18 / 66
第18話 焦る魔王が見つけたのは②
しおりを挟む
赤い髪が再び風でなびく。それをかき上げる仕草は美しく、絵画に描かれるような女神の姿だった。
「――ッ!!」
声が出なかった。見つけてねと言われていたのに、今まで見つけられなかった。彼女は確かに勇者マユの姿であるが、今のオレはただの人間大間拓也の姿だ。こんなオレが魔王だって言って信用してもらえるのか。
……やっぱり胸デカいなぁ。
じゃない!! 魔王だって言ったところで殺られる可能性大だ。十五年以上も待たせやがってぇぇぇぇとか言われる。絶対に怒られる。
「あの、いいかな?」
勇者マユがオレに話しかける様子ではオレが魔王だとわかっていなさそうだ。わかってたらきっと光の剣やら勇者の技が容赦なく降り注いでいる頃だろう。もし、自分が魔王だと言ってみろ。ただの人間の体でそれらを受ければその先には死あるのみ。人間に勇者の技が効くか知らないが、肉弾戦でも負ける自信があるぞ。
ごくりとつばを飲み込む。なんと答えれば正解なんだ。
「め、め、女神様ァァァァァァァ!!」
「な、ぇぇっ?」
オレが動けないでいると、違う人間が勇者マユの足にすがりつく。びっくりしてる勇者可愛い。じゃなかった、おい、やめろ。死ぬぞ、頭脳君!!!!
どうやら気絶から目が覚めたようだ。
「女神様、どうして僕なんかをお救いになられたんですか。僕はもう、僕はもう……」
泣いている男子高校生に勇者は優しく微笑みかける。
「一回くらいの失敗で諦めてどうするんだ。あなたは素晴らしい事を成そうと決心していたのだろう? 彼女もそれを待っているのではないか? なのに、諦めてしまうのか? ならば、何のために約束を交わしたのだ?」
そうそう、たった一回の赤点でそんな風に投げやりになってたらオレなんかいったい何回飛び降りなきゃならないんだよ。でも、好きな人のために命懸けってのは少しだけわかるかもしれない。オレが魔王になろうと思ったのだって――。
それにしてもなぜか、彼女の言葉はさっきからオレにちくちく刺さってくる。気のせいか?
「次の機会まで彼女は待ってくれるさ。さぁ、はやく戻って次の機会に備えるのです。次こそはきっと叶えられる」
「は、はひぃぃぃ」
パトカーや救急車だろうか。サイレンが鳴り響く。
「私はもう行くから。離してもらっていいか?」
「はい!! 女神様!! ありがとうございます。ありがとうございます!」
「それじゃあ、あとはよろしく」
勇者マユは空に駆け出す。
「え、ちょっ、待ってくれよっ!!」
振り返ることなく彼女は光の剣で道を作り空を駆けていく。
「羨ましい。告白する勇気があって」
小さな声だった。彼女はそう呟いてから空へと飛び出した。
「いました!! 本当にいました!!」
「よし、確保ぉぉぉぉ!!」
「え゛っ!?」
大人が数名なだれ込んできて、オレはまた警察のご厄介になった。
だから、誤解だからっっっ!!!!
「またお前か」
違います、違います。オレは助けようとしただけなんだぁぁぁぁ。
◇
「お兄ちゃん、連日とかヤバくない? 何かに取り憑かれてない?」
はぁ、まったくだ。家に帰りソファーに座り込む。
今回は目撃者が多かったし、本人がばっちりと否定や状況説明してくれたおかげですぐに解放されたけれど――。
そう、頭脳君はサッパリとした様子で、さっきまで死のうとしていたのが嘘のようだった。まるで生まれ変わったように。
だから、今日は真由と一緒に家まで戻ってこれた。
「拓也君が見つけて止めてくれたの? すごいね。良かった。間に合って」
「いや、オレは――」
なんと説明すればいいのかわからず言葉に詰まる。勇者が助けた? そう、オレはただ見てるだけだった。
続きは?と首を傾げ待つ真由。間に合った事にホッとしている彼女の髪色はどう見ても赤色ではなかった……。
「もう散歩はあたしが行くからさ。お兄ちゃんは夜でかけるのは止めときなよ」
今日は優しいな。妹よ。ありがたいが、答えは――。
「いや、行くぞ。責任はしっかりととらないとな」
真由と約束したんだ。一緒に行こうねと。
「ふぅん」
勇者マユ。約束を守れないかもしれない。けれどきちんと君にも伝えないとだよな。
「告白する勇気か……」
足をかじる犬をスルーしつつ、オレはぽそりと呟いた。それはオレに対して言ったのだろうか……。
……飼い主よ、ちょっと考え事したいから犬を連れて行ってはくれまいか。
ボーっとしながら待っていたが真由からの連絡はなかった。
もしかしたら明日以降はもうダメなのかもなぁ。二日連続事件に巻き込まれるなんて、真由は女の子だしな。親がダメだっていうだろうな……。
犬をそっと離し、妹にパスする。そのままオレは自室へと戻った。
勇者マユもこの世界に確かにいる。オレと同じように転生したんだ。けれど、見た目も勇者マユそのものだった。
それならすぐ見つけられたはずなのに。
明日、覗き魔を学校中隈なく走らせて……。って、明日は土曜日だった。
次の月曜だ。絶対に探し出して見せるっ――!!
