EL DORADOの騎士~異世界物語り~

佐々倉 桜

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第1章 ~ノワール国~

ノワール国 その 9

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 エリカ王女 専属騎士 待機所  ~楽園エデン

 ヴァルキリー隊がシチリの指導を受け掛け声を出し列をなして園外を走っている。
 疲れているようで声にがない。


 楽園エデン台所
 
 甘味な香りが漂ってくる中「よっと」の掛け声でフライパンを回しているシチリをテーブルに座ったアリスとエリカ王女、カインの3人が眺めている。
 
 シチリが今、在るもので異世界料理を試しに作ってみるからと試食してもらうために呼び出された3人。

「まーだかなっ!?まーだかなっ!?」

 ウキウキのエリカ王女。

 この甘い香りはエリカ王女だけでなくアリスも口内に唾液が溜まる。
 平静を装っているカインも幾度か深い深呼吸で甘い香りを肺に取り入れている。
 
 本来ならばこうのんびりとはしていられない状況なのだが…。

「エリカ王女、暗黒騎士団との決闘は正気ですか?」

 アリスの問にエリカ王女は「え?」と気の抜けた返事で返す。

「シチリ~問題あるぅ?」

 シチリは焼き上がったものをフライパンから移し包丁で切り分けていく。

「ぬぅ~………」(少しの間)無いな。」

 …なんともマイペースな2人だ。

「カイン、お前からも2人になにか言ってくれ。」

 いつの間にかフォークを握りしめているゴスロリ少女。

「…まだ…出来ない…の…?」

「カイン!!!」

 カインは私にフォークを向けてくる。

「カ…イン………!」

「うっ……すいません。」

「よ…ろしい…。」

 シチリを見ると、焼き上がったものに生クリームとチョコレートをトッピング。
 ラズベリーを上からまぶして…。

「はい、ラズベリーのパンケーキの完成!さぁ喰らえ!!」

 目の前に置かれた皿には綺麗に飾られたケーキがキラキラと輝いている。

「「「おぉ!」」」

 女子3人の声が重なる。

「こう見えて、スウィーツ屋の店長だからな!ケーキの1つや2つは簡単だ!」

 えっへんと胸を張るシチリ。

「では、いただくわ。シチリ、貴方の腕前を確かめてあげる!!」

 エリカ王女はナイフとフォークを器用に扱いパンケーキをひと口分に切り分ける。
 
  ……ぱく。 

 もぐもぐもぐ……。

「………。」

 なにやら神妙な顔つきのエリカ王女。
 アリスとカインが心配そうに見守るなかエリカ王女はナイフとフォークを静かに皿に置いた。

「どうだい王女様?」

「シチリ…。」

 なにやら困った表情のエリカ王女。
 美味しく無かったのだろうか…。
 
「コレ…甘過ぎて私は苦手だわ…。」

 率直な物言いのエリカ王女になにやらカップを置くシチリ。

「なるほどね…ここでコレの出番さ。」

 怪訝な顔のエリカに比べシチリはわくわくとした表情を崩さない。
 
「いや~、これを見つけたときは驚いたね。」

「シチリ、これはなんなのだ?」

 シチリに問う。

「これか?これはー。」

「美味しいわ!」

 突然エリカ王女の声があがる。
 カップから漂う香りをくんくん。

「なるほど、これは珈琲ね?」

「そう。この世界の珈琲は俺の世界の珈琲よりビターな感じだからなクリームでもいけるかな?と思ってね。」

 アリス、カインの前にも同じパンケーキと珈琲を置く。

「この世界の『舌加減』が解ればもっと手を加えることが出来るのだけとねぇ。」
  
 アリスも器用に切り分け口へと運ぶ。

「確かに、この甘さは珈琲を引き立たせるな。」

「私…は…丁度…いい…。」

 ぱく。ぱく。ぱく。

 と安定したテンポでカインは食べるが鼻にクリームが付いている。 

「ほれ、カイン鼻にクリーム付いてるぞ。」

 シチリは馴れた手つきで布を使い、鼻のクリームを拭き取る。

「ん……。」

 その姿は兄妹を連想するが実のところカインの方が歳上…。

 

トントントン。

 入り口のドアがノックされる。

 反応が速いのはシチリ。

「はいよ!誰だい?」


ガチャ。


「失礼します。」

 ドアから入ってきたのはヴァルキリー隊のリスタ。
 極度の男性恐怖症の持ち主でシチリが楽園エデンに来た夜に絶叫した女性であった。

「………。」

「ぬ?」

「あ、あ、あ、あの……そ、その…。」

 段々と青ざめていくリスタ。

「あら~リスタ、どうしたの?」

 リスタのSOSを察したエリカ王女がリスタを抱き締めながら問う。
 (服の隙間から手を差し込みお尻を擦りながら。)

「ひぅ……エリカ様ぁ……。」

「速く用件を言いなさいな。」

 顔が羞恥心で染まっていくリスタをよそにエリカ王女は耳元で囁く。

「あ、あ、エ、エリカ、様ぁ~。」

「さぁ、我慢しないで言ってしまいなさい!」

「エリカ様ぁ~~………!」


 2人のバラの劇場を他所にカインがシチリにお代わりを要求しシチリがそれに答えフライパンに油をひく。
 アリスは珈琲をゆっくり啜っていた。

 リスタはそそくさとその場を後にした。
 用件は『暗黒騎士団』からの決闘の際に贈る書状が届きました。との事である。

 「1週間後、ノワール王国 中央広場にて貴殿を待つ。
 決闘の際に、王者へと挑戦者する貴殿は、剣1 鎧 1 盾 1にて挑まれたし。 
 王者は全力で貴殿を迎え撃とう。」


 エリカ王女は書状を広げ「なにやら平凡ね…。」とため息。

「そう言えば、俺は何で…えーと、ラザニアだっけ?」

「暗黒騎士団、団長のラザニーよ。」

 エリカ王女がさらりと訂正する。

「そうだ、ラザニーと戦わなければならないのだろう?」

「さぁねぇ………団長のラザニーと言わず、暗黒騎士団自体が『天災』と言われているもの…。」

「ぬ?」

 エリカ王女がゆっくりと話し出す。

『暗黒騎士団』

 過去にこの世界に現れたチート級の騎士達『伝説の勇者』の子孫が作り上げた黒色主体の鎧を身に纏う騎士集団。
 伝説の勇者の血を引くため個々の能力もずば抜けて高い。
 その1振りで100のモンスターを切り捨てる。
 
 ここだけを切り取ると優秀な先頭集団なのだが…。

 移動主体で国土なき国家故に土地がない暗黒騎士団は周期的にEL DORADOの国々を巡り食料を調達していく。
 しかし、その調達量が尋常ではなく国家の備蓄の70%近くを持っていくのだ。
 その代わりに「城壁回りに居座り魔族やモンスターから国を守護する。」と言うのだが、不思議なことに暗黒騎士団が滞在する数ヶ月から半年の間は魔族はおろかモンスター1匹姿を見せなくなる。
 
 『伝説の勇者』の子孫なのでないがしろには出来ず、尚且つ機嫌を損ねると「戦争だ!皆殺しだ!」と喚く。
 1度、某国が拒否したことがあるが、暴れだした暗黒騎士団に王族や兵士、非戦闘員である民までもが手にかけられた。
 女性に至っては子供だろうが妊婦だろうが数十人の男に数日に渡り犯され…目も当てられない状態。
『伝説の勇者』の子孫という名は異常に強く
 
 なので各国は『暗黒騎士団=天災』と認識し速く立ち去ってくれる事を願う事にしていた。

 暗黒騎士団内でも気性の荒さは変わらず、移動の際にケガや病気で動けなくなった者で治る見込みがないものは容赦なく切り捨てていく。
 
 暗黒騎士団内 上位の者に下位のものが、『口答え』や、例えそれが単なる『意見』であっても反乱と見なされる。
 老若男女だろうが全裸にさせられ、素手で若き騎士達の練習相手にさせられる。
 木剣でも危険なのだが若き騎士達は真剣を使う。
 稀に騎士に攻撃が当たるのだが逆上した若き騎士は魔術も使用し跡形もなく焼き尽くす。
 女性相手だと切り刻みながら犯し相手の最後を嘲笑う。
 死体はそのままゴミとして放置する。

 特に軍団長 兼 王でもあるラザニーは特別な存在で暗黒騎士団中、唯一無二の力の持ち主であり絶対の権力を持っている。
 彼のその日の気分で罪人とされる者、己の欲を満たす為の玩具と成る者がいる。

 そんな暗黒騎士団がノワール国へと出向いただけでなく。
 エリカ王女専属部隊のヴァルキリー隊を所望している。
 ノワール国民が彼女達ヴァルキリー隊をよく思っていない事をエリカ王女は充分に理解しており、「さっさと引き渡して別へと行ってもらおう。」となる前にエリカ王女自らが動いた。
 よく解らないがラザニーはシチリを敵対視していたようなので、『シチリとの決闘』これはチャンスとエリカ王女は見た。

 ヴァルキリー隊を手離す訳にはいかない、ただ暗黒騎士団の事だ後に文句を言ってなってしまう事を避ける為、もしシチリが負けたのならエリカ王女自らがと保険として国民の前で宣言をしたのだ。
 独裁者であるラザニーは何故か異常なほど世間体を気にする。
 国民の前でと約束をしたので、その日までは彼女達の安全は確保したことになる。

「カイン殿、率直に聞くわ。」

 エリカ王女の目線がぽっぺにクリームを付けながらパンケーキを食しているカインに向けられる。

「…なに……?」

 王女相手でもカインは気にせず話す。

「シチリはラザニーに勝てるかしら?」

 パンケーキを食べ終えナイフとフォークを皿に置き。
「ご…ちそう…さま。」とシチリに一礼。

 余りのマイペースさにアリスが声をあげる。

「カイン!」

 むっとアリスを睨むカイン。

「……さん。」

 アリスはちょっと引きながらも『さん』をつける。

「う…む…。」

 カインはエリカ王女を見つめ。

「よ……ゆう……。」

びっ!と親指を立てた。


「角……男の…レベル…は…87…。」 

「87ですって!?本当なのシチリ!!!」

 初耳のエリカ王女はシチリを見る。

 そんなシチリは絶賛お皿洗い中。
 
「それ…より…王女…様?」

「なにかしら?カイン殿」

 カインの目が鋭くなる。

「なぜ…あん…な、提案…を?解せ…ぬ…。」

『天災』と呼ばれる暗黒騎士団。
 長居されれば、されるほど国への被害が拡大してしまう。
 
「………。」

 普段ならどんな事があっても余裕の笑顔を崩さないエリカ王女の表情が曇る。

ヴァルキリー隊あの子達……を…そこ…まで……守る…必要は……理由は……何?」
 
「それはー…。」

「俺が守りたいからさ。」

 エリカ王女とカインの会話にメレンゲクッキーを持って入っていく。

「安心しろエリカ王女俺は負けない。それとカイン、仲間を守るのに理由は必要かい?」

「………。」
「………。」

 真っ直ぐな瞳と優しくも力強いシチリの言葉だった。

 メレンゲクッキーの1つを取り口へと運ぶ。

「……これは、丁度いい甘さね私は好きよ。」

 エリカ王女は振り向きシチリに背を向ける。

「これは気に入ったわにもう一度私に食べさせなさい。これは王女としての命令よ。」

 振り向かず、そのまま歩いていくエリカ王女。

「角男…。」

「なんだ?」

「もっと……甘い…のが…いい。」

「へいへい。」

 シチリはカインの頭をポンポンとしてからアリスへと視線を向ける。

 アリス相手には『私は歳上たぞ!』という態度だったカインが大人しく『ポンポン』されながらクッキーをモグモグしていた。

「さて、アリス。」

「なんだ?」

「今晩、お前の家に行くから予定を空けといてくれるか?」

「え?」

 (なん…だと!?今晩私の屋敷へ!?)

「あぁ、迷惑だったか?」

「いやいやいや!そんな事は無いぞ!!大丈夫だ!!」

 (なんだ!?この展開!!)


「じゃ、じゃぁ私は一足前に戻ってるから!いつでも来てくれ!」

 (マズイ、急いで部屋を掃除しないと!!)

「おう、なら今晩な。」

「あぁ、シチリ、カイン…さん、私は失礼する。」

「う…む…。」

 私は愛馬ユウヒを走らせて部屋へと向かう。

「これは…どうしたものか…。」

 散らかりに散らかり尽くした部屋。
 私の威厳の為に言うが普段はしっかりと整理している。
 だが!先の戦闘での疲労があって……帰ったら寝て起きたら楽園エデンへと出向くから…。

「突然、私の家に来るなんて…。」

 散らかった部屋…。

「見せられん!!」

 衣類をクローゼットへ移して倒れている書籍をまとめ部屋の埃を落として………。

トントン。

 不意に鳴ったノックの音にビクッとなる。

「なぁ…なにか?」

 ドアが開き若いメイドの顔が覗いてくる。

「失礼します。アリス様ドタバタとなにをして…。」

「へ?」

 三角頭巾にマスク、エプロン姿。両手にとホウキ。

「こんな時間から掃除ですか?」

「え、あ、いや、これは、その~…。」

「………。」

 頬が紅くなっているアリスを見てメイドが◯ュータイプかの如く閃く。

「男ですね?」

『ですか?』という疑問ではなく『ですね?』という確定してくるメイド。

「お、男と…いう訳では…。」

 赤く、もじもじとしてるアリスを尻目にメイドがどんと胸を張る!

「お任せください!!」

「へ?」

 そこからのメイドの行動は速かった。
 まさに迅速迅雷!

 みるみるアリスの自室がピンク色に染まっていく。

 トントン…。

「アリス様?なにやら騒がしいようですが…。」

 ドアを開けるのはメイド長のクロック。

 1面ピンクに染まった部屋で1人のメイドが汗を拭いてる。

「いやー!我ながら素晴らしいですな!」

 臼透明なシースルー1枚のアリス。

「こ、これは、見えすぎじゃないか!?」

「そこが殿方の喜ぶポイントの1つです!」

「そ、そうなのか?」

「はい!そこにこちらの猫耳カチューシャを装備すると…。」 


「…貴女は何をしているのです?」

「え?」
「え?」


 怒りの表情のクロック…。

「やばっ!!」

 その殺意を怖れていち速く逃走を図るメイドだがクロックは逃さない。
 後ろから追い付き片足を掴む。
 咄嗟にメイドか振り返りクロックと向かい合わせになる。
 その片足の足首を脇腹に押し付けるように掴み。その体勢から自ら素早く内側にきりもみ状態で倒れこみ回転力で投げ飛ばす。
日本名で飛竜竜巻投げ…またの名を…。

『ドラゴンスクリュー。』

「ぐはっ!!」

 倒れてパンツ丸出しのメイドの足を数字の4を表す形で関節を決める。

「あなたは!アリス様をどうさせようとしてるのですか!!」

「わ!私は、いっ!一刻も速くお世継ぎをと!!」

「だまらっしゃっい!こんなふしだらな真似は許しません!」

 クロックは思い切り力をかけた。

「ぎゃ~~~~~~!!」


「アリス様も!」

「はっ、はい!!」

「お早く着替えてください!!!」

「はい!!すいません!!」

 急いでシースルーを脱いでいつもの服に着替え直す。
 クロックは怒らせるととんでもなく恐い。
 着替え終わると同時にクロックは若いメイドを解放する。
 白目をむいているが彼女は大丈夫なのだろうか…?

「これでいいか、クロック。」

「よろしいです。良いですかアリス様、淑女とは………。」

 くどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくど………40分経過…。
「……という、公式が成り立って始めて淑女となるのですよ!!」

「…はい。」

 正座で聴いていたから足が痺れてる…歳のせいなのかは解らないがクロックのお説教…演説?が徐々に長くなってきている気がするな、私を思っての事ということは理解しているが…。

「ところで、クロック。私に何か用事があったのではないか?」

「あぁそうでした。アリス様先ほどからシチリ様がいらっしゃってますよ。」

「なにぃ!?」

「私の自室にてお待たせ…。」

 クロックが言い終わる前に私は走る。
 なんたる不覚…部屋の模様替え等でシチリの到着に気が付かなかったとは………。

 クロックの部屋のドアを開ける。

「すまないシチリ!遅くなった!!」

「ぬ?」

 そこに居たシチリはいつもの黒い服ではなく、白を基調としたジャケットに袖を通していた。

 …おぉぉ…格好いい…。

「すまないな、突然お邪魔して…。」

 黒も似合っているが…白も爽やかで…。

「ぬ?」

「はっ!?いや!!大丈夫だ!ところでその服は?」

 (いかんいかん、私としたことが見とれてしまった…。)

「これか?黒い服しか持っていないからな…あの黒い連中とやり合うからのが嫌でね。」

「あぁ~。」

 暗黒騎士と同じような服装だったから…。

「そこで、クロックさんに服の相談しようとお邪魔したら…この服が出てきた。」

 前回の黒とは真逆の白いジャケット。

「ふむふむ、お似合いですねシチリ様。ズボンの丈も問題ないですか?」

 クロックも部屋に戻ってきた。

「ぬー…ちょっと長いような気もするけど、このくらいなら問題ないよ。」

「なりません!決闘というものは自分にも相手にも礼を欠いてはならないものです!」

「ぬ~?そういうものなの?」

「そうです!なによりシチリ様はこのノワールの代表として闘うようなものですから!衣服ひとつとっても恥の無いように致しませんと!」

「難しいな…決闘とは、喧嘩とはえらい違いだ…。」

「左様です…こちらをご覧ください。」

 クロックが手渡してきたのは1枚の紙。

「ぬ?」
「ん?」

 シチリと2人で覗くと…。


 『世紀の大決闘!!
 
 ノワールの王女を賭けての正義と愚者が命をとして闘う!!
 漆黒の勇者相手に愚者の挑戦者はどう挑んでくるのか!!
  愚者の最後を見届けよ!!』


 の文字と一緒に2人の写真が載っているが…。

 真ん中に剣を握るラザニーに対し…隅の方でシチリが箒を持ってくしゃみをしている。

「なんなのだ!この写真は!!」

「ぬ~…そう言えばエデンの門前の掃除してたらパシャと光ったなぁ。」

「掃除!?」

「ぬ?やることなかったからな…住ませてもらってるからせめて掃除だけでもと思ってな。」

「おまっ、これから決闘が行われるのだぞ!?掃除よりも修練などをだなぁ…。」

「ぬ~…だってなぁ…。」

 シチリの次の一言で私は絶句した。

 命を賭けた決闘までの数日…シチリはヴァルキリー隊の指導をし、時にはお菓子を作り、クロックに身体の寸法を測られ、私と愛馬のユウヒの世話をしながら平凡に過ごした。

 


 決闘当日。

 白いジャケットに袖を通したシチリがエデンから出てくる。
 両の腰に『ニホントウ』と『風の魔剣』。
 防具らしい防具は両腕の鉄甲のみ…。

「いや~いい天気だ。」

「準備はいいのか?シチリ。」

「睡眠もバッチリだし、ご飯も食べた!問題ないよ。」

 …この男は…。

「はぁ~。」

「なんだぁ、ため息なんかついて?」

「ため息もつきたくなるよ、もし負けたらエリカ王女もヴァルキリー隊も失うだけでなくシチリの命すら危ういのに…。」

「ぬ?」

「どうして、そんなにも落ち着いていられるのだ?」

「なはは、大丈夫だよ。」

「笑っている場合ではないぞ!」

「それはそうと、道案内をさせて申し訳ないなアリス。」

「構わない。シチリはノワールだけじゃなくEL DORADOの地理も解らないだろ?」

「決闘が終わったら他の国も見てみたいなぁ。」

「無事に生きて終わればな…。」

「アリスも一緒に行かないか?」

「…はぁ!?なななななな!!なにを!!」

「ぬ?ほら…道解らんし…。」

「ほら!下らないこと言ってないで!行くぞ!!」

 顔を紅くしながらアリスは先に進んでいく。

 (他の国へ一緒に行こうって……わ、私と2人で!?2人で旅行!?ならせめて1週間…父上になんて言って暇をもおう…?あっ、し、し、新婚旅行……とか?)

「速いってアリス!俺道解らないんだから!」

「うるさい!黙って私に着いてこい!」

 決闘当日に私達はそんな他愛もない会話をしながら会場へと歩いていく。

 頭に過るはシチリの言葉。


シチリ「だって、


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