前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

文字の大きさ
16 / 66

第16話 逃げられ焦る魔王

しおりを挟む
 オレは確実に間に合わない。だが、コイツなら間に合う。召喚先を頭脳君の横に指定するだけだ。
 ポケットに仕込んだ魔法陣で呼び出す。

(こい!! デーモン! 頭脳君をこちらに引っ張り倒せ!!)

 大柄な魔物が頭脳君の横に現れる。大きな腕で頭脳君を掴み、線路側からこちらへと押し出す。
 見えてるオレにはそう見えていたが、見えてないやつらからすると見えない力に押されるという謎の現象にびびっただろう。侵入しようとしてやーめたと出てくる勢いじゃないからな。でも、おかげで真由は線路に飛び込むことなく頭脳君を確保できた。すごいな。飛び込むかもしれないって可能性を感じた瞬間迷いもなく止めに行こうとする勇気。
 オレは真由のように動ける自信なんてこれっぽっちも持ち合わせていない。
 警報機が鳴り止み、遮断桿しゃだんかんも上がる。もう大丈夫だと、ふぅーと息を吐いた。

(さんきゅ。もういいぞ、帰って)

 デーモンに伝えるとすぐに姿を消した。一般人には見られる心配はないけれど、もしいま同じように外を歩いている勇者に見つかりデーモンが光の剣で攻撃されたら可哀そうだ。

「マユお姉ちゃん、どうしたの!? だれその人!?」

 オレと妹は並んで走って真由達の場所にたどり着く。

「大丈夫か!?」
「……うん、大丈夫。なんだか、飛び込もうとしてるみたいに見えたから。私達と同じクラスの人だよ」
「え、飛び込み!? お兄ちゃんと同じクラスって、大事件じゃん」
「でも違ったかも。急にこっちに飛び退いてきたから」

 頭脳君は真由にガッツリと腕を抑えられている。羨ましい。おい頭脳君ちょっとそこ代われ。
 頭脳君を見ると、ぶつぶつと何かを呟き、目をギョロギョロとさせていた。もしかして正気ではない?

「なんか、お兄ちゃんのクラスメイト、ヤバくない?」

 コソコソと妹に耳元で囁かれる。くすぐったいんだが。
 オレも同じようにコソコソと妹に返事する。
「いや、普段はこうじゃない。というか、クラスで一番とかとる成績上位者だぞ」

 ギョロリと視線がオレ達に定まる。うん、ヤバいな。

「そうだよ。ヤバいんだよ!! 僕は、僕は……」

 あ、オレの心の中読まれちゃいました?

「僕は、成績は……テストは……、一番でないと。一番でないと……」
「とりあえず、ここから離れよう。公園で座りながら話そうよ」

 真由の提案にオレも頷く。また飛びこむかもしれない。なら、少しでも距離を取りたい。
 うーん、スマホで通報したほうがいいか? 昨日の今日でまた世話になるのは何とも言い難い気分になるが仕方がない。
 まずは次の電車がくる前にと三人と一匹の力で一人の男を引きずっていく。
 公園についた頃、頭脳君は少しだけ落ち着いて見えた。

「よし、さぁ、話を聞くぞ」
「ねぇ、お兄ちゃん。散歩は?」
「あとだ」
「じゃあ、お母さんに連絡しとくね」

 頭脳君を公園のベンチに座らせ、三人と一匹で一人の男を取り囲む。ぱっとみた感じこれ恐喝してるように見えないか?
 落ち着いたなら、家まで送って行くだけですむかもしれない。警察にはまだ言わなくても大丈夫かな。

「別に話なんてない。一位じゃない僕は告白する資格すらないんだ。せっかく約束していたのに」
「ん、約束?」

 約束という言葉にピクリと反応してしまう。

「そうだ。大好きな人に告白してもいいかと聞いて、彼女から「テストで百点取ったらね」と了承を得ていたのに、僕は僕は……彼女に告白する事で頭がいっぱいで、テストをおざなりにしてしまった!! チャンスを自分で潰してしまったんだ。こんな僕には告白する資格なんてないんだっ!! もう生きてたって仕方がない!!」

 勢いよく泣き出す頭脳君。

「やっぱり、僕は……」

 頭脳君は意外とだが体格が良い。背もオレより5センチはうえだろう。だからというわけではないが、油断してた。
 うわぁぁぁぁぁと叫びながら頭突きをしてきた頭脳君にびびりオレは横に体を逃がし、道をあけてしまったのだ。ついでにとばかりに避けて変な体勢のオレを頭脳君両手でドンッと押していく。正月のコマよろしく大回転。ならまだ面白かっただろう。ただただ無様に転けた。がっくりと膝をついた状態である。
 真由も、スマホで連絡をいれていた妹も何も出来ないまま彼が走って行くのを見送ってしまう。

「拓也君! 大丈夫?」
「あ、あぁ。ケガはない」

 精神ダメージはかなりのものだが、すぐに立ち上がる。

「追いかけよう」
「急ごう。あの状態だと彼、また飛び込んじゃうよ」

 先に警察に連絡しておけば良かったと後悔しながら、オレと真由は走り出す。

「ねっ、ちょっと、ねぇ、お兄ちゃん!!」

 そうだ。妹もいた。真由はそのまま駆けていく。

永遠とわ! 急いで警察に連絡してくれッ!! 帰れそうなら先に家に帰っておくんだ!! すまん!!」

 真由が走って行った方へ向き直るとすでに姿は見えない。足速すぎだろ。今回は魔力痕はない。覗き魔デビルアイでの追跡は不可能? いや、一度教室で彼の姿を記憶してるから出来るはずだ。

覗き魔デビルアイ、頭脳君を探せ!」

 覗き魔デビルアイを打ち上げる。向かう先は同じ方向だったので、頭脳君がさっき飛び込もうとした場所へとオレは走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

滅びた勇者の弟に転生したけど、兄の残した絆で世界を救うことになりました

eringi
ファンタジー
最強の勇者として名を馳せた兄が、魔王との最終決戦で命を落とした。 兄を尊敬していた普通の青年・遥斗は、死の間際に異世界へ転生。だが目を覚ますと、自分は伝説の勇者の“弟”として生まれ変わっていた。 かつて兄が守った世界は、今や崩壊寸前。人々の希望は失われ、兄の名さえも忘れ去られようとしている。 兄の残した仲間たち、託された剣、そして血に刻まれた勇者の記憶。 「俺は俺のやり方で、この世界を救う」――かつての英雄の弟が、亡き兄を超えるために歩み出す。 家族愛と仲間の絆が織りなす、再生のファンタジー。

処理中です...