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蛇を怒らせては…なりませんよ?
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お電話ありがとうございます、けもけもネットワークでございます。
テイクアウト…でございますか?もうしわけございませんが、当店は獣は大好きでございますし豊富なラインナップが身上でございますが、テイクアウトのお食事は範囲外なのでございます。申し訳ございませんが、他のお店をお探しくださいませ。…はい、カフェではないのでございます。申し訳ございません。紛らわしい名前で大変申し訳ありません。それでは。
お電話ありがとうございます。けもけもネットワークでございます。
…お声の調子からいたしまして、お客様、体調はいかがでございますか?…過ぎたお酒は身を崩します…余計なお世話とは思いますが…はい、すみません。どうにも、お客様のお体の様子が思わしくないようでございまして。…大変失礼を、いたしました。
…お酒は、量を守れば、辛いことを忘れさせてくれる妙薬でございますね。ええ。それは私も常にそう思っておりますよ。古くから神へのささげものの定番でございましたし。私どもも、好きでございます。
…お酒を飲まねば辛い。お客様の人生も、楽なものではなかったようでございますね。…ふふ、私どもはそういうものでございますから。境目に潜む得体の知れないもの…そんな存在でございますよ。ですから、お客様。誰も聞いては居りません。ここでしたら、お好きなように仰ってよろしいかと思いますよ。
…ええ、ええ。ヒトもそうでないものも。親を選ぶことは出来ませんからね。皆が皆、子として誇りに思える親のもとに生まれつくことが出来たら。…さぞかし、幸せな世界になったのでしょうね。わたくしも、それは常にそう思っております。そうでないから…わたくしどもがここに在るのですから。
…よいのですよ、お客様。ここには、貴方が親をなじっても、それをとがめるものは居りません。仕方がないのです、子は親を選べませんから。でなければ、お客様とわたくしがこの場を持つことはなかったでしょう。…ええ、ええ。別に良いのです。神も仏も、恨んでも。この場には、誰もいないのですから。
貴方を罰するもの、苦しめるものはここには居りません。
…苦しめているとするならば、お客様ご自身かも、知れませんね。…憎いですか?あの男が。貴方の遺伝上の生成主の一人で、貴女をよその男にはした金で売り飛ばして、あなたの親を苦しめ、死に追い詰め。その過去をもちながら何食わぬ顔で、新たな家族を持ち、よき父としてあなたではない娘を愛するあの男が。
…愛は、もう求めておられないのですか…そうですか、承知いたしました。さすれば…復讐、でございますか?
人を呪わば穴二つ、と言う言葉をご存知でしょうか。誰かを殺そうと思うのならば、ご自身も、誰かに殺される覚悟は…できておられますか?
…そうですか、愚問でございました。
でしたら…最適なものが、お客様の近くに棲んでおりますね。そちらを訪ねるとよろしいでしょう。
向こうも、貴女様を待っているようです。…時折、あるのですよ。こういうことが。
蛇神は…情が深いものが多いですから。あなたの感情に、深く興味を示したようです。
愛も、憎しみも。その長い体躯で絡め取る。それが、蛇と言うものです。
…これ以上を語るのは野暮でございますね。お酒もかなり回っておられるようですし、まずはゆっくりと体を休めて…禊を済ませると、よろしいでしょう。ありのままの貴女様でもあの方ならばお喜びになられるでしょうが。『神に会う』ならば、礼儀として身を清めるのが一般的です。…望みをかなえる対価は…お分かりでしょうか。
ええ、そこまで…お考えだったのならば、わたくしどもは何も申し上げることはございません。
次は、次の生こそは、情が深い親のもとで、愛されてお育ちになられることを…わたくしどもも陰ながら願っております。…心配は、無用だと思いますが。
あなたの命を賭した宿願が、よき形で結ばれることを、私どもも陰ながら願わせていただきます。…哀れなほどに、美しき魂よ。あなたの献身で、この先沢山の魂が救われんことを。
…本日は、けもけもネットワークのご利用、ありがとうございました。
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産まれたときから、この世はつまらないものだと思っていた。
私の父親と言う奴は、真性のクズだった。母に毎日のように暴力を振るい、金をせびる。奴隷のような扱いだった。あいつの求める金を支払うため、母親は風俗に身を落とした。あいつのためにやったことなのに、あいつはそれを笑いやがった。きたねえ女だ、そうつばを吐きかけていた姿が、今でも脳裏に焼きついている。あのときだと思う。人に対して、はじめて殺意を覚えたのは。
言いなりになる母も好きではなかったけど、母は私に暴力が行きそうになるときまって体を張ってかばってくれた。あの人なりの精一杯なのだろうと、今ではわかる。誰が、好き好んで殴られるんだ。殴られそうになっていたのが、自分の娘だったからだろうと。かばったりなんてしたら、倍は殴られるのに、あの人は決まって殴られに行った。あいつの気を引いて、私が部屋から逃げるように仕向けていた。
そんな生活、してれば体はもたない。母はまもなく死んだ。あっけなかった。
あの野郎は外聞をつくろうことには並々ならぬ才能があった。母の傷だらけの体を、私のせいにしやがった。活発な娘なので、発達が少し遅いので、妻は娘のためを思って…お綺麗な言葉を並び立てて、アイツを睨むわたしを悪役に仕立て上げた。あっという間に、私は発達の遅れた癇癪もちのややこしい娘に祭り上げられた。
アイツは私には暴力は振るわなかった。…自分が描いたシナリオを、しっかりと裏付けるためだった。その代わり、ひどい言葉で私をなじった。
涙なんて、出なかった。コイツのためにわざわざ泣くなんて、水分がもったいない。ろくに構いもしないくせに、人前に出すときだけは飾り立てて、子煩悩な父親を演出するあいつに付き合うつもりはなかった。
ある日、私は売られた。
外見をつくろっていたアイツ。それでも、金の工面が難しくなったらしい。
ニヤニヤした、蛙のような脂ぎった太った男に私は売られた。いくらで売られたかなんて知らないけれど。まともじゃないことだけは、わかっていた。
ここでは殴られることはなかったが、気色悪いところだった。私はもう何も感じなくなっていた。能面のように、表情が全く動かなくなっていたけれど、あのヒキガエルは『そこがいい』なんて言ってよく私を汚い寝室に連れ込んだ。馬鹿じゃないかと思っていた。こんな小さいガキしか相手がいないなんて。
そんな気持ちがあのかえるに伝わったのかもしれない。ある日、私は『処分』されそうになった。さすがに、殺されるのは嫌だ。嫌いな相手だけど生活パターンは知っていたので、向こうが私の処分法を調べている間に、さっさと私は逃げた。
あいつがあの汚い部屋に篭っている間に、てんぷら油をなべに入れて。かんかんに熱して、そのまま逃げた。
名前を変え、職も転々として。とりあえず日々を生きた。死ぬ理由も、なかったし。
そんなある日。
アイツを、久々に見かけた。…あいつと暮らしたところから、ずっと離れていたのに。
奥さんを連れて。…小さな、娘も連れて。奥さんのお腹は大きかった。
幸せ家族が、わたしの目の前にいた。
でも。でも。アイツの、あの顔は。覚えがある。母をなくしたあと、他の人に対して浮かべていた、あの笑い方。悪いことを隠すときの、笑い方。伊達にあいつの娘やってたわけじゃない。小さな娘、そして大きなお腹を眺めているときのあの笑い方は。
…あんたは、まだそんなことを考えているのか。
私一人では、物足りなかったのか。まだ、犠牲にしようと言うのか。その時、私は決意した。
もともと生きていても実感なんてなかった命だ。…お前は、私が『処分』する。
その後のことはあまり覚えていない。ふらふらと家に戻って、あまり飲み慣れなかったお酒を飲んで。お酒は嫌いだった。あいつがあれを飲むと、決まって私らを殴ってきたから。…でも、このときだけは。アイツを消す決意をしたこのときだけは、お酒の力を借りてでもその決意を強くしたかった。
あいつを消すと決めたけど。物理的に消すのは、おそらくたやすい。一般人を狙うのはたやすい。でも、誰かを巻き込みたくはなかった。…できれば、あの子供たちには、自分に流れる血があの鬼畜のものだとは知らせたくなかった。何も知らない子供に、自分の父親の罪深さを思い知らせるのは、どうにも抵抗があった。
…できたら、自然死を装って殺したい。保険金がでれば、あの母娘たちも多少は暮らしていけるだろう。つらつらとアルコールの回った頭で考えつつ、ぼんやりとしていたら、眠ってしまったようだった。
気がつけば、懐かしい部屋にいた。母親が、生きていたころ。…あいつと三人で、暮らしていた家。幸せを感じる瞬間なんて、これっぽっちもなかったけど。確かに、あそこは『家』だった。そこで、私はほとんどつかうことのなかった電話を使って、どこかと話をしていた。クソがつくほど丁寧な相手と、気がつけば生い立ちにかかわる話をしていた。相手は、私の心を見透かす発言をしてきたが、不思議と警戒心は沸かなかったし、反発も感じなかった。この人は、信じられる。なぜかそう感じていた。
『彼』は、わたしに復讐に手を貸すといってくれた。――ならば、信じてみよう。これがうまくいかなければ、別の手を考えれば良い。おそらく、お腹の子が出てくるまで位の猶予はあるだろうと、鬼畜の考えそうな計画をたどり、やはり自分はあれの娘なんだと自嘲した。
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なんとなく、今日だと思った。根拠は、なかったけど。
朝から、シャワーを浴びて。一番まともに見える服に着替えて。おかしいと思ったけど、家を出て、導かれるように、足の赴くままに歩いた。
…目的地は、思ったよりも近くにあった。小高い山の中腹にある、小さなお社。鳥居をくぐった瞬間、空気がぴんと張り詰めた気がした。終わりが近づいているというのに、私の心は凪いでいた。むしろ、この空気の中が心地よくて、いつまでもここにいたい気持ちですらあった。
ゆっくりと、導かれるままに石段を登る。石段が終わった先に、気がつけば真っ白な人影があった。
―ー綺麗。
白い着物、白い被り物。そこから覗く長い髪の毛も、真っ白。肌も驚くほど白くて。だけど、唇だけが…鮮やかな紅色だった。かぶりもののせいで、表情はわからなかったけれど、その唇は喜色を現すように、弧を描いていることだけは良くわかった。
「そなたが、妾を呼んだのか」
その人の唇は弧を描いたまま全く動いていなかったから頭に直接語りかけてきたのだろう。…脳天からしびれるような甘い、甘い声。ふらつく頭を叱咤して、はい、と頷いた。
「其を為すために、おのが命を賭ける、覚悟はありや、なしや?」
再び頷く。そのために、生きてきたんだ。そう思えるくらいには、もう覚悟は決まっていた。
「私はこの先、どうなろうと構わない。あいつだけは…生かしておけない」
それを聞いて、わずかに微笑んでいた美しい人は、急に口の端を下げた。
「あのような人非人のために、おのが命をかけるとは。…なんとも、嘆かわしいことよ」
「いえ」
私は思わず、その人の言葉をさえぎってしまった。しまったとは思ったけれど、勢いのまままくし立てた。
「あれは生かしていてはもっと…沢山の人を不幸にするでしょう。そのためなら、かまいません。…死ぬ理由もないので、生きていただけですから」
「哀れな…」
悲しそうに綺麗な人が首を振るけれど。私の理由は、ずっともっと利己的だ。
「あれに止めを刺すためなら、私は何回だって死んで見せます。憎いんです。ただそれだけです」
思いのたけを、言葉に込めると。その人は、諦めたようだった。
「…仕方あるまい。もとより、そのつもりであった」
「ありがとうございます」
頭を下げる。
「よい。…さあ、近う寄れ」
お主の、願いを叶えよう。
私は誘われるまま、その人の下へと歩み寄り―ー
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「哀れよの…」
白き蛇神は、頭を振って、石段の下に『崩れ落ちた』抜け殻を眺めた。彼女の左手には、白く光り輝く掌ほどの『卵』が大事そうに其の掌に包まれている。
契約は、成った。彼女が命を賭け、蛇神が執行した『呪い』は、すぐさまあの鬼畜を苛むだろう。
このような美しい魂を、痛めつけたヒトモドキに彼女は強い怒りを覚えていた。彼女は美しいものを大変好む。彼女の御座所には、彼女のお気に入りが所狭しと飾られているのだ。そして、この魂も、彼女のお気に入りとなった。普段欲の薄い彼女ではあるが、お気に入りを穢す者には徹底的に容赦しない。彼女が蛇神の一端である所以でもある。
「ふふふ。妾のお気に入りを穢したものには、取って置きの躾を用意しようぞ」
紅の美しい唇が、妖しく弧を描く。生温い死では容赦せぬ。死してもなお、苦しめばよい。
「お前は決して、あれ以外を憎みはせなんだ。…憎んでも、仕方の無いものであったろうに」
そういって、掌の中の卵に頬を摺り寄せる。
ああ、美しくも悲しい魂よ。あのような凄惨な生であっても、お前は心から人を憎まなかった。
「これからは、妾が沢山、沢山愛してやろう。…わが子と、してな」
卵を両手でいつくしみつつ、頬ずりしながら蛇神は幸せそうに微笑む。
「男なれば、我が夫にしても良いの。女なれば、出来うる限りの才を与えて、国一番の美姫としてやろう。…別に、夫を探さぬでもよいの。妾とともに、楽しく暮らせばそれでよいのじゃ」
「妾は神の端くれじゃからな…ああ、楽しみじゃ。お前が孵る日が。それまで、妾がずうっと、ずうっと、暖めるからのぅ」
幸せそうに微笑んだまま、蛇神は消えた。静寂を取り戻した境内には、物言わぬ亡骸だけが残された。
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神社で、女性が階段を踏み外して亡くなった。昼間、酒を飲みながら階段を登っていて足を踏み外したそうで、彼女のそばには飲みかけの缶チューハイがあり、体内からアルコールが検出されたため、転落死とされた。
その近所で、とある男性の家が全焼した。逃げ延びた家人の話によると、突然狂ったように暴れだした家の主人が、訳のわからないことを叫びながら、家中にガソリンをまき、泣きながら火をつけたという。「やめろ」「許してくれ」「そんなつもりではなかった」そんなことを叫びながら、「死にたくない」「助けてくれ」と泣き叫びながらガソリンを頭からかぶり、火をつけたそうだ。
その凶行にショックを受けた奥方は、そのまま娘とともに実家に戻り、療養してそのままその土地に戻ることはなかった。どこからか、生前の夫の悪行を記した怪文書が彼女の心を苛んだためだ。親族は事実無根と一笑に付したが、何度も送りつけられてくる文章、その情報の正確性に疑問を呈した親族の一人が、秘密裏に調査をした結果、元夫だった人間が過去に浮気され離婚したと話していた事実とは異なり、元妻はかなり不審な死を遂げており、娘はどこかにおいやられ行方不明だという結果が出た。
それを知った妻は、ショックのあまり早産となったが、何とか母子ともに命は助かった。
愛を語らい育んだ夫が悪鬼のような男であったことに妻は心を痛め、心を損なったが、親族をあげて療養させ、ようやく持ち直し、数年後優しい遠い親戚の男性と再婚した。同じように傷ついていた娘たちも、新しい父になついているという。
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「母上」
白の君の御座所では、彼女と同じような白雪の髪、紅玉の瞳を持った幼い男の子が白の装束に身を包み、母である白の君と相対していた。
「なんじゃ、我が息子よ」
白の君は、黒檀で出来た脇息にもたれかかり、正面に正座する息子の顔をひたすらいとおしげに眺めている。可愛い盛りなのでいつも撫で回していたのだが、そろそろ羞恥心が出てきた息子に「過度な接触はご遠慮ください」と真顔で説教され、触れ合いは一日に三回まで、と制限されてしまったのだ。息子愛が日々爆発する白の君は、近頃もっぱら息子に骨抜きにされていた。
「そろそろ評定の時期でございます。母上も、ご出立の準備をなさいませ」
「嫌じゃ~…」
「母上!」
近年は毎年の出雲への出仕すら息子と離れたくないとしぶるようになってしまった母を何とかして仕事へと行かせるのが彼の仕事であった。
「母上が私にお構いになるのはかまわないのですが、それゆえ母上が他の神々に悪し様に言われるのは私は耐え難いのです。どうかお聞きどけなさいませ」
今年はこの切り口でいこうと決めていた言葉を告げ、母と瓜二つの美しい顔を歪めて息子は母に訴える。
「…それはならぬ。我が息子の憂いは晴らさねばならぬな」
「…母上!」
「あんな用事さっさと済ませて、お前の素晴らしさを他の者どもに思い知らせ…しかしお前に変な虫がつくのは耐え難い…いや、この際であるからして…」
「…母上?」
「心配するでない息子よ!母がお前の素晴らしさを他の者どもに一月ばかり語ってこよう!すぐ帰るでな、きちんとお利口にするのじゃぞ!」
今までの渋り具合は嘘のように、すっと立ち上がると白の君はいつものように息子のさらさらの白雪の頭を撫で回し、風のように去っていった。
取り残された息子は、乱れた髪を撫で付けて整えると、大きく息をついた。
「母上は…ご心配が過ぎますよ」
そう言葉はつむいでいても、彼の唇は柔らかく弧を描いていた。
「僕は…お母様の息子で、幸せです」
一生かけて、お母様のおそばに。そう笑う息子の顔は、稚児とは思えぬほど、凄絶な色気に満ちていた。
テイクアウト…でございますか?もうしわけございませんが、当店は獣は大好きでございますし豊富なラインナップが身上でございますが、テイクアウトのお食事は範囲外なのでございます。申し訳ございませんが、他のお店をお探しくださいませ。…はい、カフェではないのでございます。申し訳ございません。紛らわしい名前で大変申し訳ありません。それでは。
お電話ありがとうございます。けもけもネットワークでございます。
…お声の調子からいたしまして、お客様、体調はいかがでございますか?…過ぎたお酒は身を崩します…余計なお世話とは思いますが…はい、すみません。どうにも、お客様のお体の様子が思わしくないようでございまして。…大変失礼を、いたしました。
…お酒は、量を守れば、辛いことを忘れさせてくれる妙薬でございますね。ええ。それは私も常にそう思っておりますよ。古くから神へのささげものの定番でございましたし。私どもも、好きでございます。
…お酒を飲まねば辛い。お客様の人生も、楽なものではなかったようでございますね。…ふふ、私どもはそういうものでございますから。境目に潜む得体の知れないもの…そんな存在でございますよ。ですから、お客様。誰も聞いては居りません。ここでしたら、お好きなように仰ってよろしいかと思いますよ。
…ええ、ええ。ヒトもそうでないものも。親を選ぶことは出来ませんからね。皆が皆、子として誇りに思える親のもとに生まれつくことが出来たら。…さぞかし、幸せな世界になったのでしょうね。わたくしも、それは常にそう思っております。そうでないから…わたくしどもがここに在るのですから。
…よいのですよ、お客様。ここには、貴方が親をなじっても、それをとがめるものは居りません。仕方がないのです、子は親を選べませんから。でなければ、お客様とわたくしがこの場を持つことはなかったでしょう。…ええ、ええ。別に良いのです。神も仏も、恨んでも。この場には、誰もいないのですから。
貴方を罰するもの、苦しめるものはここには居りません。
…苦しめているとするならば、お客様ご自身かも、知れませんね。…憎いですか?あの男が。貴方の遺伝上の生成主の一人で、貴女をよその男にはした金で売り飛ばして、あなたの親を苦しめ、死に追い詰め。その過去をもちながら何食わぬ顔で、新たな家族を持ち、よき父としてあなたではない娘を愛するあの男が。
…愛は、もう求めておられないのですか…そうですか、承知いたしました。さすれば…復讐、でございますか?
人を呪わば穴二つ、と言う言葉をご存知でしょうか。誰かを殺そうと思うのならば、ご自身も、誰かに殺される覚悟は…できておられますか?
…そうですか、愚問でございました。
でしたら…最適なものが、お客様の近くに棲んでおりますね。そちらを訪ねるとよろしいでしょう。
向こうも、貴女様を待っているようです。…時折、あるのですよ。こういうことが。
蛇神は…情が深いものが多いですから。あなたの感情に、深く興味を示したようです。
愛も、憎しみも。その長い体躯で絡め取る。それが、蛇と言うものです。
…これ以上を語るのは野暮でございますね。お酒もかなり回っておられるようですし、まずはゆっくりと体を休めて…禊を済ませると、よろしいでしょう。ありのままの貴女様でもあの方ならばお喜びになられるでしょうが。『神に会う』ならば、礼儀として身を清めるのが一般的です。…望みをかなえる対価は…お分かりでしょうか。
ええ、そこまで…お考えだったのならば、わたくしどもは何も申し上げることはございません。
次は、次の生こそは、情が深い親のもとで、愛されてお育ちになられることを…わたくしどもも陰ながら願っております。…心配は、無用だと思いますが。
あなたの命を賭した宿願が、よき形で結ばれることを、私どもも陰ながら願わせていただきます。…哀れなほどに、美しき魂よ。あなたの献身で、この先沢山の魂が救われんことを。
…本日は、けもけもネットワークのご利用、ありがとうございました。
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産まれたときから、この世はつまらないものだと思っていた。
私の父親と言う奴は、真性のクズだった。母に毎日のように暴力を振るい、金をせびる。奴隷のような扱いだった。あいつの求める金を支払うため、母親は風俗に身を落とした。あいつのためにやったことなのに、あいつはそれを笑いやがった。きたねえ女だ、そうつばを吐きかけていた姿が、今でも脳裏に焼きついている。あのときだと思う。人に対して、はじめて殺意を覚えたのは。
言いなりになる母も好きではなかったけど、母は私に暴力が行きそうになるときまって体を張ってかばってくれた。あの人なりの精一杯なのだろうと、今ではわかる。誰が、好き好んで殴られるんだ。殴られそうになっていたのが、自分の娘だったからだろうと。かばったりなんてしたら、倍は殴られるのに、あの人は決まって殴られに行った。あいつの気を引いて、私が部屋から逃げるように仕向けていた。
そんな生活、してれば体はもたない。母はまもなく死んだ。あっけなかった。
あの野郎は外聞をつくろうことには並々ならぬ才能があった。母の傷だらけの体を、私のせいにしやがった。活発な娘なので、発達が少し遅いので、妻は娘のためを思って…お綺麗な言葉を並び立てて、アイツを睨むわたしを悪役に仕立て上げた。あっという間に、私は発達の遅れた癇癪もちのややこしい娘に祭り上げられた。
アイツは私には暴力は振るわなかった。…自分が描いたシナリオを、しっかりと裏付けるためだった。その代わり、ひどい言葉で私をなじった。
涙なんて、出なかった。コイツのためにわざわざ泣くなんて、水分がもったいない。ろくに構いもしないくせに、人前に出すときだけは飾り立てて、子煩悩な父親を演出するあいつに付き合うつもりはなかった。
ある日、私は売られた。
外見をつくろっていたアイツ。それでも、金の工面が難しくなったらしい。
ニヤニヤした、蛙のような脂ぎった太った男に私は売られた。いくらで売られたかなんて知らないけれど。まともじゃないことだけは、わかっていた。
ここでは殴られることはなかったが、気色悪いところだった。私はもう何も感じなくなっていた。能面のように、表情が全く動かなくなっていたけれど、あのヒキガエルは『そこがいい』なんて言ってよく私を汚い寝室に連れ込んだ。馬鹿じゃないかと思っていた。こんな小さいガキしか相手がいないなんて。
そんな気持ちがあのかえるに伝わったのかもしれない。ある日、私は『処分』されそうになった。さすがに、殺されるのは嫌だ。嫌いな相手だけど生活パターンは知っていたので、向こうが私の処分法を調べている間に、さっさと私は逃げた。
あいつがあの汚い部屋に篭っている間に、てんぷら油をなべに入れて。かんかんに熱して、そのまま逃げた。
名前を変え、職も転々として。とりあえず日々を生きた。死ぬ理由も、なかったし。
そんなある日。
アイツを、久々に見かけた。…あいつと暮らしたところから、ずっと離れていたのに。
奥さんを連れて。…小さな、娘も連れて。奥さんのお腹は大きかった。
幸せ家族が、わたしの目の前にいた。
でも。でも。アイツの、あの顔は。覚えがある。母をなくしたあと、他の人に対して浮かべていた、あの笑い方。悪いことを隠すときの、笑い方。伊達にあいつの娘やってたわけじゃない。小さな娘、そして大きなお腹を眺めているときのあの笑い方は。
…あんたは、まだそんなことを考えているのか。
私一人では、物足りなかったのか。まだ、犠牲にしようと言うのか。その時、私は決意した。
もともと生きていても実感なんてなかった命だ。…お前は、私が『処分』する。
その後のことはあまり覚えていない。ふらふらと家に戻って、あまり飲み慣れなかったお酒を飲んで。お酒は嫌いだった。あいつがあれを飲むと、決まって私らを殴ってきたから。…でも、このときだけは。アイツを消す決意をしたこのときだけは、お酒の力を借りてでもその決意を強くしたかった。
あいつを消すと決めたけど。物理的に消すのは、おそらくたやすい。一般人を狙うのはたやすい。でも、誰かを巻き込みたくはなかった。…できれば、あの子供たちには、自分に流れる血があの鬼畜のものだとは知らせたくなかった。何も知らない子供に、自分の父親の罪深さを思い知らせるのは、どうにも抵抗があった。
…できたら、自然死を装って殺したい。保険金がでれば、あの母娘たちも多少は暮らしていけるだろう。つらつらとアルコールの回った頭で考えつつ、ぼんやりとしていたら、眠ってしまったようだった。
