前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

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第5話 おや、妹の様子が?(妹視点)

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「はぁぁぁぁん」

 ヤバー、何もうー。今日もお兄ちゃんがカッコイイんですけど!!
 家に帰り着き自分の部屋に飛び込む。大好きなお兄ちゃんと腕組みしちゃった。
 お兄ちゃんと言ってもあたしと彼は血が繋がっていない。お父さん、お母さんは里親で本当のお父さんお母さんじゃない。
 というか、あたしは人間じゃない。
 部屋の鍵を確認し、魔法の言葉を唱える。部屋の隅に置いてある姿見に映るのは二本の角に黒い羽、尻尾まであるいわゆる悪魔のような姿。髪も血のような真っ赤になり、目の色は金色。ただし胸のサイズは変わらない……。
 ――――あたしは魔族。魔王様の右腕であり、妹。
 本当の兄、魔王常闇夜ダークナイトをあの日から探し続けている。

 ◇

常闇夜ダークナイト様!! どこですか!! 常闇夜ダークナイト様ぁ!!」
「トワイライト!! 何かがきます」

 もう一人の側近が叫ぶ。魔王と勇者の力のぶつかり合いだろうか。空間の捻じれが出来ていた。遠くに見えたソレは刹那の間の後あたし達を丸ごと飲み込んだ。

 ◇

 そして気がつけば、この世界。赤児からのやり直しであった。
 一つ年をとる前、親らしき人物に気味悪がられた。元の姿に戻れないかと試行錯誤の末出せた角、羽、尻尾、髪に瞳の色。姿形がまったく違うからであろう。あたしはすぐに親らしき人物に似た姿へと戻った。この姿になるのは一人きりの時にしよう。
 二つ年をとる前、親らしき人物に置き去りにされた。別に困らないと思っていたけれど、人間としてのあたしは困ったようだ。隠してた力を使って外に出る。
 そして、あれよあれよと言う間に今の家へと迎え入れられた。

「僕がお兄ちゃんだよ」

 小さいけど大きな手があたしをぎゅっと抱きしめてくれた。
 あたしは、魔王……本当のお兄ちゃんの事を尊敬してて、大好きだった。けれど彼はあたしを妹としてしか見てくれない。大好きって気持ち忘れたわけじゃないし今でも尊敬はしてる。
 またお兄ちゃんを好きになるの?
 今度はね、血が繋がってない。だから――。

 ◇

 魔王と勇者の力がぶつかってこの世界に来てしまった。なら、元の世界に戻る為魔王と勇者を探さなきゃならない。あの光はすべてを飲み込んだ。きっと魔王も勇者もこの世界にいる。帰らないと――。
 あたしがこの子になってなきゃ、きっとこの子とお兄ちゃんが結ばれて幸せになるはずなんだ。だから、あたしは帰らないと。魔王の右腕。それがあたしの居場所だもの。

「魔王様の様子はどうでした?」

 この姿の時にだけ見える魔物達。彼らはあたしみたいな体を持っていないけれど、そこにいる。精神体と言うやつだろうか。
 あの光によって魔物達も異世界転移したのだろう。
 魔王様の使い魔だった覗き魔デビルアイ。この子を見つけた時、心から安堵した。彼は近くにいる。はやく見つけて帰ろう。お兄ちゃんの事が好きになりすぎる前に。

「今日も元気にストーカー?」

 覗き魔デビルアイは肯定するように頷く。

「そう。魔王様がストーカー」

 いえ、違うわ。トワイライト!! きっと魔王様は同じ考えなのよ。あたし達のために勇者を探し、帰還準備をしているんだわ。おそらくストーカーしてるその人物こそ勇者の生まれ変わりなのだわ。

「いったい、誰を――」
「とわー!!」
「――っ!? 何、お兄ちゃん」

 あたしは急いで魔族姿を引っ込める。スッと視界から覗き魔デビルアイが消える。

「オレが先に風呂入っていいか」
「え、やだ。あたしが先にはいる!!」
「だよな。さっさと入ってくれー」

 笑い声と足音が遠ざかって行く。確認しにきてくれるなんて。なんて、なんて優しいの!!
 本当は後でもいいけど、お兄ちゃんの入った後のお風呂につかるなんて、そんなことしたら――。
 きっと、とめられなくなっちゃう。

「お兄ちゃん、大好き……。大好きだよぉ」

 あたしはドキドキする胸を押さえながらピンク色のパジャマを引っ張り出した。

 ――遊佐真由。あたしが一番怪しいと睨んでる人物。彼女こそ勇者の生まれ変わりではないだろうか。名前とかそれっぽすぎるし!!
 前みたいに家に来てくれれば部屋で変身して、確かめられるかもしれないのになぁ。でも、違ったら大問題……。お兄ちゃんともいられなくなっちゃう。でも……。うぅぅ。
 湯船につかりそんな事を考えながら、あたしは自分の羽と尻尾それから角を撫でた。
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