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三十三話 ピート(マンデラン)side ②
しおりを挟むでもそれからサラディアナ様はその子供たちの話を聞きたがるので護衛や従者たちが市井でその子供たちのことを調べて随時お伝えするようになった。
そんなある日、その子供たちが捕まるかもしれないとの情報を聞かされたサラディアナ様は「その子供たちを引き取る」と言い出された。
俺は最初は反対したが、「ただ引き取るのではなく護衛か従者にする為に教育するのであればいいのか?」と言われた。
「本当は戦で苦しむ子供たち全員を引き取りたいくらいだ。でもそれは俺が無力だから出来ないことはわかってる。
でもその子たちの話をずっと聞いていて他人に思えなくなってるんだ。
その子たちは勇気があり、大人たちの鼻を明かす知恵と行動力もある。
まずはテストをしてもらえないか?」
普段は何一つ我儘など言わないサラディアナ様がこのことだけはまったく引き下がらなかった。
サラディアナ様のことは俺が一任されているが、市井のそれも犯罪をおかしている子供たちを引き取るなんて俺の一存では決められない。
陛下が了承されればとサラディアナ様に言うと
「なら俺が父上に直に話をするよ」
とおっしゃり、陛下にお忍びで会いに行かれ、その子供たちを引き取ることを決めてこられた。
その子供たちが市井の警護兵に捕らえられる日に俺の部下たちに代わってもらい子供たちを馬車に乗せ離宮に連れてきた。
そして家庭教師、俺たちでその五人の子供たちハント、ブレイン、レン、オット、メテオたちを教育していった。
ハントたちは最初は自分たちがどうなるか?怯えるだけだったが、「あるお方の為に役に立つかテストだ」と家庭教師や俺に言われてどんなことにも必死についてきて3年でものになってサラディアナ様専属の護衛と従者となった。
元からいる俺たちもサラディアナ様の為に命を賭けているが、ハントたちも同じく命を賭けて守ると誓い合ってサラディアナ様の側にお仕えするようになった。
それから第一王女、第二王女が嫁いでいる国を滅ぼされ王族として儚くなられ、王妃殿下がサラディアナ様が12歳の時に儚くなられ、17歳の時に王太子殿下、国王陛下が続いて儚くなられた。
第一王女殿下、第二王女殿下は他国でお亡くなられた為に顔も見ることが叶わなかった。
それは陛下や王妃殿下、王太子殿下も同じだったが、王妃殿下、国王陛下、王太子殿下が儚くなられ国葬が行われてもサラディアナ様は公に姿を現し参列することが出来なかった。
サラディアナ様自身の身を守る為とはいえ、誰にも見つからないように遠くからご家族を見送るしかなかったサラディアナ様のことを思うと胸が張り裂けそうな気持ちになり、俺が号泣した。
「何故マンデランがそんなに泣くのだ…俺の分も泣いてくれてるのかありがとうマンデラン…」
フッと悲しげな何とも言えない笑顔をされるサラディアナ様に俺はサラディアナ様専属の責任者でありながら涙が止まらなかった。
サラディアナ様はその時にも俺たちの前では涙を流すことなく気丈な姿を見せておられたが、王太子殿下に続き国王陛下が儚くなられてからは部屋に籠もり塞ぎ込まれる日々が続いた。
残る王族が第二王子であるサラディアナ様だけになってしまった。
我が国を同盟という名の都合の良い属国のような扱いをしているアンドゲルド王国が第二王子を国王とするように通達を出してきた。
サラディアナ様は「俺は国王なんかになりたくない!」と陛下や王太子殿下を亡くされ塞ぎ込んでいるところに国王になれと言われて絶対嫌だと拒否された。
しかしこのままでは国が滅んでしまう。
いや早かれ遅かれそうなるのでは?と実は思っていたが、ハントたちが
「今の民の現状をサラディアナ様にお伝えしよう。いつも民のことに心を砕いて下さるサラディアナ様こそ国王に相応しい」
と俺を説得してきた。
俺ももしかしたらサラディアナ様ならという気持ちがどこかにあったものだからハントたちの訴えを了承した。
ハントたちの訴えと説得にサラディアナ様は目が覚めたようで国王になる決心をされ、国王陛下となられた。
「女性であることは一生捨てて国の為に生きて早く戦を終わらせる」とサラディアナ様はこの時言われた。
サラディアナ様の覚悟が伝わる言葉であった。
そして国内の貴族たちを見極め不穏分子である貴族たちを一掃し民を手厚く保護し2年で国内をまとめ、アンドゲルド王国にて初めて国外にもサンディオス国王として公に姿を現した。
そして自ら戦に出陣することを宣言し俺たちと共に最前線で戦うことを選択された。
早く戦を終わらせる為にサラディアナ様は鬼になられた。
戦に出陣されるようになってからのサラディアナ様は凄まじかった。
元々聡明で不遇な境遇でありながら決してめげることなく前を向く強さをお持ちだったが、戦場でも前を向き続け俺たち臣下を鼓舞そそして決して諦めない。
俺たちハントとオットも加わった護衛はサラディアナ様の直属の臣下として一緒に戦に出て戦った。
従者のブレイン、レン、メテオたちも常にサラディアナ様の側に仕えて影として情報戦で活躍した。
そしてサラディアナ様が国王になる時に宰相が子息をサラディアナ様に会わせてウェンドリックス・ジャンチェスト殿も共に戦うようになった。
ウェン殿は元から俺と同じように騎士として何度も戦に出ているが、サラディアナ様のことを知りウェンとのもサラディアナ様に心酔する一人となった。
サラディアナ様は戦に勝つ為なら騎士道に反するどんな汚いことも厭わずやり、秀逸な作戦を練りどんな不利な状況でもそれを跳ね返し連戦連勝を重ねていく。
サラディアナ様には戦の才能もあり、また運も味方した。神が早く戦を終わらせようとするサラディアナ様の後押しでもしているかのように。
そのうち他国にはサラディアナ様の美貌とそのカリスマ性も相まって冷酷で残虐非道な美貌の暴君と言われるようになり恐れられるようになる。
そんな中、俺はサラディアナ様と共に戦に出て2年で死んだ。
サラディアナ様の側に仕えた者の中では俺が最初に散ったと思う。
ちゃんと最後までお仕えしたかったと思ったが、
でも最期はサラディアナ様を守ることが出来てサラディアナ様の腕の中で死ねて本望だった。
『どうかサラディアナ様、平和な世にして幸せになって下さい』
言葉には出来なかったが、そう願った。
俺は破落戸に突き飛ばされて気を失って寝込んでいる間に前の世を思い出したのだ。
それから俺は自分を狙ってくる奴もいることがわかり剣術、体術を思い出して身体を鍛えようになった。
魔法も最初は独自で稽古するようになった。
でも一人でやれることは知れている。
平民には魔法の本等、高価で手が出ない。
それでこの世界では冒険者ギルドというものがあり、そこで薬草採取や魔物討伐をすると金銭を貰えることを知り冒険者ギルドに出入りするようになった。
だいだいの冒険者は自分の技術などを教えてくれる者はいなかったが、冒険者たちの後ろで彼らを見ながら魔法を覚えていったし、たまに人の良いオヤジの冒険者に教えてもらったりしながら自分を鍛えていった。
前の世のことを思い出したから辛いともしんどいとも思わなかった。
とにかく自分を狙ってくる者たちに負けないように必死で剣術や魔法の腕を磨いていった。
10歳になった頃には親元を離れて冒険者ギルドに所属してランクを上げていった。
家族といると家族にも危険が及ぶかもしれないという思いもあったからだ。
それから冒険者としてレベルを上げていき35歳でよく出入りしていたギルドでギルドマスターになった。
そこでS級冒険者のラルフとA級冒険者のロランに出会った。
今でも不思議だが、会った瞬間にラルフが前の世の宰相子息ウェンドリックス殿でロランがメテオだとすぐわかった。
お互い抱き合い喜び会ったことは今でも良い思い出だ。
そしてラルフとロランからサラディアナ様が大陸統一を果たせたことを聞いた時は号泣したものだ。
サラディアナ様が目標を達成されたことに感激した。
しかしサラディアナ様は大陸統一を果たして国王をウェンドリックス殿に譲り1ヶ月後に落馬して儚くなってしまったことを聞いた時はまた大声で泣いてしまった。
サラディアナ様には平和な世で幸せになって欲しかったのに。
ラルフも国王になったのはサラディアナ様を妃に迎える為だったと聞いた。
ラルフは大きな悲しみの中、サラディアナ様の遺志を継いで国王と王族君主制を廃して中央貴族制にして中央総長になり、小競り合い程度で戦をなくせたことを確信してから国王に在位してから15年程勤めその後、引退して5年程で病でなくなったと聞いた。
メテオはサラディアナ様亡き後、国王となったウェンドリックス殿の側近となりウェンドリックス殿亡き後も生きて60代で亡くなったと聞いた。
違う時期に亡くなったのに同じ時期にこの世界にラルフもロランも俺もこの世にいるならサラ様もいるんではないか?とサラ様を探すようになった。
もしかしたらと俺も思っていたが5年と月日が経つうちにサラ様はこの世界にいないんじゃないかと諦めかけていた。
しかしハーベント領のスタンピードの依頼を受けて帰ってきたラルフとロランからサラ様がいたと聞かされてカウンターで飛び上がって周りをビックリさせた。
そしてまた俺は泣いてしまった。
その後、俺はロランに連れられてハーベント領の邸でハーベント公爵令嬢リリアナとなっているサラディアナ様と再会することが出来た。
また俺は大泣きした。
見た目は金髪に金色の瞳のサラディアナ様と違い腰まである薄紫色の髪に濃い紫色の色白の美少女で見た目は違ったが、話してすぐサラディアナ様だとわかった。
サラディアナ様に会えて俺はもう死んでもいいと思える程感激して泣いた。
「まだマンデランに死んでもらっては困る」
とサラディアナ様に笑顔で言われた。
どうしてサラディアナ様がリリアナ・ハーベント公爵令嬢になったかを聞かされてまた大変なことに巻き込まれているなと思った。
でもギルドマスターをしながらピートとしてもサラディアナ様にお仕え出来ることに至上の歓びを感じたのだった。
俺はまたサラディアナ様の為に生きていけることが出来て嬉しくて仕方ない。
俺は前の世を思い出してからずっとサラディアナ様のことを忘れたことなどなかった。
俺は30代後半になってもずっと独身だ。
前の世を思い出してからサラディアナ様にお仕えしていた日々が忘れられなかったのだ。
俺はやっぱりサラディアナ様の為に生きていきたいのだと実感した。
サラディアナ様、今度こそリリアナ様として幸せになって欲しい。
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