もふもふうさぎの元最強魔術師~無実追放されたオレ。本当は草うめぇぇして引きこもっていたいけど……。草ぱわーで大事な人を守り、地上を目指す~

花月夜れん

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第二草

10・変化

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「誰から触るの?」
「私から」「オレから」
「「あっ」」

 オレとチャミちゃんの声がきれいに重なった。

「あー、ではどうぞ」
「ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げて、彼女は足を進める。あ、何が起きるかもわからないのに、先にいかせてしまって良かったかな。

「大丈夫なの。悪いことが起きるのは次に触れなかった時だけだから」

 声だけのアイツがそう言った。姿を見せてくれないのかな。

「どうしても見たいの?」

 そう聞かれてオレは頷く。

「……」

 沈黙ちんもくが続く。結局見せてくれないのかよ。
 目の前で、チャミちゃんに光が集まる。腕や足の毛が減って、肌が見える。服を着せておいて良かったと心から思った。こちらをみるチャミちゃん、顔つきがより人に近づいた。あと変わったところは……、腕に何かが現れたくらいか。何だあれは?

「はい、次はお兄さん」

 ロイスに指示されオレはチャミちゃんと替わった。

「ここの力って何だ?」
「ここのは特殊とくしゅなものと聞いています。ガイドが詳しく教えてくれるそうですが、変化の力と伝わっています」
「変化――、チャミちゃんの姿が変わったからそれかな?」

 オレは光に触れる。ずるりと中に何かが流れ込んでくる。何だ、これ……。

「……アタシも」

 小さな光がオレの手の上にきた。ガイドか?
 人のような形の薄い光になった。ただ、薄い光なので姿形すがたかたちはさだかではなかった。
 首に何かがはまる。チャミちゃんみたいな飾りがオレにも現れた。

「あとはヨキだね」

 どうやら終わったらしい。

「ロイス、――」

 オレと交代でヨキが入っていく。オレは自分の手足を確かめた。獣っぽさがだいぶなくなった。手先と足先はまだ毛に被われているがほぼ人の体だ。青年と少年の間みたいな体つき。しっぽが残ってしまった。少し邪魔だ……。顔はいったいどうなっているんだろうか。あとで見られるようなら確認しよう。
 ん、んん? うさぎの耳はそのまま残ってる。チャミちゃんを見るとうさぎ耳があった。そういえばこれはあるのが当たり前すぎてスルーしてたな。

「う、わぁぁ」
「ヨキ!!」

 ヨキのとかげの肌が人のそれに変化する。手足の鱗としっぽを残して変化が終わった。ヨキは足に飾りがあった。
 って、気のせいだろうか。ヨキに胸が出来たように見える。顔もよく見れば可愛い女の子じゃないか。
 オレは急いで布を渡そうとするが、ロイスが先に自分の上着にしていた服を脱ぎ、ふらっと出てきたヨキにかけていた。

「いってらっしゃい」
「行ってきます。ロイス」

 大事そうにロイスの服を持つヨキ。引き離すのはこくだがもうヨキは力に触れてしまった。次に向かうしかない。

「ここから先に進めば出口があります。ほぼ一本道なので迷うことはないでしょう」
「ありがとう」

 オレは忘れないうちにとロイスにアンチドートをかけた。中だけ治すというのはなかなか難しいがなんとか出来た気がする。

「あの――」

 何か言おうとしたがロイスはいったん口をつむぐ。ヨキも父親もどうやって治ったかオレが言った通りに黙ってくれていたのだろう。

「ありがとうございます。ヨキをよろしくお願いします」

 たぶん、他にも治療してくれといいたいのかもしれない。だが、オレたちはもう先に行かなくてはいけないのは彼も理解しているようで、先ほど一度口を閉じたのだろう。街の事と友達の事を天秤にかけさせてしまった。
 恐らく原因は取り除いたと言ってあげたいけれど、ここから治るまでどれくらいかかるかはわからない。それにあの話にも繋がってしまう。

「ロイス……」

 ヨキがロイスに手を伸ばす。

「一緒に…………行けないよ」

 彼は指先を合わせてヨキに見せる。ヨキもそれに応えるように指先を合わせる。二人の挨拶なのだろう。

「ずっと友達だよ」

 ロイスの言葉にヨキはゆっくりと頷いた。

「「バイバイ」」
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