですか?」
「あぁ」
サンディオス殿下のままで?俺はこの言葉に引っかかった。
仮面を脱ぐとサンディオス殿下のままでとはどういうことだ?
「宰相殿の子息殿は知らないんだよな?」
「はい。左様でございます」
「でも連れてきたということはそなたの後を継がせてもよいくらい優秀ということだろ?」
サンディオス様が俺を見て笑った。
その美しい笑みに一瞬ドキッとした。
いやいや相手は男、王子だろ!
今まで美しさでいえば他国の王女や国内の貴族令嬢にもいっぱいいるはずなのに何故俺はドキッとなんかしているんだ。
「はい。サンディオス殿下がその気になられたと聞いてサンディオス殿下の役に立つと思い連れてまいりました」
「そうか。なら、俺の正体を知らせるべきだな。俺は本当の名はサラディアナ・ウォーマンだ」
「はっ?」
予想もしないことに思わず声に出てしまった?サラディアナは女の名前だぞ!
「俺は本当は第四王女として生を受けた」
「…」
へっ?本当に女?王女殿下?
「あのどういうことでしょうか?」
混乱した俺を前に王子いや、王女がフッと笑みを見せて
「女として生まれたが、父上と母上が次々に姉上たちが人質として他国に売られるように奪われてしまったこと、王子は兄上一人しかいないこと、国と俺を思うあまりに生まれてすぐ第二王子誕生と発表してしまった。
だから俺は表に出ることが出来なくなった。両親と兄上姉上、宰相殿やごく一部の信用のおける者、そして俺の身の回りのごく一部の人間だけしか女であることは知らない。
病弱で馬鹿でなくてはならなかったんだよ」
「そんな…」
俺は何て答えていいかわからなかった。
「ところで子息殿の名は?」
静かに金色の瞳を細めながら聞かれた。
「失礼しました。名も名乗らず、ウェンドリックス・ジャンチェストでございます」
「そうか、ウェンドリックス殿か…兄上、父上を間を置かず亡くしてしまったのは予想外だったが、俺はそれでも目を背けて生きてきたのだよ。戦が本当に大嫌いだから…でも罪もない民たちが一番被害に遭うのがもっと許せない!
それを俺は忘れていたんだ。
この国は力もない国だと思われている。
でも俺は違うと思っている。俺の身近にいる護衛も従者たち臣下は非常に勤勉で優秀だ、俺が外に出ることが出来ないから昔から臣下たちが民のことも報告してくれていたんだが、民も勤勉で優秀だと聞いた。
この国の者たちは勤勉で真面目な者たちが多いのだろう。
それで今、力のない弱小国で国王が病弱な馬鹿だと他国に思われているのはある意味チャンスだと思わないか?ウェンドリックス殿」
この王女は何をしようと言うのだ。
「どういうことをおっしゃりたいのですか?」
「俺たちが大陸を統一するんだよ」
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