次こそは平和な世でのんびり気楽に生きていくつもりだったのに何でか悪役令嬢として生きていくことになってしまった!

asamurasaki

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十九話 ロラン(メテオ)side ①

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私はロランド・ポンタート。
クロットガス王国の子爵家の第三男として生まれた。今は家を出て冒険者ロランなんだけど。


私には生まれた時からそれ以前の記憶があった。
前の世ではウォーマン王国の孤児として生まれた。戦中の孤児なんて道端で物乞いするか、誰かに奴隷のように扱われるか、いつ死んでもおかしくない状態だったし、例え死んだとしてもその場に捨て置かれるか、ゴミとして捨てられるかだ。

私は幼い時にもうすべて悟っていた。
この先、自分に出来ることは何もない、殴ったり蹴られ、食うものがなくなり餓死するだけだと。

それでもどこかで生きたいと強く思っていた。
ただゴミ屑のように死ぬのは嫌だと思って、盗み、まだガキだったから身体を売ることはなかったが、生きる為に思いつくことは殺人以外何だってやった。

そのうち同じ孤児仲間四人と知り合い共に行動するようになった。
私には名前が無かったが、仲間の一人は自分の名前を知っていて、ハントと名乗った。
ハントは孤児では珍しい金髪だったので、もしかしたら親は貴族だったのかもしれない。
ハントは私たちの中で一番身体が大きく恐らく一番年上だろう。
ハントが「一緒に行動するのに名前で呼び合った方がいい」と言ったので、みんな自分の名前を考えた。
一番年上の金髪のハントと以前から一緒に行動をしていた黒髪はブレイン、一番身体は小さいが足の早い薄灰色の髪はレン、身長は私くらいだけど、ガタイが良い茶色の髪はオット、そして私は何となくカッコいいと思ってメテオにした。

私らはこんな世の中なのは大人が悪いんだと思っていたから、大人から詐取して奪ってやると思い、子供らしく小柄なのを生かしていろんなとこに忍び込んで情報を盗み聞きしては商人たちに商売敵の有力な情報を渡して金にすることにした。
言い出したのはハントだが、それが一番金になるし大人たちへ復讐しているような気がして気分が良かった。

どこかに忍び込んで盗み聞きをすることは危険なことでもあるので、私たちは協力し合うようになり、いつの間にかずっと前から一緒にいるように仲良くなった。
みんな孤独だったから誰かといつも一緒にいて協力し合い助け合うことが凄く大事なことのように思うようになっていった。

そんなことを繰り返していたある日、情報を盗まれた商人の親父にバレてが王都の警備兵を呼ばれて私達はまとめて捕まえられた。
あぁ、首を撥ねられるんだ、呆気なく人生終わるんだなと思った。

その場で首を撥ねられるんだと思ったのに拘束されて、窓枠に鉄格子がついた大きい馬車に5人全員、押し込まれてどこかへ連れて行かれている。

処刑する為にどこかへ連れて行かれるんだろうと思っていた。

なのに連れて行かれた場所は今まで遠くからしか見たことがなかった城だった。
私たちは公開処刑されるようなそんなに重い罪を犯したのかと思ったけど、城に着くとどこかわからないところへ連れて行かれ、いきなり裸にされ湯の中に入れられた。

それだけでも驚いた。水は貴重でおまけに湯なんて、貴族以外平民で湯を使って湯浴みすることが出来るのなんてごく一部の裕福な奴らしかいない。
私たち全員、湯の中で何が何なのかわからず、呆けて動けなくなってしまった。

それから大人たち何人もに何度も身体を擦られ、ベトベトの髪も何度も洗われて、見たこともない肌触りの良い服を着せられた。

これは私たちはどこかへ売られるのか?という思いと初めて連れて来られた場所での戸惑いと極度の緊張で誰も声ひとつ出せない状態だった。

そして騎士たちに囲まれてどこかへ連れて行かれる。

これまた見たことがない、床がピカピカで光って反射して自分たちの姿が見え、コツコツと騎士たちの足音がする。
天井の高い教会みたいなステンドグラスがある凄く広い講堂のようなところに私たち五人は連れて来られた。

城に着いてから拘束は解かれたけど、周りには街いる警護兵より屈強で無表情な騎士に囲まれて五人は一塊にされて身動きが出来ない。
ちょっとでも怪しい動きをすると、首を撥ねられるという恐怖に私もみんなもビクビクしていた。

目の前の騎士に命令されて広い部屋の真ん中で膝まつかされ、頭を下げさせられた。

しばらくすると前方からコツコツと足音が聞こえた。今までのよりその足音が軽く感じた。

自分たちはこれからどうなるんだという恐怖にその軽い足音が死神の足音のように感じた。

「面を上げろ」

予想もしなかった透き通る甲高い声が聞こえて全身がビクッとなる。

「ほら、面を上げろ!」

すぐ近くにいる騎士に低い冷たい声で言われて、のっそりと頭を上げる。

目の前には死神じゃなく天使がいた。
年齢は私より少し下くらいに見える、キラキラ光る金の髪に同じくらいの濃さの金色の瞳の見たこともない綺麗な天使がいた。

天使がいるということは私たちはもう死んだのかと思った。
呆然とその天使を見ていると

「この者たちか?」

天使が騎士に問いかける。

「はっ!左様にございます」

「ふむ、今日は食事を与えて休ませろ」

「はっ!」

そう言うと天使はスーッとどこかへ行ってしまった。
それから私たちは同じ一つの部屋に入れられた。
見たこともない広く清潔な部屋だ。
そこに食事が運ばれてくる。

見たこともない食べ物に目を白黒させるけど、空腹でダラッと涎が出そうになるのを堪えゴクッと喉を鳴らせた。

「さっさと食べろ」

一人の騎士に言われて私だけじゃなくみんなが食べ物にかぶり付いた。

「こんなに旨いもの食ったことねえ」

思わず声が漏れたけど、騎士は何も言わなかった。

仲間たちも無我夢中で旨い飯を食っている。  
私も無我夢中で食った。

私は今までの人生で初めて食ったこの旨い飯のことをずっと忘れず今も思い出すくらいだ。


「お前らのベッドはここにある。しばらくはここで寝起きするんだ。明日6時にくる」

食後、そう言って騎士たちは部屋を出て行った。
騎士の言った通り部屋にはベッドが5つあった。
ベッドがそれだけあっても十分走り回れるくらい広い部屋だ。

みんなが何がどうなってるのか?何が起こってるのかわからず、戸惑っているが私もだけどみんな口数が少なくほとんど喋らずベッドに入った。

こんなフカフカで気持ちの良い寝床なんて初めてだ。
やっぱり私は首を撥ねられた記憶がないだけでもう死んでいるのだろうか?
天使を見たし…でも私が死んだなら天国じゃなく地獄のはず、天使を見れるはずがない。

でも確かに天使を見た。
この世のものじゃない綺麗な金髪の天使が確かにいた。

いろんなことを考えていたらあまり寝れなかったけど、一瞬記憶がなくなっていたからその間に寝ていたようで騎士の「起きろ」という声に目を開いた。

それから顔を洗い、歯を磨くように湯を用意されて言われたようにやる。
そしてまた食事が運ばれてくる。
黄金色に輝いた食べ物がある。
やっぱりここは天国なんだろうか?と思いながら夢中で食べた。
その黄金色の食べ物は後でオムレツだと知った。

そのオムレツが私の生涯で一番の大好物となった。

それから信じられない日々を私もたちは経験することになる。







    
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