前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

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第56話 魔王ピンチです③

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「うぉぉぉぉぉ!!」

 体が熱い。もしかして、本当に魔力が暴走を始めているのか……?
 これ以上好き勝手させるか。脳内の池照を羽交い締めにしようと後ろからにじり寄る。もう少しというところで逃げられた。完全に操られてるオレ達も邪魔をしてくる。

「ごめんね、拓也君、ダーク君……」

 マユが覚悟を決めた顔になる。一歩、一歩と距離を詰めてくる。前世と同じ、剣が届く位置に彼女が立った。――もうダメだ。
 光の剣の切っ先がオレの心臓を捉えた。
 前世でも今世でも同じ死に方か……。
 マユの頬を涙が伝う。諦めるな、オレ!! 諦めるんじゃねぇ、オレぇぇぇ!!
 脳内の池照を、現実の池照を睨みつける。諦めないぞ、絶対に!! オレの意思で、言葉で、マユに、真由に伝えるんだ!!

「マ……ユ……」

 なんとかして、池照の隙を――。

「マユ様、早くしないと爆発してしまいますよ」

 池照は爆発する直前で暴走をストップさせているようだ。だから、今のうちに――。

「ごめんね…………」

 あぁぁぁぁぁぁ、切っ先が、切っ先がぁぁぁぁぁ!! トンッと軽い衝撃。マユの体がオレにぶつかった。あはは、こんなに痛くなく送ってもらえるなんて流石勇者だ……。ん、んんん?
 光の剣が消えていた。ただマユがオレの胸にすがりついているだけだった。

「……出来ない。出来ないよ……。ダーク君をまた死なせるなんて」

 あー、そういえば死ぬのオレじゃなくて魔王オレだけだっけ? なら――。

「だって、ダーク君と拓也君はもう完全に一緒の存在なんだよ。片方を消したらきっと拓也君まで死んじゃう」

 前言撤回、助かった。池照の顔が驚くほど歪んでいる。

「マユ様! あと一分です。はやく!!」

 おい、偉大な悪役でも三分は待ってくれるぞ。もう少し余裕をだな。

「大丈夫だよ、ダーク君。一人にしないから」

 マユの体に光が集まる。

「転生の魔法。もう使う事ないと思ってたけど」

 そうか、あの最期に見た光はマユの魔法だったのか……。

「今度こそって思ったのにな」

 そうだ。約束したじゃないか。生まれ変わったら一緒になろうと――。こんな事で、負けてたまるかぁぁぁぁぁ。
 動け、オレぇぇぇぇぇ!!

「お兄ちゃぁぁぁぁん!!!!」
「ダー君ッ!!!!」

 懐かしい声がする。これが走馬灯ってやつか。走馬灯、巻き戻りすぎじゃないか? その声は前世の――。

脱衣魔アンドレス、やれっ!! わん」

 ケルベロスの声までする。おい、いいのか!? 人前だぞ!!
 声に驚いたマユが光を消した。そのあとすぐオレは小柄な誰かに引っ張られ、マユは髪で目が隠れたヤツに押さえられる。

「な、何だ!! ――ッ、僕の服が!!」

 池照の体操服の腹のところの布がなくなっている。次の瞬間ケルベロスは後方に回り、こちらに跳んで戻って来る。その口には体操服とジャージズボンの布切れが咥えられていた。

(今だ!!)

 池照の注意がそれた。オレは隠していたオレ十二号を脳内池照に向かわせた。

(うぉぉぉぉぉ。オレから出ていけぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!)

 注意がそれていてくれたおかげで脳内池照を倒し、オレはオレを取り戻した。だが、やばい。このままだと体内で暴れる魔力が――。

 がぶり

「ぎゃぁぁっぁあーーーーッ!?」

 ケルベロスにいつものように噛みつかれる。おい、脱衣魔アンドレスは傷つけず服だけ奪うはずだろ。ということは、こいつは――。

「まったく、魔力くらいちゃんと制御しろわん。魔王」

 ケルベロスは冷ややかにそう言った。

「お兄ちゃん、あ、常闇夜ダークナイト様! 大丈夫ですか!!」

 それで、なんでいるんだ? 前世妹のトワイライトに……、

「ご無事ですか! ダー君!!」

 前世幼なじみのミッドナイトまで。
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