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第22話 魔王、勇者(?)と会合する
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「ちょっと聞いてるッスか?」
ぷりぷりと怒った声もはっきり違うとわかる。
「アンタが魔王ッスよね?」
「イエ、チガイマス。ていうか、誰だよ?」
「アンタが魔王ッスよねぇぇ!!!!」
明らかに勇者マユでない相手に元魔王だと言ってどうなる。中二病だと思われるじゃないか。それがクラスの噂になってみろ。オレは終わりじゃないか。
「いや、そもそもお前誰? オレはただ手紙に屋上にこいとか勇者だとか書いた変な手紙の主さん見に来ただけだが?」
「ぐっ、とぼけるッスか。魔王……。ていうか、わたしの事知らないとかマジッスか」
「知らん、誰だ」
「同じクラスの後ろの席に座ってる鉄拳玲奈。クラスメイトッスよ!?」
あー、確かにクラス名簿になんか強そうな名字の女子がいたような気がする。オレの後ろの席だっけ?
この身長だと黒板見るのいつも邪魔してるだろうな。スマンな。
「いや、オレまだクラスの人間……話した事ないやつはあんまり覚えてないから」
「席の後ろに座ってるんスけど!?」
「覚えてないなぁ。後ろ――あー、夜が毎回後ろからくるから視界に入ってこなかったのかも」
「くっ、だけど今日はしっかり覚えてもらうッスよ!! 魔王の力を呼び戻し、世界を渡る扉を開いてもらうために」
「はぁ……」
ヤバいな。中二病か? どう見ても勇者マユじゃないし、オレ帰っていいかな。
「もー!! トボけたって無駄ッスよ!! コイツが証拠なんスからっ!!」
鉄拳はキーキー叫びながら手のひらサイズの黒い四角い箱を懐から取り出す。いや、どこにいれてんだよ。
「ふふふ、コイツがどうなってもいいんスか?」
「いや、むしろなんだよ。それ」
「むぅ、まだとぼける気ッスね!? こうすればわかるッスか?」
鉄拳は箱を開け中身をつまみ出す。それはまごうことなきオレの使い魔、覗き魔だった。しっかりと目の横にはえる羽を掴んでいるということはコイツには見えている。
すぐにでも助けてやりたい。だが、ここでオレが魔王だと言ってみろ。普通の生活が送れなくなる。
もう二度とごめんだ。いきなり世界が変わってしまうのも、魔王になるのも――。せっかく凡人にうまれたんだ。普通の生活、普通の人生を送るんだ!!
それに、勇者マユは絶対にこんなことはしない。勇者マユでないなら、告白する必要なし! オレが取るべき行動は決まっている。
「あ゛ーーーーー!! それ、なくなったと思ったオレの消しゴムじゃねーか!!」
「は、あぇ? 消しゴム?」
「そうだよ、消しゴム以外のなんだっていうんだよ。どう見ても消しゴムだろ。つーか、まさかお前が盗ったのか? 今日授業大変だったんだぞ」
「え、あ、え……」
「返せよ! オレの消しゴム。それ高かったんだぞ。まとまる、きれいに消せる、最高級のやつなんだぞ」
「え、えぇぇぇ?」
そう、鉄拳だけを中二病認定させるのだ。オレは覗き魔をあくまでオレの消しゴムだと言い張る。こうすることで、もしかして、自分の目にしか見えてない妄想では、と疑問に思わせるんだ。
「消しゴムなわけ無いッス。だってほらこんなフォルムだし、使ってたらどこかすり減ってたりするッスよね!?」
「いーや、消しゴムにしか見えないぞ。ほら、そこ使って減ってるじゃないか。あーもし拾ってくれたんならありがとうだ。さぁ、さっさと返してくれないか?」
「う、うぅぅ?」
わかる、わかるぞ。仲間だと思っていた人物から突然はしごを外され一人になる恐怖。魔王を目指してた時幾度となく味わったなぁ。
自分だけしか見えてない中二病だと言われてしまえばどっちが本当なのか信じきれなくなる恐怖。実際、覗き魔達を見つけた時は慌てたもんだ。
「わ、わかった。返すッス。返すッスよぉぉ」
鉄拳は涙目になりながら覗き魔をオレの手に渡してきた。オレはささっとすぐにズボンのポケットに突っ込む。
「返してくれてありがとう。それじゃあ、オレはもう行くぞ」
「うぅぅー」
多少の罪悪感はあるがさっさとここから逃げ帰らなければ。なぜだかわからないが嫌な予感がする。
「魔王だったら勇者マユを見つけてくれると思ったのに、三下魔族だったんッスかねぇ。マユ様ぁ、どこにいるんスかぁぁ」
誰が三下だ。誰が。というか、コイツ勇者マユの関係者かよ。オレの知らない勇者マユの情報を持ってるかもしれないのか。くっ、気になるな。
頭ではさっさとこの場から逃げなければと考えているのに、気になって足が止まってしまう。
「さびしいッス。一人はさびしいッス……。例え魔王でも魔族でも同じ世界からの転生者なら仲間になれると思ってたのに……。やっぱり、半魔のわたしには一人ぼっちがお似合いってコトッスね」
半魔。半分人で半分魔族。魔族でも人でもない存在。魔族側にもいただろうがあまり見ることがなかったのはおそらくどこかでひっそりと隠れていたからだろう。
人側ではどんな扱いだったのだろうか。おそらく勇者マユならば、手を差し伸べただろう。
だが、オレは魔王。もし困っている魔族や魔物がいれば助けはしたいが、人の事に手を出すのは――。
そういえば鉄拳が誰かとつるんでるとこを見た覚えがないな。そうか、ずっと一人でオレの後ろの自席に座りっぱなしだから見覚えがなかったんだ。
あー、駄目だ、駄目だ。オレはもう普通の人間大間拓也としての人生を歩むと決めたじゃないか。だから、はやく足を出入り口に向けるんだ。
「うぅぁぁぁん」
「だー、もう!!」
我慢しきれず話しかけようとした時だった。
「どうしたの? 何かあったの?」
心配する優しい声。これは間違えることなんてしない真由の声だ。というか、待ってくれ。この状況、オレが鉄拳を泣かしてるようにしか見えないのでは!?
さーっと背を冷たいものが走った。
ぷりぷりと怒った声もはっきり違うとわかる。
「アンタが魔王ッスよね?」
「イエ、チガイマス。ていうか、誰だよ?」
「アンタが魔王ッスよねぇぇ!!!!」
明らかに勇者マユでない相手に元魔王だと言ってどうなる。中二病だと思われるじゃないか。それがクラスの噂になってみろ。オレは終わりじゃないか。
「いや、そもそもお前誰? オレはただ手紙に屋上にこいとか勇者だとか書いた変な手紙の主さん見に来ただけだが?」
「ぐっ、とぼけるッスか。魔王……。ていうか、わたしの事知らないとかマジッスか」
「知らん、誰だ」
「同じクラスの後ろの席に座ってる鉄拳玲奈。クラスメイトッスよ!?」
あー、確かにクラス名簿になんか強そうな名字の女子がいたような気がする。オレの後ろの席だっけ?
この身長だと黒板見るのいつも邪魔してるだろうな。スマンな。
「いや、オレまだクラスの人間……話した事ないやつはあんまり覚えてないから」
「席の後ろに座ってるんスけど!?」
「覚えてないなぁ。後ろ――あー、夜が毎回後ろからくるから視界に入ってこなかったのかも」
「くっ、だけど今日はしっかり覚えてもらうッスよ!! 魔王の力を呼び戻し、世界を渡る扉を開いてもらうために」
「はぁ……」
ヤバいな。中二病か? どう見ても勇者マユじゃないし、オレ帰っていいかな。
「もー!! トボけたって無駄ッスよ!! コイツが証拠なんスからっ!!」
鉄拳はキーキー叫びながら手のひらサイズの黒い四角い箱を懐から取り出す。いや、どこにいれてんだよ。
「ふふふ、コイツがどうなってもいいんスか?」
「いや、むしろなんだよ。それ」
「むぅ、まだとぼける気ッスね!? こうすればわかるッスか?」
鉄拳は箱を開け中身をつまみ出す。それはまごうことなきオレの使い魔、覗き魔だった。しっかりと目の横にはえる羽を掴んでいるということはコイツには見えている。
すぐにでも助けてやりたい。だが、ここでオレが魔王だと言ってみろ。普通の生活が送れなくなる。
もう二度とごめんだ。いきなり世界が変わってしまうのも、魔王になるのも――。せっかく凡人にうまれたんだ。普通の生活、普通の人生を送るんだ!!
それに、勇者マユは絶対にこんなことはしない。勇者マユでないなら、告白する必要なし! オレが取るべき行動は決まっている。
「あ゛ーーーーー!! それ、なくなったと思ったオレの消しゴムじゃねーか!!」
「は、あぇ? 消しゴム?」
「そうだよ、消しゴム以外のなんだっていうんだよ。どう見ても消しゴムだろ。つーか、まさかお前が盗ったのか? 今日授業大変だったんだぞ」
「え、あ、え……」
「返せよ! オレの消しゴム。それ高かったんだぞ。まとまる、きれいに消せる、最高級のやつなんだぞ」
「え、えぇぇぇ?」
そう、鉄拳だけを中二病認定させるのだ。オレは覗き魔をあくまでオレの消しゴムだと言い張る。こうすることで、もしかして、自分の目にしか見えてない妄想では、と疑問に思わせるんだ。
「消しゴムなわけ無いッス。だってほらこんなフォルムだし、使ってたらどこかすり減ってたりするッスよね!?」
「いーや、消しゴムにしか見えないぞ。ほら、そこ使って減ってるじゃないか。あーもし拾ってくれたんならありがとうだ。さぁ、さっさと返してくれないか?」
「う、うぅぅ?」
わかる、わかるぞ。仲間だと思っていた人物から突然はしごを外され一人になる恐怖。魔王を目指してた時幾度となく味わったなぁ。
自分だけしか見えてない中二病だと言われてしまえばどっちが本当なのか信じきれなくなる恐怖。実際、覗き魔達を見つけた時は慌てたもんだ。
「わ、わかった。返すッス。返すッスよぉぉ」
鉄拳は涙目になりながら覗き魔をオレの手に渡してきた。オレはささっとすぐにズボンのポケットに突っ込む。
「返してくれてありがとう。それじゃあ、オレはもう行くぞ」
「うぅぅー」
多少の罪悪感はあるがさっさとここから逃げ帰らなければ。なぜだかわからないが嫌な予感がする。
「魔王だったら勇者マユを見つけてくれると思ったのに、三下魔族だったんッスかねぇ。マユ様ぁ、どこにいるんスかぁぁ」
誰が三下だ。誰が。というか、コイツ勇者マユの関係者かよ。オレの知らない勇者マユの情報を持ってるかもしれないのか。くっ、気になるな。
頭ではさっさとこの場から逃げなければと考えているのに、気になって足が止まってしまう。
「さびしいッス。一人はさびしいッス……。例え魔王でも魔族でも同じ世界からの転生者なら仲間になれると思ってたのに……。やっぱり、半魔のわたしには一人ぼっちがお似合いってコトッスね」
半魔。半分人で半分魔族。魔族でも人でもない存在。魔族側にもいただろうがあまり見ることがなかったのはおそらくどこかでひっそりと隠れていたからだろう。
人側ではどんな扱いだったのだろうか。おそらく勇者マユならば、手を差し伸べただろう。
だが、オレは魔王。もし困っている魔族や魔物がいれば助けはしたいが、人の事に手を出すのは――。
そういえば鉄拳が誰かとつるんでるとこを見た覚えがないな。そうか、ずっと一人でオレの後ろの自席に座りっぱなしだから見覚えがなかったんだ。
あー、駄目だ、駄目だ。オレはもう普通の人間大間拓也としての人生を歩むと決めたじゃないか。だから、はやく足を出入り口に向けるんだ。
「うぅぁぁぁん」
「だー、もう!!」
我慢しきれず話しかけようとした時だった。
「どうしたの? 何かあったの?」
心配する優しい声。これは間違えることなんてしない真由の声だ。というか、待ってくれ。この状況、オレが鉄拳を泣かしてるようにしか見えないのでは!?
さーっと背を冷たいものが走った。
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