次こそは平和な世でのんびり気楽に生きていくつもりだったのに何でか悪役令嬢として生きていくことになってしまった!

asamurasaki

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六十一話 ルドルフside ⑤

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瘴気の沼まであと30メートルというところで、Sランクの中でも最強と言われるゴールドドラゴン1体とシルバードラゴン2体が瘴気の沼から現れた。

周りがザワめき立つが、私は呆気に取られその場に立ち尽くす。
私がSランクの魔物を見るのは初めてだ。
そもそもSランクの魔物なんてめったに出現しない。
恐らく常時魔物と対峙している自領の騎士、魔術師や王国騎士団、王国魔術師団の者たちでもほとんど見たことがないはずだ。

そんなに頻繁にSランクの魔物が出現していれば、それだけで領地だけでなく国は危機に陥るだろう。

Sランクの特に最強と言われるゴールドドラゴンとシルバードラゴンはどれだけ身体能力を魔法で強化しても物理はほぼ効かないと言われている。
おまけに魔法に対しても唯一光属性が弱点だが、それでも相当強力な最上級魔法でなければ一発で倒すことは不可能だ。

そして攻撃力も恐ろしく強く口をから吐き出す魔力で一気に何千人もの人間を木っ端微塵にしてしまうという。
それに物理がほとんど効かない強靭な身体で体当たりや尻尾で攻撃されれば、人間なんて一溜りもないだろう。

それだけSランクの魔物の力はズバ抜けていて恐ろしいと聞く。

目の前に現れたゴールドドラゴンとシルバードラゴンは私の身体の何倍もある全長10メートル以上はある鮮やかな金色と銀色の身体。

その身体だけを見るとキラキラと全身の鱗が光って美しいと言えるほどのものだが、間違いなく魔物の中で最強と言われるSランクのドラゴンだ。

尖った大きな目の中に身体と同じ金色と銀色の瞳はこちらを獲物と捕らえたようにニヤッと笑っているように感じた。

そして私たち人間なんか何人も一口で丸呑みに出来る大きな口からは尖った鋭利な牙が何本も見え、腹を空かせているのか口からはダラダラと涎と思われる液体を溢れさせている。

私は取り繕うことが出来ず身体がブルブルと恐怖に震え、腰を抜かしそうになる。
腰を抜かさなかったのはまだ自分の中にメッケンナー侯爵令息として矜持があったからだ。

ふと横のジョシュアを見るとジョシュアもこれでもかと目を見開き、口をポカンと開けてそして全身をブルブルと震わせていて恐怖に戦いているようだ。

私はこんな場なのにジョシュアも私と同じなのだということに少し安心する。

そこでもサラ殿は表情を変えず、焦ることなく平然とした顔で、ラルフ殿にゴールドドラゴンをロラン殿とグレン殿にシルバードラゴン1体の討伐を指示して、もう1体のシルバードラゴンを自分が倒すと言う。

そして後の私やジョシュア、騎士、魔術師たちに前後左右の魔物の討伐と援護を指示する。

呆気に取られて立ち尽くしていた魔術師や騎士たちがハッと我に返りサラ殿の命令通り、自分たちの周り魔物を倒すべくサラ殿やラルフ殿の後方を包囲して構えて飛びかかってくる魔物を倒していっている。

その時、固まって立ち尽くしていたジョシュアが自分もサラ殿と一緒にシルバードラゴンに倒すと言い出した。

何を言い出すんだ!無理に決まっているだろう!
恐怖で全身ブルブル震えていただろう!
何を考えてるんだ!無謀過ぎる!
でも私も恐ろしくて仕方なかったが、気がついたらジョシュアと同じようにシルバードラゴンを倒すべくサラ殿に名乗りを上げて一歩前にサラ殿の横に並んだジョシュアの隣に私も並んだ。

サラ殿から駄目だと言われるとばかり思っていたが、サラ殿はすんなりと了承して自分が使える最高の魔法を使え!とそして一発で倒せなくてもダメージを与えられれば、ドラゴンの攻撃を遅らせることが出来ると私とジョシュアを真剣に見つめながら言った。

その目は冷静に私たちを見据えていた。

反対しなかったのは私とジョシュアの力を見込んでのものではないだろう。
ここで駄目だとかやりとりをしている場合ではないことと、私とジョシュアが役に立たなくても、自分で何とかするという自信と気合いに満ちているようだった。

私は恐怖もあったが、そんなサラ殿が眩しくて見惚れてしまった。
でもそのことで私は隙を作ってしまった。

自分の横から魔物が襲いかかってきていることに気付かなったのだ。
それにいち早く気付いたのはサラ殿だった。

サラ殿が私を庇い横から私に襲ってくる魔物の前に立ちはだかった。
でも間に合わない!
サラ殿がやられてしまう!私のせいでサラ殿の命が!
絶望に染まりかけた時、サラ殿と襲いかかってきている魔物の間で目が潰れるくらいの大きな光がパァーンと弾けるように広がった。

一瞬眩過ぎる光に目を閉じたが、すぐ眼を見開くと目の前のサラ殿の髪がその光に照らされて薄紫色になっている。

どういうことだ?
私の前にサラ殿がいるので、後姿しか見えないが茶色だったサラ殿の髪があのハーベント公爵令嬢と同じ薄紫色になっている。
その時に、身長も体型も髪の長さもハーベント公爵令嬢そのものだと気付いた。

えっ?サラ殿はハーベント公爵令嬢なのか?
しかしすぐ目の前の少女の髪は茶色に戻った。

そしてサラ殿越しの前に大きな白い毛並みの獣が大きな白い光の中で浮いていた。
フサフサとした白い毛だが、見た目大きなヒョウに見える。

その半透明の光を纏った白いヒョウがサラ殿に襲いかかってきていた魔物を後ろ足で払うように蹴るとその魔物は跡形もなく消えるようにグシャッと潰れた。

私だけでなくこの場にいるみなが白いヒョウに釘付けになる。

サラ殿もしばらく呆然と立ち尽くしていたが、ハッとしたようにシルバードラゴンの方を向いた。
それに釣られて私もそちらに顔を向ける。

シルバードラゴンは黒焦げになって巨大な炭になっていた。
ゴールドドラゴンを倒したラルフ殿が私たちの目の前のシルバードラゴンも倒してくれたようだ。

何が何かわからなくなっている私をよそにラルフ殿がサラ殿に早く瘴気の沼を消せ!と言っている。

サラ殿はすぐに気を取り直して私たちに周りの援護を指示してそして私とジョシュア、グレン殿に一緒にくるように指示して私たちは瘴気の沼に向かう。
白い獣も宙に浮いたまま私たちの後をまるでサラ殿を守るようについてくる。

ラルフ殿とロラン殿は周りの残った魔物を次々と倒していってるようだ。

そしてサラ殿が私たちより一歩前に出て一人で瘴気の沼の前まで行き、沼に向かい両手をかざした。

すると詠唱もなくサラ殿の両手から半透明に金糸を纏った光が溢れ出て一気に瘴気の沼を跡形もなく消し去った。
それは一瞬のことだった。

半透明の白に金糸の混じった光は聖魔法だ。
光属性より希少な魔法で当然今まで見たことはないが、それが聖魔法だということはすぐわかった。

サラ殿は光属性だけでなく聖魔法の使い手でもあるのか?

いや、サラ殿は一瞬ではあるが、あの白いヒョウが出現した光でハーベント公爵令嬢に見えた。

ハーベント公爵令嬢は光属性も聖魔法も使えるのか?
そして現れた白いヒョウはいったい何者なんだ?
光属性の光を纏っているから魔物ではない。

いろんなことが起こり過ぎて頭がついていかない。

気付いたらすべての魔物の討伐が終わっていた。
私は何も出来なかった。

そしてすぐに父上がサラ殿の側までやってきて、サラ殿やラルフ殿、ロラン殿に感謝の言葉を述べてからすぐに私にサラ殿たちを領地の邸に案内するように指示してきた。

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