50 / 135
第一章 聖女と竜
第50話 最悪の連絡(元婚約者視点)
しおりを挟む
連絡を待っていた私の耳に先に入ったのは嫌な知らせだった。
「ラハナルで瘴気が噴き出し始めた」
瘴気に包まれた国のすぐそば、国境沿いの街だ。
エマがいればすぐに聖女を動かす事が出来たのに……。最悪のタイミングだ。
もう一人の派遣を願い出るしかないのか。机に置かれた私兵との連絡用道具と同じ物を手にとる。これは聖女の派遣等を願い出る時に使う、専用の連絡機。
「状況は!?」
「それが……」
報告に来た男の口が止まる。手遅れであるということだろうか。
「報告によれば竜に乗った伝説の聖女がその瘴気を消したと」
「どういうことだ?」
竜に乗った聖女? そんなものがあの街にいるというのか?
「瘴気を間近にした親子がいまして、その子どもが確かに見たと。竜に関しましては街の住人数人の目撃情報があり確かかと。ただ、危険な為その後の森への立ち入りはしておらず、瘴気の様子は不明です。急ぎ聖女の派遣を」
「わかった。連絡をいれよう。さがれ」
「はっ」
聖女に関しては王からすべて任されている。エマと婚約をしろと命じたのも王だ……。国の将来だ。私に任されているということはつまり次の王であるからで。
連絡機に付いている竜魔石に触れる。これは相互で話せる、貴重な物だ。
「一人、派遣してくれ。すぐにだ」
「…………ハヘラータ国ラヴェル王子でよろしいでしょうか?」
連絡機の向こうから鳥の美しい鳴き声のような高い声がした。
「そうだ」
「……一人すでに国の見張り役としてそちらにいらっしゃるはずですがその方は?」
瘴気の噴き出しがなくただ保険のために聖女を置く場合、かかる金は急に低くなる。
噴き出した場合跳ね上がるがナターシャと話を合わせてある。差分をすべて君に充てようと。
「もしかして瘴気が始まったのでしょうか? でしたら……、急に他の場所で瘴気が出るということはないのでゆっくり考えてからでも」
「いますぐだ」
「…………わかりました。次に送り出す聖女は見張り用ですか? それとも……」
わかってやっているのだろうか。ただでさえイライラしているのに、この高い声が癪に障る。
「そちらを瘴気に対応させる予定だ。ハヘラータとマクプンの国境沿いの街ラハナルに向かわせて欲しい」
「まぁ、一人目の方を目にかけておいでなのですね。わかりました。近くの者に連絡をいれますわ。日が変わる前には到着します。ご安心下さい」
「あぁ……」
すぐに来ることが出来る距離に聖女がいる。数人の聖女は諸国を回り確かめているのだろう。瘴気が出ていないか。嘘をついていないか――。
そのうちの一人というわけか。竜に乗った聖女もその一人だったのだろうか。金を請求してこなかったのはなぜなのか。この国を試しているとでも言うのだろうか。
「ご連絡ありがとうございました。それではまた」
また、など二度とこない事を祈りたい。連絡機を放り投げ、私は廊下に進む。
「私が直接行く」
竜に乗った聖女? そんな噂が流されては困る。私が迎え入れるのは愛するシャーリィだけなのだから。
聖女を花嫁、王妃にしろと救われた民達が声を上げては困るのだ。
「シャーリィ。行ってくる」
「いってらっしゃいませ。ラヴェル様」
最愛の人に一時の別れを告げ、瘴気の出たという街へ向かう。共に連れ行くのは用意していた騎士団の数人。
「行くぞ!!」
周辺にいると思われるエマ、ルニア、私兵に関する情報も手に入れられれば良いのだが。
外は暗く寒かった。この様な面倒事に巻き込まれ怒りの矛先をあの女へと向けたくもなる。
あの女、見つけたらただでは済まさない。私を苛つかせ、国境沿いまで足を運ばせるとは……。
日が昇る前に街にはつくだろうが、新たな聖女も出迎えねばならぬ。
ナターシャは私と共犯だ。裏切ることは出来ないだろう。
彼女に何も言わずに出た事を出立してから気がついたが私はそのまま前に進み続けた。
「ラハナルで瘴気が噴き出し始めた」
瘴気に包まれた国のすぐそば、国境沿いの街だ。
エマがいればすぐに聖女を動かす事が出来たのに……。最悪のタイミングだ。
もう一人の派遣を願い出るしかないのか。机に置かれた私兵との連絡用道具と同じ物を手にとる。これは聖女の派遣等を願い出る時に使う、専用の連絡機。
「状況は!?」
「それが……」
報告に来た男の口が止まる。手遅れであるということだろうか。
「報告によれば竜に乗った伝説の聖女がその瘴気を消したと」
「どういうことだ?」
竜に乗った聖女? そんなものがあの街にいるというのか?
