42 / 65
四十一話 国王、魔道具屋へ行く
しおりを挟むジョシュアから魔道具屋の話を聞いた翌週に早速その魔道具屋へ行くことになった。
学院が休みの日にジョシュアとセシルティアが俺の邸に来てから、ジョシュア、セシルティアと俺、ロランに分かれて馬車2台で王都の外れにあるという魔道具屋に向かう。
四人は軽微な平民に見える服を着て向かうことになった。
俺は膝の上にレンを乗せて前にロランが座り移動する。
護衛にラルフとケングレット、アルフも馬に乗ってついて来ているが、魔道具屋にはジョシュア、セシルティア、俺、ロラン、レンが入ることにしている。
「リリアナ様、先にその魔道具屋を調べてみたのですが、平民の若い男一人で経営しているようですが、自宅兼店でどうやら姉と二人で暮らしているようです。
ジョシュア様も言ってましたが、開店してまだ間もないようです」
ロランはあらかじめその魔道具屋を探ってくれていた。
「その男と姉という女はこの国の者か?」
「はい。そこは調べておきましたが、二人共この国の者で間違いありません。
それに店もちゃんと国の認可を受けておりますので、潜りでもありません。
ジョシュア様が通っているのでそこは心配していませんでしたが。
あっ、でもジョシュア様ならその辺気にせず気の赴くままかもしれませんが」
ロラン、ジョシュアに対してかなり失礼だろ。
まあジョシュアの性格を考えると有り得るが、セシルティアが一緒なら大丈夫なような気がする。
そう思いたい。
俺が目だけでロランに話の続きを促す。
「1週間ほど周辺を探りましたが、怪しい者と接触している様子はありませんでした。もちろん過去にサイアン男爵令嬢と接触があったかも、調べましたがそれもありませんでした」
「そうか、今のところ怪しいところはないと見ていいということか」
俺はう~んと考えながら返事した。
「そうですね。そんな優秀な魔道具屋が突然出来たということを考えると注意は必要ですが、その男は平民ですが、神殿で属性判定もちゃんとしていたようで、属性は火のみで魔力は普通クラスのようですが、記録する魔道具が作れるということは特殊な能力を持ってるはずです」
「そうなのか?平民でも属性魔法を使えるなら学院に通っていたのではないか?」
俺はロランの話に疑問に思ったことを聞いてみる。
「以前陛下がおっしゃっていた例外に入ったようで貴族学院には通っていなかったようです」
「例外?」
「はい、その男は早くに両親を亡くしていて2つ上の姉がいるようなのですが、その姉が病弱なようで自分が働かなければならなかったようで、経済的な理由で学院には通わなかったようです。
魔道具屋を開くまでは食堂や行商の手伝いをして暮らしていたようです。
しかし学院に通わないこともちゃんと国に届け出をしていたようですので、そこも怪しいところはありません」
ロランが俺を真剣に見つめながら言葉を紡ぐ。
「経済的な理由であっても学院に通うとなれば国で援助してもらえたのではないか?」
平民でも属性魔法を使える者は優遇されるはずだ。経済的に難しくても国が援助をするはずだ。
それほど属性魔法を使える者は将来を期待されている。
神殿から学院に通うことを勧められなかったのだろうか?
「そのはずなのですが、その男は学院に通うことをせず、自分で働いて姉の面倒を見ながら生活していたようです。
属性魔法も火の一属性で魔力も普通だったようなので、国から学院に通うことをそこまで強制されなかったのではないでしょうか」
ロランの言葉を聞いてなるほどなと思った。複数属性を使えたり、希少な光属性や闇属性を持っていなくて魔力がそんなに高くなければ、国も本人の意志を尊重するかもな。
しかし学院に通った方がその後の道が開けるだろうにどうしてその男は通わなかったのだろう?
それに特殊な能力があれば、国は絶対取り込みたいはずなのにそこはどうしてなんだろう?
「しかしロランはその男は特殊な能力を持っていると見ているんだよな?神殿で判定されなかったのか?」
「神殿の属性判定では出なかったのではないかと思います。
神殿の属性判定は属性と魔力量を知ることが出来ますし、先天的に何か能力を持っていれば判定されるかもしれませんが、例えばピート様の転移魔法陣を編む能力や私の認識阻害魔法やジョシュア様の補助魔法ドランクネス等は元からある才能も関係しますが、後天的に顕現する場合や本人の努力により使えるようになったりしますので、そうなると神殿での判定の時にはわかりません。
ですがピート様の転移魔法陣等は貴重なものですので、国が法律で定めていますので、顕現したら必ず国に届け出をしなくてはなりません。
もちろんジョシュア様のドランクネスも私の認識阻害魔法もそうです。
ですが、多岐に渡る補助魔法については解明されてないものもまだ多くありますので、国の法律が追いついていないものもあります。
ですが、その男はちゃんと国に届け出を出してから認可を受けて魔道具屋を開店しています」
「そうか、なら後天的なのか本人の努力で特殊な能力に目覚めて魔道具店を開店させたということか」
俺の言葉にロランが大きく頷く。
「そうなのではないかと思います。
目の前のことを記録出来る魔道具など、とても貴重で重要なものであると思いますが、まだ国はその重要性に気付いてないのではないか、それともその能力については隠していたのか…」
「確かにな。認可した者がそこまでちゃんとわかっていなくて重要性に気付いていなかったのかもしれないし、店主がそのことを言わなかった可能性もある。
それか店主もそこまで重要な能力だと思っていない可能性もあるな。