◆
その頃、もう一人の幼なじみの部屋の中。
「何で? どうして? 三人で出かけてたから、いいかと思ってたのに……。妹だけが先に帰って来た。そしてそのあと時間がたってからたっくんとまゆちゃん二人きりで雰囲気だして帰ってきてるしー!? 何なの? 何があったのー!?」
明日は自分もついて行く。絶対に――。
元魔王の左腕ミッドナイトの姿になった夜は窓枠に爪を立てながらそう誓っていた。
◆
「――ッ!!」
声が出なかった。見つけてねと言われていたのに、今まで見つけられなかった。彼女は確かに勇者マユの姿であるが、今のオレはただの人間大間拓也の姿だ。こんなオレが魔王だって言って信用してもらえるのか。
……やっぱり胸デカいなぁ。
じゃない!! 魔王だって言ったところで殺られる可能性大だ。十五年以上も待たせやがってぇぇぇぇとか言われる。絶対に怒られる。
「あの、いいかな?」
勇者マユがオレに話しかける様子ではオレが魔王だとわかっていなさそうだ。わかってたらきっと光の剣やら勇者の技が容赦なく降り注いでいる頃だろう。もし、自分が魔王だと言ってみろ。ただの人間の体でそれらを受ければその先には死あるのみ。人間に勇者の技が効くか知らないが、肉弾戦でも負ける自信があるぞ。
ごくりとつばを飲み込む。なんと答えれば正解なんだ。
「め、め、女神様ァァァァァァァ!!」
「な、ぇぇっ?」
オレが動けないでいると、違う人間が勇者マユの足にすがりつく。びっくりしてる勇者可愛い。じゃなかった、おい、やめろ。死ぬぞ、頭脳君!!!!
どうやら気絶から目が覚めたようだ。
「女神様、どうして僕なんかをお救いになられたんですか。僕はもう、僕はもう……」
泣いている男子高校生に勇者は優しく微笑みかける。
「一回くらいの失敗で諦めてどうするんだ。あなたは素晴らしい事を成そうと決心していたのだろう? 彼女もそれを待っているのではないか? なのに、諦めてしまうのか? ならば、何のために約束を交わしたのだ?」
そうそう、たった一回の赤点でそんな風に投げやりになってたらオレなんかいったい何回飛び降りなきゃならないんだよ。でも、好きな人のために命懸けってのは少しだけわかるかもしれない。オレが魔王になろうと思ったのだって――。
それにしてもなぜか、彼女の言葉はさっきからオレにちくちく刺さってくる。気のせいか?
「次の機会まで彼女は待ってくれるさ。さぁ、はやく戻って次の機会に備えるのです。次こそはきっと叶えられる」
「は、はひぃぃぃ」
パトカーや救急車だろうか。サイレンが鳴り響く。
「私はもう行くから。離してもらっていいか?」
「はい!! 女神様!! ありがとうございます。ありがとうございます!」
「それじゃあ、あとはよろしく」
勇者マユは空に駆け出す。
「え、ちょっ、待ってくれよっ!!」
振り返ることなく彼女は光の剣で道を作り空を駆けていく。
「羨ましい。告白する勇気があって」
小さな声だった。彼女はそう呟いてから空へと飛び出した。
「いました!! 本当にいました!!」
「よし、確保ぉぉぉぉ!!」
「え゛っ!?」
大人が数名なだれ込んできて、オレはまた警察のご厄介になった。
だから、誤解だからっっっ!!!!
「またお前か」
違います、違います。オレは助けようとしただけなんだぁぁぁぁ。
◇
「お兄ちゃん、連日とかヤバくない? 何かに取り憑かれてない?」
はぁ、まったくだ。家に帰りソファーに座り込む。
今回は目撃者が多かったし、本人がばっちりと否定や状況説明してくれたおかげですぐに解放されたけれど――。
そう、頭脳君はサッパリとした様子で、さっきまで死のうとしていたのが嘘のようだった。まるで生まれ変わったように。
だから、今日は真由と一緒に家まで戻ってこれた。
「拓也君が見つけて止めてくれたの? すごいね。良かった。間に合って」
「いや、オレは――」
なんと説明すればいいのかわからず言葉に詰まる。勇者が助けた? そう、オレはただ見てるだけだった。
続きは?と首を傾げ待つ真由。間に合った事にホッとしている彼女の髪色はどう見ても赤色ではなかった……。
「もう散歩はあたしが行くからさ。お兄ちゃんは夜でかけるのは止めときなよ」
今日は優しいな。妹よ。ありがたいが、答えは――。
「いや、行くぞ。責任はしっかりととらないとな」
真由と約束したんだ。一緒に行こうねと。
「ふぅん」
勇者マユ。約束を守れないかもしれない。けれどきちんと君にも伝えないとだよな。
「告白する勇気か……」
足をかじる犬をスルーしつつ、オレはぽそりと呟いた。それはオレに対して言ったのだろうか……。
……飼い主よ、ちょっと考え事したいから犬を連れて行ってはくれまいか。
ボーっとしながら待っていたが真由からの連絡はなかった。
もしかしたら明日以降はもうダメなのかもなぁ。二日連続事件に巻き込まれるなんて、真由は女の子だしな。親がダメだっていうだろうな……。
犬をそっと離し、妹にパスする。そのままオレは自室へと戻った。
勇者マユもこの世界に確かにいる。オレと同じように転生したんだ。けれど、見た目も勇者マユそのものだった。
それならすぐ見つけられたはずなのに。
明日、覗き魔を学校中隈なく走らせて……。って、明日は土曜日だった。
次の月曜だ。絶対に探し出して見せるっ――!!
◆
その頃、もう一人の幼なじみの部屋の中。
「何で? どうして? 三人で出かけてたから、いいかと思ってたのに……。妹だけが先に帰って来た。そしてそのあと時間がたってからたっくんとまゆちゃん二人きりで雰囲気だして帰ってきてるしー!? 何なの? 何があったのー!?」
明日は自分もついて行く。絶対に――。
元魔王の左腕ミッドナイトの姿になった夜は窓枠に爪を立てながらそう誓っていた。
◆
1
あなたにおすすめの小説
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる