EL DORADOの騎士~異世界物語り~

佐々倉 桜

文字の大きさ
9 / 24
第1章 ~ノワール国~

帰還

しおりを挟む
 オウガの粉砕された頭部が辺りに飛び散る。
 肉片、脳液と血液が混ざりあった血の海に己の頭部を失った身体がピクピクと痙攣を起こしている。
 強烈な死の匂いが辺りに広がっているのに関わらず。

ーーーーーー!ふぅ~久々に本気出したな~!

 血の海の中で爽やかな笑顔の男。

「なっ………!?」

『嘘だろ…相手は上級の魔族だぜ…!?』

 あの男は一体なんだ?強すぎる…見たことのない衣服…それにオウガの言っていた「来訪者」…。

「…まさか!伝説の勇者!?」

『なんだって!?』

「いや…だとしても…」あの男は本当に勇者なのか?  それとも新手の魔族か…いや、だとしたら同じ魔族のオウガと敵対はしないはず…仮に勇者だとしても…。

 …ス!アリス!』

っ!『おい、アリスどうした?』イカンイカン、こんな状況で考え込んでしまった。

「大丈夫、問題ない。それより戦況は!」

 オウガは絶命しているが無数の魔族に囲まれてるのには代わりない。オウガの他にもう一体上級魔族が居る。いつ襲われるか油断ならないのだ。それに早く父上の元へと向かわねばならない。
 そう、油断してはならないのだが…変だ、様子がおかしい。
 殺気を放ち咆哮する者うめき声をあげる者がいたはずなのだが…。

「どういうことだ?」

 静寂している。
 確かに私達は魔族に囲まれてるのだけれど…

『アリス!』

 その静寂を破るオズの声。

「どうした!?」

『あの男が居ない!』

「え!」

 オウガを一撃で仕留めた男が姿を消していた。

「いったい何処に…。」  
 
 あの男の姿を探す。反射的に魔族の視線の先に目をやると…あの男が父上の元に移動していた。この距離をいつの間に…。

 「ーー、ーーー?ーーー?おいおい、おっちゃん大丈夫?生きてる?

 倒れているアレクに話しかけてる男が1人。意識のないアレクの額に手をやり何かを呟いている。

「来訪者よ…!」

ー?ん?
 
 ずん!と足音を立てながらもう一体の上級魔族が近づく。

 巨大な角とその巨体に見合う戦斧を持つ。
 
ーー!ーーーーーーーおお!デカイ牛だなぁ~バッファ◯ーマンか?

 上級魔族大牛鬼ミーノータウロス
 上半身は牛の姿の二足歩行型魔族。
 体長はその巨大な角を合わせて約7メートル。
 身の程に合った戦斧を振るうのに相応しいほどの筋骨隆々なその体躯。
 その鋭く殺意にまみれた眼光は目の前のポカンとしている男に降り注ぐ。

ーー?ーーーーーーーーーー?なんだよ?俺は超人が集うトーナメントには参加しないぜ?

「我と闘い己の力を示してみよ!!!」

 戦斧による縦一閃。

「!?」

 雷鳴の如く響き渡るその轟音。その一撃の余波が離れている私達にも襲い掛かる。

『なんつー威力だ!これは反則だぜ…。』

 今までの魔族とは桁外れに強い、いや強すぎる。


ーーーーーアイツ凄いねぇ~

「っ!?」

 アレクを抱き抱えて…いわゆるお姫様抱っこで…。見る人の感情しだいでは灰色の薔薇が咲きそうだが…。

「おっ、お前!どうしてここに!?どうやって移動したんだ!?」

 男はアレクを近くの木の根本へと下ろす。

「うぅ…。」

「父上!」

 アレクの鎧の腹部には魔族の角で開けられた穴があり下の衣類も血で染まっている。かろうじて息をしているのは奇跡だろう。

ーーーーーーーーーーーーー。やはり、知り合いっぽいね?この刀ありがとね助かったよ。

「え?なに?」

 男は魔族に向かって歩いていく。
 オヤジさんが打ったニホントウを腰に差し、1人で魔族に挑む姿には恐怖や絶望などは微塵も感じなかった。

「まさか…本当に伝説の勇者なの?」
 

 対峙する、上級魔族と日本刀一本だけの男だがお互いに武器を構える訳でもなく…。なんというか

「よく我の剛撃を避けたものだ…。偶然か…よほどの猛者なのか…。」

…流石は来訪者だな。」

 言い終わる前に目の前の男の姿が消える。先ほどのオウガの時もそうだった。

『なんて奴だ…。』

「踏み込みが速いし…。」

 時間にしてみればほんの一瞬なのだろうけど、男の頭は低い位置まで下がる。恐らくは私の腰よりも下。
 それでいて素早く前進するのだから目の前の相手にはあたかも消えたように見える。あの魔族との身長差もあるからよりあの男の姿を見失うだろう。
 あの魔族も先ほどのオウガの様に吹き飛ばされて終わる。

 ー…と、私は思ったが。


ドシン!


「!?」

 鈍く重い音がした。
 黒い体毛に覆われた腹部に男の拳が当たっているのたが…。

「こんなものなのか…来訪者よ?」

ーー?おや?

「脆弱…脆弱すぎる!」

 魔族の戦斧が襲い掛かるがまた男の姿が消える。

ーー!?おっと!?」魔族から距離を取る。

「逃げ足だけは優れているな…。しかし!それだけでは我に敵うこと叶わんぞ!」

 魔族の咆哮のような叫びに男は…。

ーーーーーーーーーー?腹減ったなぁ~…次で決めるかな…。

 男は日本刀を握り直し…。

ーーーーー鏡花口伝剣術改め…。」

ーーーーー!七竜式闘剣術……!


 男の踏み込みは更に速度を増した。その速さに魔族は反応が遅れ咄嗟に手持ちの戦斧を男が放つであろう刃の一撃に備える。

 男が刃を抜いた瞬間に甲高い音が響く。
 魔族の額から冷や汗が一滴地面に落ち、そして数秒後に…………ザクッ!

「え?」
『え?』

ー?ぬ?

 折れたニホウトウが刺さっている。

 …後にこの事をオヤジさんに話すと男の一振りに刃が耐えれなかったと、それが悔しかったのか腹立たしかったのか…オヤジさんは4日間工房から出てこなくなったのは別の話。

ーーーーー。あれ?折れちゃった。
 あちゃーというような顔をしてニホウトウを見ている男、その姿にはもはや殺気も闘志もない。

「……ふふっ、ふふふ…。」

  なにやら魔族の様子が…。

「あーっはははは!!!この我が冷や汗などいつ以来か!」

 折れたニホウトウを持ってる男が眼前に居るのに向きを変え群れへと歩を進める。

「皆のもの!撤退をするのだ!!」

 !?

「我が王の戦力を無駄に削ぐわけにはいかぬ…撤退せよ!!」

 上級魔族の叫びに下級の魔族達は従う。
 私達を囲んで居た魔族はあっという間に離れ姿が見えなくなる。

「助かったの…?」

「来訪者の男よ!聞け!」

ーー?ーーーー?なんだよ?まだ遊び足りないか?

「我は、暗黒七王が1人!轟撃王タウロス!!」

ーーーーーー?所でここはどこなんだ?

「我が死を感じたのは実に久しいことか…貴様とは命を賭して闘ってみたいのだが…今の我には大義がある…故に貴様との対決は先伸ばしだ。」

「………?」

 魔族の1つ1つの言葉を男は…ぽかーんとした表情で聞いてる。

「だが、貴様の首は我が必ず頂く!覚えておくがいい!!」

 魔族タウロスは私に振り向き「アレクの娘よ!貴様も残り少ない生を謳歌しておくことだ!」と森の中へと姿を消した。



 私達は助かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...