その特殊な能力を持っているとなると、普通に魔道具屋を経営するのは危険じゃないのか?」
「私もそれは思います。後ろに誰かいるかも今のところ見えませんが、まだ短期間しか探れてないので否定は出来ませんし…」
「注意は必要ということだな。とりあえず今はから会ってみて話を聞いてみよう」
「承知しました」
ロランが頷いて俺の膝の上でスヤスヤ眠っているレンを微笑ましそうに見ている。
レンは前の世でもロランたちの中で一番年下で無邪気で可愛がられる存在だったが、神獣になっても同じだ。
ロランは自分の弟のように可愛がっている。
邸から馬車で20分程走ると王都の中心街からは外れてきて畑などがあるのどかな風景になってきた。
「リリアナ様、もうそろそろ到着します」
「そうか」
ロランが言ってから数十メートルくらい進んで馬車が止まった。
ラルフたちも馬を下り、俺たちの馬車の周りを見渡してロランに大丈夫だと合図してきた。
ロランが内鍵を開けて馬車を下りてから俺に手を伸ばしてくれたので、俺は左腕にレンを抱えロランの手の上に自分の手を乗せて馬車を下りた。
辺りを見回してみると、所々平民の住居らしきものが見えるが、そんなに人も歩いていない商売をするには不向きな場所だと思った。
俺たちと同じように馬車を下りたジョシュアとセシルティアが俺の所に歩み寄ってきた。
「リリアナ様あそこです。それでは行きましょうか~」
ジョシュアが指を差したのは何の変哲もない平屋の一軒家に見えた。
「本当にあそこなの?」
俺が不思議に思いジョシュアに聞いてみると。
「はい。あそこです。
入口に小さい看板があるだけなので、わかりにくいのですが」
「よくそんな所を見つけたのね」
俺が感心して言うと。
「歩いててセシルが何か看板があるって見つけたんですよ~。
僕たちよく二人でブラブラしてますから~」
「そうか」
俺は苦笑いしながら返事したが、ジョシュアとセシルティアの護衛は大変だなと思った。
「リリアナ、人のことは言えないぞ」
俺が思ったことを読んだのか、ラルフに言われて。
「そんなことはないでしょ!」
と答えるとケングレットもアルフも微妙な顔をした。
俺もか?まあ、いいや。
「それではジョシュアとセシルティア案内してもらおうかしら」
「「はい!」」
ラルフ、ケングレット、アルフには何かあれば呼ぶと言ってからジョシュアとセシルティアの後をロランと共について行く。
赤い煉瓦の屋根に赤い扉の平屋建ての建物の前に行くと小さい看板があった。
『道具屋ナミア』と手書きで木に記載されているのみだった。
今までスヤスヤと俺の腕の中で寝ていたレンが耳をピンッとさせて起きた。
俺はレンの頭を撫でるが、レンが急に起きて落ち着きなくキョロキョロしている。
「レンどうしたの?」
『ナンカ…ナンダロウ?』
レンは何かを感じでいるのだろうか?
「ジョシュア様、セシルティア様少々お待ち頂けますか?リリアナ様、レンが何か言いましたか?」
俺がレンに話しかけたのを見てロランが周囲を見回しながら聞いてきた。
「レンが急に起きて落ち着きがなくなったから聞いたのだけど、レンも何だろう?って言ってるけど何か感じてるみたい」
「えっ?レンが何か異変を感じでいるのですか?」
ジョシュアが俺に数歩近付いてきてレンを覗き込んできた。
『ナンカワカラナイ』
「何かわからないと言っているわ」
俺がレンが言った言葉をそのまま伝える。
「周囲は大丈夫だと思うのですが、中ですか?」
ロランが周囲に目を配りながら半身を俺を庇うように前に出る。
『ナカフタリイル、オトコとオンナ』
「中に男と女がいると…」
「店主とその姉ですかね…」
店主には2つ上の姉がいると言っていたな。
こうして店の前にずっと四人がいると俺たちの方が怪しいと周りに見られそうだ。
「店内に他の者はいないようだ。
とにかく入ってみよう」
レンが何か感じでいるようだが、店に入ってみないことにはわからないと思った俺がロランたちを見回して言う。
「承知しました。私が先に入りますので、リリアナ様、ジョシュア様、セシルティア様は注意しながら後をついて来て下さい」
そう言ってロランが店の赤い扉をギィッと開けた。
「いらっしゃ~い」
店の中から男の低いが明るい声が聞こえた。
その声にレンがまた耳をピンッと立てる。
どういうこと?何かあるのか?と思いながらジョシュアとセシルティアと共に店内に入る。
「お邪魔するわ」
声をかけて中へ入ると淡いランプに照らされたシンプルな木造で出来た室内の中には左右には陳列棚があり、商品が美しく配列されている。
本当に美しいというのが最初の感想だった。
魔石を組み込まれた魔道具が赤や青、黄色など様々な光を淡く放っていて、魔道具ってこんなに美しいものだったかな?と思った。
邸で使用人たちが使っている掃除する魔道具は公爵家の魔道具だからか、金や白金の派手な装飾がされていて、豪華なものであったりする。
でもそれと違って魔道具自体がそれぞれの色に淡く光っているのだ。
俺はそれに感激して室内を見回した。
そして一番奥にカウンターがあり、そこに背の高い体格の良い真っ赤な髪が印象的な男が立っていた。
レアンドロも真っ赤な髪だが、この男もレアンドロに負けないくらい鮮やかな赤い色の髪だ。
店主らしき赤い髪の男と目が合った時、
男が目を見開き俺を見た。
何だろう?俺の見た目はキツく見えるから警戒されたのだろうか?
その時、俺の腕の中にいたレンがパッと飛び立ち赤い髪の男に向かって飛びながら
『ワァー、オットーーーーーーーー』
とレンが叫んだ。
「…!オットだと?!」
2
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる