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第一章 聖女と竜
第52話 ここを守りたい
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部屋に戻ると服をパッと手にとった。今日はこれにしよう。選んだのはシルが用意してくれた服のうちの一枚。白地紺模様の動きやすいワンピースドレス。もちろんお腹周り対応のベルトもついている。
ダイエットを頑張れば呪いが戻ってきても痩せてるようにならないのかな。いつまでもスピアーに頼っているのは問題だと思う。なんとか自分で出来ないものか。考えながら足を進める。
眠ってしまった会議の時に使った部屋へと到着すると軽くノックをして中へと入る。ルニアとブレイド、人の姿のスピアーが座ってる。
「おー、おはよう、エマ」
「ルニア、おはよう」
ルニアってば朝からお肉を頬張ってる。私も食べたいのだけど……がまんがまん。
ルニアのとなりに座ると、お皿ごとずいっと渡される。
「しっかり食べとけ。エマの力がいる」
「えっ……と……」
「お腹空いてたら倒れるぞ」
「つまり、私が誰かを急いで人に戻さないといけないってこと?」
うぅ、さっき心で決めていたのにさっそくこれなのか。でも朝ごはんもまだだったのでとりあえずいただきます。
食べてすぐにわかった。このお肉はブレイドのくれたのと同じだ。ということは、これはブレイドがとってきてくれたのかな?
「そうだ。昨日スピアーが瘴気を食べたのは知ってるよな」
「うん」
「その前に瘴気が出てるなーって思って行った場所になんかなぁー、いろいろおってん」
スピアーはあくびしながら頬杖をついている。あとずっとブレイドを睨んでいる。
「でな、同じの着とるんが次に行ったオレの食べたとこにもおってなー。そっちは動いてどっかいきよってん。さすがに気になってなぁ。ルニアっちに話したんやけど」
えっと、意味がわからない。もう少しこう、わかるように言ってもらえないでしょうか。あと何? ルニアっちって……。
「エマに見せるのは良くないかなってわたしが判断したんだけど、けっこうな人数が瘴気にやられてたんだよ。スピアーが行った一つ目のところで。こっちは私も見てきた。二つ目のところは同じ格好の魔物化した人間がいたけれどどこかに行ったそうだよ」
なるほど、さっきより理解が出来たわ。
「それは、ここの人たちではなくて?」
ブレイドに聞く。頼みたいってこの事が関係するのかな?
「違う。ボク達は意識があるなら皆ここに残ってるから。外から来た人間だ」
「じゃあ、誰?」
ルニアが何かを私に見えるように差し出してきた。
「見覚えあるだろ?」
銀色の小さな紋章? 剣や防具につけられているようなそれは確かに何度も目にした事がある。
「ハヘラータの紋章ね」
「そ、わたしたちと同郷のやつらってわけだ。しかもけっこうな人数の兵士」
つまりどういうこと?
私が頭を傾けるとルニアはがくりと肩を落とす。
「エマのこと連れ戻しにきたんじゃないか? 騎士団のやつらではなかったから、たぶんラヴェル殿下の私兵……」
「え、なんで?」
いらないって言ったよね!? もう私用なしだって言ったよね!?
さすがにあの日のあのセリフはきっちり覚えてる。
「必要な事態が起こってるとか」
「だからって……、ただの人達を瘴気の中に!? 死ぬってわかってるのに何人も中にはいってきたの? そんなのおかしいでしょう?」
「たぶん、だけど瘴気対策をしていたんじゃないかな。そういう道具はあるんだ」
「……そうなの?」
「あるらしい。まあ使えるのは王族とかそういう類の人間だろうけど」
「あぁ、あるな。ボクも使った事がある」
「だそうだ。まあ、なんらかの理由で一つ目の場所で結局瘴気にやられた。けど生き残りがいて、そいつはたまたま死なずに魔物化して二つ目の場所にいたんだと思う」
「そう……」
「あー、もう一つ謎を置いとくわ。一つ目の場所の瘴気はオレが行った時にはもうなかったで」
話がこんがらがる。えっと、つまりどうしたらいいの?
「とりあえずその話はあとだ。わたしたちがすることは二つ目の場所で見つけた方。そっちの対処が先だ。そいつは少しずつこちらに向かってる。オゥニィーが見張ってるけど、ハヘラータの人間だろ? 殺してしまった時、ないとは思うが争いにでも発展してみろ。将来的にこの瘴気の壁がなくなって訪れた平和に難癖つけられるのも困るだろ?」
うん、困る。すっごく困る。ブレイドが頑張ってもとに戻そうとしてるのに私の元婚約者がぐちゃぐちゃ何かしてくるなんて絶対に阻止!!
私は全力で頷いた。
「でだ、何をしにきたのかはっきりさせたいが魔物化してるから聞き出せない。国に突き返して何が起こったか生き証人になってもらいたくても魔物化してるから出来ない」
「なるほど、私の出番ね!」
「その通り!!」
「行きましょう。オゥニィーさんが怪我しないうちに」
「いいのか?」
「いいに決まってるじゃない」
「いやいや、順番だよ。順番!」
「ん?」
ルニアがブレイドの方を向いている。
あ、そうか。昨日もここの人以外を魔物化から救って、今日もってなると二人、人に戻すチャンスが遠のくんだ。
「ボクからもお願いするよ。こちらに向かってるということは被害がでるかもしれない。その前になんとかしたいしね」
「よし、ブレイドの許可ももらった。行くぞ、エマ。居場所を守る戦いだ!」
ルニアが言った居場所を守る戦い。そう、私初めて自分の力で守れるかもしれないんだ。
両親は突然いなくなった。
聖女の立場も突然、抗う事も出来ないままなくなった。
ここは、もう何もしないまま失うなんて絶対に嫌だ。今度は守りたい。自分の力で!
「そうと決まれば、おいブレイド、スピアー」
「なんだ」
「なんや」
「エマの運び役はどっちがするんだ?」
ルニアの一言で一瞬、火と水が勢いよくぶつかったように見えた。
ダイエットを頑張れば呪いが戻ってきても痩せてるようにならないのかな。いつまでもスピアーに頼っているのは問題だと思う。なんとか自分で出来ないものか。考えながら足を進める。
眠ってしまった会議の時に使った部屋へと到着すると軽くノックをして中へと入る。ルニアとブレイド、人の姿のスピアーが座ってる。
「おー、おはよう、エマ」
「ルニア、おはよう」
ルニアってば朝からお肉を頬張ってる。私も食べたいのだけど……がまんがまん。
ルニアのとなりに座ると、お皿ごとずいっと渡される。
「しっかり食べとけ。エマの力がいる」
「えっ……と……」
「お腹空いてたら倒れるぞ」
「つまり、私が誰かを急いで人に戻さないといけないってこと?」
うぅ、さっき心で決めていたのにさっそくこれなのか。でも朝ごはんもまだだったのでとりあえずいただきます。
食べてすぐにわかった。このお肉はブレイドのくれたのと同じだ。ということは、これはブレイドがとってきてくれたのかな?
「そうだ。昨日スピアーが瘴気を食べたのは知ってるよな」
「うん」
「その前に瘴気が出てるなーって思って行った場所になんかなぁー、いろいろおってん」
スピアーはあくびしながら頬杖をついている。あとずっとブレイドを睨んでいる。
「でな、同じの着とるんが次に行ったオレの食べたとこにもおってなー。そっちは動いてどっかいきよってん。さすがに気になってなぁ。ルニアっちに話したんやけど」
えっと、意味がわからない。もう少しこう、わかるように言ってもらえないでしょうか。あと何? ルニアっちって……。
「エマに見せるのは良くないかなってわたしが判断したんだけど、けっこうな人数が瘴気にやられてたんだよ。スピアーが行った一つ目のところで。こっちは私も見てきた。二つ目のところは同じ格好の魔物化した人間がいたけれどどこかに行ったそうだよ」
なるほど、さっきより理解が出来たわ。
「それは、ここの人たちではなくて?」
ブレイドに聞く。頼みたいってこの事が関係するのかな?
「違う。ボク達は意識があるなら皆ここに残ってるから。外から来た人間だ」
「じゃあ、誰?」
ルニアが何かを私に見えるように差し出してきた。
「見覚えあるだろ?」
銀色の小さな紋章? 剣や防具につけられているようなそれは確かに何度も目にした事がある。
「ハヘラータの紋章ね」
「そ、わたしたちと同郷のやつらってわけだ。しかもけっこうな人数の兵士」
つまりどういうこと?
私が頭を傾けるとルニアはがくりと肩を落とす。
「エマのこと連れ戻しにきたんじゃないか? 騎士団のやつらではなかったから、たぶんラヴェル殿下の私兵……」
「え、なんで?」
いらないって言ったよね!? もう私用なしだって言ったよね!?
さすがにあの日のあのセリフはきっちり覚えてる。
「必要な事態が起こってるとか」
「だからって……、ただの人達を瘴気の中に!? 死ぬってわかってるのに何人も中にはいってきたの? そんなのおかしいでしょう?」
「たぶん、だけど瘴気対策をしていたんじゃないかな。そういう道具はあるんだ」
「……そうなの?」
「あるらしい。まあ使えるのは王族とかそういう類の人間だろうけど」
「あぁ、あるな。ボクも使った事がある」
「だそうだ。まあ、なんらかの理由で一つ目の場所で結局瘴気にやられた。けど生き残りがいて、そいつはたまたま死なずに魔物化して二つ目の場所にいたんだと思う」
「そう……」
「あー、もう一つ謎を置いとくわ。一つ目の場所の瘴気はオレが行った時にはもうなかったで」
話がこんがらがる。えっと、つまりどうしたらいいの?
「とりあえずその話はあとだ。わたしたちがすることは二つ目の場所で見つけた方。そっちの対処が先だ。そいつは少しずつこちらに向かってる。オゥニィーが見張ってるけど、ハヘラータの人間だろ? 殺してしまった時、ないとは思うが争いにでも発展してみろ。将来的にこの瘴気の壁がなくなって訪れた平和に難癖つけられるのも困るだろ?」
うん、困る。すっごく困る。ブレイドが頑張ってもとに戻そうとしてるのに私の元婚約者がぐちゃぐちゃ何かしてくるなんて絶対に阻止!!
私は全力で頷いた。
「でだ、何をしにきたのかはっきりさせたいが魔物化してるから聞き出せない。国に突き返して何が起こったか生き証人になってもらいたくても魔物化してるから出来ない」
「なるほど、私の出番ね!」
「その通り!!」
「行きましょう。オゥニィーさんが怪我しないうちに」
「いいのか?」
「いいに決まってるじゃない」
「いやいや、順番だよ。順番!」
「ん?」
ルニアがブレイドの方を向いている。
あ、そうか。昨日もここの人以外を魔物化から救って、今日もってなると二人、人に戻すチャンスが遠のくんだ。
「ボクからもお願いするよ。こちらに向かってるということは被害がでるかもしれない。その前になんとかしたいしね」
「よし、ブレイドの許可ももらった。行くぞ、エマ。居場所を守る戦いだ!」
ルニアが言った居場所を守る戦い。そう、私初めて自分の力で守れるかもしれないんだ。
両親は突然いなくなった。
聖女の立場も突然、抗う事も出来ないままなくなった。
ここは、もう何もしないまま失うなんて絶対に嫌だ。今度は守りたい。自分の力で!
「そうと決まれば、おいブレイド、スピアー」
「なんだ」
「なんや」
「エマの運び役はどっちがするんだ?」
ルニアの一言で一瞬、火と水が勢いよくぶつかったように見えた。
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