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第二章 赤の瞳と金の瞳

第106話 影の正体

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 大きな影の主は小さな男の子。フレイルだった。
 彼が持っていた光源、その光の加減で大きくなっていたみたいだ。

「エマ様、ちょうどよかった。明日の分の薬を渡そうと思ってて」
「フレイル。ごめんなさい。取りに行かないとと思ってたのに」
「エマ様!? どうしたんですか? 涙目ですよ――」
「え?」

 フレイルはポケットからハンカチを取り出し渡してきた。

「ありがとう」

 受け取り、目にあてると確かにハンカチが小さく濡れた。

「あの、よかったら僕のとこで休んでいきますか?」

 少し顔は冷えたけれど、まだ戻ろうと思えなかったので私は頷いた。フレイルのところならルニアもいるかもしれない。
 今はブレイドの顔が見れなかった。

「すみません、散らかってますが」

 どこから持ってきたのだろう。膨大な資料、怪しい薬品群、それに竜魔石や竜魔道具用だろう部品がいっぱいあった。
 私の作業場も散らかってるけれど上には上がいた。

「ルニアはここにはいないの?」
「あぁ、ルニア姉様は今日は疲れてるからと早くに寝にいきました。それにここは、ルニア姉様に触られるとどこに何があるかわからなくなるので、出来るだけ出入りしないようにしてもらってるんです」
「あー、うん。そうだね」

 とある一つがどこかに行ってないってなったら、この中から探し出すのは困難を極めそうだ。

「ここにどうぞ」

 比較的空いてる空間に椅子を用意され、私は促されるままそこに座った。
 すぐそばにいつも使ってる椅子だろうか、可愛いサイズの椅子を引っ張ってきてフレイルも座った。

「あ、あー! お茶いれますね。どんなのが好きですか?」

 フレイルは座ったと思ったら立ち上がってパタパタと怪しげな薬品群の中に突っ込んでいく。
 まさか、あの中のものでお茶をいれるつもりなのだろうか。かなりの身の危険を感じ、急いで彼を止めた。

「大丈夫だよ。少ししたら出るし、ブレイドにもすぐ戻るって言ってるから」

 そう言うと、フレイルはしょんぼりとして手をとめた。
 尻尾は見えないから下に下がってるとか確認出来ないけれど。きっと見えてたらなってるのだろうなと思うくらいしょんぼりとしていた。

「あれ?」

 薬品群の場所に見覚えがある竜魔道具があった。

「フレイル、あれって」
「ん、あぁ、ごめんなさい。勝手に持ってきてしまって。もしかして他にも仕掛けがあるのではないかと少しいじっていました。見つかりませんでしたが」

 ぽんっと手の中に返却されたのはお父さんが作ったという竜魔道具。丸い小さなお父さんが見れて話してくれる竜魔道具。
 私の作業場に置いておいたものだった。

「あのあとも調べてくれてたんだ。ありがとう」
「ごめんなさい。何か見つかれば良かったんですが、何も見つからなくて……」
「ううん。そっか、他にも何かあるかもしれないなんて思いついてなかったから、ありがとう」

 返してもらったそれをぎゅっと握りしめるとフレイルが突然聞いてきた。

「僕達でお父様のところに行ってみませんか?」
「え……?」
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