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ニ十八話 国王、国王たちと対峙する
しおりを挟むしばらく陛下、王妃、魔術師たちが俺が聖魔法を初めて使ったの見て興奮して口々に声を上げていたが、陛下が居直って
「リリアナ嬢、素晴らしいぞ!
今我が国でたった一人の聖魔法の使い手がベンヘルトの婚約者であることに感謝する」
王太子の婚約者は出来るなら今すぐにでも辞めたいんだがな。
でもリリアナとリリアの敵を取る為には我慢だ。
俺は無言で礼を取る。
「ハーベント公爵、リリアナ嬢が聖魔法の使い手だと認める為に神殿にてもう一度判定を受けてもらい、あらたに申請して国で認めることとする。
そしてリリアナ嬢を王宮にて保護する」
きた!
「陛下、恐れながら申し上げます。
神殿でもう一流判定を受けることは承知致しますが、リリアナは我が邸で暮らすことを強く望んでおります。私たち家族もそうであります。
ハーベント家の威信にかけてリリアナを守りますゆえ、リリアナが我が邸で暮らすことをどうぞお許し下さい」
お父様の言葉に陛下もそこにいる魔術師たちも驚く。
「ハーベント公爵、聖魔法の使い手は安全の為、通常なら神殿で保護されるのだ。しかしリリアナ嬢は他ならぬベンヘルトの婚約者だ。
だから王宮にて保護するべきであろう」
国王はむむ、と難しい顔をしながらも鷹揚に告げる。
「聖魔法の使い手がとれほど希少で国にとっても貴重な存在であることは存じております。
だからこそ我が娘を自分たちで守らせて頂きたい。
我がハーベントの魔術師、騎士たちは大変優秀ですし、後ろに控えておりますS級冒険者ラルフとA級冒険者ロランもリリアナの専属護衛となりました。身の安全は王宮に劣らないと自負しております!」
お父様!頑張れ!
「ふむ、しかしこれからリリアナ嬢には王宮で王太子妃教育も受けてもらわねばならん。
そのことも鑑みて王宮で保護する方が良いのではないか?」
陛下が言うことはご尤もだ。
だけど、これは譲れない!
「陛下発言をお許し頂いてもよろしいですか?」
俺は陛下を見上げる。
「構わん」
「わたくしは2年前に身体に不調をきたし領地で療養しておりましたが、その際お母様と気持ちの行き違いがあり、お母様が大変心を痛めてしまいました。わたくしもお父様、お母様、お兄様と共に暮らせないことを寂しく思っておりました。
いずれはわたくしも婚姻することとなると思います。
そうすれば、家族においそれと会えなくなってしまいます。
陛下どうか我儘を言って申し訳ございませんが、婚姻するその日まで家族と過ごすことをお許し下さい」
本当は王太子と婚姻するつもりはないが、婚姻を匂わせておけば、いずれは王族になるつもりだということをわかってもらえるだろう。
それで納得してもらえないか?国王。
「…ふむ、確かにS級冒険者ラルフ殿、A級冒険者ロラン殿が側にいるのは心強いな。ハーベント家の専属になったということは我が国の人間になったということでもあると受け取ってよいが…
それでも王太子妃教育の為に王宮に通うことになる。
外に出ることになるのだからまったく危険がないとは言えないではないか?」
国王はまだ納得していないようだ。
「今はまだ王都で噂の段階でございます。
噂を他の情報にすり替えれば、リリアナが聖魔法を使えるとの噂もいずれは消えましょう。
なるべく危険を排除して我が家で娘はどんなことをしても守ります上、ご了承して頂きたく存じます」
お父様があくまでハーベント家でリリアナを守りたいことを陛下に強調した。
「…わかった。
そこまで言うならリリアナ嬢がハーベント家で生活することを認めよう。
噂についてもこちらでも対処しよう」
良し!国王から了承をもらったぞ!
「陛下、わたくしの我儘を聞いて頂いて感謝申し上げます」
俺は微笑んで礼を取る。
「良い!ラルフ殿とロラン殿にも聞きたい」
陛下が今度はラルフとロランに目を向けた。
「私がラルフでございます」
「私めがロランでございます」
ラルフとロランが一歩前に出て俺の少し後ろの位置で膝をおり右手を胸の前に持ってきて礼を取る。
「S級冒険者、A級冒険者であるそなたたちは我が国に留まり、我が命令を下したら魔物討伐に赴く約束をしてくれるか?」
国王め、ラルフとロランまで取り込もうという魂胆か!わかっていたけどな。
「私たちの主はリリアナ様でございます。
リリアナ様に騎士の忠誠を誓いました。
リリアナ様のご命令とあればどんなこともしてみせましょう」
「私もラルフ様と同意にございます」
「ほっほ、なるほど、あくまで主はリリアナ嬢であるとな。
どうするのかの?」
国王が顎に手をやり、ニヤリとしながら思案しているようだ。
「陛下、そのことと他のことにつきましても陛下にお話がございます。
陛下と個別にお話する機会を与えて頂きたく存じます」
俺はあらかじめ心に決めていたことを陛下に進言した。
俺は王都に戻ってきて数日経ってから夜に両親とお兄様、そしてラルフとロランを呼んで応接室に集まった。
そこで俺は自分が全属性魔法を使えることを家族に話した。
前もってラルフとロランとで話し合い、今後のことを考えて家族には全属性魔法を使えるようになったことを話しておいた方がいいだろうということになった。
俺が本物のリリアナに成り代わったこと、ゲームのこと、その時にウルヴァランに会って全属性を使えるようにしてもらったことは伏せることにした。
全属性が使えるようになったことを考えると今の家族ならすべての話を信じてもらえそうだが、家族に本物のリリアナではないこととリリアナが五度も処刑された事実を告げるのは酷だと思ったからだ。
お父様、お兄様にも大きなショックを与えることになるが、それ以上にお母様はもっとショックを受けるだろう。
そうでなくてもお母様は今までのことから心を痛めていて身体的にも精神的にも弱っている。
これ以上精神的に追い詰めてしまうとどうなるか、お母様が心配だったからだ。
だが、俺たちは国王と謁見した際にもう一度神殿で判定を受けるようになると予想していた。
そうなると、俺が聖魔法だけでなく全属性を使えることが知られてしまう。
その前に家族には話しておいた方がいいと考えた。この家族ならリリアナを守ろうとしてくれるであろうと思ったのだ。
そこで領地で突然聖魔法を使えるようになった日の夜、夢の中でこの世界の神、ウルヴァランに会いすべての属性魔法が使えるようにしたと告げられたということにした。
「何だと!ウルヴァラン様にお会い出来て全属性魔法を使えるようにウルヴァラン様が授けて下さったと?!」
お父様は目を見開き、まさに驚愕という顔をしている。
お兄様も同じような顔をしてお母様は両手で口を覆い、目をこれでもかと見開きフルフルと震え出した。
「ファナ大丈夫か?」
隣に座ってるお父様がお母様を抱きしめながら気遣っている。
「えっ、ええ…リリーちゃんそれは本当のことなの?」
お母様が俺を心配気に見つめてくる。
「お父様、お母様、お兄様本当に次々とごめんなさい。わたくしも衝撃を与えてしまうので、お父様たちにすべてを告げようか悩んだのです。
でも陛下に謁見して聖魔法が使えることをお伝えすると、もう一度神殿で属性判定を受けることになるのでは?と思ったのです。
そうすると全属性を使えることが知られてしまう。聖魔法だけでも危険なこと、わたくしも十分把握してます。
それが全属性となってしまうともっと危険が増えると考え、お父様たちに先に告白して数日後の陛下たちとの謁見に関して対策を相談したいと思いまして」
「聖魔法だけでもなのにリリアナが全属性使えるとなると大変なことですね…私たちでリリアナを守る為に対策を練らねば…」
お兄様が俺の話を信じてくれて尚、俺を守ろうとしてくれていることに本当に嬉しく思う。
「お兄様、わたくしの話を信じて下さってそして守ろうとして下さるなんて本当に嬉しいですわ。
ありがとうございます」
俺はお兄様に向かい頭を下げる。
「…何を言うんだ!リリアナは私の妹で家族なんた。当たり前だろう」
「お兄様!」
俺は両手を胸の前で組み、お兄様を見つめる。
お兄様は顔を赤くして俺からフッと目を逸した。
照れてるのか?お兄様よ。
「それでなんですが、リリアナ様がこの家で暮らすならば私とロランのことも持ち出すことになります。実際に陛下から私たちも呼び出されております。
陛下は私たちも囲い込もうとなさると思います。そこを利用しない手はないと私は思っています」
ラルフが両親たちに向かい言葉を発した。
場を弁えると言った通り、主君に対するように丁寧で私が呼びをしている。
そんなラルフにクスッと笑いそうになるのを俺は堪える。
「ラルフ殿、利用するとは?」
お父様が鋭い目付きになりラルフに問い正すように聞いてきた。
「陛下は私たちのことを一生囲い自分が自由に使えるようにしたいと思うはずです。
そこでリリアナ様が全属性を使えることを極力少ない人数にだけしか知られないように陛下と個別で話し合い直談判をするのです」
ラルフはいつもと違い、ピッと姿勢良くキッパリとお父様に向かっている。
「なるほど…しかしラルフ殿とロラン殿は陛下直轄の臣下にされてしまうのではないか?」
お兄様が陛下の腹の中を読んで真剣に告げる。
「私とラルフ様はリリアナ様にしか忠誠を誓いません。例え相手が陛下だろうとリリアナ様の命以外従うつもりはございません。
しかし陛下からの命をリリアナ様が了承すれば私たちは従います。
そこを交渉に使うのです」
ロランが俺たちの考えをお父様たちに話した。
「そうか…ラルフ殿もロラン殿もリリーちゃんにそこまでの忠誠を誓ってくれたのか?」
「はい。私たちは自分たちの命をリリアナ様に捧げております。そこで陛下と個別の話し合いに持ち込んで、陛下にはリリアナ様のことを正直に告げて神殿の判定も極限られた者たちだけで行なってもらうようにするのです」
ラルフがお父様の質問に答えながら陛下との話し合いに持ち込む作戦を家族に話した。
「ふむ、しかしリリーちゃんもラルフ殿たちも陛下に良いように使われるかもしれん…」
お父様は心配を発露する。
「そうだわ、リリーちゃんが危険な目に遭うのは賛成出来ないわ!」
お母様が目を潤ませ、精一杯冷静になろうとしながら言葉を紡いでいる。
「お母様、大丈夫です。わたくしにはラルフやロラン、ケングレットもアルフ、ゲオング様もついて下さってます。もちろんお父様もお兄様もですよね?」
俺が笑顔を見せて言うと
「もちろんだよ!リリーちゃん」
「私ももちろんです」
お父様とお兄様が強く頷く。
「お父様、お兄様ありがとうございます。
わたくしはお母様や家族と一緒に暮らしたい、その思いが一番なのです。
その為なのです」
この家族で暮らしたいという思いに嘘はない。
俺は家族を一人一人を願いを込めながら見つめた。
「リリーちゃん…わたくしもこれからリリーちゃんやバーグ、カーチェスと一緒に暮したいわ」
お母様が一筋涙を流しながら言ってくれた。
お父様もお兄様もお母様の涙が決定打となったようで納得してくれた。
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