前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

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第18話 焦る魔王が見つけたのは②

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 赤い髪が再び風でなびく。それをかき上げる仕草は美しく、絵画に描かれるような女神の姿だった。

「――ッ!!」

 声が出なかった。見つけてねと言われていたのに、今まで見つけられなかった。彼女は確かに勇者マユの姿であるが、今のオレはただの人間大間拓也の姿だ。こんなオレが魔王だって言って信用してもらえるのか。
 ……やっぱり胸デカいなぁ。
 じゃない!! 魔王だって言ったところで殺られる可能性大だ。十五年以上も待たせやがってぇぇぇぇとか言われる。絶対に怒られる。

「あの、いいかな?」

 勇者マユがオレに話しかける様子ではオレが魔王だとわかっていなさそうだ。わかってたらきっと光の剣やら勇者の技が容赦なく降り注いでいる頃だろう。もし、自分が魔王だと言ってみろ。ただの人間の体でそれらを受ければその先には死あるのみ。人間に勇者の技が効くか知らないが、肉弾戦でも負ける自信があるぞ。
 ごくりとつばを飲み込む。なんと答えれば正解なんだ。

「め、め、女神様ァァァァァァァ!!」
「な、ぇぇっ?」

 オレが動けないでいると、違う人間が勇者マユの足にすがりつく。びっくりしてる勇者可愛い。じゃなかった、おい、やめろ。死ぬぞ、頭脳君!!!!
 どうやら気絶から目が覚めたようだ。

「女神様、どうして僕なんかをお救いになられたんですか。僕はもう、僕はもう……」

 泣いている男子高校生に勇者は優しく微笑みかける。

「一回くらいの失敗で諦めてどうするんだ。あなたは素晴らしい事を成そうと決心していたのだろう? 彼女もそれを待っているのではないか? なのに、諦めてしまうのか? ならば、何のために約束を交わしたのだ?」

 そうそう、たった一回の赤点でそんな風に投げやりになってたらオレなんかいったい何回飛び降りなきゃならないんだよ。でも、好きな人のために命懸けってのは少しだけわかるかもしれない。オレが魔王になろうと思ったのだって――。
 それにしてもなぜか、彼女の言葉はさっきからオレにちくちく刺さってくる。気のせいか?

「次の機会まで彼女は待ってくれるさ。さぁ、はやく戻って次の機会に備えるのです。次こそはきっと叶えられる」
「は、はひぃぃぃ」

 パトカーや救急車だろうか。サイレンが鳴り響く。

「私はもう行くから。離してもらっていいか?」
「はい!! 女神様!! ありがとうございます。ありがとうございます!」
「それじゃあ、あとはよろしく」

 勇者マユは空に駆け出す。

「え、ちょっ、待ってくれよっ!!」

 振り返ることなく彼女は光の剣で道を作り空を駆けていく。

「羨ましい。告白する勇気があって」

 小さな声だった。彼女はそう呟いてから空へと飛び出した。

「いました!! 本当にいました!!」
「よし、確保ぉぉぉぉ!!」
「え゛っ!?」

 大人が数名なだれ込んできて、オレはまた警察のご厄介になった。
 だから、誤解だからっっっ!!!!

「またお前か」

 違います、違います。オレは助けようとしただけなんだぁぁぁぁ。

 ◇

「お兄ちゃん、連日とかヤバくない? 何かに取り憑かれてない?」

 はぁ、まったくだ。家に帰りソファーに座り込む。
 今回は目撃者が多かったし、本人がばっちりと否定や状況説明してくれたおかげですぐに解放されたけれど――。
 そう、頭脳君はサッパリとした様子で、さっきまで死のうとしていたのが嘘のようだった。まるで生まれ変わったように。
 だから、今日は真由と一緒に家まで戻ってこれた。

「拓也君が見つけて止めてくれたの? すごいね。良かった。間に合って」
「いや、オレは――」

 なんと説明すればいいのかわからず言葉に詰まる。勇者が助けた? そう、オレはただ見てるだけだった。
 続きは?と首を傾げ待つ真由。間に合った事にホッとしている彼女の髪色はどう見ても赤色ではなかった……。

「もう散歩はあたしが行くからさ。お兄ちゃんは夜でかけるのは止めときなよ」

 今日は優しいな。妹よ。ありがたいが、答えは――。

「いや、行くぞ。責任はしっかりととらないとな」

 真由と約束したんだ。一緒に行こうねと。

「ふぅん」

 勇者マユ。約束を守れないかもしれない。けれどきちんと君にも伝えないとだよな。

「告白する勇気か……」

 足をかじる犬をスルーしつつ、オレはぽそりと呟いた。それはオレに対して言ったのだろうか……。
 ……飼い主よ、ちょっと考え事したいから犬を連れて行ってはくれまいか。
 ボーっとしながら待っていたが真由からの連絡はなかった。
 もしかしたら明日以降はもうダメなのかもなぁ。二日連続事件に巻き込まれるなんて、真由は女の子だしな。親がダメだっていうだろうな……。
 犬をそっと離し、妹にパスする。そのままオレは自室へと戻った。
 勇者マユもこの世界に確かにいる。オレと同じように転生したんだ。けれど、見た目も勇者マユそのものだった。
 それならすぐ見つけられたはずなのに。
 明日、覗き魔デビルアイを学校中隈なく走らせて……。って、明日は土曜日だった。
 次の月曜だ。絶対に探し出して見せるっ――!!

 ◆

 その頃、もう一人の幼なじみの部屋の中。

「何で? どうして? 三人で出かけてたから、いいかと思ってたのに……。妹だけが先に帰って来た。そしてそのあと時間がたってからたっくんとまゆちゃん二人きりで雰囲気だして帰ってきてるしー!? 何なの? 何があったのー!?」

 明日は自分もついて行く。絶対に――。
 元魔王の左腕ミッドナイトの姿になった夜は窓枠に爪を立てながらそう誓っていた。

 ◆
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