10 / 46
第二草
10・変化
しおりを挟む
「誰から触るの?」
「私から」「オレから」
「「あっ」」
オレとチャミちゃんの声がきれいに重なった。
「あー、ではどうぞ」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて、彼女は足を進める。あ、何が起きるかもわからないのに、先にいかせてしまって良かったかな。
「大丈夫なの。悪いことが起きるのは次に触れなかった時だけだから」
声だけのアイツがそう言った。姿を見せてくれないのかな。
「どうしても見たいの?」
そう聞かれてオレは頷く。
「……」
沈黙が続く。結局見せてくれないのかよ。
目の前で、チャミちゃんに光が集まる。腕や足の毛が減って、肌が見える。服を着せておいて良かったと心から思った。こちらをみるチャミちゃん、顔つきがより人に近づいた。あと変わったところは……、腕に何かが現れたくらいか。何だあれは?
「はい、次はお兄さん」
ロイスに指示されオレはチャミちゃんと替わった。
「ここの力って何だ?」
「ここのは特殊なものと聞いています。ガイドが詳しく教えてくれるそうですが、変化の力と伝わっています」
「変化――、チャミちゃんの姿が変わったからそれかな?」
オレは光に触れる。ずるりと中に何かが流れ込んでくる。何だ、これ……。
「……アタシも」
小さな光がオレの手の上にきた。ガイドか?
人のような形の薄い光になった。ただ、薄い光なので姿形はさだかではなかった。
首に何かがはまる。チャミちゃんみたいな飾りがオレにも現れた。
「あとはヨキだね」
どうやら終わったらしい。
「ロイス、――」
オレと交代でヨキが入っていく。オレは自分の手足を確かめた。獣っぽさがだいぶなくなった。手先と足先はまだ毛に被われているがほぼ人の体だ。青年と少年の間みたいな体つき。しっぽが残ってしまった。少し邪魔だ……。顔はいったいどうなっているんだろうか。あとで見られるようなら確認しよう。
ん、んん? うさぎの耳はそのまま残ってる。チャミちゃんを見るとうさぎ耳があった。そういえばこれはあるのが当たり前すぎてスルーしてたな。
「う、わぁぁ」
「ヨキ!!」
ヨキのとかげの肌が人のそれに変化する。手足の鱗としっぽを残して変化が終わった。ヨキは足に飾りがあった。
って、気のせいだろうか。ヨキに胸が出来たように見える。顔もよく見れば可愛い女の子じゃないか。
オレは急いで布を渡そうとするが、ロイスが先に自分の上着にしていた服を脱ぎ、ふらっと出てきたヨキにかけていた。
「いってらっしゃい」
「行ってきます。ロイス」
大事そうにロイスの服を持つヨキ。引き離すのは酷だがもうヨキは力に触れてしまった。次に向かうしかない。
「ここから先に進めば出口があります。ほぼ一本道なので迷うことはないでしょう」
「ありがとう」
オレは忘れないうちにとロイスにアンチドートをかけた。中だけ治すというのはなかなか難しいがなんとか出来た気がする。
「あの――」
何か言おうとしたがロイスはいったん口をつむぐ。ヨキも父親もどうやって治ったかオレが言った通りに黙ってくれていたのだろう。
「ありがとうございます。ヨキをよろしくお願いします」
たぶん、他にも治療してくれといいたいのかもしれない。だが、オレたちはもう先に行かなくてはいけないのは彼も理解しているようで、先ほど一度口を閉じたのだろう。街の事と友達の事を天秤にかけさせてしまった。
恐らく原因は取り除いたと言ってあげたいけれど、ここから治るまでどれくらいかかるかはわからない。それにあの話にも繋がってしまう。
「ロイス……」
ヨキがロイスに手を伸ばす。
「一緒に…………行けないよ」
彼は指先を合わせてヨキに見せる。ヨキもそれに応えるように指先を合わせる。二人の挨拶なのだろう。
「ずっと友達だよ」
ロイスの言葉にヨキはゆっくりと頷いた。
「「バイバイ」」
「私から」「オレから」
「「あっ」」
オレとチャミちゃんの声がきれいに重なった。
「あー、ではどうぞ」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて、彼女は足を進める。あ、何が起きるかもわからないのに、先にいかせてしまって良かったかな。
「大丈夫なの。悪いことが起きるのは次に触れなかった時だけだから」
声だけのアイツがそう言った。姿を見せてくれないのかな。
「どうしても見たいの?」
そう聞かれてオレは頷く。
「……」
沈黙が続く。結局見せてくれないのかよ。
目の前で、チャミちゃんに光が集まる。腕や足の毛が減って、肌が見える。服を着せておいて良かったと心から思った。こちらをみるチャミちゃん、顔つきがより人に近づいた。あと変わったところは……、腕に何かが現れたくらいか。何だあれは?