気がつけば、懐かしい部屋にいた。母親が、生きていたころ。…あいつと三人で、暮らしていた家。幸せを感じる瞬間なんて、これっぽっちもなかったけど。確かに、あそこは『家』だった。そこで、私はほとんどつかうことのなかった電話を使って、どこかと話をしていた。クソがつくほど丁寧な相手と、気がつけば生い立ちにかかわる話をしていた。相手は、私の心を見透かす発言をしてきたが、不思議と警戒心は沸かなかったし、反発も感じなかった。この人は、信じられる。なぜかそう感じていた。
『彼』は、わたしに復讐に手を貸すといってくれた。――ならば、信じてみよう。これがうまくいかなければ、別の手を考えれば良い。おそらく、お腹の子が出てくるまで位の猶予はあるだろうと、鬼畜の考えそうな計画をたどり、やはり自分はあれの娘なんだと自嘲した。
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なんとなく、今日だと思った。根拠は、なかったけど。
朝から、シャワーを浴びて。一番まともに見える服に着替えて。おかしいと思ったけど、家を出て、導かれるように、足の赴くままに歩いた。
…目的地は、思ったよりも近くにあった。小高い山の中腹にある、小さなお社。鳥居をくぐった瞬間、空気がぴんと張り詰めた気がした。終わりが近づいているというのに、私の心は凪いでいた。むしろ、この空気の中が心地よくて、いつまでもここにいたい気持ちですらあった。
ゆっくりと、導かれるままに石段を登る。石段が終わった先に、気がつけば真っ白な人影があった。
―ー綺麗。
白い着物、白い被り物。そこから覗く長い髪の毛も、真っ白。肌も驚くほど白くて。だけど、唇だけが…鮮やかな紅色だった。かぶりもののせいで、表情はわからなかったけれど、その唇は喜色を現すように、弧を描いていることだけは良くわかった。
「そなたが、妾を呼んだのか」
その人の唇は弧を描いたまま全く動いていなかったから頭に直接語りかけてきたのだろう。…脳天からしびれるような甘い、甘い声。ふらつく頭を叱咤して、はい、と頷いた。
「其を為すために、おのが命を賭ける、覚悟はありや、なしや?」
再び頷く。そのために、生きてきたんだ。そう思えるくらいには、もう覚悟は決まっていた。
「私はこの先、どうなろうと構わない。あいつだけは…生かしておけない」
それを聞いて、わずかに微笑んでいた美しい人は、急に口の端を下げた。
「あのような人非人のために、おのが命をかけるとは。…なんとも、嘆かわしいことよ」
「いえ」
私は思わず、その人の言葉をさえぎってしまった。しまったとは思ったけれど、勢いのまままくし立てた。
「あれは生かしていてはもっと…沢山の人を不幸にするでしょう。そのためなら、かまいません。…死ぬ理由もないので、生きていただけですから」
「哀れな…」
悲しそうに綺麗な人が首を振るけれど。私の理由は、ずっともっと利己的だ。
「あれに止めを刺すためなら、私は何回だって死んで見せます。憎いんです。ただそれだけです」
思いのたけを、言葉に込めると。その人は、諦めたようだった。
「…仕方あるまい。もとより、そのつもりであった」
「ありがとうございます」
頭を下げる。
「よい。…さあ、近う寄れ」
お主の、願いを叶えよう。
私は誘われるまま、その人の下へと歩み寄り―ー
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「哀れよの…」
白き蛇神は、頭を振って、石段の下に『崩れ落ちた』抜け殻を眺めた。彼女の左手には、白く光り輝く掌ほどの『卵』が大事そうに其の掌に包まれている。
契約は、成った。彼女が命を賭け、蛇神が執行した『呪い』は、すぐさまあの鬼畜を苛むだろう。
このような美しい魂を、痛めつけたヒトモドキに彼女は強い怒りを覚えていた。彼女は美しいものを大変好む。彼女の御座所には、彼女のお気に入りが所狭しと飾られているのだ。そして、この魂も、彼女のお気に入りとなった。普段欲の薄い彼女ではあるが、お気に入りを穢す者には徹底的に容赦しない。彼女が蛇神の一端である所以でもある。
「ふふふ。妾のお気に入りを穢したものには、取って置きの躾を用意しようぞ」
紅の美しい唇が、妖しく弧を描く。生温い死では容赦せぬ。死してもなお、苦しめばよい。
「お前は決して、あれ以外を憎みはせなんだ。…憎んでも、仕方の無いものであったろうに」
そういって、掌の中の卵に頬を摺り寄せる。
ああ、美しくも悲しい魂よ。あのような凄惨な生であっても、お前は心から人を憎まなかった。
「これからは、妾が沢山、沢山愛してやろう。…わが子と、してな」
卵を両手でいつくしみつつ、頬ずりしながら蛇神は幸せそうに微笑む。
「男なれば、我が夫にしても良いの。女なれば、出来うる限りの才を与えて、国一番の美姫としてやろう。…別に、夫を探さぬでもよいの。妾とともに、楽しく暮らせばそれでよいのじゃ」
「妾は神の端くれじゃからな…ああ、楽しみじゃ。お前が孵る日が。それまで、妾がずうっと、ずうっと、暖めるからのぅ」
幸せそうに微笑んだまま、蛇神は消えた。静寂を取り戻した境内には、物言わぬ亡骸だけが残された。
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神社で、女性が階段を踏み外して亡くなった。昼間、酒を飲みながら階段を登っていて足を踏み外したそうで、彼女のそばには飲みかけの缶チューハイがあり、体内からアルコールが検出されたため、転落死とされた。
その近所で、とある男性の家が全焼した。逃げ延びた家人の話によると、突然狂ったように暴れだした家の主人が、訳のわからないことを叫びながら、家中にガソリンをまき、泣きながら火をつけたという。「やめろ」「許してくれ」「そんなつもりではなかった」そんなことを叫びながら、「死にたくない」「助けてくれ」と泣き叫びながらガソリンを頭からかぶり、火をつけたそうだ。
その凶行にショックを受けた奥方は、そのまま娘とともに実家に戻り、療養してそのままその土地に戻ることはなかった。どこからか、生前の夫の悪行を記した怪文書が彼女の心を苛んだためだ。親族は事実無根と一笑に付したが、何度も送りつけられてくる文章、その情報の正確性に疑問を呈した親族の一人が、秘密裏に調査をした結果、元夫だった人間が過去に浮気され離婚したと話していた事実とは異なり、元妻はかなり不審な死を遂げており、娘はどこかにおいやられ行方不明だという結果が出た。
それを知った妻は、ショックのあまり早産となったが、何とか母子ともに命は助かった。
愛を語らい育んだ夫が悪鬼のような男であったことに妻は心を痛め、心を損なったが、親族をあげて療養させ、ようやく持ち直し、数年後優しい遠い親戚の男性と再婚した。同じように傷ついていた娘たちも、新しい父になついているという。
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「母上」
白の君の御座所では、彼女と同じような白雪の髪、紅玉の瞳を持った幼い男の子が白の装束に身を包み、母である白の君と相対していた。
「なんじゃ、我が息子よ」
白の君は、黒檀で出来た脇息にもたれかかり、正面に正座する息子の顔をひたすらいとおしげに眺めている。可愛い盛りなのでいつも撫で回していたのだが、そろそろ羞恥心が出てきた息子に「過度な接触はご遠慮ください」と真顔で説教され、触れ合いは一日に三回まで、と制限されてしまったのだ。息子愛が日々爆発する白の君は、近頃もっぱら息子に骨抜きにされていた。
「そろそろ評定の時期でございます。母上も、ご出立の準備をなさいませ」
「嫌じゃ~…」
「母上!」
近年は毎年の出雲への出仕すら息子と離れたくないとしぶるようになってしまった母を何とかして仕事へと行かせるのが彼の仕事であった。
「母上が私にお構いになるのはかまわないのですが、それゆえ母上が他の神々に悪し様に言われるのは私は耐え難いのです。どうかお聞きどけなさいませ」
今年はこの切り口でいこうと決めていた言葉を告げ、母と瓜二つの美しい顔を歪めて息子は母に訴える。
「…それはならぬ。我が息子の憂いは晴らさねばならぬな」
「…母上!」
「あんな用事さっさと済ませて、お前の素晴らしさを他の者どもに思い知らせ…しかしお前に変な虫がつくのは耐え難い…いや、この際であるからして…」
「…母上?」
「心配するでない息子よ!母がお前の素晴らしさを他の者どもに一月ばかり語ってこよう!すぐ帰るでな、きちんとお利口にするのじゃぞ!」
今までの渋り具合は嘘のように、すっと立ち上がると白の君はいつものように息子のさらさらの白雪の頭を撫で回し、風のように去っていった。
取り残された息子は、乱れた髪を撫で付けて整えると、大きく息をついた。
「母上は…ご心配が過ぎますよ」
そう言葉はつむいでいても、彼の唇は柔らかく弧を描いていた。
「僕は…お母様の息子で、幸せです」
一生かけて、お母様のおそばに。そう笑う息子の顔は、稚児とは思えぬほど、凄絶な色気に満ちていた。
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