前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

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第29話 挟み撃ちされる魔王

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「うわー、身体測定か」

 昼から高校初の身体測定がある。体操服をきて一年生の半分が体育館に集まる。残りはその次の時間から。

「伸びたかな。どう思う?」

 夜とオレは現在弁当を持って屋上へと向かう途中である。

「うーむ、オレも伸びてるからあんまりわからないなぁ。夜はまだ伸びてるのか?」
「たぶんだけど、伸びてるよ。これ以上はいらないんだけどなー」

 夜はオレとそれほど変わらない。一、二センチだけオレが高いはずだ!!
 横に並ぶと目線がしっかり同じ位置。昔から変わらない。もう少しだけ優位でありたいのは、女の子に負けたくないと思ってしまうからだろう。いやいや、夜は男だ。男。女だって考えちゃダメだろう。きっと夜が嫌がる。

「たっくんは小さい方がいいのかな?」
「え? 何の話だ?」
「身長。彼女にするならさ。どれくらいが好きなのかなーって」

 それは、決まってる。百五十五センチ!!
 だが、ここですぐ答えるオレではない。なぜなら、男は小さい女の方がいいとか言ってもし夜が傷ついたら困る。普段男だと言い張っていても、夜のたくさんの可能性を潰してはいけないからな。
 元魔王のオレはみんなの上に立つ者だったからな。しっかり考えてよい答えを出さなければ。

「オレより低いほうがいいかな」

 コレだ!! これなら女の子はかなり当てはまるし夜にだって通用する。

「……そっか。たっくんより小さいならクラスほとんど全員だね。たっくんより高いと言ったら宇尾さんくらいかな?」
「そうなるかな。いや、他にもいなかったか?」
「ま、今日の身体測定結果でわかるよね」
「そうだな」

 毎回抜かされてないか心配しながらの身体測定。夜とはよく勝った負けたをしていたな。今回も勝ってるはずだよな。牛乳は毎日欠かさず飲んでるオレに隙などない!

「あれ、真由」

 二人で弁当をひろげようと腰をおろした時だった。

「あの、私もここで一緒に食べていいかな」

 真由はそう言ってお弁当を手にオレ達の横にやってきた。

「どうぞ」

 オレは呆気にとられそれだけ答える。真由はオレの横、あいてる左側にふわりと座る。
 ただそれだけなのにドキドキした。

「どうしたの? いつものとこで食べないの?」

 夜が聞くと、真由は髪をかき上げながら答える。

「二人が羨ましくて――。いいねここ、空がひろい」

 羨ましい?
 あぁ、そうか。真由は屋上で食べたかったのか。
 そうだよな。男達に人気の食堂はここから遠く、屋上は弁当持参者のみに限定される。弁当持参が多い女子にはおしゃれな中庭の方が人気だ。おしゃれ女子が多いからその姿を眺めるためか教室に残ったりする男子も多い。女子も中庭にいかない教室組はそこそこいる。
 屋上にわざわざ弁当を食べに来るのは、オレや夜のようなもの好きだけだ。

「お弁当、おっきいね」
「育ち盛りだからっていっぱいつめこんでくれるんだよな。真由はそれで足りるのか?」

 小さなお弁当箱。妹でももう少し大きかったと思うのだが。

「うん、あんまり大きくなりたくないから」
「そうなのか? もう少し背はあっても問題はなさそうだけど」
「うん、身長はね。そうだね、もう少しあってもいいかなぁ」

 夜に横から肘鉄をいれられる。なんだよ、いったい。

「まゆちゃん、これボクの作った唐揚げ。あげるから食べなよ」
「え、あ、ありがとう。じゃあ、私は卵焼きを」

 オレの目の前を二人の女子の胸が行き交う。あ、違った。箸とおかずが行き交うだ。あと夜は男だ、男。でも、すげー幸せな眺めだ。もうちょっと見ていたい。

「私もこれからはここで食べようかな」

 真由がふたたび腰を下ろすと気のせいかさっきより近づいている。というか確実に近い。スカートがオレの制服にくっついてる。つまりMITTYKU!?

「でも鉄拳さんとか寂しがるんじゃない?」

 気のせいか、夜も近づいてないか? 顔の位置が近くて前髪に隠れた目がはっきり見える。ぱっちりと大きな目に長いまつ毛。見せないのが勿体ないくらい可愛いよな……。あっと、夜は男だと思わないとだった。やはりこちらも密着気味だ。

「そうだよね」

 真由は寂しそうに笑う。いつでもきて大丈夫だと伝えたい。伝えたいのに、二人から密着され柔らかくていい匂いのせいでオレの心臓とオレが色々と色々でヤバイことになってしまい思考が停止する。これ以上考えちゃダメだ。動けなくなるぞ、オレぇぇぇ。

「空がきれいだ」

 何言ってるんだ。そうじゃないだろぉぉ!?

「?」

 ほら、唐突すぎて夜が首を傾げている。

「そうだね。ほんときれい。あ、今日は身体測定だね。早く食べて着替えないとだ。私行くね」

 少なかったから早々に食べ終わった真由は弁当箱を小さなバッグにしまい立ち上がる。突然の意味不明なオレの話に付き合ってくれる優しさは流石真由だ。
 もう少しだけ温かさを感じていたかったがしかたがない。これ以上はオレも危険だ。

「拓也君も夜ちゃんも着替えがあるからはやめに戻りなよ。一斉だから今日は教室でだよ。はやめに服持っていかないと出入り出来なくなっちゃうよ」
「そうだね」
「そうだな」

 オレはいざとなれば使い魔に持ってこさせる裏技がある。そう思ったが鉄拳がいると使えないな。クラスでは使いにくくなってしまった。
 片方があき、少し余裕を取り戻したオレだった。だがいつもよりくっついてる夜がおかずを口に運ぶ度腕があたり少し意識してしまう。

「なあ、夜。さっきの続きなんだが――」

 オレは話題を謎の子どもの影に変え気づかれないように少しずつ座り直し距離をあける。
 落ち着きたまえ、オレぇぇぇ。そう自分に言い聞かせながら。
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