前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

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第17話 焦る魔王が見つけたのは①

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「いないっ」

 二人とも踏切にはいなかった。オレは一回止まって息を整え、覗き魔デビルアイの視界と同期する。
 頭脳君を見つけ追いかけている。踏切より向こう側、会社ビルなどの高い建物が並ぶ場所。
 何をする気だ? 最悪な事を想像し、もう一度走り出す。
 今回は近くに真由の姿を見つけられなかった。

「つまり、オレが止めなきゃヤバいんじゃないか!?」

 しかし、かなりの距離がある。普通に追いつこうとして追いつける距離じゃない。真由がいない今なら、怪しまれることはないか。高をくくり、使い魔の魔法陣に触れる。

「こい! 風の暴れ馬ストームホース

 魔王であった時の愛馬、使い魔風の暴れ馬ストームホース。風のように疾く駆ける事ができる。ただ、暴れ馬という名前通り、気性は荒く見た目も漆黒の毛並みが美しいけれど恐ろしくもある。

「すまないな。なかなか呼ぶ機会がなくて。久しぶりだがよろしく頼むぞ」

 使い所が難しくなかなか呼んでやることが出来ない。久々の全力疾走出来る機会。風の暴れ馬ストームホースは嬉しそうに駆け出す。オレをその場に残し。

「おい、おい! 主人を置いていくヤツがあるか!! おいぃぃ!!!!」

 おっと、忘れ物といいたげに戻ってきた風の暴れ馬ストームホースは服の背中側を咥えて再び走り出す。

「ぎ、ぎぶぎぶぎぶぎぶーー!!」

 踏まれても蹴られてもないが踏んだり蹴ったりであった。
 首が締まらないよう前側を手で引っ張りながらオレはその場にはやく辿り着くのを待った。
 そう時間はかからなかった。口がパカッと開きオレは無事、ポイッと解放された。魔王の威厳がこれっぽっちもない今世だからってもう少しこう手心をだな……。
 いや、言う事を聞いてくれるだけすごい事だとは思うけれど。

「きゃぁぁぁ」
「誰かとめてやれよ」

 騒ぎが起こりだしている。高速で走ってきたオレが目撃されたというわけではない。誰でも入れる高い建物の屋上。そこのフェンスを飛び越え、外側に立つ男に視線が集まる。頭脳君だ。

「おい、やめろ!! 止まれぇぇぇぇ!!」

 叫んではみるが他の人の声と同じ――。

ここからじゃ声も届かないか?」

 見上げる。下からあそこまで登っていく時間は残されているのだろうか。
 デビルアイは彼を持ち上げるだけの力はない。デーモンをあそこに呼ぶと巨体のせいで押し出し逆に落としてしまいかねない。ストームホースはオレしか背に乗せてくれないからな。
 どうする? オレが使える使い魔は現在その三匹しかいない。どうすれば――。考えているその瞬間にも頭脳君は空へと足を踏み出しそうだ。

「おいっ! やめろぉぉぉぉ!!」

 これでとまれば御の字だが、ふらふらと足と手が見えたり隠れたりしている。

「どいてっ」

 凛とした声がオレの横を通り過ぎていく。その色に見覚えがあった。
 灼熱の炎のような赤い髪。

「顕現せよ、光の剣!!」

 ソイツは小さな光の剣をいくつもいくつも呼び出し建物に突き刺して足場を作り駆け上がっていく。
 体には光の剣と同じく勇者にしか使えない聖なる防具光の鎧を纏っている。

 だが、上に駆け上がるその前に頭脳君が落ちた――――。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 下にいる人間の悲鳴が響く。何人もが目を閉じ、その時を待つ。
 だが、オレは目を開きその瞬間を見た。アイツなら絶対に大丈夫だと知っているから。
 何も起こらない事に皆が不思議に思い出した頃、オレは急いで向かい側の少し低い同じく誰でも入れる施設の建物に走った。
 そこに二人はいた。頭脳君は横になっている。

「まさか……そんな……」

 頭脳君に光の剣が突き刺さっている。それはもう見事に……。
 そんな、探してた人がこんな事するなんて――。
 オレに気がついたのか立っている人物が光の剣に手をかざすとそれは空気にとけるように消えた。

「えっと、彼気絶してるだけ」

 赤い髪が風でなびく。鎧のせいで上半身の服はまるで見えないが下半身、ジャージのズボンが鎧とグリーブの隙間から見えている。
 うちの学校のジャージ……。だが、学校で真っ赤な髪の女は見た覚えがない。
 とりあえず、気絶ということは最悪の事件は起きずにすむのだろうか。っと、そうだった。勇者が傷つけるつもりがなければ人間には光の剣は効果がないんだった。

「下に連れて行ってもらえるかな」

 女がこちらを向く。真由じゃない。真由の髪はここまで見事な赤い髪ではない。
 目の前で頭脳君を救ったのは、オレが探してる勇者マユその人だった。
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