痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
51 / 135
第一章 聖女と竜

第51話 あれ、この部屋?

しおりを挟む
「あったかい。もう少しここにいて」

 すぐそばに温かさを感じた。それが離れて行きそうで手を伸ばし捕まえる。だけど捕まえた手を外されてしまう。頭を撫でられ、いってくるからと言われた。
 どこに行くのかな? 私、もう少しこのあったかい場所にいたいのだけど……。

 朝だ。窓から光がさしている。だいぶ寝過ごしているような。今日はルニアが起こしにこなかった? ダイエットは休憩日?
 もぞりと顔を出す。そんなに寒く感じない。……というか、ここはどこですか?
 昨日の事を思い出す。たしか、ブレイドの部屋で話してて。あれ、ブレイドは?
 起き上がると見覚えがある暖炉にテーブル、二人で座ったソファー。

「あれ、ここって」

 まさかの事態に私の頭は急発進した。ブレーキなんてどこにも見当たらない。すごいスピードで走り抜ける。
 私、私、ブレイドの寝る場所をとってしまった!? もしかして、ブレイドは外でしくしく泣きながら寝転がっていたりする!?
 急いで彼の姿を探すけれど見当たらない。
 あのあと何をしたのか聞きたいのに、当の本人がいなくて私の想像だけが走り続ける。

「あの後何をしてたの、私!?」

 もちろん答えてくれる私はいなくて……。
 たしか、用意してくれたと思われる赤い果物をかじって美味しいねってブレイドに話して……。ん、何か聞かれてなかったっけ?
 あわあわしながら立ち上がるとちょうど扉が開いた。顔をのぞかせたのはブレイドだった。

「あぁ、起きた? エマ。大丈夫? 体は平気?」
「ブレイド! 私ったらもしかしてここで眠ってしまって? 本当にごめんなさい」

 頭を地面にこすりつける勢いで謝ろうとするとブレイドにそれを止められた。

「落ち着いて、体は大丈夫?」

 顔に手を添えられる。体の調子を聞かれ、私は確かめた。
 体重、変化たぶんなし。頭、少し痛い。体の調子、すこぶる良好。というか、なんだかいつも以上に体が軽い?

「体の調子は特に問題なんてないけれど。むしろ元気すぎるくらい?」
「そう、なら良かった」

 笑顔を浮かべるブレイドとぱちりと目があった。その瞬間彼の顔が真っ赤になった。

「えっ!? どうしたのブレイド。顔が赤いよ?」

 何かあったのだろうか。まさか私がベッドを占領したせいで風邪でも引いてしまったのだろうか。
 私が聞くと、ブレイドは腕で自分の顔を隠してしまった。

「何でもない。大丈夫。……エマ昨日の事、覚えてる?」

 …………。なんて答えよう。この感じだとまさか私何かしでかしてしまった? うぅ、でも何も記憶にないよぉ。
 私は覚悟を決めて本当の事を言う。

「ごめんなさい。えっと、あの赤い実をくれたところまでは覚えてるんだけど」
「え……? 赤い実?」
「え? くれたよね?」
「んん? ボクの部屋にはなかったけど」

 会話が噛み合わない。ということはあの時点で私は夢の中!? その前を必死に思い出す。

「あ、えっと話が一段落して甘い飲み物を飲んだ。……はず。そこまでは……」

 だんだん自分の記憶に自信が持てなくなっていく。どこまで私起きていたんだろう。
 ブレイドは赤くなった顔が落ち着いてきたのか腕をおろしていた。

「その後すぐ、眠ってしまったんだ。最初さ、エマ暖炉がなくて寒いって言ってただろ。だから眠ったあとボクの部屋に寝かせてただけだよ」

 良かった。あそこまでは起きてたのね。確信が持ててほっとしたけれど、結局ブレイドの寝る場所をとってしまった事実もまた決定的になってしまった。

「あのブレイド、昨日はどこで寝たの? 私がここにいたせいで追い出してしまったんじゃ……」

 おずおずと聞くとまたブレイドの顔が赤くなった。

「あ、えっと夜中に瘴気が出たから外に行ってた。だから、その……。ボクはそんなに寝なくても大丈夫だから、気にしなくていいよ。それより、頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
「頼みたいこと?」

 なんだろう? 私が出来ることは限られてるし、私だけができる事は一つだけ。

「もうすぐルニア達が戻ってくる。それから説明するよ」
「わかった」

 頷いて、思い出す。私、まだ夜の格好のままだった。

「すぐに着替えてきます!!」

 そう言って、自分の部屋へと走り出す。

「エマ!!」

 ブレイドが呼び止める。私はふり返り、用事を聞いた。

「なに?」
「昨日の話の続き、後でまたしよう」
「はい、またあとで!」

 まだ続きがあったのに眠ってしまって申し訳なかったな。
 パタパタと走りながら、部屋へと急いだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...