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第26話 妹に白昼夢だと宣言される魔王
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妹の足はいったいどれだけはやかったんだ。家に帰り着いてしまったが見当たらなかった。玄関をあけ、中に入ると靴がない。
「あら、たっちゃんおかえりー。とわちゃんは?」
「あー、近く通ったらトイレ行きたくなって寄っただけ。まだもうちょい走ってくるけど、ケルベロスは置いていっていい? 母さん」
「いいわよ。もうおトイレはおわったんでしょう」
「終わってる。今日も問題なかったから」
今日の回収も出来なかった。が、今はそれどころじゃない。とりあえずトイレに行き、少し待ってみるが永遠は帰ってこない。
トイレから出て、玄関からもう一度外に飛び出す。
「あー、もしかしたら永遠だけさきに戻るかもしれないけど戻ったら連絡いれて」
「? いいけど、どうしたの?」
「ちょっと腹痛いって言ってたからさ」
「はーい。いってらっしゃい」
この道以外でどこに行ったんだ?
オレはまた公園を目指し走り出そうとした。
「あぅ……っ……」
永遠の声がかすかに聞こえた。まるで痛みを我慢するような時の声。
「永遠、どうした。大丈夫か!?」
声のした場所に向かう。ちょうど小さな空き地とお堂があるところだ。
「と……わ……?」
体操服の後ろをまくり上げ背中の肌色が薄明かりに浮かぶ。
「何やって――」
「お兄ちゃん、見ないで……」
頬を上気させ目を潤ませる永遠。その瞳の色がいつもと違い赤く染まっている。バサッと背中から広がる蝙蝠のような翼。頭には角が見える。まるで、魔王の妹トワイライトのような姿。というか、まんまトワイライトじゃないか?
「うぁ……」
「すげーな!! 永遠どうやってるんだ? 早着替え? 中学で劇でもするのか? すごいな。まるで本物みたい。っつーかこれ本物か? カッコいいな。まじ、どうなってる」
「あ、えっと、あぇ? ……お兄ちゃん、怖くない? 気持ち悪くない?」
「は、なにが? すごいな。きれいな翼。飛べたりするのか?」
「え、あ、えっと……」
「触ってもいいか?」
「え、あぁぁぁぁ、えぇぇ、……うん」
許可は取った。近づいて翼に触れる。出来るだけ恥ずかしいと思うような場所を見ないようにしながら魔物なんかが取り憑いていないか確認する。
姿形をそういう風に変身させたように見せる幻影を使う魔物がいたはずだ。
だが、それらしきものは見当たらない。
まさか、オレがトワイライト達もこっちにくればいいのになんて考えたから――。
「お兄ちゃん?」
永遠が顔を上げオレを見る。あまり長くあちこち触ったり見ているのは駄目かと思い、とりあえず手を離した。その瞬間、翼の付け根に何かが見える。
「ちょっといいか、永遠」
「ふぇ、何なに?」
「もう少しだけ背中の翼を見たい」
「……ちょ、ちょっとだけだよ?」
妹は顔を赤くしながらそっぽを向いた。
すまん。すぐ終わるから!!
クイッと翼を持ち上げまじまじと付け根を見る。肌色に変わるその場所に見覚えのある印が浮かんでいた。使い魔解放の印。勇者側に寝返った使い魔が永遠の中にいる? そのせいなのか? わからない。わからないがとりあえず、これをオレの契約に切り替えれば使い魔を永遠から追い出せるか?
「もういい? お兄ちゃん。そろそろ恥ずかし――」
「もうちょっとだ。うーん、ここなんか素晴らしい」
もう少しだけなんとか時間を稼がねば。たとえ、変態兄と罵られようとも!!
