痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
53 / 135
第一章 聖女と竜

第53話 そのお肉は誰のもの?

しおりを挟む
「なんでオレがエマちゃんやないねん」
「まあ、そういうな。あとでわたしの剣の特訓に付き合わせてやるから」
「なんでや……」

 ぶつぶつ言ってるスピアーと笑ってるルニアのペア。
 後ろから抱き抱えられて運ばれる私となんだかまた赤くなってるブレイドのペア。
 それぞれ竜が背中から羽を出して飛んでいる。人間の姿ならスピアーもブレイドみたいに変化出来ている。なぜ竜の姿になると小さな丸っこい竜になってしまうのか……。

「そろそろやろ?」
「あぁ、オゥニィーが見えた」

 スピアーとブレイドが空中で止まる。
 空からでもわかる大きなオゥニィーの姿。その視線の先に軽装備の鎧を纏った二足歩行の狼がいた。

「あれ?」
「そや。エマちゃん肉の匂いが染みついてるから近寄るの難しそうやな」

 ぐ、確かに狼の鼻だと遠くでもわかってしまうかもしれない。でも、今日はルニアだって食べてたから!

「エマ、パンチしないと人に戻すのって出来ないの?」

 ルニアに聞かれて考えてみる。そういえば、別に触る必要はないような?

「やってみる」

 瘴気を消すつもりで祈る。狼がもとに戻りますようにと。
 すると、狼の体毛がだんだん短くなって、顔も人のそれっぽくなってきた。
 そのまま戻るかと思っていたが、変化は途中でとまる。

「あ、あれ?」
「エマ、どうした? お腹すいたのか!?」

 いやいや、お腹はすいてないから。だからルニア、その手に構える骨付き肉はしまっておいてください。
 追加燃料のように用意された肉を横目に考える。

「もう少し近くに行ける?」

 触れた方が瘴気を消すイメージが出来るけれど、ここだと遠すぎる。そんな感覚があったのだ。

「あぶなくないか?」
「お、でもアイツ足が止まってるぞ」

 ルニアが肉をかじりながら狼を見ていた。待って、それ私のじゃなかったの?
 二本目があることを信じて私も狼男を見る。

「う、うぉぉぉぉぉぉぉおおぉ」

 突然、狼男が吠えた。
 どうしよう、失敗だったのだろうか。上空でその様子を見続けていると狼男は大きな岩に向かって頭突きを始めた。

「ヤバイ、スピアー行くぞ!」

 スピアーが狼男の上にたどり着くとルニアを投下する。

「とまれぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 頭から突進してきた狼男をルニアは掴み投げ飛ばした。それはもうきれいな軌跡を描いて優雅に宙を舞った。

 ◇

「うおぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁん」

 男泣きってこういうのを言うのかしら。狼男は地面に突っ伏して泣いている。

「あ、あの大丈夫ですか?」

 泣き続ける狼男に声をかける。一瞬だけ止んだと思ったらすぐ男泣きは再開した。
 がたいのいい男の人(半分もふもふ)が泣き続けるほどの何かがあったのだろうか。

「おい、お前も騎士団試験は合格したクチだろ? 何泣いてるんだ」

 ルニアがふぅとため息をつくと狼男は顔をあげ彼女の顔を見た。狼男の瞳に一瞬希望の光が灯ったがすぐに消えた。
 がっくりと項垂うなだれてまたおいおいと泣き出しそうになったので急いで私は話しかける。半分しか戻ってないけれど人の言葉がわかっているなら意思疎通はできるかな。

「あなたはいったい何をしにきたんですか? 瘴気に包まれてて危ないとわかっていたでしょうに」

 今度は私の顔を見て狼男は首を傾げる。じーっと見ながら少しずつ傾いていく。一度反対に傾いた後、ぼそりと話し出した。

「こんな姿じゃ国に戻れない……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...