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四十話 国王、国王と協力して探る
しおりを挟む結論から言うと、フローラ・サイアン男爵令嬢は神殿で保護しながら貴族学院に1ヵ月後に編入することになった。
サイアン男爵やフローラは王宮での保護を強く望んだそうだが、陛下が一蹴した。
男爵やその令嬢自らが王宮での保護を進言すること自体普通有り得ないことなんだけど、あのデビュタントの様子を見てると王宮での保護を希望してくるだろうと思ってたけど、本当に言ってきたんだと後で聞いて苦笑した。
陛下に直接言わなかっただけまだマシなのかもしれない。
陛下とはあれからサイアン男爵にもフローラにも会っていないそうだ。
陛下はデビュタント以降、サイアン男爵がどんなに謁見を希望しても直接会おうとはしなかったようで、間に陛下付きの側近の数人と魔術師何人かを挟んで神殿での保護と貴族学院編入が決まった。
フローラは王宮で保護されないことに大層不満そうだったと聞いている。
デビュタントの日の次の日から陛下たちもこちらでもお父様、ラルフやロラン、ピートの手を借り、フローラの過去や現在と周辺を探った。
フローラはサイアン男爵とメイドとして男爵邸で働いていた平民のフローラの母親が浮気して出来た子だ。
サイアン男爵夫人はかなりの勝ち気なしっかりした女性だったようで、夫のサイアン男爵が浮気をしてフローラの母親が身籠ったことを知り激怒したものの、フローラの母親を一文なしで追い出すことはせず、ある程度のお金を渡して別れさせ、フローラの母親はフローラを生んでからフローラと共に平民として市井で暮らしていたそうだ。
しかしそのしっかりしている男爵夫人がフローラが養子になる1年前に病で亡くなった。
ゲームでも亡くなっていたのかどうかは知ることは出来ないが、調べたところによると男爵夫人は病により亡くなったらしいのだが、元使用人の証言から亡くなるその日まで健康そのもののようだったのに突然苦しみ出してそのまま呆気なく亡くなってしまったとのこと。
それを聞いただけでも怪しいところがある。
病で突然なくなることもあるが、そこも調べる必要があるかもしれない。
サイアン男爵家には後継者となる第一男と第二男がいるので後継者については問題はなかったが、男爵夫人が亡くなってから1年後にサイアン男爵がフローラの母親と再婚し、フローラを養子にしたのだ。
それがテビュタントの2ヶ月前だったという。
それも前男爵夫人が亡くなってから、1年後にフローラと母親が自ら男爵家を尋ねてきたそうだ。
そこでフローラが聖魔法に顕現したことを言ったのではないだろうか。
だから男爵はすんなりとフローラの母親と再婚し、フローラを養子にしたのではないだろうか。
いくら本妻が亡くなっているとはいえ、後継者となる本妻の子供がいるのにわざわざ平民であるフローラの母親と再婚し、庶子であるフローラを養子にする必要は貴族として普通はない。
サイアン男爵とフローラの母親は浮気がバレてフローラの母親が出て行ってから再会するまで、一切会っていたりしていなかったようだからお互いに愛情があるようには見えない。
だからサイアン男爵にとっても聖魔法に顕現したフローラが自分にとって旨味があると判断したからだろう。
フローラは今まで五回の巻き戻りの記憶があると思われるが、聖魔法に顕現するのが、今回は早かったのかそのことも何かあるのだろうか?
5歳の神殿の属性判定でわからなかったということは後天的に目覚めたと見ていいだろう。
何だが疑問だらけだ。
それとどうしてすぐではなく1年後だったのだろう。
聖魔法に顕現したのが、最近だったからだとも考えられるが、もっと早くに顕現していたら…前男爵夫人の喪が明けるのを待って等も考えられるが、デビュタントで見たフローラを見ているとそこまで気を回すとは思えない。
フローラの母親、現男爵夫人がどんな人間かはわからないが、フローラとそんなに変わらない人間のようだしな。
他にも調べていくと男爵家を出てから男爵と再婚するまでの間、フローラの母親は男性関係が派手だったらしいが、フローラ自身も14歳過ぎた辺りから男性関係が活発だったようで、男爵家の養子になるまで、30人を越す男たちと関係を持っていたようだ。
俺はその話をお父様やロランから言いにくそうに遠回しに聞いたのだが、まだ成人していないのにそんなにたくさんの男と関係があったことに相当驚いた。
フローラの母親は完全に金銭目的で、主に平民の商会などを営む金持ちと関係を持っていたようだが、フローラが関係を持った男たちは身分も年齢も様々で商会の息子や高位貴族はいなかったが、男爵や子爵や下位貴族の子息たちだったようだが、中には他国の者たちもいた。
その男たちのことを調べたのだが、どこの何者かを調べても何もわからない者が数人いた。
他国の者であっても商人であるとか、貴族であるとかそれくらいわかってもいいものだが、数人は何者か素性をまったく掴めなかった。
その何者かわからない者たちとフローラはサイアン男爵の養子になってからも何度か接触していることがわかった。
最初はゲームのことが頭にあったから考えていなかったが、これは本当に他国と繋がりがある間諜の疑いが出てきた。
リリアやウルヴァランにここは乙女ゲームの世界だと聞いていたが、それだけじゃなくなってきたのではないか。
王太子たちに近付いているのは王太子や他の者たちの誰かと婚約者になる為だけじゃないのかもしれない。
一度目からそうだったのか、今回からそうなのかはわからないが、これはちゃんと調べていく必要がある。
フローラにもリリアナ、リリアと同じように巻き戻ってはやり直してる記憶があるはずで、必ずリリアナが処刑されるように持っていったという。
もしかしたら王太子や他の攻略者の攻略より、まずリリアナを死なせることが目的なのだとしたら?
以前ウルヴァランと会った時、五回の巻き戻り後、リリアナとリリアを自分の所へ連れて来ることが出来たことで、強制力という理がなくなったはずと言った。
それをフローラと邪魔する存在との契約が切れたこともあるのではないか?と推察していたが、違うのかもしれない。
フローラと邪魔する存在の契約はまだ継続中なのかもしれない。
ウルヴァランがリリアナとリリアを呼び寄せることが出来たこと。俺がリリアナとなって、今まで痩せることが出来なかったのに出来るようになったことなど、五回目までとは違うことがいろいろあることは間違いない。
フローラが最初に俺を認識した時の驚きの顔はリリアナが痩せているとは夢にも思わなかったに違いない。
フローラはまた巻き戻ってもそこは同じ世界なんだと思っていたのではないだろうか?
そこが俺を見て違うことに驚いたのではないだろうか?
そういったあたりの強制力は何故かわからないが、失くなったと見ていいのかもしれない。
しかしフローラと邪魔する存在との契約が継続中であるのなら、他に目的があるのではないか?
それがリリアナが処刑された後に起こることで実現していたはすが、巻き戻ってにしまった為、実現出来ていないのではないか。
そのことは素性の知れない他国の者たちが関係しているのではないたろうか。
なので他国の者たちとまた接触するのではないか?
その他国の者とフローラが接触するのを待つ為にフローラを泳がすことが決まった。
そのことで陛下は王太子に何も言わないことを決断した。
実質上、陛下が王太子を見放したということだ。
それはすなわち、王太子は第二王子に変わることを意味しているのだろう。
陛下にとって実の息子を見放し、フローラに対しての囮に使うようなことは父親として苦渋の決断だっただろうが、国の為と今まで王太子の行ないを見て決めたのだろう。
陛下や王妃が何度も諭して諌めてきたのをまったく聞かなかった王太子だから仕方がない。
王妃も陛下のその決断にすんなりと従ったという。
王妃にとっても辛い決断であっただろうに、これまでの年月である程度覚悟していたのかもしれない。
俺が聖魔法や全属性を使えることを王妃は知らないはずだが、王妃は何も言わないが、元来大変優秀な方だ。
何かを悟っているのだろうし、国のことを思ってのことだろう。
国王と王妃がしっかりと絆があり、お互いに想い合っていることは本当に良かったと思う。
王妃が王太子の側に付いたら厄介だっただろうから。
俺はレンを通してウルヴァランに初めて接触してみたが、『邪魔する存在はまだ掴めていない』こと、『元々この世界はゲームを元とした世界でヒロインが攻略者と婚約するまでは強制力という理があるが、それ以降のヒロインや攻略者の人生に強制力は働かない』とのこと。
『今回強制力がなくなったことは今までになかった巻き戻りがあり、同じヒロインが五回、五人いる攻略者の攻略をしたことが関係しているのではないか?』ということだった。
つまりヒロインがひと通りゲーム通りの世界を生きたからということなのだろうか?
それと邪魔する存在はまだ掴めていないということは邪魔する存在とヒロインはまだ繋がりがあると見ていいんだよな?
そのことについてウルヴァラン『そうだ』と答えた。
前男爵夫人のことやフローラの母親、フローラのこと、他国の何者かわからない者たちについては『返答出来ない。しかし邪魔する存在と関わりがある者たちならわかった時点で教える』と言われた。
ウルヴァランは『この世界に生きる人間の人生のことについては触れてはならない、関与してはならないから』と言ったが、俺の危機にレンを遣わしたりもう十分俺の人生に関与しているんだがな。
そこのウルヴァランの判断が俺には今イチわからないところがあったが、俺を死なせないように救ってくれたのだから文句は言えない。
ウルヴァランに聞いても答えてくれないことに関しては自分たちでどうにかしていくしかないんだなと思った。
この世界の神であるウルヴァランにわからないことがあることに疑問は残る。
俺はそれもウルヴァランにぶつけてみたが、『私は創造神のように完璧な存在でないから』と言われた。
「何だよ!それ!」
と俺は文句を言ったが、それについてはそれ以上答えてくれなかった。
ウルヴァランを信用していいのか?とまで思ったが、それについては『サラが私を信用してくれないことには解決しない』と言われて、それもそうだな。
ウルヴァランまで敵となったらいち人間でしかない俺たちで敵う訳がないし、ウルヴァランが俺の為に動いてくれていることは確かだし、敵なら俺をこの世界に連れてくることはしなかったのではないかと思うから信じるしかない。
恐らくウルヴァランの口から聞けなかったが、この世界でラルフ、ロラン、レンたちと出会うようにしてくれたのだろうからな。
その後レンがウルヴァランとこの世界で繋がることはいくら神獣のレンにとっても体力も魔力もかなり消耗するようで、ウルヴァランとの話の後レンは1週間眠り続け何をしても起きなかった。
レンの為にも頻繁にウルヴァランと繋がることは考えてやらなければならないと思った。
1週間後、何事もなく目覚めて元気に走り回っているレンを見てホッとした。
フローラのことをほぼ調べ終わった後、陛下はいつものメンバー、宰相、王国騎士団長、大神官長、俺、お父様、お母様、お兄様、ラルフ、ロランの他にジョシュアのお父様である王国魔術師団団長とルドルフ、ジョシュア、レアンドロとそしてケングレットも呼び寄せた。
ルドルフとジョシュアが俺のことを気付いたこともあるが、陛下はこれらの者たちに俺のことを告げて同じく魔法契約を結ふ仲間に入れ、王太子とフローラの監視を命令した。
もちろん続けて王太子とフローラに影を付けることになるが、表でも側近候補たちに監視させることにしたのだ。
それによって、側近候補であるルドルフ、レアンドロは学院にいる間、王太子の側にいることが決まった。
ケングレットは俺の護衛のままということになった。
ジョシュアはまだ入学していないが、彼のお父様と共に王太子とフローラを監視することになった。
王太子とフローラを監視する為とはいえ、王太子と側近候補たちVSリリアナというゲームと同じ構図となった。
陛下との話し合いを終えてから俺はルドルフ、ジョシュア、レアンドロ、ケングレット、ラルフ、ロランと王宮の応接室に集まった。
「ルドルフたちは婚約者に王太子とフローラを監視するという事実を告げられないが、婚約者とちゃんと話をしておいた方がいいわよ」
俺が言うとルドルフが首を傾げる。
「と、いいますと?」
「監視の為とはいえ、今までと違って王太子殿下の側にずっと侍ることになるのよ。
王太子の側にはフローラが一緒にいるでしょ。
テレサ、メリアンナに貴方たちがフローラに懸想しているのではないか?と誤解を与えてしまうかもしれないじゃない」
「私がサイアン男爵令嬢に懸想するなど有り得ません!」
レアンドロが声を大にして言った。
今ではレアンドロはテレサと仲睦まじいからな。
「だが、少なくとも表向きは学院にいる間ずっと王太子とフローラと一緒にいなければならないのよ。
テレサもメリアンナも不安になってしまうかもしれないわ」
「「!……」」
ルドルフとレアンドロがハッとした顔になり無言で顔を顰めて俺を見てくる。
「わたくしもフォローはするけど、貴方たちはちゃんと学院以外ではテレサやメリアンナとしっかりお話して信頼関係を築いておいた方がいいと思ってるのよ!
わかってくれるはずなんて思ってないでしょうね?」
ルドルフとレアンドロが肩をビクッとさせる。
「ほら!それじゃ駄目なのよ。
自分の思いはちゃんと言葉にしないと相手に伝わらない。
婚約者を不安にさせるなんてあってはならないことよ」
「承知致しました」
「了解しました」
ルドルフとレアンドロが俺の言葉に納得したようでコクと頷いて返事してきた。
「それとジョシュア」
「えっ?僕ですかぁ?」
ジョシュアが気の抜けたような呑気な返事をしてきた。
「そう。ジョシュアはまだ学院に入学していないけど、フローラが早く現れたから貴方に接触してくるかもしれないわ。気を付けて」
「僕にもですか?…はい…でも父上も知ることになりましたから大丈夫だと思いますが、邸にいる時は使用人たちに取り次がないように言っておきます。
外にいる時は気を付けます」
ジョシュアはコクコクと首を縦に振りながら俺を見ている。
「ええ。十分に気を付けてね」
「ところでリリアナ様~僕面白い人見つけたんですよ~」
ジョシュアはその場に相応しくないフワフワとした感じで話しかけてきた。
「ジョシュア、面白い人とは?」
俺が首を傾げてジョシュアを見ると
「僕、魔道具の研究をしてるんですけど~最近王都の外れに平民が営む魔道具屋が出来たんですが、これがなかなかの品揃いで」
「平民が営む魔道具屋だと?」
腕を組んでドカッと座っていたラルフが反応する。
「それは初耳ですね。
王都周辺は目を光らせていますが、知りませんでした」
ロランが興味深げにジョシュアを見る。
「先週出来たばかりですよ。
セシルと街に出た時に偶然見つけたんです。
平民が扱うには結構高度な魔道具でして、店主もなかなかの能力を持っているようですし、無口な人のようなんですけど、一端魔道具の話になるとそれはそれは饒舌になってセシルと三人でずっと語り合ってしまったんです~」
「高度な魔道具とは?」
俺はジョシュアの言葉に興味を持ち、聞き返す。
「魔石に魔力を通せば、ランプからの光で天井一面に星が見えるものとかとてもお洒落なものも置いてあります。
ですが、よく話を聞いてみると目の前で起こったことを記録出来る魔道具も作ってるようなんです。
それは店頭には並べてないんですが、見せてもらうことが出来たのですが、記録出来るものはブローチやイヤーカフとして身に付けれるものでして、かなり小さく出来るってことはかなり高度なことなんですよ~。
僕魔道具の研究にかなりお金を使っているので、持ち合わせがまだなくて、まだ購入出来ていないのですが、それこれからかなり役に立つと思いませんか?」
ジョシュアがニヤッと笑う。
「そんな高度な物を平民が扱ってると言うのですか?」
ロランが前のめりになる。
「ええ、僕何度かセシルと通ってるんですけど他にも興味あるものたくさんで…」
ジョシュアもだが、婚約者のセシルティアも魔力が高く、そして魔道具に凄く興味を持っているらしく二人で魔道具の研究もしているらしい。
ジョシュアとセシルは好きなものが同じでとても仲が良いようだ。
魔石とは魔力を含んでいたり、魔力を通すことが出来る石で、この世界では鉱山で宝石より多く産出することが出来て平民でも安価で手に入れることが出来る一般的に流通しているものだ。
その魔石を使って料理をする為の調理器具や部屋の灯りを灯すランプ、湯浴みの為に浴室に張るお湯、排泄を流してくれるもの、使用人が部屋などを掃除する時も箒ではなくゴミを吸い取る器具など、清潔を保ったり生活する上で平民たちも普通に使えて魔法、魔石のお陰で生活水準は俺たちがいた前の世界とは比べものにならない位に高い。
さっきジョシュアが言ったその場の状況を記録出来る魔道具は最初にウルヴァランと出会った時にウルヴァランに見せられた映像と同じことなら画期的なのではないか?
「その記録出来る魔道具は凄いものじゃない!?わたくもその店主と話をしてみたいわ!ジョシュア連れて行ってもらえない?」
俺もロランのように前のめりになり、興味津々にジョシュアを見る。
「もちろんです。リリアナ様が興味を持ってくれて嬉しいです。
いつでもいいですよ~今度セシルと一緒に行きませんか?
それに僕とセシルで魔法を相殺する魔道具も研究中なんです。
まだ出来ていませんが、それもサイアン男爵令嬢と対するには必要となってくるかもしれませんね」
ジョシュアはニヤッと笑ったが、なかなか鋭いな。
記録する魔道具も魔法を相殺する魔道具もあった方が絶対いい。
「なるほど。何をしてくるかわからないから必要かもしれないわね」
俺がジョシュアに向かい頷くと
「まだ完成までにはもう一歩なので、店主に相談出来るなら相談してみたいんですよね~」
ジョシュアが嬉しそうに話す。
魔道具のこともだが、店主がどんな人間なのか興味ある。
ジョシュアの話にみんな興味を持ち、みんなが行きたがったが、大勢で行くと目立つということでジョシュア、セシル、俺とロランが行くことになった。
『ボクモイクー』
レンが俺の腕の中ではしゃいで言うのでレンも連れて行くことにした。
可愛いは最強である。
白い仔猫になっているレンはとにかく可愛い!
ということで来月にフローラが学院に編入してくる前にその魔道具屋に行くことになった。
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