「ひゃうぅ」
すまない、妹。もう少しの我慢だ。えーっと、とりあえず、指で契約の魔法陣を描き上書きするか。
使い魔開放の印の上からオレの使い魔契約の印を描く。よし、消えた。次は本契約の印を――。
「もうだめぇぇぇぇ!!」
限界だったのか永遠に思いっきり突き飛ばされる。まあ、こそばゆかったよなぁ。
地面にスライディングをしたあとすぐ起き上がる。
あわわわと慌てる永遠だったが先ほどまであった翼や角が全部なくなりいつもの姿に戻っていた。
「あれ、永遠」
「え、何?」
「翼……」
「は?」
永遠はキョロキョロしたあと背中の服を引っ張りおろし、ムッとした顔になる。
「……えー、お兄ちゃん夢でもみてたんじゃないの?」
「は、夢?」
「そう、夢」
「そうか、夢か」
「そう、夢だよ。絶対夢!」
「そうか」
少しの間、考えてオレは手を差し出した。
「立てるか?」
「……うん。立つくらいできるし」
そのまま手を繋ぎ、すぐそこの家へと足を向ける。
何も聞かず、何も話さず、ただ手を引いて。
「何も聞かないの?」
問われ、オレは答える。
「オレの夢なんだろ?」
答えが合っているかどうかはわからないが、永遠から「うん」と小さく返ってきたからこれでよかったのだろう。
それにしても、また使い魔開放の印か。
永遠の中にいるかもしれないヤツはケルベロスとともに要観察だな。さすがに妹を四六時中見張るわけにはいかないが、気を付けて見るようにしよう。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃん、……大好き」
「おー、オレも永遠の事大好きだぞ」
何年ぶりだろう。永遠からこの言葉を聞いたのは。
子どもの頃はよく聞いてたけれど大きくなるにつれて聞かなくなってたなぁ。
「そうじゃないし……」
「違うのかよ!!」
玄関にたどり着き、勢いよく手を離される。
「あら、おかえりなさい。もう終わったの? とわちゃんお腹痛かったのよね。ちょっとまっててー。ブランケット、ブランケット」
母さんがパタパタと走ってブランケットを取りに行く。
「痛いのはお腹じゃないし……」
「え、永遠どこだ? どこが痛いんだ?」
「ほんと、馬鹿にい……」
えぇ、なんでオレ怒られてるの!?
勇者は見つからず、脱衣魔も出てこず、新たに使い魔開放の印を見つけ、妹にバカと言われ……ほんと踏んだり蹴ったり散々な日だ。
「あら、たっちゃんおかえりー。とわちゃんは?」
「あー、近く通ったらトイレ行きたくなって寄っただけ。まだもうちょい走ってくるけど、ケルベロスは置いていっていい? 母さん」
「いいわよ。もうおトイレはおわったんでしょう」
「終わってる。今日も問題なかったから」
今日の回収も出来なかった。が、今はそれどころじゃない。とりあえずトイレに行き、少し待ってみるが永遠は帰ってこない。
トイレから出て、玄関からもう一度外に飛び出す。
「あー、もしかしたら永遠だけさきに戻るかもしれないけど戻ったら連絡いれて」
「? いいけど、どうしたの?」
「ちょっと腹痛いって言ってたからさ」
「はーい。いってらっしゃい」
この道以外でどこに行ったんだ?
オレはまた公園を目指し走り出そうとした。
「あぅ……っ……」
永遠の声がかすかに聞こえた。まるで痛みを我慢するような時の声。
「永遠、どうした。大丈夫か!?」
声のした場所に向かう。ちょうど小さな空き地とお堂があるところだ。
「と……わ……?」
体操服の後ろをまくり上げ背中の肌色が薄明かりに浮かぶ。
「何やって――」
「お兄ちゃん、見ないで……」
頬を上気させ目を潤ませる永遠。その瞳の色がいつもと違い赤く染まっている。バサッと背中から広がる蝙蝠のような翼。頭には角が見える。まるで、魔王の妹トワイライトのような姿。というか、まんまトワイライトじゃないか?
