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第1章 ~ノワール国~
【七梨side 2】
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「ぐはっ!?」
吐血後、目の前が白くなり地面に倒れた。頭の中で色々な思い出が巡り回る…。
女の園…楽園でのあの夜。
悲鳴が聞こえたその場へ向かった。
とある一室……俺の他にヴァルキリー隊が既に集まっていた。
「どうした!何かあったのか?」
「来るな!男め!!」
「あっちへ行け!!」
ぬ?なんなんだ?
「お前のせいだ!向こうへ行け!!」
再び剣を向けられる…。
先ほどと違うのは彼女達の目には殺意と憎みがハッキリと感じられる事だ。
これは……愉快だねぇ……。
抵抗するこなく俺は元の場所へと戻る。
「なんだろうな……。」
気になった俺は楽園を抜け出す。
「ぬー…行ってみるか!」
アリスは何処にいるか解らないが…あの姫さん…王女様なら見当は付く!
だって『王女』だもん…目指すはノワール城。
城への門は固く閉ざされているが……あの城に王女さんが居るのは確定なんだよな…。
「ぬ!登ってみよう!」
手頃な木に登り城を観察…見張りの兵士が1、2、3…と数人…行けそうなタイミングを図る。
朝に来た中庭へは難なく来れた…エリカ王女は……おっ見つけた…あの部屋か…。
人探しは得意だ!
再び木に登る、そして屋根から屋根へと足を忍ばせ…着いた部屋の窓を軽くノック。
「何!?」
ガチャっとエリカが窓を開けて顔を出す。
「よう、王女さん。」
「っ!?貴方…シチリ!?」
エリカ王女は既に就寝していたらしく、身体のラインが透けて見える薄手のワンピース?いやネグリジェかな?を身に付けていた。
…寒くないのだろうか?
「ごめんな夜遅くに。」
「ここは5階なのよ?どうやってここに!?」
ぬ?俺は1時間もあればノンストップでスカイ○リーでも登りきる男だぜ。
多少なりとも忍の血も引いてるし…問題は無い。
「ぬ?いやなに、ちょっと聞きたいことがあってさ。」
「いいから中に入りなさい。誰かに見られては無いわね?」
「もちろんさ。」
部屋に入ると1番にここはディ○ニーの世界か!?と心の中で叫んだ。
何あの大きいベットは…!?あれが噂に聞くキングサイズってヤツ?俺最高でもセミダブルしか見たこと無いぜー…。
姿見の鏡もおしゃれだわー…。
流石王族の部屋。
「私は部屋には誰も入れない主義なんだけどなー。」
…入るのは不味かったかな…?
「ぬ、そうなのか?すまん。」
「まぁ、いいわ…で?なにかあったの?」
簡単に今までのあらましを説明。
「なるほど、そうね…貴方には説明しておく必要があるわね…。」
『ヴァルキリー隊』
表向きはエリカ王女の選抜騎士達というふうになっているが、実のところは…戦闘経験すらない娘…。
しかも只の娘ではなく…身売りされた者も居れば、家族からの暴力や陵辱…果てには魔族、モンスターにまで辱しめられた者の集まりが正解。
皆、苦しい過去の持ち主で男(雄)に激しい嫌悪感を抱いている。
ということは…先ほどの光景は俺によるトラウマの発動ということみたいだな。
エリカ王女自身はもう彼女達のトラウマは落ち着いたものと思い込んでいたらしい。
「はぁ…どうしたらいいのかしら…。」
エリカ王女の整った顔の眉間にシワが…。
「トラウマが原因ってんなら俺がいるのはマズイのではないか?」
「そうかもしれないわね…う~ん……困ったわね…。」
自分の髪の毛先をくるくると回しながら唸っているエリカ王女。
「ぬ…まぁ何か決まったら教えておくれ。んじゃまたね。」
「…えっ?ちょっとシチリ待って…。」
話を聞かず同じ窓から飛び降りる。
俺が原因で駄目になるなんて…あの場所に長く留まれないじゃないか…まったく…。
とっとっと…っと軽やかなステップで中庭まで降りてあえて前宙を加えて着地!!
頭の中の審査員が10点の札を挙げる!!
「…おい聞いたか?」
ビクッ!?
おっと見張りの兵士か?咄嗟に身を隠したが…ばれるかな?ドキドキ…。
2人組みたいだが…。
「お荷物部隊なんだけどよ、また剣の指南役が付くらしいぜ?」
「は?もう何回目だよ…どうせ2日とかで追い出されるぜ?賭けるか?」
「いいね!俺は当日に10ゼニーだな。」
「待てよ俺も当日だ。これじゃ賭けになんねぇよ。」
「ははは、まぁあんな役立たずどもに指南役なんて必要ないだろうに。」
「まったくだよな…どうせ王女の愛玩部隊なんだからな。」
「そう言えば中にはモンスターにまで犯された女も居るらしいと聞いたことがあるぜ?」
「なんだそれ?汚ぇなぁ。」
「そんな女を囲う王女もどうなんだかねぇ?」
「はっそんな奴らは大人しく慰安婦してりゃぁいいのによ。」
「ははは!ちげぇねぇ!股開くしか能がねぇんだからな。」
「見た目だけはいい女だからな!楽しませてもらいてぇな!」
ふむ……言うこと言っておきながら…この至近距離の俺にも気が付かないと…去っていく2人を見送る。
「愉快だねぇ……。」
立ち上がりエリカ王女の部屋の窓へと戻る。
コンコン。
「…シチリ?」
ガチャっと開けられた窓だが…今回は中には入らない。
「気が変わった…エリカ。」
「気が変わった?」
「ヴァルキリー隊を俺に完全に任せろ。」
「え?」
「俺が思う最強にアイツらを近づける。」
「ヴァルキリー隊が…出来るの?」
「俺の…七竜の名にかけて。」
「ななりゅう?」
「…俺のもう1つの名前だ…明日から全力でやるから…エリカ、多少のことは目をつむってほしい。」
「『甘やかすのは優しさではない。』ってヤツね?解ったわシチリ、私もエリカ - ノワールの名において…ヴァルキリー隊の事は全面的に貴方に任せます。」
「…よし、さっそく明日から始めるよ。」
「お願いね。」
今度は思いきり走ってから跳躍。
ヴァルキリー隊だが。
第一に体力!
第二に実戦形式で戦いの感を鍛える。
隙間の時間に基本練習だな。
…こんなもんかな?
ぬー…そう言えばまだこの国の力の基準が解らんな…。
そうだ!!
『ノワール国 酒場 バニーバニー』
異世界の情報源と言えば酒場!!
この時間帯だからこそ賑やかで外までも何かしらの楽器の音が聞こえてくる。うん活気があるね!
木製で厚めのドアを開くとタバコやら酒やら香水やらの臭いが充満している。
酒場はほぼ満席状態。
俺も一応店を経営してるから少し羨ましい。
なるほどこの酒場は1階が酒場で2階は宿って感じかな?
そのままカウンターへを足を進ませるとバーテン?が話しかけてきた。
「いらっしゃい、何にします?」
「そうだな…適当に軽いのを頼むよ。」
「へい。」
ぬ…客の大半が兵士とか冒険家ってやつなのかな?
なかなかの実力者ばかりだ…。
例えばあのモヒカン頭の中の持っている短剣…なかなかに使い込まれている。
筋肉の付き方も無駄がない。
「へい、おまち…。」
俺の注文したのが来たようだ。
グラスに口をつけた瞬間…「金がない!」ことを思い出した。
ぬ…愉快だね…。
どうしようかなー…。
「どうしたんだいお兄さん?」
「ぬ?」
そこにはなんとも妖艶なおねえさん。
「悩み事かい?何があったのか知らないけどさ…2階で私と楽しんでいかない?」
「ぬ?うえは宿屋ではないのか?」
「あらあら、お兄さんかなりの色男じゃないか。ふふふ、2階はねぇ宿屋と私達を楽しめる場所よ…どうだい?安くしとくよ?」
いや、確実に俺の手持ちの方が安いだろう…というか手持ちと呼べるものが無いのだから…。
「ぬー…。」
困ったな…。
眉間にシワを寄せていると近くのおっさん達の会話が耳に入ってくる。
「今日楽園に新しい女が入ったみたいだぞ!」
ぬ?女?エデンに入ったのは俺以外にもいるのか?
気になったのからその話題で盛り上がっているのテーブルへと目を向けてみる。
「黒髪の女みたいでな、エリカ王女様と騎士団長の所のアリス様の3人で入っていくの見たぜ。」
あー…俺の事だね…。
「また無駄なヤツが増えるのかよ…!」
「ヴァルキリー隊って名前なのに1回も戦場に出たことも無いんだと…名前負けも良いとこよ…!」
「ヴァルキリー隊の飯は俺らの税金で賄ってるんだぜ!汗水たらして働いた金がアイツらに行くなんて馬鹿馬鹿しいぜ!」
「そうだそうだ!俺らはお前らの為に働いているわけじゃねぇんだぞ!!」
ぬー…これは…思ってる以上に深刻だな。
「お兄さんもヴァルキリー隊に思うとこがあるクチかい?」
「ぬ?ぜんぜん。」
速答したらおえさんは「あら、珍しい」って顔をしていた。
「まぁ、考えたってどうにもならないことはどうにもならないんだよ。お兄さん早くうえに行こうよ。」
「ちょっち待って。」
俺はさっきのテーブルへと歩いて。
「おい、おっさんども!俺は思うね!今日入った新しいヤツはきっとヴァルキリー隊を変えるぜ!そりゃぁもうこの国1番の騎士ってヤツになぁ!」
どかっ!と割り込むように座り適当な酒を一気に飲み干す。
「なんだお前!」
「俺の酒をてめぇ!」
真っ赤な顔のおっさん達。
「賭けてもいいぜ!ヴァルキリー隊がこの国で最強になるのに俺の全財産!(現在無一文)」(キリッ!)
「おもしれぇ!いいじゃねぇか!小僧!!やってやるよ!俺も全財産だ!」
「はっはっはー!どうだ!他には居ないか!?それも怖じ気づいたか!見た目だけ屈強な男どもよ!」
煽ってみると「俺も!」「俺もだ!」と次々に乗ってくる乗ってくる!
終いには店内の男全員が参加していたと思うね。
「じゃぁ!前哨戦として俺と腕力で一勝負といかないか?」
「あぁ!?」
古今東西、腕力勝負と言ったら『腕相撲』でしょ!
「負けたら50ゼニーでどうだい?それとも…怖い?」
ものごっつい殺気が答えと認識しテーブルの上に右腕を乗せる。
「さぁ!1番手は誰だい!!」
どん!と目の前に来たのは目つきの悪いおっさん。
…あっ!俺がこのおっさんの酒を飲み干したから…苛立ちが強いようで…。
「俺様が1番で最後にしてやるよ!」
「ぬ、威勢はいいな。」
「その細腕へし折ってやる!!」
がしっと手を組む。
このおっさんもなかなかに腕がたつと理解できる。なんとも力強い…。
体格も俺より一回りデカイし…その場の人間は十中八九俺が負けると思うだろうね。
……へっへっへ…。
俺とおっさんの組み合う手に白い手が添えられる。
「ぬ?」
「私に仕切らせてもらうよ!2人とも用意はいい?」
さっきのねえちゃん…なかなかの姉御肌ってヤツだな。
「いいかい………始め!!」
「うぉぉ!!!」
「ぬ!?」
一気に持っていかれる俺の腕…!!
「ぐひひ!あんちゃん!この程度かよ!?」
「ぐぐぐぐぐ……。」
店内に声援と罵声が充満する。トトカルチョを始める声も上がり始めた。
「カルボに10ゼニーだ!」
「俺も10ゼニー出すぜ!」
「おいおい、賭けになんねぇよ!俺もカルボだ!!」
「やったれ!カルボ!!」
「へし折ってやれ!!」
へー…相手のおっさんはカルボって名前らしい…。
「しぶといぜ、にぃちゃん!もう楽になれよ!」
「ぐぐぐぐぐ…。」
俺の視界にトトカルチョの親役が目に入る。
「おい!俺の勝利に100ゼニーだ!!」
店内爆笑!!
「この状況を見ろ!」「夢見てんな!」「諦めろ!」
なんともアウェーな感じ…。
「おい!おっさんカルボだっけ?」
「なんだ小僧、降参か!?」
「歯ぁくいしばれよ」
「ああ!?」
「よっ…こらしょーー!!!!!」
カルボのおっさんの腕からぐぎっ!と青ざめる音鳴ったが構わない。
規模は小さくともこれは闘いいなのだから。
相手側をテーブルに叩きつけるとそのままの流れでおっさんは床に転げ落ちた。
「勝者!!!」
指を1にして天を突く!!
「次の相手は誰だぁ!!!」
一瞬の静寂の後「次は俺だぁ!」と騒ぎ出した。
…その後は何人とやったか…カルボのおっさんの仲間とか流浪の冒険者、ハンターと名のる者、非番の王国兵士。
なるほど、なんとなくだけどこの国の力の基準が解った。
信じられんという視線を感じながら静まり返った店内で1枚2枚と銭勘定…トトカルチョでの払い戻し金を含めて…。
おおう!?9500ゼニーも集まってるぜ!!
1ゼニーの価値は1円で良いのだろうかな?
500ゼニーだけ懐へと忍ばせて…。(忍だけに…なんつって…。)
「お兄さん何者なんだい?」
「ぬ?」
「軽装だし…冒険者には見えないし…どこぞの兵士や騎士様って訳でもないのだろう?」
「そりゃそうだ、こっちに来てまだ日が浅い。」
「??新参者ってことかい…いったい何処の国から来たんだい?」
「ははは、内緒。それより俺の酒の勘定はこの9000ゼニーで頼むよ。」
「9000!?気前が良すぎだよ。お兄さんの酒は1杯50ゼニーの安酒だよ。」
「ぬ?そんなもんなのか…なら残りは…そうだな…。」
天井を指差して。
「残りは上の子達にあげといて。」
「なんだって?」
「俺はこれで十分!それに面白い情報も手に入った!」
くっくっく…こうしちゃ居られない。
「んじゃな!」
振り向かず、足早に店を後にする。
もっと落ち着いた頃にもう一度この店に来てゆっくりと酒と小料理を楽しもうじゃないか!
「あっちょっと待ちなー……。」
バタンとドアが閉まる。
「ふっ、まったくもー…。」
ねえちゃんは呆れながらも少し笑っている様だった。
さて!明日のために急いで寝ないとな!
エデンに戻ってきてそのまま用意されているベットで寝る。
?さっき俺を見張っていたヤツらは自分の部屋に戻ったのか居なくなっている。
まぁいいや!おやすみ!!
…………。
Zzz…Zzz…Zzz…。
Zzz…Zzz…。
Zzz…。
『6時間後』
ぱちっと目が覚めて早速行動!
…と行きたい…が、なかなか体が動いてくれない。
「…風呂に入りたい。」
太陽が若干顔を見せているのか窓から覗く空はうっすらと明るい。
「顔がべとつく…。」
入浴の欲求に駆られ早朝のエデンを歩き回る。
女の子達はまだ寝ているのか…俺が早すぎるのかは解らない!!何故なら時計が無いから!!
何やら妙なテンションになって歩いてくると日本語で『湯』と書いている部屋発見。
「ぬ『湯』?ここが風呂かな?」
人気がないか確認してドアを開ける。
「ビンゴ!風呂だ!!」
迷わず入った。
しかし。
入ってから戸惑った。
広い脱衣場は各自が自分の衣服を置けるようにと四角い箱が並び…大きな姿鏡がある。
「銭湯かよ!?」
洗面所付近にはL字型の物体…。
持ってみると何かに反応したのか熱風が噴射……。
「これ、ドライヤーか!?」
なんだこの世界?
備え付けのタオルが大量にあるし…『ご自由に』って事かな?これは助かる。
大浴場内…。
シャワーが5つに大きい湯船と小さい湯船…まさかの『寝湯』まであるとは…。
「銭湯だな!」
シャワーの温度を調整して1番に頭を洗う。頭皮の汚れは手強い為しっかり洗わないと!禿げたくないから!!
「ぬ!?シャンプーとコンディショナーまである!?」
この世界…どうやら異世界らしいのだが…何処かしらに日本を感じる。
貰った『日本刀』の事もあるし…話しに聞く『勇者様』とは日本人なのだろうか…。
「ぬぅ…愉快だねぇ…後で考えよう。兎に角シャンプーだ!」
ひっゃはーー!!
頭でもしゃもしゃと泡立つ感触くが超絶気持ちいい!!
「薔薇の薫りが素敵だね~!」
泡を流してさっぱり!!
続いて体も洗って余計な脂も流し落とす。
心なしか体が軽くなった気がする。
ウキウキとして大理石っぽい湯船に肩まで浸かる。
タオルは浴槽に入れないようにしましょう。
「…ぬ?」
「ぬ……ぬぬぬ…。」
「ぬるい……。」
沸いていない。
もういい!あがる!!
タオルで体を拭いて脱衣場に向かうと…。
カラカラ…。
一糸まとわぬ爆乳の裸体。
爆乳の持ち主と目が合う。
「!?!?」
「よっエルザおはよう。」
「ひゃ!?」
「んじゃな!風邪ひくなよ。」
さっさと浴室から脱衣場へと移動。
裸体を直視されたエルザだが余りにも堂々とすれ違った為…ポカンとしてしまい叫ぶタイミングを失ってしまったようだ。
「き、きゃー…。」(小声での取り敢えず悲鳴。)
その後別で会った時に真っ赤な顔で睨まれたがそれっきりだったのを覚えている。
『ノワール国 西門付近』
全身が熱い…視点が定まらない…。
倒れていると頭を踏みつけられた。
「ぐぅ!」
この鳥足…というか鳥!!
「この瞬撃王 アルバロス様を前にふざけやがって…このゴミが!!」
アルバロスのサッカーボールキックが無防備の頭にHit。
「がっ!?」
体格差が有りすぎる。
俺の体は宙を舞い、道端で小学生が蹴り飛ばす小石の気持ちがよく理解できた。
地面に叩きつけられ更なる激痛に襲われる。
こんな状況でも意識を手放さないのは普段の鍛え方が違うから!
「ほう!まだ息があるとはこれは面白い!」
「ぐっ…。」
「ならこれはどうだ!!」
大きな翼で羽ばたき天高く飛び立ったアルバロスは俺の視界から消える。
「ぬ?」
「アーーーーーハッハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
アルバロスの体重を乗せたニー・ドロップ。
日本名で膝落としが背中に落ちる。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
「いいなぁ~断末魔ってのは!それに今の感触…背骨はズタボロだなぁ!」
「ぐっ…。」
身体中の痛みでよくわからん…!
「そうだ!決めたぞ!貴様の最後を!!」
「???」
アルバロスは俺の足を掴みそのまま飛翔。
「うわっ!?」
「あーははははははははははははは!」
俺の体はこれでもかという速度で上昇していった…もう何m?何十m?何百mか?視界には雲…。
「貴様らゴミはたかが恐怖ごときで死ぬらしいなぁ!」
「あぁ!?」
「後は理解できよう!この高さから落ちれば…?」
鳥顔がニヤニヤと見下ろしてくれる。
確かにこの高さは危ない…ここまでか…?
まだヴァルキリー隊を鍛え上げてないぞ!
まだエリカ王女との約束を果たしてないぞ!
アリスの馬にも乗ってない!
それに『チーム七竜』のヤツにも何も恩を返せていない!!
こんなところで終わる訳には行かない…。
ヴァルキリー隊やエリカ王女、アリスには嫌われるかな……?
「ふふっ…。」
つい笑ってしまう。
「どうした!もう可笑しくなったか!?はははははははははは!」
随分とまぁ丸くなったものだ…。
何が嫌われたくないだ!?
「おい!鳥野郎!」
「あぁ~!?」
「嫌われる勇気って知ってる?」
オヤジさん作『ニホントウ』を引き抜き鳥足を切断する。
「ギャーーーー!?」
俺を掴んでいる足を斬ったので…当然落下する。
「このゴミがぁ!よくも俺様の足を!絶対に許さん!地面に激突する前に俺がその首掻っ切ってやる!!」
風を切る高音が鼓膜を貫くように頭に響く。
うまく目も開けられない…このままだと…あと数分後には俺は死ぬ。
『ニホントウ』の他に手にいれた『緑の刀』…持ち主に比例して強力になる魔剣。
(何故か借金までしたんだ!力貸せよ!!)
頭のなかでオヤジさん夫婦が仲良く「まいどありー」とニヤついている…。
「あげるって言っていたのにーー!!」
鏡花口伝剣術改め!!
七竜式闘剣術!
真空 円斬!
地面に向けての抜刀。
放たれるのは先のより倍の『風の刃』。
そこから産まれるのは刹那のゼロ重力。
この機を逃してはならない。
七竜式 空闘術 !!
飛影!
ゼロ重力時の空間を蹴りあげる。
飛び上がると同時に迫り来る鳥の血走った目と視線がぶつかる。
「!?!?」
鳥とすれ違う瞬間に剣を叩き付ける。
七竜式闘剣術!!
二刀!剣戟乱舞!!
「ぐぇぇぇ!?」
奴の自慢であろう鳥の代名詞である翼を切りつける。
「おっ俺の翼がぁ!?」
形勢逆転
俺が上で奴が下!!
そして再び訪れるゼロ重力。
飛影で奴へと接近。
鏡花口伝体術改め、七竜式体術!
飛竜…!
「咆~哮~掌ォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
飛竜がアルバロスに襲い掛かるときアルバロスの頭の中には恐怖と別つの言葉があった。
「紅き瞳?や、闇王様…?」
吐血後、目の前が白くなり地面に倒れた。頭の中で色々な思い出が巡り回る…。
女の園…楽園でのあの夜。
悲鳴が聞こえたその場へ向かった。
とある一室……俺の他にヴァルキリー隊が既に集まっていた。
「どうした!何かあったのか?」
「来るな!男め!!」
「あっちへ行け!!」
ぬ?なんなんだ?
「お前のせいだ!向こうへ行け!!」
再び剣を向けられる…。
先ほどと違うのは彼女達の目には殺意と憎みがハッキリと感じられる事だ。
これは……愉快だねぇ……。
抵抗するこなく俺は元の場所へと戻る。
「なんだろうな……。」
気になった俺は楽園を抜け出す。
「ぬー…行ってみるか!」
アリスは何処にいるか解らないが…あの姫さん…王女様なら見当は付く!
だって『王女』だもん…目指すはノワール城。
城への門は固く閉ざされているが……あの城に王女さんが居るのは確定なんだよな…。
「ぬ!登ってみよう!」
手頃な木に登り城を観察…見張りの兵士が1、2、3…と数人…行けそうなタイミングを図る。
朝に来た中庭へは難なく来れた…エリカ王女は……おっ見つけた…あの部屋か…。
人探しは得意だ!
再び木に登る、そして屋根から屋根へと足を忍ばせ…着いた部屋の窓を軽くノック。
「何!?」
ガチャっとエリカが窓を開けて顔を出す。
「よう、王女さん。」
「っ!?貴方…シチリ!?」
エリカ王女は既に就寝していたらしく、身体のラインが透けて見える薄手のワンピース?いやネグリジェかな?を身に付けていた。
…寒くないのだろうか?
「ごめんな夜遅くに。」
「ここは5階なのよ?どうやってここに!?」
ぬ?俺は1時間もあればノンストップでスカイ○リーでも登りきる男だぜ。
多少なりとも忍の血も引いてるし…問題は無い。
「ぬ?いやなに、ちょっと聞きたいことがあってさ。」
「いいから中に入りなさい。誰かに見られては無いわね?」
「もちろんさ。」
部屋に入ると1番にここはディ○ニーの世界か!?と心の中で叫んだ。
何あの大きいベットは…!?あれが噂に聞くキングサイズってヤツ?俺最高でもセミダブルしか見たこと無いぜー…。
姿見の鏡もおしゃれだわー…。
流石王族の部屋。
「私は部屋には誰も入れない主義なんだけどなー。」
…入るのは不味かったかな…?
「ぬ、そうなのか?すまん。」
「まぁ、いいわ…で?なにかあったの?」
簡単に今までのあらましを説明。
「なるほど、そうね…貴方には説明しておく必要があるわね…。」
『ヴァルキリー隊』
表向きはエリカ王女の選抜騎士達というふうになっているが、実のところは…戦闘経験すらない娘…。
しかも只の娘ではなく…身売りされた者も居れば、家族からの暴力や陵辱…果てには魔族、モンスターにまで辱しめられた者の集まりが正解。
皆、苦しい過去の持ち主で男(雄)に激しい嫌悪感を抱いている。
ということは…先ほどの光景は俺によるトラウマの発動ということみたいだな。
エリカ王女自身はもう彼女達のトラウマは落ち着いたものと思い込んでいたらしい。
「はぁ…どうしたらいいのかしら…。」
エリカ王女の整った顔の眉間にシワが…。
「トラウマが原因ってんなら俺がいるのはマズイのではないか?」
「そうかもしれないわね…う~ん……困ったわね…。」
自分の髪の毛先をくるくると回しながら唸っているエリカ王女。
「ぬ…まぁ何か決まったら教えておくれ。んじゃまたね。」
「…えっ?ちょっとシチリ待って…。」
話を聞かず同じ窓から飛び降りる。
俺が原因で駄目になるなんて…あの場所に長く留まれないじゃないか…まったく…。
とっとっと…っと軽やかなステップで中庭まで降りてあえて前宙を加えて着地!!
頭の中の審査員が10点の札を挙げる!!
「…おい聞いたか?」
ビクッ!?
おっと見張りの兵士か?咄嗟に身を隠したが…ばれるかな?ドキドキ…。
2人組みたいだが…。
「お荷物部隊なんだけどよ、また剣の指南役が付くらしいぜ?」
「は?もう何回目だよ…どうせ2日とかで追い出されるぜ?賭けるか?」
「いいね!俺は当日に10ゼニーだな。」
「待てよ俺も当日だ。これじゃ賭けになんねぇよ。」
「ははは、まぁあんな役立たずどもに指南役なんて必要ないだろうに。」
「まったくだよな…どうせ王女の愛玩部隊なんだからな。」
「そう言えば中にはモンスターにまで犯された女も居るらしいと聞いたことがあるぜ?」
「なんだそれ?汚ぇなぁ。」
「そんな女を囲う王女もどうなんだかねぇ?」
「はっそんな奴らは大人しく慰安婦してりゃぁいいのによ。」
「ははは!ちげぇねぇ!股開くしか能がねぇんだからな。」
「見た目だけはいい女だからな!楽しませてもらいてぇな!」
ふむ……言うこと言っておきながら…この至近距離の俺にも気が付かないと…去っていく2人を見送る。
「愉快だねぇ……。」
立ち上がりエリカ王女の部屋の窓へと戻る。
コンコン。
「…シチリ?」
ガチャっと開けられた窓だが…今回は中には入らない。
「気が変わった…エリカ。」
「気が変わった?」
「ヴァルキリー隊を俺に完全に任せろ。」
「え?」
「俺が思う最強にアイツらを近づける。」
「ヴァルキリー隊が…出来るの?」
「俺の…七竜の名にかけて。」
「ななりゅう?」
「…俺のもう1つの名前だ…明日から全力でやるから…エリカ、多少のことは目をつむってほしい。」
「『甘やかすのは優しさではない。』ってヤツね?解ったわシチリ、私もエリカ - ノワールの名において…ヴァルキリー隊の事は全面的に貴方に任せます。」
「…よし、さっそく明日から始めるよ。」
「お願いね。」
今度は思いきり走ってから跳躍。
ヴァルキリー隊だが。
第一に体力!
第二に実戦形式で戦いの感を鍛える。
隙間の時間に基本練習だな。
…こんなもんかな?
ぬー…そう言えばまだこの国の力の基準が解らんな…。
そうだ!!
『ノワール国 酒場 バニーバニー』
異世界の情報源と言えば酒場!!
この時間帯だからこそ賑やかで外までも何かしらの楽器の音が聞こえてくる。うん活気があるね!
木製で厚めのドアを開くとタバコやら酒やら香水やらの臭いが充満している。
酒場はほぼ満席状態。
俺も一応店を経営してるから少し羨ましい。
なるほどこの酒場は1階が酒場で2階は宿って感じかな?
そのままカウンターへを足を進ませるとバーテン?が話しかけてきた。
「いらっしゃい、何にします?」
「そうだな…適当に軽いのを頼むよ。」
「へい。」
ぬ…客の大半が兵士とか冒険家ってやつなのかな?
なかなかの実力者ばかりだ…。
例えばあのモヒカン頭の中の持っている短剣…なかなかに使い込まれている。
筋肉の付き方も無駄がない。
「へい、おまち…。」
俺の注文したのが来たようだ。
グラスに口をつけた瞬間…「金がない!」ことを思い出した。
ぬ…愉快だね…。
どうしようかなー…。
「どうしたんだいお兄さん?」
「ぬ?」
そこにはなんとも妖艶なおねえさん。
「悩み事かい?何があったのか知らないけどさ…2階で私と楽しんでいかない?」
「ぬ?うえは宿屋ではないのか?」
「あらあら、お兄さんかなりの色男じゃないか。ふふふ、2階はねぇ宿屋と私達を楽しめる場所よ…どうだい?安くしとくよ?」
いや、確実に俺の手持ちの方が安いだろう…というか手持ちと呼べるものが無いのだから…。
「ぬー…。」
困ったな…。
眉間にシワを寄せていると近くのおっさん達の会話が耳に入ってくる。
「今日楽園に新しい女が入ったみたいだぞ!」
ぬ?女?エデンに入ったのは俺以外にもいるのか?
気になったのからその話題で盛り上がっているのテーブルへと目を向けてみる。
「黒髪の女みたいでな、エリカ王女様と騎士団長の所のアリス様の3人で入っていくの見たぜ。」
あー…俺の事だね…。
「また無駄なヤツが増えるのかよ…!」
「ヴァルキリー隊って名前なのに1回も戦場に出たことも無いんだと…名前負けも良いとこよ…!」
「ヴァルキリー隊の飯は俺らの税金で賄ってるんだぜ!汗水たらして働いた金がアイツらに行くなんて馬鹿馬鹿しいぜ!」
「そうだそうだ!俺らはお前らの為に働いているわけじゃねぇんだぞ!!」
ぬー…これは…思ってる以上に深刻だな。
「お兄さんもヴァルキリー隊に思うとこがあるクチかい?」
「ぬ?ぜんぜん。」
速答したらおえさんは「あら、珍しい」って顔をしていた。
「まぁ、考えたってどうにもならないことはどうにもならないんだよ。お兄さん早くうえに行こうよ。」
「ちょっち待って。」
俺はさっきのテーブルへと歩いて。
「おい、おっさんども!俺は思うね!今日入った新しいヤツはきっとヴァルキリー隊を変えるぜ!そりゃぁもうこの国1番の騎士ってヤツになぁ!」
どかっ!と割り込むように座り適当な酒を一気に飲み干す。
「なんだお前!」
「俺の酒をてめぇ!」
真っ赤な顔のおっさん達。
「賭けてもいいぜ!ヴァルキリー隊がこの国で最強になるのに俺の全財産!(現在無一文)」(キリッ!)
「おもしれぇ!いいじゃねぇか!小僧!!やってやるよ!俺も全財産だ!」
「はっはっはー!どうだ!他には居ないか!?それも怖じ気づいたか!見た目だけ屈強な男どもよ!」
煽ってみると「俺も!」「俺もだ!」と次々に乗ってくる乗ってくる!
終いには店内の男全員が参加していたと思うね。
「じゃぁ!前哨戦として俺と腕力で一勝負といかないか?」
「あぁ!?」
古今東西、腕力勝負と言ったら『腕相撲』でしょ!
「負けたら50ゼニーでどうだい?それとも…怖い?」
ものごっつい殺気が答えと認識しテーブルの上に右腕を乗せる。
「さぁ!1番手は誰だい!!」
どん!と目の前に来たのは目つきの悪いおっさん。
…あっ!俺がこのおっさんの酒を飲み干したから…苛立ちが強いようで…。
「俺様が1番で最後にしてやるよ!」
「ぬ、威勢はいいな。」
「その細腕へし折ってやる!!」
がしっと手を組む。
このおっさんもなかなかに腕がたつと理解できる。なんとも力強い…。
体格も俺より一回りデカイし…その場の人間は十中八九俺が負けると思うだろうね。
……へっへっへ…。
俺とおっさんの組み合う手に白い手が添えられる。
「ぬ?」
「私に仕切らせてもらうよ!2人とも用意はいい?」
さっきのねえちゃん…なかなかの姉御肌ってヤツだな。
「いいかい………始め!!」
「うぉぉ!!!」
「ぬ!?」
一気に持っていかれる俺の腕…!!
「ぐひひ!あんちゃん!この程度かよ!?」
「ぐぐぐぐぐ……。」
店内に声援と罵声が充満する。トトカルチョを始める声も上がり始めた。
「カルボに10ゼニーだ!」
「俺も10ゼニー出すぜ!」
「おいおい、賭けになんねぇよ!俺もカルボだ!!」
「やったれ!カルボ!!」
「へし折ってやれ!!」
へー…相手のおっさんはカルボって名前らしい…。
「しぶといぜ、にぃちゃん!もう楽になれよ!」
「ぐぐぐぐぐ…。」
俺の視界にトトカルチョの親役が目に入る。
「おい!俺の勝利に100ゼニーだ!!」
店内爆笑!!
「この状況を見ろ!」「夢見てんな!」「諦めろ!」
なんともアウェーな感じ…。
「おい!おっさんカルボだっけ?」
「なんだ小僧、降参か!?」
「歯ぁくいしばれよ」
「ああ!?」
「よっ…こらしょーー!!!!!」
カルボのおっさんの腕からぐぎっ!と青ざめる音鳴ったが構わない。
規模は小さくともこれは闘いいなのだから。
相手側をテーブルに叩きつけるとそのままの流れでおっさんは床に転げ落ちた。
「勝者!!!」
指を1にして天を突く!!
「次の相手は誰だぁ!!!」
一瞬の静寂の後「次は俺だぁ!」と騒ぎ出した。
…その後は何人とやったか…カルボのおっさんの仲間とか流浪の冒険者、ハンターと名のる者、非番の王国兵士。
なるほど、なんとなくだけどこの国の力の基準が解った。
信じられんという視線を感じながら静まり返った店内で1枚2枚と銭勘定…トトカルチョでの払い戻し金を含めて…。
おおう!?9500ゼニーも集まってるぜ!!
1ゼニーの価値は1円で良いのだろうかな?
500ゼニーだけ懐へと忍ばせて…。(忍だけに…なんつって…。)
「お兄さん何者なんだい?」
「ぬ?」
「軽装だし…冒険者には見えないし…どこぞの兵士や騎士様って訳でもないのだろう?」
「そりゃそうだ、こっちに来てまだ日が浅い。」
「??新参者ってことかい…いったい何処の国から来たんだい?」
「ははは、内緒。それより俺の酒の勘定はこの9000ゼニーで頼むよ。」
「9000!?気前が良すぎだよ。お兄さんの酒は1杯50ゼニーの安酒だよ。」
「ぬ?そんなもんなのか…なら残りは…そうだな…。」
天井を指差して。
「残りは上の子達にあげといて。」
「なんだって?」
「俺はこれで十分!それに面白い情報も手に入った!」
くっくっく…こうしちゃ居られない。
「んじゃな!」
振り向かず、足早に店を後にする。
もっと落ち着いた頃にもう一度この店に来てゆっくりと酒と小料理を楽しもうじゃないか!
「あっちょっと待ちなー……。」
バタンとドアが閉まる。
「ふっ、まったくもー…。」
ねえちゃんは呆れながらも少し笑っている様だった。
さて!明日のために急いで寝ないとな!
エデンに戻ってきてそのまま用意されているベットで寝る。
?さっき俺を見張っていたヤツらは自分の部屋に戻ったのか居なくなっている。
まぁいいや!おやすみ!!
…………。
Zzz…Zzz…Zzz…。
Zzz…Zzz…。
Zzz…。
『6時間後』
ぱちっと目が覚めて早速行動!
…と行きたい…が、なかなか体が動いてくれない。
「…風呂に入りたい。」
太陽が若干顔を見せているのか窓から覗く空はうっすらと明るい。
「顔がべとつく…。」
入浴の欲求に駆られ早朝のエデンを歩き回る。
女の子達はまだ寝ているのか…俺が早すぎるのかは解らない!!何故なら時計が無いから!!
何やら妙なテンションになって歩いてくると日本語で『湯』と書いている部屋発見。
「ぬ『湯』?ここが風呂かな?」
人気がないか確認してドアを開ける。
「ビンゴ!風呂だ!!」
迷わず入った。
しかし。
入ってから戸惑った。
広い脱衣場は各自が自分の衣服を置けるようにと四角い箱が並び…大きな姿鏡がある。
「銭湯かよ!?」
洗面所付近にはL字型の物体…。
持ってみると何かに反応したのか熱風が噴射……。
「これ、ドライヤーか!?」
なんだこの世界?
備え付けのタオルが大量にあるし…『ご自由に』って事かな?これは助かる。
大浴場内…。
シャワーが5つに大きい湯船と小さい湯船…まさかの『寝湯』まであるとは…。
「銭湯だな!」
シャワーの温度を調整して1番に頭を洗う。頭皮の汚れは手強い為しっかり洗わないと!禿げたくないから!!
「ぬ!?シャンプーとコンディショナーまである!?」
この世界…どうやら異世界らしいのだが…何処かしらに日本を感じる。
貰った『日本刀』の事もあるし…話しに聞く『勇者様』とは日本人なのだろうか…。
「ぬぅ…愉快だねぇ…後で考えよう。兎に角シャンプーだ!」
ひっゃはーー!!
頭でもしゃもしゃと泡立つ感触くが超絶気持ちいい!!
「薔薇の薫りが素敵だね~!」
泡を流してさっぱり!!
続いて体も洗って余計な脂も流し落とす。
心なしか体が軽くなった気がする。
ウキウキとして大理石っぽい湯船に肩まで浸かる。
タオルは浴槽に入れないようにしましょう。
「…ぬ?」
「ぬ……ぬぬぬ…。」
「ぬるい……。」
沸いていない。
もういい!あがる!!
タオルで体を拭いて脱衣場に向かうと…。
カラカラ…。
一糸まとわぬ爆乳の裸体。
爆乳の持ち主と目が合う。
「!?!?」
「よっエルザおはよう。」
「ひゃ!?」
「んじゃな!風邪ひくなよ。」
さっさと浴室から脱衣場へと移動。
裸体を直視されたエルザだが余りにも堂々とすれ違った為…ポカンとしてしまい叫ぶタイミングを失ってしまったようだ。
「き、きゃー…。」(小声での取り敢えず悲鳴。)
その後別で会った時に真っ赤な顔で睨まれたがそれっきりだったのを覚えている。
『ノワール国 西門付近』
全身が熱い…視点が定まらない…。
倒れていると頭を踏みつけられた。
「ぐぅ!」
この鳥足…というか鳥!!
「この瞬撃王 アルバロス様を前にふざけやがって…このゴミが!!」
アルバロスのサッカーボールキックが無防備の頭にHit。
「がっ!?」
体格差が有りすぎる。
俺の体は宙を舞い、道端で小学生が蹴り飛ばす小石の気持ちがよく理解できた。
地面に叩きつけられ更なる激痛に襲われる。
こんな状況でも意識を手放さないのは普段の鍛え方が違うから!
「ほう!まだ息があるとはこれは面白い!」
「ぐっ…。」
「ならこれはどうだ!!」
大きな翼で羽ばたき天高く飛び立ったアルバロスは俺の視界から消える。
「ぬ?」
「アーーーーーハッハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
アルバロスの体重を乗せたニー・ドロップ。
日本名で膝落としが背中に落ちる。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
「いいなぁ~断末魔ってのは!それに今の感触…背骨はズタボロだなぁ!」
「ぐっ…。」
身体中の痛みでよくわからん…!
「そうだ!決めたぞ!貴様の最後を!!」
「???」
アルバロスは俺の足を掴みそのまま飛翔。
「うわっ!?」
「あーははははははははははははは!」
俺の体はこれでもかという速度で上昇していった…もう何m?何十m?何百mか?視界には雲…。
「貴様らゴミはたかが恐怖ごときで死ぬらしいなぁ!」
「あぁ!?」
「後は理解できよう!この高さから落ちれば…?」
鳥顔がニヤニヤと見下ろしてくれる。
確かにこの高さは危ない…ここまでか…?
まだヴァルキリー隊を鍛え上げてないぞ!
まだエリカ王女との約束を果たしてないぞ!
アリスの馬にも乗ってない!
それに『チーム七竜』のヤツにも何も恩を返せていない!!
こんなところで終わる訳には行かない…。
ヴァルキリー隊やエリカ王女、アリスには嫌われるかな……?
「ふふっ…。」
つい笑ってしまう。
「どうした!もう可笑しくなったか!?はははははははははは!」
随分とまぁ丸くなったものだ…。
何が嫌われたくないだ!?
「おい!鳥野郎!」
「あぁ~!?」
「嫌われる勇気って知ってる?」
オヤジさん作『ニホントウ』を引き抜き鳥足を切断する。
「ギャーーーー!?」
俺を掴んでいる足を斬ったので…当然落下する。
「このゴミがぁ!よくも俺様の足を!絶対に許さん!地面に激突する前に俺がその首掻っ切ってやる!!」
風を切る高音が鼓膜を貫くように頭に響く。
うまく目も開けられない…このままだと…あと数分後には俺は死ぬ。
『ニホントウ』の他に手にいれた『緑の刀』…持ち主に比例して強力になる魔剣。
(何故か借金までしたんだ!力貸せよ!!)
頭のなかでオヤジさん夫婦が仲良く「まいどありー」とニヤついている…。
「あげるって言っていたのにーー!!」
鏡花口伝剣術改め!!
七竜式闘剣術!
真空 円斬!
地面に向けての抜刀。
放たれるのは先のより倍の『風の刃』。
そこから産まれるのは刹那のゼロ重力。
この機を逃してはならない。
七竜式 空闘術 !!
飛影!
ゼロ重力時の空間を蹴りあげる。
飛び上がると同時に迫り来る鳥の血走った目と視線がぶつかる。
「!?!?」
鳥とすれ違う瞬間に剣を叩き付ける。
七竜式闘剣術!!
二刀!剣戟乱舞!!
「ぐぇぇぇ!?」
奴の自慢であろう鳥の代名詞である翼を切りつける。
「おっ俺の翼がぁ!?」
形勢逆転
俺が上で奴が下!!
そして再び訪れるゼロ重力。
飛影で奴へと接近。
鏡花口伝体術改め、七竜式体術!
飛竜…!
「咆~哮~掌ォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
飛竜がアルバロスに襲い掛かるときアルバロスの頭の中には恐怖と別つの言葉があった。
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