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第35話 勇者マユをふたたび目撃する魔王
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少し進んだところでふたたび尻に噛みつかれる。
「いった、何するんだよ!? ケルベロ――」
「し、静かにするわん。いるぞ、たくさん」
たしかに空気が騒がしい。何かが争っているような音もする。
でもだからって尻に噛みつかなくてもいいんじゃないか?
静かに近づいていくと突然上から大量の光の剣が降り注いできた。
オレはそれを声を殺しつつ必死に避けた。
体は人間だが元魔王だったオレの中身は滅されるかもしれない。それは困る。勇者マユを見つけ伝えないまま消えるわけにはいかないっ!!
光の剣は小鬼達に刺さり姿を消していく。そこに残るのは魔力の煙。それが空気へと溶けていく。
「勇者マユ! それは一時しのぎにしかならないと何故理解しない。やつらはまた復活するぞ。頭を潰さなければ」
「あなた達に従わされ続けるより自由でしょう……。それに制限していたとしても危ないことがあるかもしれない。この前だって……」
そこで口論していたのは光の剣を構える勇者マユと、マユに同行していた男の一人。あのマユの横にいた人物だった。
何でここにマユが? しかもアイツまで、向こうの世界そのままの姿で?
「ヒイロ……、返して。その力。もう止めよう」
「ダメだ。今度こそ僕達が幸せな人生を送れる世界にするためにはアイツもアイツらも全部消さないと。なんとかして向こうに送り返してそして……」
「もう戻るね……」
「待てよ、マユ! まだ話は――。あっちのお前だと話が進まないんだよ!!」
「当たり前、私ではないのだから」
なんだ、何の話をしてるんだ。
「たーっくん!! みーーーーーっけ!!」
「ぐぇ」
いつもの夜の重みがかかる。同時に口論していた二人が動いた。
一人はさっと闇に紛れ、もう一人はこちらへと視線を向けた。光の剣を構え光の鎧を体操服の上にまとう勇者マユ。
「うっわ、誰あれ。ヤバいよ、なんか剣持ってる。たっくん逃げないと」
「え、わ、ちょっ夜ぅぅ!?」
「あんなの絶対に銃刀法違反だ! 警察呼ぶからね!!」
「夜ぅぅぅ!!」
勇者マユは悲しそうに笑うとヒイロと呼ばれた男の後を追うように闇へと消えた。
「なんだったんだ、アイツ……。夜の公園は変なのもくるんだねぇ。やっぱり一人は危ないよ。たっくん一緒にいないと。あ、ボクの方は影見つけられなかったよ。たっくんは?」
オレを掴む夜の手が震えていた。表情に出さないようにしているみたいだが怖かったのかもしれない。
「ごめん、夜。そうだな一緒に行こう。真由や池照も探そう。おかしなことに巻き込まれる前に」
「うん。行こう。もうやめよう。なんだか嫌な感じがするから」
「そうだな」
小鬼達の処理は当分必要なさそうだ。魔力の煙。ここから時間はかかるが復活は出来るはずだ。その頃にもう一度ケルベロスを連れてくればいいか。
「おーい、真由ー。池照ー。どこだー。そろそろ練習に戻ろうぜー」
「ちょ、たっくん。真由ちゃん達もし上手くいっていたら……」
「拓也くーん! 夜ちゃーん!」
「あれ、真由ちゃん……だけ?」
「うん。池照君先に帰っちゃったみたい」
「えー、女の子一人置いていくなんてイケてないじゃん」
池照の株が微妙に下がりオレはガッツポーズをする。そして、すぐがっくりとこうべを垂れた。
また勇者マユを見つけたのに彼女に話しかけることが出来なかった。
彼女は何か困っているのだろうか。おそらく仲間だったヤツと口論していた。何か手伝えないのかな。
って、いまだ何も言えてないオレにできる事なんてなにもないか。
「ねぇ、たっくん」
「池照も何か用事思い出したんだろ。練習して帰ろうぜ」
「そうだね。帰ろっか。拓也君、夜ちゃん」
帰り道、オレ達はなんだかギクシャクしていた。行きはあんなに楽しそうだったのに、どうしてこうなった。
妹だな。きっと妹が足りないせいだ。
「いった、何するんだよ!? ケルベロ――」
「し、静かにするわん。いるぞ、たくさん」
たしかに空気が騒がしい。何かが争っているような音もする。
でもだからって尻に噛みつかなくてもいいんじゃないか?
静かに近づいていくと突然上から大量の光の剣が降り注いできた。
オレはそれを声を殺しつつ必死に避けた。
体は人間だが元魔王だったオレの中身は滅されるかもしれない。それは困る。勇者マユを見つけ伝えないまま消えるわけにはいかないっ!!
光の剣は小鬼達に刺さり姿を消していく。そこに残るのは魔力の煙。それが空気へと溶けていく。
「勇者マユ! それは一時しのぎにしかならないと何故理解しない。やつらはまた復活するぞ。頭を潰さなければ」
「あなた達に従わされ続けるより自由でしょう……。それに制限していたとしても危ないことがあるかもしれない。この前だって……」
そこで口論していたのは光の剣を構える勇者マユと、マユに同行していた男の一人。あのマユの横にいた人物だった。
何でここにマユが? しかもアイツまで、向こうの世界そのままの姿で?
「ヒイロ……、返して。その力。もう止めよう」
「ダメだ。今度こそ僕達が幸せな人生を送れる世界にするためにはアイツもアイツらも全部消さないと。なんとかして向こうに送り返してそして……」
「もう戻るね……」
「待てよ、マユ! まだ話は――。あっちのお前だと話が進まないんだよ!!」
「当たり前、私ではないのだから」
なんだ、何の話をしてるんだ。
「たーっくん!! みーーーーーっけ!!」
「ぐぇ」
いつもの夜の重みがかかる。同時に口論していた二人が動いた。
一人はさっと闇に紛れ、もう一人はこちらへと視線を向けた。光の剣を構え光の鎧を体操服の上にまとう勇者マユ。
「うっわ、誰あれ。ヤバいよ、なんか剣持ってる。たっくん逃げないと」
「え、わ、ちょっ夜ぅぅ!?」
「あんなの絶対に銃刀法違反だ! 警察呼ぶからね!!」
「夜ぅぅぅ!!」
勇者マユは悲しそうに笑うとヒイロと呼ばれた男の後を追うように闇へと消えた。
「なんだったんだ、アイツ……。夜の公園は変なのもくるんだねぇ。やっぱり一人は危ないよ。たっくん一緒にいないと。あ、ボクの方は影見つけられなかったよ。たっくんは?」
オレを掴む夜の手が震えていた。表情に出さないようにしているみたいだが怖かったのかもしれない。
「ごめん、夜。そうだな一緒に行こう。真由や池照も探そう。おかしなことに巻き込まれる前に」
「うん。行こう。もうやめよう。なんだか嫌な感じがするから」
「そうだな」
小鬼達の処理は当分必要なさそうだ。魔力の煙。ここから時間はかかるが復活は出来るはずだ。その頃にもう一度ケルベロスを連れてくればいいか。
「おーい、真由ー。池照ー。どこだー。そろそろ練習に戻ろうぜー」
「ちょ、たっくん。真由ちゃん達もし上手くいっていたら……」
「拓也くーん! 夜ちゃーん!」
「あれ、真由ちゃん……だけ?」
「うん。池照君先に帰っちゃったみたい」
「えー、女の子一人置いていくなんてイケてないじゃん」
池照の株が微妙に下がりオレはガッツポーズをする。そして、すぐがっくりとこうべを垂れた。
また勇者マユを見つけたのに彼女に話しかけることが出来なかった。
彼女は何か困っているのだろうか。おそらく仲間だったヤツと口論していた。何か手伝えないのかな。
って、いまだ何も言えてないオレにできる事なんてなにもないか。
「ねぇ、たっくん」
「池照も何か用事思い出したんだろ。練習して帰ろうぜ」
「そうだね。帰ろっか。拓也君、夜ちゃん」
帰り道、オレ達はなんだかギクシャクしていた。行きはあんなに楽しそうだったのに、どうしてこうなった。
妹だな。きっと妹が足りないせいだ。
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