「うぁ……」
「すげーな!! 永遠どうやってるんだ? 早着替え? 中学で劇でもするのか? すごいな。まるで本物みたい。っつーかこれ本物か? カッコいいな。まじ、どうなってる」
「あ、えっと、あぇ? ……お兄ちゃん、怖くない? 気持ち悪くない?」
「は、なにが? すごいな。きれいな翼。飛べたりするのか?」
「え、あ、えっと……」
「触ってもいいか?」
「え、あぁぁぁぁ、えぇぇ、……うん」
許可は取った。近づいて翼に触れる。出来るだけ恥ずかしいと思うような場所を見ないようにしながら魔物なんかが取り憑いていないか確認する。
姿形をそういう風に変身させたように見せる幻影を使う魔物がいたはずだ。
だが、それらしきものは見当たらない。
まさか、オレがトワイライト達もこっちにくればいいのになんて考えたから――。
「お兄ちゃん?」
永遠が顔を上げオレを見る。あまり長くあちこち触ったり見ているのは駄目かと思い、とりあえず手を離した。その瞬間、翼の付け根に何かが見える。
「ちょっといいか、永遠」
「ふぇ、何なに?」
「もう少しだけ背中の翼を見たい」
「……ちょ、ちょっとだけだよ?」
妹は顔を赤くしながらそっぽを向いた。
すまん。すぐ終わるから!!
クイッと翼を持ち上げまじまじと付け根を見る。肌色に変わるその場所に見覚えのある印が浮かんでいた。使い魔解放の印。勇者側に寝返った使い魔が永遠の中にいる? そのせいなのか? わからない。わからないがとりあえず、これをオレの契約に切り替えれば使い魔を永遠から追い出せるか?
「もういい? お兄ちゃん。そろそろ恥ずかし――」
「もうちょっとだ。うーん、ここなんか素晴らしい」
もう少しだけなんとか時間を稼がねば。たとえ、変態兄と罵られようとも!!
「ひゃうぅ」
すまない、妹。もう少しの我慢だ。えーっと、とりあえず、指で契約の魔法陣を描き上書きするか。
使い魔開放の印の上からオレの使い魔契約の印を描く。よし、消えた。次は本契約の印を――。
「もうだめぇぇぇぇ!!」
限界だったのか永遠に思いっきり突き飛ばされる。まあ、こそばゆかったよなぁ。
地面にスライディングをしたあとすぐ起き上がる。
あわわわと慌てる永遠だったが先ほどまであった翼や角が全部なくなりいつもの姿に戻っていた。
「あれ、永遠」
「え、何?」
「翼……」
「は?」
永遠はキョロキョロしたあと背中の服を引っ張りおろし、ムッとした顔になる。
「……えー、お兄ちゃん夢でもみてたんじゃないの?」
「は、夢?」
「そう、夢」
「そうか、夢か」
「そう、夢だよ。絶対夢!」
「そうか」
少しの間、考えてオレは手を差し出した。
「立てるか?」
「……うん。立つくらいできるし」
そのまま手を繋ぎ、すぐそこの家へと足を向ける。
何も聞かず、何も話さず、ただ手を引いて。
「何も聞かないの?」
問われ、オレは答える。
「オレの夢なんだろ?」
答えが合っているかどうかはわからないが、永遠から「うん」と小さく返ってきたからこれでよかったのだろう。
それにしても、また使い魔開放の印か。
永遠の中にいるかもしれないヤツはケルベロスとともに要観察だな。さすがに妹を四六時中見張るわけにはいかないが、気を付けて見るようにしよう。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃん、……大好き」
「おー、オレも永遠の事大好きだぞ」
何年ぶりだろう。永遠からこの言葉を聞いたのは。
子どもの頃はよく聞いてたけれど大きくなるにつれて聞かなくなってたなぁ。
「そうじゃないし……」
「違うのかよ!!」
玄関にたどり着き、勢いよく手を離される。
「あら、おかえりなさい。もう終わったの? とわちゃんお腹痛かったのよね。ちょっとまっててー。ブランケット、ブランケット」
母さんがパタパタと走ってブランケットを取りに行く。
「痛いのはお腹じゃないし……」
「え、永遠どこだ? どこが痛いんだ?」
「ほんと、馬鹿にい……」
えぇ、なんでオレ怒られてるの!?
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