「瘴気を間近にした親子がいまして、その子どもが確かに見たと。竜に関しましては街の住人数人の目撃情報があり確かかと。ただ、危険な為その後の森への立ち入りはしておらず、瘴気の様子は不明です。急ぎ聖女の派遣を」
「わかった。連絡をいれよう。さがれ」
「はっ」
聖女に関しては王からすべて任されている。エマと婚約をしろと命じたのも王だ……。国の将来だ。私に任されているということはつまり次の王であるからで。
連絡機に付いている竜魔石に触れる。これは相互で話せる、貴重な物だ。
「一人、派遣してくれ。すぐにだ」
「…………ハヘラータ国ラヴェル王子でよろしいでしょうか?」
連絡機の向こうから鳥の美しい鳴き声のような高い声がした。
「そうだ」
「……一人すでに国の見張り役としてそちらにいらっしゃるはずですがその方は?」
瘴気の噴き出しがなくただ保険のために聖女を置く場合、かかる金は急に低くなる。
噴き出した場合跳ね上がるがナターシャと話を合わせてある。差分をすべて君に充てようと。
「もしかして瘴気が始まったのでしょうか? でしたら……、急に他の場所で瘴気が出るということはないのでゆっくり考えてからでも」
「いますぐだ」
「…………わかりました。次に送り出す聖女は見張り用ですか? それとも……」
わかってやっているのだろうか。ただでさえイライラしているのに、この高い声が癪に障る。
「そちらを瘴気に対応させる予定だ。ハヘラータとマクプンの国境沿いの街ラハナルに向かわせて欲しい」
「まぁ、一人目の方を目にかけておいでなのですね。わかりました。近くの者に連絡をいれますわ。日が変わる前には到着します。ご安心下さい」
「あぁ……」
すぐに来ることが出来る距離に聖女がいる。数人の聖女は諸国を回り確かめているのだろう。瘴気が出ていないか。嘘をついていないか――。
そのうちの一人というわけか。竜に乗った聖女もその一人だったのだろうか。金を請求してこなかったのはなぜなのか。この国を試しているとでも言うのだろうか。
「ご連絡ありがとうございました。それではまた」
また、など二度とこない事を祈りたい。連絡機を放り投げ、私は廊下に進む。
「私が直接行く」
竜に乗った聖女? そんな噂が流されては困る。私が迎え入れるのは愛するシャーリィだけなのだから。
聖女を花嫁、王妃にしろと救われた民達が声を上げては困るのだ。
「シャーリィ。行ってくる」
「いってらっしゃいませ。ラヴェル様」
最愛の人に一時の別れを告げ、瘴気の出たという街へ向かう。共に連れ行くのは用意していた騎士団の数人。
「行くぞ!!」
周辺にいると思われるエマ、ルニア、私兵に関する情報も手に入れられれば良いのだが。
外は暗く寒かった。この様な面倒事に巻き込まれ怒りの矛先をあの女へと向けたくもなる。
あの女、見つけたらただでは済まさない。私を苛つかせ、国境沿いまで足を運ばせるとは……。
日が昇る前に街にはつくだろうが、新たな聖女も出迎えねばならぬ。
ナターシャは私と共犯だ。裏切ることは出来ないだろう。
彼女に何も言わずに出た事を出立してから気がついたが私はそのまま前に進み続けた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる