もふもふうさぎの元最強魔術師~無実追放されたオレ。本当は草うめぇぇして引きこもっていたいけど……。草ぱわーで大事な人を守り、地上を目指す~

花月夜れん

文字の大きさ
21 / 46
第四草

21・フィン

しおりを挟む
「ははは! 大漁大漁」

 勝利を極めたオレ。見よ、この魚達。
 ……少し形が恐ろしい形状のヤツもいるが、きっと食べられるだろう。

「チャミちゃんも色々持ってるな」
「はい、これは食べられるんじゃないかなと」

 貝や蟹を彼女は捕まえていた。

「よし、戻るか。おーい、ヨキ!!」
「んー?」
「戻るぞ」
「はーい」

 ヨキを呼び戻す。女の子はそこに立ったまま、手を振っていた。

「一緒に行かないか?」

 帰るなら一緒の場所だろうと誘ってはみたが、女の子は首を振っていた。

「そうか、気をつけて帰れよ」

 もしかしたら、この辺に家があるのかもしれない。
 そう思い、オレは女の子に帰るよう告げた。

 ◇

「波打ち際に女の子が一人で!?」
「あぁ、何か問題あったか」
「あ、いえ……。どんな容姿でしたか?」
「あー、えっと」
「フィンって名前の黒と白色の髪の毛の女の子!!」

 ヨキがオレの代わりに説明してくれた。
 そうだ、そんな子だった。フィンって名前だったのか。
 かたりと物が落ちる音がした。ナツメの持っていた料理用ナイフが彼の手から落ちたからだった。

「ナツメさん?」
「どこで!! どこでフィンを見たんですか!! 他に誰か一緒に居ませんでしたか!?」
「だからさっきも言ったけど、ここから遠くない海が見える場所ですよ。怪物がでる場所からもうちょっと離れた場所です大きな岩や木が……って目印らしい目印にはならないか。えーっと」
「今すぐ連れて行って下さい!!」
「え、でも危険じゃないですか?」

 後ろに目は向けると、白い靄がすぐそこに迫っていた。このまま外に出ても見えないし、たどり着くのが困難そうだ。
 ナツメは外を見て諦めたのか、落としたナイフを拾ってふらふらと座り込んだ。

「フィンは……、大切な姪なんです。姉と求める者の義兄との。ワタシの家族とも……仲良かったんです。少し前までは」

 ナツメは片手で目を覆っていた。とても辛そうにしている。
 いったい何があったのか。ワタシの家族……、ここにその人達がいないのは何故だろう。

「何があったんですか?」

 チャミちゃんが聞くとナツメは話し始めてくれた。

「あれは数週間前でした――」

 ナツメの話を要約すると、ナツメの子どもバーシィとフィンが怪物に出会ってしまったらしいのだ。
 その話をしてくれたのはフィンとフィンの母親。
 そこにバーシィはいなかった。
 そしてその日から街に白い靄がかかっているのだそうだ。
 バーシィの母、チャミちゃんの着ている服の持ち主は子どもを探して海へと出てしまった。彼女もまた帰らぬ人になってしまった。ナツメも探したが、二人を見つける事が出来ていない。それどころか、仲良くしていた姉家族まで消えてしまった。

「一人ここに取り残されてしまったんです」

 そうこぼした後、ナツメは頭を下げてきた。

「申し訳ない。君達をワタシは身代わりに出来ないかと考えてしまった。同じ服をきた者が現れれば、代わりに連れていき、二人が帰ってくるんじゃないかと……」

 この街では他にも事件が起きていたそうだ。
 若さを吸いとられる。
 突然、姿を消した者が帰ってくると子どもは大人に、大人は老人になってしまう。
 被害者達は記憶を消されてしまい、赤ちゃんのようになってしまう。

「この事件に巻き込まれてしまったのかもしれないと考えました。だけど、二人は帰ってもこないんです」

 オレは話を聞いて、何も言い出せなかった。
 大切な人を失う悲しみは痛いほどわかるから。
 はやく、ここから出た方がいいか?
 このままではきっと……。

「探すのを手伝います!!」
「フィンと明日も遊ぼうって話したんだ! おじさん一緒に行こう。フィンが何か知ってるかも」

 …………まあ、こうなるよな。自分達を犠牲にするつもりだったって言ってるのにお人好しだ。

「とりあえず今日はこの視界じゃ、危ないだろ。明日皆で行きましょう。ナツメさんもそれでいいですよね?」

 オレもあまり人の事は言えないか。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。 しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった! 辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。 飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。 「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!? 元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

処理中です...