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第一章 聖女と竜

第46話 お部屋に失礼します

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「エマ、話がしたいのだけれど――。ボクがそちらの部屋に行くよりボクの部屋の方がいいかな?」

 ご飯の時にそう言われて、私は今ブレイドの部屋の前に立っている。

「エマの用意が出来たらきてくれるかな?」

 用意? 用意って話をするのに何を用意する必要があるの?
 まさか食べられる為の!? 体に塩を振ってこいとか。いやいや、まさか……。
 私は念入りに服を着込む。バカなことばかり考えてないでよく考えればわかることじゃないか。
 このお城は屋根はあれどもすきま風で寒い。そりゃぁ、もう寒いのよ。皮ふの下にきていた服(脂肪と言う名の)もなくて体感温度は急降下。つまり、長話になってもいいように暖かい格好をしてこいと言う意味なのだろう。

「ブレイド、入っていい?」

 ノックをして入っていいかどうか確認をとる。

「入ってきていいよ」

 すぐに返事がきた。私はドキドキしながらドアを開く。目に飛びこんできたのは暖かそうな暖炉。

「あー、ブレイドの部屋。暖炉がついてる。私の部屋にも欲しいぃぃ」

 かなり切実に思い始めていた。
 ブレイドは目を丸くしてから笑っていた。

「ごめん。そうか。全部の部屋についていないよな。暖炉がある使えそうな部屋を探しておくよ」

 けっこう限界がきていたのでぜひお願いしたい。目覚めて凍死していたなんてなりたくないもの。

「お願いします」

 部屋に入ると暖かくて眠気を誘われる。でも今日はさすがに眠れない。だって、ここはブレイドの部屋だから。
 とりあえず、暖炉の前に陣取り冷えていた手を温める。

「あの、話とは……」
「あ、あぁ、えっと」

 暖炉の話でブレイドが何をいうつもりだったのかすべて吹っ飛ばしてしまったのかもしれない。入ってきたときのキリッとした表情が何を言おうかと焦る困り顔に変わってしまっていた。
 私は暖炉の側に用意されていたカップから湯気をのぼらせる紅茶とつまんで食べれそうな軽食を発見する。
 食べていいか目で訴えると、ブレイドも暖炉の側にきてソファに座った。ちょうどお菓子が用意されている場所だ。そこをポンポンと手で示す。
 座って食べてねって事でいいのかな。私はソファに移動してあいてる……、彼の隣に座った。

「失礼します」
「どうぞ」

 了承をもらったのでひとつまみ。買ってきたお菓子に似ているけれどこれはリリーが作ったものだろうか。先ほど作った木の実のローストが使われていた。甘さはなくて、塩味が強い。温かい紅茶に手をのばす。こちらは甘く作られていた。甘い飲み物と塩味のお菓子。なんて悪魔的な軽食なのでしょう。これでは止まらなく…………。
 苦笑されている事に気がつき私はなんとか手をとめることに成功した。

「ごめんなさい。こういう時、どうすればいいのかなんて知らなくて」
「別にいいよ。自然にしてくれてた方がボクも自然でいられるから」

 いきなり聖女になれと連れて行かれ振る舞いなんて教えられもせず、日々を過ごしていた。だから、両親がいた日までの子どもみたいな行動しかわからない。きちんとしたお嬢様だときっとこんな風にはしないだろう。
 しょんぼりしながらもせっかく止めた手を再会させる。気持ちさっきよりゆっくりとにはした。

「さて、何から話したものか」
「はい、何からうかがいましょう」

 顔をあげてブレイドを見ると真剣な目をしていた。そして彼は質問してきた。

「エマ、ボクに食べられたい?」

 金色の瞳がずいっと近付いてくる。あれ、やっぱり私これから食べられる? このお菓子ってば、食べる用の味付けだったの!?
 そっとお皿に戻す。時すでに遅しでしょうけれど……。
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