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第二章 赤の瞳と金の瞳

第121話 弟

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「リアって呼んでもらってるの?」

 お母さんに聞かれてリアは少し首を傾げた後こくこくと頷く。

「そうね。オリジンよりそう呼ばれた方が」
「お母さん、リアのこと知ってるの? その子って……」
「失礼しますっ!!」

 今度はシルとオーニィが息を切らせながら飛び込んできた。

「どうした? シル」

 ブレイドが歩み寄ると、シルは大きく息を吸ってまっすぐこちらを向いた。

「瘴気の壁がすべて消えました」

「ええっ!?」

 あまりの事に私も驚いて声を出してしまう。
 だって、あの国中を覆うほどの瘴気だよ? いったい何人の聖女が必要になるのかわからないくらい。
 そして私は思い出した。ミリアの言葉を――。

『わたくしは次代赤い瞳の聖女の代表です。婚約していただければわたくし達が全力でこの国すべての瘴気を浄化してみせましょう』

 ――と、彼女は言った。
 婚約していただければ……。まさか私を連れ戻す時にブレイドがミリアと交わした約束で……。

「ブレイド……」
「様子を確かめてくる。皆はここで待っててくれ。シル、オーニィ。もし誰かきてもこの部屋には誰も近付かないようにしてくれ」
「はいっ」

 一人で行ってしまいそうなブレイドに手を伸ばし捕まえる。
 そのまま、ミリアのところに行ってしまったらと怖くなってしまって。

「私も一緒に行く」

 邪魔だとはわかってるけれど、一人で待つのは怖くて――。
 この状況は私のせいかもしれない。もし、そうなら……。
 ブレイドは拒絶することなく、そのまま手をとり走り出す。一緒に行ってもいいのだろうか。

「すぐ戻る」

 そう皆に告げて私の手をぎゅっと握りしめてくれた。

「瘴気の壁を見るだけだけだよ。あと、変身をしておいて」
「うん」

 走りながらは難しくて、まずはついていくのを優先させる。
 外にでると、ブレイドは竜の翼を広げた。私は急いで瓶の蓋を開けて一つ口に放り込んだ。あれ、そういえばこっちって……。
 やはり、目の色は確認出来ないけれど髪の色が変わった。

「……」

 ブレイドが驚いた顔で私を見る。
 フレイルが言っていた。この姿はまるでアメリアだと――。

「ブレイド、いいよ!」
「あ、あぁ」

 飛び上がる前からなんとなく感じていたけれど、空気が澄んでいる。そして、目にして確信に変わった。

「瘴気の壁、なくなってるね」
「……ないな」

 嬉しくないのかな。ブレイドの表情は読み取れない。やっと、この国から瘴気がなくなったというのに。でも、これがミリア達のした事であれば対価が必要になるかもしれない。

「今から人がくるのかな」
「わからない。回ってみよう」

 私は頷く。ブレイドは竜になると言ったので、変身後彼の背中側に移った。
 竜の姿なら瘴気の壁があった場所まですぐだ。そして、目にしたのは、ミリアとクロウ、それと鎧をきた男の人が先頭に立つ数人の集団――――。

「……ライナモ」
「ブレイド知ってるの?」
「母は違うがボクの弟だ。この国の正当な継承者の」

 以前に聞いた話だ。ブレイドの二人の弟。
 その彼がミリアと並んでいる。

「戻ろう。……すぐに城にくるだろうけれど」

 ブレイドは顔を城のある場所へと向ける。
 ずっと国から離れていた彼の弟が何故今になってここにきたのか。この後のやり取りが浮かんでしまう。瘴気の壁がなくなったのならもしかして明け渡せと言ってくるのだろうか。
 何も言わないブレイドの背中を手でそっと撫でた。
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