「はい、次はお兄さん」
ロイスに指示されオレはチャミちゃんと替わった。
「ここの力って何だ?」
「ここのは特殊なものと聞いています。ガイドが詳しく教えてくれるそうですが、変化の力と伝わっています」
「変化――、チャミちゃんの姿が変わったからそれかな?」
オレは光に触れる。ずるりと中に何かが流れ込んでくる。何だ、これ……。
「……アタシも」
小さな光がオレの手の上にきた。ガイドか?
人のような形の薄い光になった。ただ、薄い光なので姿形はさだかではなかった。
首に何かがはまる。チャミちゃんみたいな飾りがオレにも現れた。
「あとはヨキだね」
どうやら終わったらしい。
「ロイス、――」
オレと交代でヨキが入っていく。オレは自分の手足を確かめた。獣っぽさがだいぶなくなった。手先と足先はまだ毛に被われているがほぼ人の体だ。青年と少年の間みたいな体つき。しっぽが残ってしまった。少し邪魔だ……。顔はいったいどうなっているんだろうか。あとで見られるようなら確認しよう。
ん、んん? うさぎの耳はそのまま残ってる。チャミちゃんを見るとうさぎ耳があった。そういえばこれはあるのが当たり前すぎてスルーしてたな。
「う、わぁぁ」
「ヨキ!!」
ヨキのとかげの肌が人のそれに変化する。手足の鱗としっぽを残して変化が終わった。ヨキは足に飾りがあった。
って、気のせいだろうか。ヨキに胸が出来たように見える。顔もよく見れば可愛い女の子じゃないか。
オレは急いで布を渡そうとするが、ロイスが先に自分の上着にしていた服を脱ぎ、ふらっと出てきたヨキにかけていた。
「いってらっしゃい」
「行ってきます。ロイス」
大事そうにロイスの服を持つヨキ。引き離すのは酷だがもうヨキは力に触れてしまった。次に向かうしかない。
「ここから先に進めば出口があります。ほぼ一本道なので迷うことはないでしょう」
「ありがとう」
オレは忘れないうちにとロイスにアンチドートをかけた。中だけ治すというのはなかなか難しいがなんとか出来た気がする。
「あの――」
何か言おうとしたがロイスはいったん口をつむぐ。ヨキも父親もどうやって治ったかオレが言った通りに黙ってくれていたのだろう。
「ありがとうございます。ヨキをよろしくお願いします」
たぶん、他にも治療してくれといいたいのかもしれない。だが、オレたちはもう先に行かなくてはいけないのは彼も理解しているようで、先ほど一度口を閉じたのだろう。街の事と友達の事を天秤にかけさせてしまった。
恐らく原因は取り除いたと言ってあげたいけれど、ここから治るまでどれくらいかかるかはわからない。それにあの話にも繋がってしまう。
「ロイス……」
ヨキがロイスに手を伸ばす。
「一緒に…………行けないよ」
彼は指先を合わせてヨキに見せる。ヨキもそれに応えるように指先を合わせる。二人の挨拶なのだろう。
「ずっと友達だよ」
ロイスの言葉にヨキはゆっくりと頷いた。
「「バイバイ」」
0
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――勇者パーティーの【鑑定士】リアムは、戦闘能力の低さを理由に、仲間と婚約者から無一文で追放された。全てを失い、流れ着いたのは寂れた辺境の村。そこで彼は自らのスキルの真価に気づく。物の情報を見るだけの【鑑定】は、実は万物の情報を書き換える神のスキル【神の万年筆】だったのだ!
「ただの石」を「最高品質のパン」に、「痩せた土地」を「豊穣な大地」に。奇跡の力で村を豊かにし、心優しい少女リーシャとの絆を育むリアム。やがて彼の村は一つの国家として世界に名を轟かせる。一方、リアムを失った勇者パーティーは転落の一途をたどっていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! 無能と蔑まれた青年が、世界を創り変える伝説の王となる、痛快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ
黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ!
「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。
だが、それは新たな伝説の始まりだった!
「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」
前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる!
「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」
仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。
一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを!
無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる