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第二章 赤の瞳と金の瞳

第75話 ルニアとレイ(ルニア視点)

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 ◆

 父様が突然連れて帰ってきた男の子。
 騎士団遠征の帰り道、拾ってきたそうだ。
 とても可愛い男の子だった。

「まわりを探したが親はなく、本人にも聞いてみたがいないという」
「そうですか。それは不憫ですね」

 父様と母様に息子はいなかった。だから、情が移ったのだろう。最初は他にもらわれ先を探すと言っていたのに、いつまでも家に留まっていた。

「なぁ、一緒に外で剣の練習しよ」
「いえ、ルニア姉様。僕は……」

 わたしは外で駆け回りたい人間だったが、この男の子、レイは家の中で何かの研究――子どもには難しい本を読んだり何かの薬ととってきた木のみの粉をまぜてみたりなんかするのが好きな子だった。
 わたしとは気が合わないと思っていたのに、なぜか父様はレイと結婚させたがっていた。
 やたらと腕っぷしが強く、女として求められる可能性が低いと将来を心配されていたせいだろう。
 余計なお世話だ。と、思う反面一緒に育つうちにわたしもレイに特別な感情を抱くようになっていた。
 わたしではどうやっても手に入らない男の体。鍛えれば絶対にすごくなるとわかるのに、レイは家にこもるばかり。

「なぁ、一緒に鍛えよう。レイならわたしより絶対に強くなれるから」
「ルニア姉様より、僕が? 無理ですよ。それより僕は瘴気の研究を進めて――人を救いたい」

 レイはそう言って、勉学に励み城仕えにまでなってしまった。
 わたしもその頃には騎士団に入り、それなりに頑張っていた。
 休みの日はレイの様子を見に行き、お互いの事を話して……。

「エマ様が今日は……」

「すごいんです。三回も続けているのにエマ様は……」

 レイが話す内容にエマの出てくる回数が増えていく。一部の人間しか知られていない赤い瞳の聖女様。レイの紹介で許可をもらいわたしも話し相手としてエマのもとに何度か行った。同じくらいの年頃の女として、話し相手にと騎士団の人間を引っ張ってくるのはどうかと思うが……。
 彼女エマは、女の子だった。わたしと違うぷにぷにと柔らかそうな可愛い……。

「僕はエマ様の為にコレを完成させなければいけません。ルニア姉様、しばらく集中するのでその間こないで下さい」
「あぁ、そうか。頑張れよ」

 レイはエマの為にとたくさんの物を作っていた。力を増幅させる指輪。倒れないようにする栄養剤。瘴気を抑える衣服。きっと教えてもらっていないものもたくさんあるのだろう。
 今度は何を作るんだろう。

 だけど、レイから完成したという話を聞くことはなかった。
 なぜなら彼は行方不明になってしまったからだ。

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